Orderly(オーダリー)完全攻略:オムニチェーンCLOBで戦うパーペチュアル取引の設計図

暗号資産

本稿ではCoinMarketCapのDEX(デリバティブ)ランキング掲載プロジェクトの中から、Orderly(オーダリー)を取り上げます。Orderlyはフロントエンド単体の取引所ではなく、開発者や取引所が上に乗せて使うオムニチェーンCLOB(中央注文板)インフラです。ユーザー視点では、Arbitrum・Polygonなど複数チェーンのフロントエンド(例:WOOFi ProやQuickSwapのPerps)を通じて、チェーンを跨いだ共有流動性にアクセスできるのが最大の特徴です。本記事は具体的な執行・リスク管理・戦術に踏み込み、「明日から同じ手順で再現できる」レベルで解説します。

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Orderlyのコア:なぜ「オムニチェーンCLOB」が武器になるのか

一般的なAMM型Perpと違い、Orderlyは板(Orderbook)で約定させるCLOB型です。CLOBは価格発見の透明性、指値の精度、スプレッド縮小に強みがあり、特に大口・アルゴ系の執行品質を引き上げます。さらにOrderlyは複数チェーンに跨る共有板を掲げ、「Polygonから発注してArbitrumのトレーダーと同じ流動性を叩く」といった体験を狙っています。これにより、流動性分散による板の薄さを軽減し、スリッページと価格インパクトの低減が期待できます。

証拠金とモード:USDC建て・クロスマージンが前提

OrderlyのPerpはUSDC担保・USDC建てで設計されています。モードは基本がクロスマージン。口座全体のUSDC残高を共有して証拠金比率(Equity / IM)を算出するため、ポジション間のヘッジが効きやすい一方、一部の含み損が口座全体を巻き込む点に注意が必要です。レバレッジは銘柄ごとに上限が設定され、一般にメジャー通貨ほど高倍率が許容されやすい設計です。

手数料と隠れコスト:Maker/Takerに加え、資金調達・スプレッド・価格インパクト

取引コストは大別して手数料(Maker/Taker)資金調達(Funding)スプレッド価格インパクトの4要素です。Makerは指値で流動性を供給する発注、Takerは成行・指値即時約定により流動性を消費する発注です。加えてPerp特有のFundingが一定間隔で発生し、プレミアム(Perpと現物指数の乖離)に基づいて多くの場合は多い側→少ない側へ支払いが行われます。裁量・システムを問わず、期待損益=シグナル優位性 −(手数料+Funding+スリッページ)で管理するのが基本です。

清算メカニズム:板で投げない「移転型」清算

Orderlyは分散型の清算を採用し、清算時にポジションを割引価格で清算人へ移転する方式をとります。板へ機械的に成行を投げる方式に比べ、連鎖清算の誘発リスクとマーケットインパクトを抑制する狙いがあります。つまり、極端な連鎖下落で板が崩れるシナリオでも、清算そのものが板を壊しにくい仕様になっています。

価格参照とFunding:インパクト見積りを使った公正なマーク

Fundingは主にプレミアム(= Perp価格 − 指数価格)から計算され、Orderlyは指標となるベスト気配だけではなく、インパクト・ビッド/アスク(一定数量を約定させた場合の実効気配)を用いて乖離を評価します。これにより、表面上の薄い気配でFundingが歪む現象を減らし、公平性を高めます。初心者にとっては、「なぜFundingがこの水準なのか」の納得感が持てるはずです。

実践:ゼロからのセットアップ(フロントエンド例)

  1. ウォレット接続:MetaMask等を用意し、対応チェーン(ArbitrumやPolygonなど)に切替。
  2. USDCの用意:対応チェーン上のUSDC残高を用意。Orderly系フロントエンドはオムニチェーン設計のため、原則ブリッジ不要で共有板にアクセスできます。
  3. 入金(デポジット):フロントエンドの「入金」からUSDCを証拠金口座へ移す。
  4. 銘柄選択と板確認:スプレッド、板の厚み、資金調達率(Funding)を確認。
  5. 発注:基本は指値主体(Maker)でコストを抑え、板を食う必要があるときのみTaker
  6. リスク管理:口座レバレッジ、証拠金比率、想定清算価格を常時モニター。

稼ぐための戦術①:資金調達キャリー(現物ヘッジ/クロス取引)

狙い:Fundingが正に偏る(例:ロングがショートへ支払う)局面で、ショートPerp+現物ロングを組み、価格変動を相殺しながらFundingを受け取る戦術です。

手順

  1. 対象銘柄のFunding見通しを確認(直近のプレミアム、出来高、板厚)。
  2. 同額のPerpショート現物ロングを構築(USDC担保なので調達はUSDC中心)。
  3. 想定コスト(手数料・スプレッド・資金借入コスト等)を差し引いた後のネット受取がプラスになるか検証。
  4. Fundingの転換(マイナス→プラス)に備えた手仕舞いルールを用意。

数値例

ETHのFunding見通しが+0.01%/h、24時間平均で+0.24%/dと仮定。名目50,000 USDCでショート、現物ロングを同額構築。日次の受取見込みは約120 USDC。一方で往復手数料・スプレッド・借入コスト・スリッページ合計が70 USDCなら、ネット+50 USDC/d。Fundingがフラット化する兆候(プレミアム低下、出来高減)を検知したら縮小またはクローズ。

稼ぐための戦術②:板主導の発注最適化(TCAの超入門)

狙い:シグナルの優位性が小さい初心者ほど、執行コストの最適化が勝率を決めます。ここでは簡易TCA(取引コスト分析)の手順を紹介します。

  1. 対象銘柄のティックサイズ平均スプレッド板厚(±0.5%)を記録。
  2. 同サイズのテスト注文を少量で試し、インパクト(約定後の滑り)を推定。
  3. シグナルの期待値が小さい場合は、指値で短時間に分割(時間加重・ボリューム加重など)。
  4. 板が薄い時間帯(深夜・早朝など)はポジションサイズを縮小

この「地味な最適化」だけで、短期戦術の損益は大きく改善します。

稼ぐための戦術③:オムニチェーン裁定(クロスDEX資金調達差)

狙い:Orderly系フロントエンドと他Perp DEX(例:GMX、dYdX等)で同一銘柄のFunding差が広がったとき、低Funding側でロング/高Funding側でショートしてネット受取を確保します。Orderlyの共有板は板厚をもたらし、スプレッド縮小で裁定コストを抑える効果が期待できます。

注意点

  • 借入・ブリッジの手間と費用、建玉限度、レバレッジ制限を事前に確認。
  • 指数計算やFundingの仕様差(間隔・上限・計算式)で想定と乖離することがある。

リスク管理:口座レバレッジと清算距離の可視化

クロスマージンでは、口座レバレッジ=総建玉名目 / 口座資産が最重要KPIです。これをまず3〜5倍など保守的に制御し、維持証拠金(MM)から算出される清算距離(想定清算価格までの距離)を事前に把握します。含み損が拡大した場合は、段階的に削減し、一撃の強制清算を回避します。

失敗パターン集

  • Funding逆転を軽視:プレミアム縮小で受取が消え、コスト負け。
  • 板薄時間帯の成行連打:想定外のスリッページで損失拡大。
  • クロスの巻き込み:小さなミスが口座全体に波及。
  • 清算ディスカウントの誤解:移転型清算でも、過剰レバレッジは破綻リスク。

チェックリスト(エントリー前)

  1. Funding見通し(直近プレミアム、出来高、板厚)をメモ。
  2. 予想コスト(手数料+スプレッド+滑り)を試算。
  3. 口座レバレッジと清算距離を確認。
  4. エグジット条件(価格・時間・Funding転換)を事前定義。

まとめ:Orderlyを使う価値

Orderlyはオムニチェーン・共有CLOBという明確な差別化で、板の厚みと執行品質を取りに行く設計です。クロスマージン・公正なFunding算定・移転型清算といった仕組みは、初心者がつまずきやすい箇所の痛みを減らす方向に最適化されています。本稿の戦術(資金調達キャリー/板主導のTCA/クロスDEX裁定)を、低レバレッジ・小サイズ・指値中心で繰り返し、まずはコスト最小化再現性を体に刻むことから始めてください。

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