はじめに:現物不足は価格問題ではなく構造問題である
銀の現物不足が進行しているという指摘は、単なる一時的な需給逼迫ではありません。重要なのは、現物不足が表面化した瞬間に、これまで信頼されてきた金融商品の前提条件が崩れる点にあります。特に金銀ETFは「いつでも現物と交換できる」という暗黙の信認の上に成り立っています。この前提が揺らいだとき、市場は価格変動ではなく、資本逃避という非連続な動きを起こします。
なぜ銀は最初に問題化しやすいのか
銀は金と比較して市場規模が小さく、産業用途の比率が極めて高い金属です。太陽光パネル、電子部品、医療用途など、景気や政策に左右されにくい需要が存在します。一方で供給は多くが他金属の副産物であり、価格上昇が即座に増産に結びつきません。この構造により、銀は「先に枯れる金属」になりやすい性質を持っています。
金銀ETFという仕組みの脆弱性
金銀ETFは表面的には流動性が高く、個人投資家にとって扱いやすい商品です。しかし本質的には、カストディ、受渡、在庫管理といった複雑な仕組みに依存しています。現物需要が集中すると、ETFの新規設定停止、償還制限、NAVと市場価格の乖離といった問題が連鎖的に発生します。これは価格の問題ではなく、信認の問題です。
フェーズ1:不安の初期段階における価格推移
市場に違和感が生じ始めた段階では、投資家はまず金銀ETFへ資金を移します。価格は緩やかに上昇し、典型的なリスクオフ相場の様相を呈します。この段階ではビットコインは主役ではなく、先回りする一部の資金が静かに流入する程度にとどまります。
フェーズ2:ETFと現物の乖離が可視化される局面
次の段階では、現物銀に高いプレミアムが付き始めます。しかし実際には市場に玉がなく、買いたくても買えない状態が生まれます。一方、ETF価格は名目上存在するものの、現物との連動性が疑問視され、価格発見機能が崩れ始めます。この時点で市場は構造的な不信に入ります。
フェーズ3:現物不足が一般投資家に認識される瞬間
現物不足が広く認知されると、金銀ETFでは新規設定停止や償還制限が話題となります。現物市場では価格が急騰しますが、流動性はほぼ消失します。ここで金銀は「価値は高いが実際には使えない資産」へと変質します。
なぜここでビットコインに資金が殺到するのか
この局面で投資家が求めるのは理論的な安全性ではなく、実装された逃避手段です。ビットコインは取引所で即座に現物を取得でき、自己保管が可能で、国境を越えた移転も容易です。保管や輸送といった物理的制約が存在しない点が、金銀との決定的な違いです。
ビットコイン価格の動き方:流動性吸収型の上昇
この段階でのビットコイン価格上昇は、人気や期待によるものではありません。逃避資金が集中し、板が薄くなることで生じる流動性吸収型の上昇です。そのため短期間で非連続的な価格ジャンプが発生しやすく、ボラティリティは急激に拡大します。
フェーズ4:資本逃避の最終段階
最終段階では、金銀は高値圏にありながらも主な保有者は中央銀行や超富裕層に限定されます。一方でビットコインは「デジタル現物の安全資産」としての地位を確立し、押し目の浅い高ボラティリティ相場を形成します。
金・銀・ビットコインの価格上昇の質の違い
金銀の上昇は乖離と流動性喪失を伴う歪んだものです。価格は上がっても投資家は満足できません。一方、ビットコインの上昇は資本逃避が完結する実務的な動きであり、結果としてアウトパフォームしやすい構造を持ちます。
結論:これは投機ではなく資本行動である
銀の現物不足、金銀ETFの信認低下、そしてビットコインへの資本集中は、単独の事象ではなく一連の連鎖です。市場は常に「正しい資産」ではなく「今すぐ使える資産」を選びます。この文脈において、ビットコインは最終的な受け皿となる可能性が極めて高いと言えます。

コメント