ETHステーキング+LRT(二重利回り)戦略:仕組みとリスクの整理

暗号資産

この記事では、イーサリアム(ETH)のステーキングとLRT(Liquidity Re-staking Token)を組み合わせて「二重利回り」を狙う戦略について整理します。難しそうに聞こえますが、仕組みを分解して理解すれば、どの部分でリターンが生まれ、どこにリスクがあるのかが見えてきます。

本記事のゴールは「なんとなく高利回りだから触る」状態から一歩進み、ETHステーキング+LRT戦略を仕組みベースで理解し、自分でリスク・リターンを評価できるようになることです。

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  1. ETHステーキング+LRT戦略の全体像
  2. 基本の整理:ETHステーキング・LST・LRTの違い
    1. ETHステーキングとは何か
    2. LST(Liquid Staking Token)とは
    3. LRT(Liquidity Re-staking Token)とは
  3. 二重利回りの構造を数式イメージで理解する
  4. 具体例:100万円をETHステーキング+LRTに回した場合のイメージ
    1. シナリオ①:ETH価格が30%下落した場合
    2. シナリオ②:ETH価格が変わらなかった場合
    3. シナリオ③:ETH価格が30%上昇した場合
  5. どこでリスクが乗るのか:リスク要因の整理
    1. ① 価格変動リスク(ボラティリティ)
    2. ② ペグ乖離リスク(LST・LRTの価格ズレ)
    3. ③ スマートコントラクトリスク
    4. ④ 流動性リスク
    5. ⑤ 再ステーキング特有のリスク
  6. 個人投資家がこの戦略を使うときの考え方
    1. ポートフォリオ全体の中での位置付け
    2. レバレッジを重ねすぎない
    3. 少額から始めて「動きを見る」
  7. ステップ別フロー:一般化した実行手順
    1. ステップ1:ETHを準備する
    2. ステップ2:ステーキング/LST化する
    3. ステップ3:LRTプロトコルに預け替える
    4. ステップ4:定期的に状況をチェックする
  8. よくある失敗パターンとチェックリスト
    1. 失敗パターン1:利回りだけを見てプロトコルを選ぶ
    2. 失敗パターン2:清算リスクを軽視したレバレッジループ
    3. 失敗パターン3:プロトコルの分散が不十分
  9. まとめ:ETHステーキング+LRT戦略を「理解してから」使う

ETHステーキング+LRT戦略の全体像

まず、ETHステーキングとLRTを組み合わせた二重利回り戦略の大枠をイメージとして押さえておきます。

ざっくり言うと、この戦略は次のような構造になっています。

  • ① ETHをステーキングして、イーサリアムのネットワーク運営に参加する(=ベースのステーキング報酬を得る)
  • ② ステーキングしたポジションをトークン化したLST/LRTを受け取り、それをさらにDeFiプロトコルに預ける
  • ③ その結果、「ステーキング利回り」+「LRT側の追加利回り」という二重のリターンを狙う

つまり、同じETHを元手にしながら、レイヤーを重ねて利回りを積み上げるイメージです。ただし、レイヤーを重ねるほどリスクも複雑になります。ここをきちんと整理せずに「利回りが高いから」と飛びつくと、価格変動やプロトコルリスクで大きく損をする可能性があります。

基本の整理:ETHステーキング・LST・LRTの違い

ETHステーキングとは何か

イーサリアムはPoS(プルーフ・オブ・ステーク)という仕組みで動いており、ETHをネットワークに預けることでバリデータがブロック生成等に参加し、報酬を受け取ります。この「ETHをロックしてネットワーク運営に協力し、その対価として報酬を受け取る仕組み」がステーキングです。

個人が直接バリデータを立てる場合には32ETHが必要ですが、多くの投資家は、少額から参加できるステーキングサービスやLST/LRTプロトコルを使って間接的にステーキングに参加します。

LST(Liquid Staking Token)とは

LSTは、「ステーキングしたETHの証明書」をトークン化したものとイメージすると分かりやすいです。

  • サービス側:ユーザーからETHを集めてバリデータ運営を行う
  • ユーザー側:ETHを預ける代わりに、ステーキングポジションを表すLST(例:stETHのようなトークン)を受け取る
  • LSTは時間とともに価値が増えたり、数量が増えたりする形でステーキング報酬を反映する

ポイントは、LSTを持っていれば、実質的にステーキング報酬を受け取りながら、そのトークンを他のDeFiプロトコルに持ち込めるということです。

LRT(Liquidity Re-staking Token)とは

LRTは、LSTからさらに一歩進んだ概念です。簡単に言うと、

  • ステーキングで得られる「セキュリティ」を、イーサリアム本体だけでなく他のプロトコルにも再利用させる
  • その対価として追加の報酬が発生し、それを投資家に分配する

という仕組みになっています。LRTプロトコルは、ステーキング済みのETHやLSTを担保にし、複数のネットワークやサービスのセキュリティ提供に参加することで追加のリターンを得ようとします。

この結果、投資家の側から見ると、

  • ベース:ETHステーキング利回り
  • 上乗せ:LRTプロトコルからの追加利回り(ポイント・報酬トークン等)

という二重のリターン構造が生まれます。

二重利回りの構造を数式イメージで理解する

二重利回り戦略を理解するために、シンプルなモデルで考えてみます。

ある投資家Aさんが、ETH 1枚をLRTプロトコルに預けたとします。日本円での価格を分かりやすくするため、ここではETH価格を1枚=40万円と仮定します(あくまで計算例です)。

  • ETHステーキング利回り:年率4%(ネットワーク状況により変動)
  • LRT追加利回り:年率3%相当(ポイントや報酬トークンを換算)

このとき、1年間の期待利回りイメージは、

トータル利回り ≒ 4%(ベース)+3%(追加)=7%

となります。元本40万円に対して、1年後には理論上約2.8万円のリターンが乗るイメージです。

もちろん、実際にはETH価格が上下するので、日本円換算の評価額は大きく変動します。利回り計算はあくまでETH建ての話であり、「円建てで損失が出るリスクがある」ことは常に意識しておく必要があります。

具体例:100万円をETHステーキング+LRTに回した場合のイメージ

より直感的にするため、100万円をこの戦略に投じたケースをイメージで整理します。便宜上、計算を簡略化するために以下の前提を置きます。

  • 初期ETH価格:1ETH=40万円
  • 投資額:100万円 → 2.5ETHを購入したと仮定
  • ETH建てのトータル利回り:年率7%(4%+3%)
  • 価格変動シナリオ:1年後のETH価格が「▲30%/変わらず/+30%」の3パターン

1年後のETH数量は、利回り7%により、

2.5ETH × 1.07 = 約2.675ETH

となります。この時点でETH建てでは+7%の増加です。

シナリオ①:ETH価格が30%下落した場合

  • 1年後のETH価格:40万円 × 0.7 = 28万円
  • 保有量:2.675ETH
  • 評価額:2.675ETH × 28万円 ≒ 約74.9万円

このケースでは、利回りでETH枚数は増えていますが、価格下落の影響が大きく、円換算では約25万円のマイナスです。「高利回りでも価格下落には勝てない」という典型的なパターンです。

シナリオ②:ETH価格が変わらなかった場合

  • 1年後のETH価格:40万円
  • 保有量:2.675ETH
  • 評価額:2.675ETH × 40万円 = 107万円

この場合、円建て評価で約7万円のプラス、すなわち年率7%のリターンになっています。価格が横ばいであれば、二重利回り分がそのまま効いてくるイメージです。

シナリオ③:ETH価格が30%上昇した場合

  • 1年後のETH価格:40万円 × 1.3 = 52万円
  • 保有量:2.675ETH
  • 評価額:2.675ETH × 52万円 ≒ 約139.1万円

このケースでは、値上がり益と二重利回りが重なり、円建て評価では約39万円のプラスとなります。上昇相場では、枚数増加と価格上昇が掛け算のように効いてくるため、リターンが大きくなりやすいです。

この3つのシナリオから分かるのは、

  • ETH建てでは「二重利回り」が効いて枚数が増える
  • しかし、円建てでは価格変動が支配的で、下落相場では元本割れも普通に起こる

という点です。したがって、この戦略はあくまでETHというボラティリティの高い資産へのエクスポージャーを前提としていることを忘れてはいけません。

どこでリスクが乗るのか:リスク要因の整理

ETHステーキング+LRT戦略は、リターンの層が増えるのと同時に、リスクの層も増えていきます。主なリスク要因を整理します。

① 価格変動リスク(ボラティリティ)

最も直感的なリスクです。ETH価格は株式や債券に比べてボラティリティが非常に大きく、数十%単位の上下動が日常的に起こります。利回りが年率数%〜10%台であっても、半年で価格が半分になるような局面では、トータルでは大きなマイナスになり得ます。

② ペグ乖離リスク(LST・LRTの価格ズレ)

LSTやLRTは、本来は「1トークン ≒ 1ETH相当」の価値を持つように設計されていますが、市場環境が悪化すると、

  • 売りが集中して一時的に価格が下がる
  • 買い手が薄くなり、流動性が低下する

などの理由で、ETHとのペグ(価格連動)が崩れることがあります。これがペグ乖離リスクです。LRTにレイヤーを重ねるほど、こうした複雑な価格挙動の影響を受けやすくなります。

③ スマートコントラクトリスク

LST/LRTやDeFiプロトコルはスマートコントラクトで動いています。コードにバグがあったり、設計上の穴を突かれると、資産がロックされたり、不正流出が起こるリスクがあります。

監査(Audit)済みかどうか、長期間運用されているかどうか、運営チームの情報開示が十分か、といった点は最低限チェックしておきたいポイントです。

④ 流動性リスク

LRTの規模がまだ小さい場合、売りたいときに十分な買い手がいないことがあります。その結果、

  • スリッページ(想定より不利な価格で約定すること)が大きくなる
  • まとめて売ろうとすると価格を大きく押し下げてしまう

といった状況になりかねません。特に、特定のチェーンやプロトコルに流動性が集中している場合、ネットワークが混雑したタイミングで身動きが取りにくくなることもあります。

⑤ 再ステーキング特有のリスク

LRTは「セキュリティの再利用(re-staking)」という発想に基づいており、複数のプロトコルにセキュリティを提供することで報酬を増やしています。しかし、裏側では、

  • どのプロトコルにどの程度のリスクを取っているのか
  • スラッシング(不正や障害に伴うペナルティ)が発生した場合、どこまで投資家に影響が及ぶのか

といった構造が複雑に絡んでいます。プロトコルの設計思想やリスク共有の仕組みを理解せずに参加すると、想定外の損失を被る可能性があります。

個人投資家がこの戦略を使うときの考え方

では、個人投資家がETHステーキング+LRT戦略を検討する場合、どのようなスタンスで向き合うべきでしょうか。ここでは、いくつかの観点から整理します。

ポートフォリオ全体の中での位置付け

まず、「ポートフォリオ全体のうち、暗号資産をどの程度に抑えるか」を先に決めるのが現実的です。

  • 例:総資産のうち、暗号資産は最大10〜20%まで
  • その中で、ETHステーキング+LRTに割り当てるのはさらにその一部(例:暗号資産枠の半分程度)

このように、まずは上限を決めておくことで、「相場が荒れたときに生活資金や他の投資に影響が出ない範囲」にリスクを閉じ込めることができます。

レバレッジを重ねすぎない

LRTやDeFiの世界では、LST/LRTを担保にさらに借り入れを行い、複数のプロトコルを渡り歩いて利回りを重ねる「ループ戦略」も存在します。しかし、初心者がこれを真似すると、

  • 価格急落時に清算(ロスカット)が連鎖的に発生
  • どこでどの程度のリスクを取っているか把握できなくなる

といった問題が起こりやすくなります。まずは、レバレッジをかけずに、ステーキング+LRTの二層構造までにとどめる方が、全体像を把握しやすくコントロールが効きます。

少額から始めて「動きを見る」

いきなり大きな金額を投入するのではなく、

  • 最初はポートフォリオのごく一部(例:暗号資産枠の一部)だけを割り当てる
  • 数週間〜数ヶ月、利回りや価格変動、LRTの価格推移・流動性を観察する
  • 仕組みに慣れてから、投資額を増やすかどうか判断する

というステップを踏むことで、「想像していたのと違った」というギャップを小さくすることができます。

ステップ別フロー:一般化した実行手順

具体的なプロトコル名はあえて一般化しますが、どのサービスを使う場合でも、おおよそ次のようなステップになります。

ステップ1:ETHを準備する

  • 暗号資産取引所でETHを購入する(国内・海外いずれか)
  • 自己管理ウォレット(例:ブラウザ拡張ウォレット等)を用意し、セキュリティを確保する
  • ETHをウォレットに送金し、ネットワーク手数料(ガス代)もある程度残しておく

ステップ2:ステーキング/LST化する

  • 信頼性や実績のあるステーキングプロトコルを選定する
  • ウォレットを接続し、ETHを預けてLST(ステーキング証明トークン)を受け取る
  • LSTのペグ推移や流動性、利用できるプールの有無を事前に確認しておく

ステップ3:LRTプロトコルに預け替える

  • LRTプロトコルの仕組み(どのネットワークにセキュリティを提供しているか、報酬は何で支払われるか)を確認する
  • LSTやETHをLRTプロトコルにデポジットし、LRTトークンを受け取る
  • 必要に応じて、LRTを流動性プールやファーミングに参加させる

ステップ4:定期的に状況をチェックする

  • ETH価格の動きとポートフォリオ全体の割合をチェックする
  • LRTの価格推移・出来高・取引所上場状況などを確認する
  • プロトコル側からのアップデート(仕様変更・報酬体系の変更・リスク要因の告知など)を追いかける

この「モニタリング」の部分を怠ると、気づかないうちにリスクが積み上がっていることがあります。特に、報酬トークンの相場やポイント制度は、プロジェクトの方針変更によって大きく変動する可能性があるため注意が必要です。

よくある失敗パターンとチェックリスト

ETHステーキング+LRT戦略でありがちな失敗パターンをいくつか挙げ、その予防のためのチェックポイントを整理します。

失敗パターン1:利回りだけを見てプロトコルを選ぶ

「年率20%」「ポイント還元〇〇倍」といった派手な数字に引かれてしまうと、リスク評価が置き去りになりがちです。利回りはあくまで「そのリスクを取る対価」であり、数字が高いほど安全というわけではありません。

チェックポイント:

  • どのようなリスクを取ることで、その利回りが実現しているのか
  • 報酬は何で支払われるのか(ETH、ステーブルコイン、プロジェクト独自トークンなど)
  • その報酬トークンに十分な市場規模・流動性があるか

失敗パターン2:清算リスクを軽視したレバレッジループ

LST/LRTを担保にさらに借り入れを行い、その資金で再度LST/LRTを購入して預ける、というループ構造は、理論上は利回りを上げられますが、価格が急落したときに一気に清算されるリスクを伴います。

チェックポイント:

  • 担保比率や清算ラインを数値で把握しているか
  • 「この価格まで下落したら清算される」というラインを自分で説明できるか
  • その下落幅が、過去のボラティリティから見て現実的に起こり得るかどうか

失敗パターン3:プロトコルの分散が不十分

一つのプロトコルに資産を集中させると、そのプロトコルに何かあったときにポートフォリオ全体が大きく揺らぎます。

チェックポイント:

  • 複数のステーキング/LRTプロトコルに分散しているか
  • チェーンやネットワークも分散されているか
  • 一つのプロトコルに偏りすぎていないか(例:暗号資産枠のうち1つのプロトコルに80%以上集中していないか)

まとめ:ETHステーキング+LRT戦略を「理解してから」使う

ETHステーキング+LRT(二重利回り)戦略は、うまく使えば「ETHを長期保有する前提の中で、利回りを積み上げる手段」として機能します。一方で、

  • ETHそのものの価格ボラティリティ
  • LST/LRTのペグ乖離・流動性リスク
  • スマートコントラクトリスクや再ステーキング特有の構造的リスク

といった複数のリスクが重なるため、「仕組みを理解しないまま高利回りだけを追いかける」のは危険です。

まずは自分のポートフォリオ全体の中で、暗号資産の位置付けと最大許容割合を決め、その中の一部としてETHステーキング+LRTを検討する、という順番が現実的です。そのうえで、少額から試し、プロトコルの挙動やリスク・リターンの感触をつかみながら、自分なりのルールを固めていくことが重要になります。

「なぜこの利回りが生まれているのか」「どのリスクを取る対価なのか」を自分の言葉で説明できるようになれば、ETHステーキング+LRT戦略は、暗号資産ポートフォリオの中で一つの有力なオプションとなり得ます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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