OCO注文の完全ガイド:暗号資産で『利益確定と損切り』を同時に設計する方法

暗号資産
本稿は、暗号資産取引で用いられるOCO注文(One Cancels the Other)を、定義・設計思想・手順・数値例・戦略別の使い分け・リスク制御・自動化のヒントまで具体的に解説します。

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OCO注文とは何か

OCO注文は、2つの条件付き注文を同時に発注し、いずれか一方が約定した時点でもう一方を自動的にキャンセルする仕組みです。典型的には、利確用の指値損切り用の逆指値(ストップ)を一組として発注します。こうすることで、価格がどちらに動いても「利益確定」または「損失限定」のどちらかを自動執行できます。

OCOは「収益の非対称性」を整えるツールです。人間は含み益を早く確定し、含み損を引き延ばしがちですが、OCOは事前に出口を決めて機械的に処理することで、メンタルバイアスを抑えます。

なぜOCOが有効か:期待値とR倍数の観点

トレードの期待値は、勝率 × 平均利益 − (1 − 勝率) × 平均損失で表せます。OCOで事前にリワード:リスク比(R:R)を固定し、例えば+2R:−1Rのように設計できれば、勝率が50%を割っても戦える構造となります。

重要なのは、損切り幅(リスク)を先に決めることです。OCOは損切りの自動化を前提に、利確も同時に置くことで「伸ばす/切る」のバランスを保ちます。

基本の注文構成

利確側(指値)

目標価格で自動的に利益を確定する指値注文です。直近高値・レジスタンス・フィボナッチ拡張・移動平均の乖離などから合理的に設定します。

損切り側(逆指値)

想定と逆行したときに執行される逆指値(ストップ)です。直近安値割れ、サポート喪失、ATR×係数などを根拠に設定します。逆指値は成行(ストップ)指値(ストップリミット)の2種があり、板薄・急変動時の抜けリスクを考慮して選択します。

BTC/JPYの数値例:OCOを具体値で設計する

前提:BTC/JPYを9,500,000円でロングしたとします。ボラティリティと直近の値動きから、利確 10,200,000円損切り 9,320,000円に設定します。1BTCでの想定では、

  • 想定利益:700,000円(= 10,200,000 − 9,500,000)
  • 想定損失:180,000円(= 9,500,000 − 9,320,000)
  • リワード:リスク ≈ 3.89:1(約+3.9R:−1R)

手数料・スリッページを保守的に差し引き、実効Rを3.5と見積もるなど、「控えめ評価」で設計するのが実務的です。ポジションサイズは口座残高に対して1トレードの損失上限を1%〜2%に制御します。

板情報・スリッページ・スプレッドを織り込む

OCOは価格に到達すれば執行されますが、約定価格は板厚とスプレッド次第です。板が薄い時間帯や、ファンディング/仲値/経済指標の前後は、逆指値→成行化で大きく滑ることがあります。指値ストップ(ストップリミット)は滑りに強い一方、板が飛ぶと置き去りにされるリスクがあります。

改善策:①板厚の確認(10〜50ティック先までの出来高)、②スプレッド平均と最大値の把握③イベントカレンダーの確認。板の厚い価格帯に利確指値を置く、小刻みに分割決済するなどの工夫も有効です。

戦略別の使い分け

レンジトレード

明確なレンジ上限/下限がある場合、上限で利確指値下限の少し内側で逆指値。ダマシブレイクに備え、エントリー後に即OCOを置くことが肝要です。

トレンドフォロー

押し目買い・戻り売りにOCOを適用。損切りは直近スイングの外側、利確は次の節目/ATR×nで段階利確を組むと伸ばしやすい。半分利確+残りトレールのハイブリッドも有効。

ニューストレード

ボラ急拡大時は滑りやすいため、ストップはやや広めに取り、数量を減らしてリスク一定にします。事前にOCOを準備し、指標発表前に発注・確認を終える運用が安全です。

永続先物・レバレッジでのOCO

永続先物では、レバレッジ×ボラにより実効リスクが跳ね上がります。資金調達(Funding)や乖離、清算価格の近さも考慮が必要です。OCOは清算防止のためにも有効ですが、強制ロスカットの前に自発的損切りを必ず置きます。

推奨運用:

  • 1トレードの許容損失を口座残高の1%以内に制限
  • 清算価格までの距離が近い場合はサイズを下げる
  • 資金調達のコストを利確Rに織り込む

トレーリングストップとOCOの違い・併用

トレーリングストップは、価格が有利に進むと損切りラインを自動追従させる仕組み。OCOは「固定の利確+固定の損切り」が基本ですが、利確側を段階利確に変更し、損切り側をトレール化することで、トレンドの延伸を取りに行けます。

OCO設計テンプレート(実務フロー)

  1. 環境認識:トレンド/レンジ、出来高、イベント。
  2. 根拠抽出:サポレジ、移動平均、RSIダイバージェンス、ATR。
  3. 損切り幅を先に決定:直近安値/高値外側、ATR×n。
  4. 利確水準:次の節目、R:R>=2:1を目安に。
  5. サイズ決定:許容損失額 ÷ 損切り幅 = 枚数。
  6. OCO発注:エントリー直後に利確指値と逆指値を同時に。
  7. 執行監視:板厚・スプレッド・イベントで微調整。
  8. 記録:R倍数・滑り・根拠の妥当性を日誌化。

よくある失敗と回避策

  • 損切りが近すぎる:ノイズで刈られる。ATRや直近ボラで再設計。
  • 指値が板薄に刺さらない:分割利確、流動性の厚い価格帯に置く。
  • イベント時に大滑り:ストップは成行にしてサイズを縮小。
  • OCO未設置:感情に流される元。エントリー直後に必ず置く。

ケーススタディ

① レンジ上限からの戻り売り

ETH/USDTで、上限3,400の手前でショート。利確は3,180、損切りは3,460。OCOで+220/−60の設計(約3.7R)。板薄時間帯は数量を半分に圧縮。

② トレンド継続の押し目買い

BTC/JPYの移動平均上昇トレンド。押し目9,480,000でロング、利確10,100,000、損切り9,360,000(+620,000/−120,000)。一部は10,100,000で利確、残りはトレール。

③ 指標イベント跨ぎ

重要指標直前にサイズを1/3に縮小、OCOのストップは成行に。想定外のギャップ発生でも口座の損害を限定。

用語の整理

逆指値=価格到達で「成行化」または「指値化」。ストップリミット=発火トリガーと実行指値の二段設定。OCO=二つの(利確/損切り)を同期させる束。

FAQ:取引所ごとの仕様差は?

取引所により、OCOが「ネイティブ実装」か「条件付注文の組み合わせ」かが異なります。板の奥行き表示、最小価格刻み、逆指値の成行/指値選択、発注上限、部分約定時の残玉扱いなど、仕様差を事前確認してください。

OCOは「勝ちを伸ばし負けを限定する」ための型です。損切り幅から逆算してサイズと利確幅を決め、記録と検証で精度を高めてください。

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