Hyperliquid徹底解説――フルオンチェーン板取引型Perp DEXの仕組みと実践戦略

暗号資産

本記事は、フルオンチェーンの板取引(オーダーブック)を採用するパーペチュアルDEX「Hyperliquid」を対象に、仕組み・リスク・意思決定フロー・再現可能な戦略テンプレをまとめた長文の実践ガイドです。中央集権取引所(CEX)とほぼ同等の約定体験を提供しつつ、自己保管・透明性・API/自動化の自由度を維持できる点が最大の魅力です。ここでは初心者でも実行可能なレベルで、余計な専門用語に偏らず、勝ち筋に直結する具体論を積み上げます。

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1. Hyperliquidの全体像と強み

Hyperliquidは独自のレイヤー1上で、注文発注・キャンセル・約定・清算までをオンチェーンで処理する設計が特徴です。AMM型DEXと異なり、価格はプールではなく板(指値の集合)で形成されます。結果として、スプレッドの狭さ・価格発見の速さ・裁量/アルゴの両立というCEX的な特性を持ちながら、鍵の自己保管やオンチェーン検証可能性を確保します。

実務的には、(1)手数料とスリッページの最小化、(2)正しい「マーク価格(清算判定に使う価格)」の理解、(3)資金調達率(Funding)の読み方、この3点を押さえれば負けにくい基盤ができます。

2. 口座・担保・建玉の基本

2.1 ウォレットと担保

ウォレットを接続し、USD建てステーブル資産(例:USDC)を担保に入れて取引します。担保は口座全体の耐久力を規定し、クロスマージンではポジション間で共有されます。初心者はまず1〜2銘柄に集中し、担保を分散しすぎないことが肝要です。

2.2 証拠金・レバレッジ

レバレッジは「許容量」ではなくリスク調整の手段です。推奨は口座資産の1%リスク/トレードを上限に、ストップ幅から建玉サイズを逆算する方式(後述)。見かけの倍率ではなく、損切りまでに失う最大額を一定に統制します。

3. 価格・清算・Fundingの仕組み

3.1 インデックス価格とマーク価格

清算やFunding計算の基準になるのが「マーク価格」です。通常は外部現物指数や複数市場の加重平均をベースに算出され、短期的な板の異常値からポジションが不当に清算されるのを防ぎます。従って、板のラスト価格だけを見て損切り位置を決めるのは危険で、マーク価格基準で余裕を持たせるのが鉄則です。

3.2 資金調達率(Funding)

Fundingは、先物価格と現物指数の乖離を埋めるためにロング⇄ショート間で授受される金利のようなものです。正のFundingはロングが支払い、負のFundingはショートが支払います。トレードが横ばいでもFundingの積み重ねで損益が動くため、エントリー前に必ず8時間・24時間の累積負担を見積もっておきます。

3.3 清算の考え方

清算は証拠金が維持証拠金を下回った瞬間に進行します。清算価格はマーク価格で決まり、「どこまで逆行したら清算か」を事前に把握して建玉を縮小するのが安全運用の第一歩です。

4. 手数料・スリッページを最小化する

Hyperliquidは板取引なので、指値(Maker)成行/成行同等(Taker)でコストが異なります。初心者は約定優先でTaker連打になりがちですが、指値での入場・部分約定の許容・分割クローズを徹底するだけでコストは目に見えて改善します。板の厚み(Depth)を見て、自分の注文が価格に与える影響=市場インパクトを常に意識しましょう。

5. 再現性の高い3つの基本戦略

5.1 Fundingバイアス・リバーション(初級〜中級)

狙いは過度に偏ったFundingが中立に戻る過程です。仮に直近24時間で+0.03%/8hが3本続き、現物指数との乖離が拡大している局面では、ショートのスイング回帰が候補になります。条件は、(A)出来高の減速、(B)上位足のRSI等での過熱、(C)直近高値へのタイトなストップ。Fundingの反転確認で利確を段階化。

5.2 ブレイクアウト+板読み(初級)

明確なレンジ上限/下限と事前に蓄積された出来高があるとき、抜けに同調するシンプルな順張りです。必須は「抜け後の押し目/戻り」での再エントリーと、板の厚みが薄くなる瞬間を逃さないこと。成行で飛び乗らず、薄くなった価格帯へ小分け指値を置くと滑りを抑えられます。

5.3 相関・ペアの乖離トレード(中級)

BTC/ETHや主要L1同士が強相関のとき、一方だけがFunding高止まり+価格先行で過熱したら、強い側をショート・弱い側をロングで乖離の収束を狙います。両建てにより方向リスクを抑え、Fundingのネット負担も縮小できます。

6. 建玉サイズの決め方(数式で最短化)

口座資産をE、1回の許容リスクをr、エントリー価格をPin、損切り価格をPslとし、線形USDC建て契約の想定で、数量Qは次式で決めます。

Q = (E × r) / |P_in − P_sl|

例:E=5,000USDT、r=1% (=50USDT)、BTC-PERPを 68,000→67,400で損切りなら、Q = 50 / 600 ≈ 0.0833 BTC。このQなら、逆行しても損失は約50USDTで着地します。レバレッジ表記は気にせず、損切り距離から逆算するのが正解です。

7. 具体例:Fundingコストを織り込んだトレード設計

前提:Fundingが+0.02%/8hで推移。保有想定24時間(3本)ならコストはおよそ0.06%(年率換算ではありません)。先の例のQ=0.0833BTC、価格68,000USDなら名目建玉は約5,666USD。Funding負担は約5,666 × 0.0006 ≈ 3.4 USD「値幅>手数料+Funding」の不等式が満たされるかを事前に判定します。

8. 失敗しがちなポイントと回避策

  • 成行で飛び乗る:板の薄さに気づかず不必要な滑りを招く。→ 抜け後の押し目/戻りを待ち、指値を分割。
  • マーク価格を見ない:清算価格の誤認。→ プラットフォームの清算計算ツールで確認し、清算の2倍手前に手動損切りを置く。
  • Fundingを無視:長時間の保有で想定外のドローダウン。→ 8h×本数で累積計算、負担が大きい側は短期化。
  • サイズ過大:勝率が良くても破産確率が跳ね上がる。→ 1%ルール厳守、連敗時はサイズを自動で0.7倍に落とす。

9. 手順テンプレ(チェックリスト)

  1. 市場選定:出来高と板の厚みが十分な銘柄に限定。
  2. 環境認識:上位足のトレンド・レンジ、重要高安、出来高の節目を特定。
  3. Funding確認:直近の値と方向(ロング負担/ショート負担)を把握。
  4. シナリオ作成:ブレイク/フェイク/回帰の3分岐で事前計画。
  5. サイズ決定:Q = (E×r)/|P_in−P_sl|で数量を確定。
  6. 発注:指値分割(例:40%・35%・25%)。
  7. 利確:リスクリワード1:1到達で半分利食い、残りはトレーリング。
  8. 撤退:シナリオ無効で即時撤退、同方向の再エントリーは2回まで。

10. 自動化・API運用の導入メモ

板型DEXはアルゴと相性が良好です。板の厚み・約定フロー・短期出来高などのミクロ構造シグナルを組み合わせ、指値の分割・キャンセル置換(リプレース)を機械的に行うと滑りを抑えられます。まずは手動でルール化→ログ収集→半自動→全自動の順で段階的に進めます。

11. リスクと限界

オンチェーン取引は透明性が高い反面、ネットワーク混雑やRPC障害の影響をゼロにはできません。緊急時のクローズ用に小さめの成行許容量を残す、過度なレバレッジを避ける担保を厚めに保つことで耐性が上がります。加えて、単一銘柄に偏らない・イベント前にサイズを落とすなどの基本動作を徹底しましょう。

12. まとめ

Hyperliquidは、CEX級の約定感とDeFiの自己保管性を両立する有望なPerp DEXです。勝ち筋は難解ではありません。「マーク価格」「Funding」「サイズ逆算」の3本柱を手順化し、板読みと分割発注でコストを詰める。これだけで、初心者でも「負けにくい」状態に到達できます。あとは勝ちパターンの再現回数を増やし、ログから定量的に改善するだけです。

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