結論先出し:Lighterは、Ethereum基盤のZKロールアップ上で動作するオーダーブック型のパーペチュアルDEXです。標準アカウントの売買手数料が0で、1時間ごとの資金調達(Funding)、検証可能なマッチング/清算、保険基金を兼ねるLLP(Lighter Liquidity Pool)を柱にして、CEX並みのレイテンシと公平性を志向します。この記事は“まずは安全に触って勝ち筋を作る”ための実務的プレイブックです。
なぜLighterか:市場環境と立ち位置
Perp DEXは2025年に入ってから市場規模が急拡大し、HyperliquidやAsterと並んでLighterが台頭しました。Lighterの差別化ポイントは、(1)ZKで検証可能な順序一致・清算、(2)標準アカウント手数料ゼロ、(3)LLPによる流動性・保険基金設計にあります。特に“検証可能な執行”は、価格時間優先の順序が暗号学的に担保されるため、フロントランや恣意的なキャンセルへの疑念を下げ、初心者でも「出した注文がどう扱われたか」を追跡しやすいのが利点です。
Lighterの技術的コア:ZKロールアップ × 検証可能なマッチング
Lighterはアプリ特化型のEthereum L2として、オーダーのマッチングと清算をZK証明で検証します。これは「価格時間優先(price-time priority)」を含む交換ルールが、後から第三者により検算できることを意味します。結果として、高頻度の板寄せでも整合性と公平性が担保される構造になります。さらに、各約定後にはリスクチェックが走り、健全性(ヘルス)が悪化する注文は自動キャンセルされます。これにより、約定連鎖で口座が一気に不健全化する“事故”を抑制します。
口座タイプと手数料設計(最重要KPI)
- 標準アカウント(デフォルト):メーカー/テイカーとも手数料0。実行レイテンシはリテール向けの標準設定。
- プレミアム(任意選択):HFTやMM向けに低レイテンシ・高レート制限。メーカー0.002%、テイカー0.02%の手数料が発生。
“ゼロ手数料”は小口の積み重ね戦略に強烈な追い風です。特にスキャルピングや、成行を混ぜる執行最適化では、フリクションの小ささが勝率×回転率の改善に直結します。なお、プレミアムは板提供やAPI限度、微妙なレイテンシ優位が価値になるタイプの運用で検討します。
清算エンジンとLLP(保険基金兼流動性)
清算はアカウントの健全性が維持できない水準まで悪化すると発動します。清算約定が指標価格(ゼロ価格)より良ければ、最大1%の清算手数料がLLPへ送られ、保険原資の蓄積に回ります。LLPは板の裏側で約定の受け手や清算の最後の受け手を担う公共プールで、市場平時は利回り、ストレス時は保険という二面性を持ちます(利回りは変動し、保証されません)。
資金調達(Funding)と契約仕様
資金調達は1時間ごとに発生します。価格が先物超過(コンタンゴ)ならロングが支払い、逆ザヤ(バックワーデーション)ならショートが支払います。主な市場の仕様(例):BTC/ETH 最大50x、SOL 15x、DOGE/PEPE 8x。初回は10x以下から入り、アセット固有のMMR(維持証拠金率)に慣れることが重要です。
オンボーディング手順(初回15分の流れ)
- Lighter公式アプリにアクセスし、Ethereum対応ウォレットを接続。
- ポートフォリオから入金(USDCなど)を実施。入出金やブリッジ手段は公式UIに従うのが安全です。
- 必要に応じて口座タイプ(標準/プレミアム)をポートフォリオ画面で切替。
- マーケット一覧から対象銘柄を選び、板厚・スプレッド・資金調達方向を確認。
- 最初は小サイズの指値で板感触を掴み、スリッページと出来高の相関をメモ。
最初の1週間:勝ち筋を作るミクロ戦術
(A)資金調達キャリーの基本
Fundingは1時間ごとに転がるため、方向性が明確な時間帯の逆張りや、イベント前後の一時的な過熱でのショートカバー/ロングカバーを狙うと、手数料ゼロの恩恵で期待値が改善します。原則は「建玉≦当日想定ボラ × 耐えられる損失」。資金調達の取りに行きすぎは地雷です。
(B)板の“呼吸”に合わせる
標準口座のレイテンシでも、イベント1〜3分前のスプレッド拡大・出来高の急増は判別可能です。成行の混ぜ方と浅い指値の引き付けを事前にルール化し、「滑っても勝率が落ちにくい」執行フローをテンプレ化します。ゼロ手数料により、薄利撤退がしやすいのが実用的メリットです。
(C)連敗制御とデルタ中立
連敗は必ず起こります。“連敗n回でサイズ半減”のような機械的ルールを導入し、日次ドローダウン閾値で強制クールダウン。方向の自信が薄い日の昼間は、スプレッド回収×資金調達受けの軽いデルタ中立を作るのも手です。
リスク管理:Lighter特有の注意点
- 清算水準の可視化:維持証拠金率(MMR)と板厚を同時に見て、「清算までの距離 ÷ 1時間想定ボラ」が2未満なら危険域。
- 相関の罠:多銘柄建てでも、リスクファクターはBTC/ETH主導で同時に噴く/沈む。同方向の玉を集めない設計が大事。
- イベントカレンダー:CPI・FOMC・雇用統計は板が極端に薄くなりがち。スリッページ上振れを想定してサイズを落とす。
- UIより約定履歴:検証可能なマッチングの強みを活かし、自分の注文がどう執行されたかを事後確認して手法を更新。
具体例:ETHの「資金調達ミーンリバート」短期戦略
狙い:Fundingが+0.05%/hを超えて持続する局面で、短期の逆張りショートを小さく刻む。
ルール:
1) Fundingが連続2回(2時間)正で、かつ板の成行買い比率が低下し始めたら、ミニサイズでショート。
2) 指値優先。滑ってもOKの小成行を10〜20%混ぜる。
3) 損切りは当日想定ボラの0.6倍。利確は0.3〜0.5倍で分割。
4) 翌時間のFundingが急低下・負転したらフラット。
根拠:手数料ゼロにより薄利複利の許容幅が広く、損小利小の回転が成り立ちやすい。
API・自動化の要点
プレミアム口座では低レイテンシのAPI/レートリミット優遇があり、ボット実装の再現性が上がります。とはいえ、標準口座でもゼロ手数料の優位が大きいため、まずは手動+軽い半自動(執行だけAPI)から始め、勝てる日中パターンを抽出して徐々に自動化へ進むのが合理的です。
チェックリスト(取引前/取引中/取引後)
取引前
- 当日の主要イベント(CPI/FOMCなど)と発表時刻を確認。
- 対象銘柄のFunding方向と直近3時間の推移を確認。
- 板厚・スプレッド・成行比率をメモし、滑っても負けにくい執行を決める。
取引中
- 建玉サイズは想定ボラに比例させ、分割エントリー&分割エグジット。
- イベント直前はサイズを半減、約定ログを残す。
取引後
- 約定履歴とPnLを振り返り、勝てた値幅と負けた滑りを分解。
- 連敗ルールに従って翌営業日の最大サイズを自動調整。
よくある質問
Q. 口座タイプはどこで変えられる?
A. ポートフォリオ画面に切替項目があります。標準は手数料ゼロ、プレミアムは超低遅延とAPI優遇が得られます。
Q. LLPの利回りは固定?
A. 変動です。市場の状況やポイント設計に依存し、将来が保証されるものではありません。
Q. Fundingは何時間ごと?
A. 既存市場は原則1時間ごとに精算されます(新設市場で異なる設定になり得ます)。


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