暗号資産の税金と計算方法をやさしく整理する──日本の個人投資家のための実務ガイド

暗号資産

暗号資産(仮想通貨)で利益が出るようになると、次に必ず悩むのが「税金」です。利益が出たのに税金でほとんど残らなかった、計算が面倒で確定申告のたびに憂うつになる、といった声は少なくありません。

一方で、仕組みを正しく理解し、早めに記録と計算の方法を整えておけば、必要以上に怖がる必要もありません。この記事では、日本の個人投資家を前提に、暗号資産の税金の考え方と計算方法を、できるだけわかりやすく整理していきます。

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暗号資産の利益は「雑所得」扱いが基本

日本の現行ルールでは、多くの個人投資家が行っている現物の売買や、ステーキング・レンディングなどから発生した利益は、原則として「雑所得」に区分されます。株や投資信託のような「申告分離課税・20%前後の一律税率」ではなく、給与などと合算される「総合課税」です。

総合課税になるということは、所得が増えれば増えるほど税率が上がっていく累進課税の枠に乗る、ということを意味します。たとえば、給与所得がすでにそれなりにあり、暗号資産でさらに大きな利益を出すと、税率が20%台ではなく30〜40%台に達することもあり得ます。

ここで重要なのは、「課税されるのは『円換算した利益』である」という点です。取引所の残高画面に表示されているビットコインやアルトコインの数量そのものではなく、取得時の円換算額と売却(または使用)時の円換算額の差額が課税対象になります。

「課税されるタイミング」はいつか──よくある勘違い

暗号資産の税金で混乱しやすいポイントが、「いつ利益が確定したとみなされるのか」という点です。代表的なケースを整理します。

1. 暗号資産を売却して円に戻したとき

もっともイメージしやすいパターンです。たとえば、ビットコインを100万円で購入し、のちに150万円で売却して円に戻した場合、50万円が雑所得の「利益」として計算されます。

2. 暗号資産で別の暗号資産を購入したとき

意外と見落とされがちなのが、暗号資産同士の交換です。BTC建てでアルトコインを買った場合などが典型例です。日本では、BTC → アルトコインの交換時点で、いったんBTCを「売却して円を得た」とみなして計算する必要があります。

たとえば、取得時点で1BTC=500万円、あなたが保有するBTCの取得価額も1BTC=500万円だったとします。その後、1BTC=700万円のタイミングで、その1BTCを使ってアルトコインを購入した場合、この時点で200万円の含み益が「実現益」と扱われ、雑所得が発生します。

3. 暗号資産を使って商品・サービスを購入したとき

ビットコインで商品を買ったり、暗号資産でサービス代を支払った場合も、税法上は「暗号資産を売却して、日本円で支払ったのと同じ」とみなして課税計算を行います。実務上は、支払い時点のレートをもとに円換算し、取得価額との差額を利益として計算する必要があります。

4. ステーキング・レンディング・エアドロップで受け取ったとき

ステーキング報酬やレンディング利息、エアドロップなどで新たに暗号資産を受け取った場合も、原則として「受け取った時点の時価」を所得として認識します。その上で、その暗号資産を後日売却するときには、「受け取ったときの時価」が取得価額となり、そこから改めて売却益・損失を計算します。

基本の計算式:「収入金額 − 必要経費」

雑所得としての暗号資産取引の計算は、基本的には「収入金額 − 必要経費」で行います。ここでいう収入金額とは、売却や使用時点での暗号資産の円換算額、必要経費とは、その暗号資産を取得するために支払った円換算額や、取引手数料などです。

単純な例で考えてみます。

・2025年1月:ビットコインを100万円分購入(手数料1万円を含めて支払い合計101万円)
・2025年12月:そのビットコインを150万円で売却(手数料1万円を差し引いて受取額149万円)

この場合、収入金額は149万円、必要経費は101万円となり、雑所得の金額は48万円です。

雑所得=149万円 − 101万円=48万円

この48万円が給与所得などと合算され、総合課税として所得税・住民税が計算されます。

複数回取引した場合の「取得価額」の考え方

実際には、1回だけまとめて売買することは少なく、「毎月少しずつ積み立て購入して、ときどき一部を売却する」といったケースが多いはずです。この場合、どの購入分を売却したとみなすか、という問題が生じます。

日本では、税務上の計算方法として、主に次の2つの考え方が用いられます。

1. 移動平均法

移動平均法は、保有している暗号資産の平均取得単価をその都度更新していく方法です。新しく購入するたびに、「それまで保有していた数量と取得金額」と「新たに購入した数量と取得金額」を合算し、総額を総数量で割って平均単価を出します。

たとえば、次のような取引を行った場合を考えます。

・1回目:0.1BTCを50万円で購入(平均単価=50万円)
・2回目:0.1BTCを70万円で購入(合計取得額120万円 / 合計数量0.2BTC → 平均単価=60万円)

この時点で、あなたの平均取得単価は1BTCあたり60万円になっています。その後、0.1BTCを売却した場合、取得価額は「0.1BTC × 60万円=6万円」として計算します。

2. 総平均法

総平均法は、1年分の取引をまとめて、「その年に取得した暗号資産の合計取得額 ÷ 合計数量」で平均単価を計算する方法です。年の途中での売却時点では暫定的な計算となり、年末にまとめて精算するイメージになります。

個人投資家が実務で多く用いるのは移動平均法ですが、どちらを使うかは継続性が重要です。年度途中で恣意的に計算方法を切り替えると、税務上の説明が難しくなります。

損失が出た場合の取り扱い──「繰越控除」はできない

株式や投資信託の損失は、条件を満たせば翌年以降に繰り越して、将来の利益と相殺する「損失の繰越控除」が可能です。しかし、現状のルールでは、多くの暗号資産取引で生じた損失については、原則として翌年以降へ繰り越すことができません。

そのため、暗号資産取引で大きな損失が出ても、翌年に株の利益と相殺するといった使い方はできない点に注意が必要です。同じ年内の暗号資産同士の利益・損失は合算できますが、翌年に持ち越すことは原則できないという前提で、リスク管理やポジションサイズを考えることが大切です。

税金を意識した取引の考え方

税金は「利益が出たあとに考えるもの」と思われがちですが、暗号資産の場合は、取引の設計段階から税金を意識しておくことが非常に重要です。ここでは具体的な考え方をいくつか挙げます。

1. 年間利益の「ざっくり見積もり」を常に把握する

年末にまとめて取引履歴を見て驚く、というパターンを避けるために、月次・四半期ごとに「今年ここまでの概算利益」を把握しておくのがおすすめです。取引所から履歴をダウンロードし、スプレッドシートや専用ツールで、概算の損益を確認しておくことで、税率のゾーンをある程度イメージできます。

たとえば、「今年の暗号資産の利益がすでに300万円程度出ている」と把握できていれば、これ以上利益を積み上げると税率がどのあたりまで上がるのかを確認したうえで、ポジション量を調整するといった判断がしやすくなります。

2. フルレバレッジで短期売買を繰り返さない

暗号資産のデリバティブ取引では、高倍率のレバレッジを使った短期トレードが可能ですが、税金の観点から見ると、短期間に利益と損失が激しく出入りしやすく、損失の繰り越しもできないため、結果的に不利になることがあります。

例えば、前半で大きく勝って高い税率ゾーンに入り、その後に損失を出して年間トータルではほぼトントン、という場合でも、税金は「勝った段階」で発生しているため、手元に残る資金が想定以上に減ってしまうリスクがあります。レバレッジ取引を行う場合は、税金を含めたキャッシュフロー全体をシミュレーションしておくことが重要です。

3. 「売らない戦略」が税金を先送りすることもある

長期保有を前提とし、頻繁に売買しない戦略は、値動きに付き合うリスクはあるものの、「課税イベントをあえて増やさない」という効果もあります。もちろん、将来どこかのタイミングで売却すれば税金は発生しますが、「毎年税金で資金が削られていく」状態を避けたい場合、売買回数を減らすことは一つの方針になり得ます。

手数料・ツール代などは「必要経費」になり得る

暗号資産の雑所得を計算する際、取引手数料や送金手数料、損益計算ツールの利用料などは、取引のために直接必要な費用として「必要経費」に含められる場合があります。実際にどこまでを経費とするかは、支出の内容や頻度、金額なども踏まえて判断する必要があります。

たとえば、以下のような支出は、取引と密接に関連しているケースが多いため、領収書や明細を保管しておくとよいでしょう。

  • 取引所の売買手数料
  • 暗号資産の送金手数料(ネットワークフィー)
  • 損益計算ツールのサブスクリプション費用
  • 取引用に契約したVPSやAPI接続のためのサービス費用 など

ただし、「なんでもかんでも経費に入れてよい」わけではありません。生活費と投資の境目が曖昧な支出については、税務上の説明が難しくなることがあります。迷う場合は、領収書を保管したうえで専門家に相談するのが安全です。

実務上のポイント:記録の取り方とデータの残し方

暗号資産の税金計算で最も大変なのは、「過去の取引履歴を集めて整理する」作業です。ここを怠ると、後から思い出しながら計算することになり、ミスや漏れが発生しやすくなります。

1. 取引所ごとに履歴を定期的にダウンロードする

多くの取引所では、期間を指定してCSV形式で取引履歴をダウンロードできます。ただし、保存期間に制限がある場合や、古い履歴が見られなくなる場合もあるため、最低でも年に1〜2回は定期的にダウンロードして、自分のパソコンやクラウドストレージに保管しておくと安心です。

2. 取引所・ウォレット・DeFiを一覧化しておく

複数の国内外取引所、ハードウェアウォレット、スマホウォレット、DeFiプロトコルなどを併用していると、「どこに何がどれくらいあるのか」が自分でも把握しづらくなります。銘柄ごと・サービスごとに、現在の保有状況と過去の取引履歴の保存場所を、一覧表にしておくと、確定申告のときに迷いづらくなります。

3. 損益計算ツールを活用する

すべてを自力で計算することも不可能ではありませんが、取引回数が増えてくると現実的ではなくなります。APIやCSVで各取引所のデータを読み込み、移動平均法などに基づいて自動計算してくれるツールを活用すると、ミスを減らしながら作業時間を短縮できます。

確定申告の流れをイメージしておく

暗号資産の税金は「確定申告」を通じて納付するのが一般的です。特に、給与所得のみで源泉徴収されている会社員の方は、暗号資産で一定以上の利益が出た年には、自分で確定申告を行う必要が出てきます。

ざっくりとした流れは次のとおりです。

  • 1年間(1月1日〜12月31日)の暗号資産取引の損益を集計する
  • 雑所得の金額を計算し、他の所得(給与所得など)と合算する
  • 確定申告書を作成し、税務署に提出する(オンライン申告を含む)
  • 納付期限までに所得税を納める
  • 翌年度に住民税が課税される

暗号資産取引の利益が比較的小さいうちは、課税対象になるかどうかがグレーなケースもありますが、「どの程度の利益が出たら申告が必要か」というラインは、他の所得状況によっても変わります。疑問がある場合は、早めに税務署や専門家に相談して確認しておくと安心です。

税金を味方につけて、長く暗号資産投資を続ける

暗号資産の税金はたしかに複雑で、ルールも今後変化していく可能性があります。しかし、基本的な考え方──「どのタイミングで所得が発生するのか」「どのような計算式で利益が出るのか」「損失はどう扱われるのか」──を押さえておけば、必要以上に恐れる必要はありません。

むしろ、税金の仕組みを理解しておくことで、売買のタイミングやポジションサイズ、取引回数などをコントロールしやすくなります。結果として、手元に残る資金を守りながら、暗号資産市場との付き合い方を長期視点で設計しやすくなるはずです。

この記事をきっかけに、ご自身の取引履歴の整理と、損益計算の仕組み作りに一歩踏み出していただければ幸いです。

なお、税金に関する最終的な判断は、お住まいの地域の税務署や専門家に確認しながら進めてください。ルールは変わる可能性があり、個々の状況によっても最適な対応は異なります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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