Vertex徹底攻略:パーペチュアル取引で利益を残すための設計・運用・実装ガイド

暗号資産

この記事では、Arbitrum上のパーペチュアル取引所「Vertex」を題材に、損失を抑えつつ利益を積み上げるための設計・運用・実装までを徹底的に解説します。派手な“必勝法”ではなく、取引コスト・清算リスク・変動金利(ファンディング)の3点を体系的に管理し、期待値をプラスに保つための現実的な方法に集中します。読了後には、裁量・半自動のどちらでもすぐに回せるチェックリストと手順が手元に残るはずです。

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Vertexとは何か(要点)

Vertexは、オンチェーンの注文板(オーダーブック)と高速約定の仕組みを組み合わせたパーペチュアルDEXです。中央集権型取引所(CEX)に近い操作感と、オンチェーンの透明性を併せ持つ設計が特長です。トレーダー視点で最も重要なのは次の3点です。

取引コストの低減余地… メイカー手数料の優遇、板流動性の厚い時間帯の選択、価格インパクトの回避で期待値を押し上げられます。
資金調達率(Funding)の偏り… 強いトレンド時に偏りが発生しやすく、デルタ中立の回収戦略で利鞘を得られます。
清算メカニズムの理解… 保証金、維持証拠金、ADL(自動デレバ)を正しく理解すれば、“飛ぶ”リスクを統計的に下げられます。

この記事のゴール

Vertexにおけるパーペチュアル取引で、(A)損を大きくしない、(B)小さな優位性を積み上げるという2つの軸を具体的に実装することです。ここでは派手なレバレッジの話ではなく、メイカー回転×資金調達率の取り込み×清算距離の一定化に集中します。

口座設計と資金配分

クロスかアイソレか

口座全体で証拠金を共有するクロスは、維持率の平準化に向く一方で、損失の伝播経路が増えます。初期はアイソレでスタートし、手法ごとに損益を隔離する方が管理が容易です。週次で手法の勝敗を評価でき、スケールの判断が明確になります。

資金3分割の原則

①現物/キャッシュ(ヘッジや資金調達率の逆サイド用)、②メイカー回転用の余裕資金、③イベント・裁量用の枠。どれかでドローダウンが出ても他の枠が死なないよう、財布を分けます。

取引コストの分解:手数料・スプレッド・インパクト

パーペチュアルの損益は、価格方向だけでなくコストの総和に大きく左右されます。小さな改善でも日次の期待値を押し上げます。

メイカー/テイカーの設計

成行や広い指値での“実質テイカー”は想像以上に高コストです。基本は板内側へ薄く置いてメイカー約定を待つ。約定しないときは価格がこちらに不利なので、無理に追わず撤退判断を早めます。

スプレッドと価格インパクト

薄い板でサイズを通すと、手数料以上にインパクトコストが嵩みます。ティックあたりの板厚×自分のサイズを常に換算し、同一ティックで分割するか時間分散で通すかを決めます。

時間帯最適化

米市場の始/終値付近はボラと流動性が同時に高まり、メイカー回転の歩留まりが改善します。一方でイベント直前は板が引けやすく、スリッページが拡大しやすいので回転は避けます。

資金調達率(Funding)の本質

ファンディングは、ロング/ショートの需給アンバランスを補正する変動金利です。プラスならロングが支払い、マイナスならショートが支払います。偏りが大きいほど、逆サイドに立つだけで金利収益が積み上がる可能性があります。

デルタ中立の基本形

例:BTCが強いトレンドで資金調達率 +0.03%/8hと仮定します。現物ロング+パーペチュアルショートでデルタを相殺すれば、価格変動リスクを抑えつつ金利を受け取れます。現物の代わりに別の取引所/別銘柄の相関エクスポージャで代替する応用も可能です。

注意すべき逆回転

トレンド転換時は資金調達率も反転します。ファンディング狙いだけでポジションを固着させず、転換時はクイックに解体する運用ルールを定めます。

清算メカニズムの理解と“飛ばない”設計

清算は、「口座の有効証拠金 < 維持証拠金+清算費用」の状態で発火します。ここでは直感的に、“清算価格を常に遠くに置く”ためのルールを定義します。

レバレッジは結果で決める

はじめから高レバで入るのではなく、価格が有利に進んだ後にサイズを追加して実効レバを上げます(ピラミッディング)。逆行時は追撃せず、清算距離を短縮しないことを優先します。

維持率ベースのストップ

価格ストップだけでなく、口座の維持証拠金率が一定以下になったら強制的に縮小するルールを併用します。イベント時のギャップにも強い運用が可能です。

板の読み方と約定管理

メイカー中心の戦略では、約定の質が勝敗を分けます。以下の観点で板を観察します。

① 連続ティックの厚み… 滑らかな分布ならサイズ分割で通しやすい。
② 直近約定の方向… テイカーフローが一方的なら指値を一段引いて待つ。
③ ブックの更新頻度… 更新が速い時間帯は、置き直しの自動化(半自動)が効果的。

戦略①:メイカー回転(スプレッド内リベート獲得)

目的: スプレッドの一部+メイカー優遇で日次の小利を積む。
手順:(1)流動性の厚い時間帯を選ぶ(米市場の立会前後など)。(2)スプレッドの内側へ薄く両側に置く。(3)約定後は“同じ距離”に反対注文を即配置。
リスク: 片張り残がトレンドに巻き込まれる。対策: 連続約定数と時間経過で強制クローズ、またはヘッジを即時差し込む。

戦略②:ファンディング回収のデルタ中立

目的: 価格方向の当てを最小化し、金利収益を粘り強く積み上げる。
手順:(1)資金調達率が偏る銘柄を選定。(2)現物ロング+パーペチュアルショート、または相関銘柄でヘッジ。(3)偏りが薄れたら解体。
リスク: 現物・先物のベーシス急変、流動性低下。対策: 複数取引所の板厚と資金調達率をモニターし、閾値で自動縮小。

戦略③:イベント・ブレイクアウト

目的: 指標や大口フローで拡大したボラを取りに行く。
手順:(1)事前に価格レンジを定義。(2)上下のブレイク価格に逆指値入口を配置。(3)初動は部分利確を刻み、建玉は残し過ぎない。
リスク: スリッページとリミット不成立。対策: 入口は分割、出口は複数の指値に分けて“取り逃しを減らす”。

戦略④:複数パーペチュアル間のベーシス活用

同一原資産でも、取引所や銘柄(例:BTCと相関の高い他銘柄)で微妙な価格乖離が出ます。高い方を売り、安い方を買うペアで取りに行くシンプルな発想です。
注意点は、清算ルール・手数料・資金調達率が取引所ごとに異なること。総コストを必ずネットで比較します。

具体例:数字で理解する損益と清算距離

例として、BTC価格 100,000、レバレッジ 5倍、証拠金 2,000、維持証拠金率 0.5% と仮定します。
・建玉名目は 10,000、1%の逆行で含み損 100。
・維持証拠金は名目×0.5%=50。
・口座有効額は 2,000−含み損。清算は「2,000−含み損 < 50 + 清算費用」で接近。
この単純モデルでも、レバを上げるほど清算距離が急激に近づくことが分かります。建玉の追加は有利方向にだけ行う理由がここにあります。

半自動運用:ツール化のヒント

完全自動化は実装難度が上がるため、まずは半自動で勝率を安定させます。
・指値の置き直し… 板の更新頻度に応じて1〜3秒間隔で最内側を追従。
・連続約定カウント… 連続買い/売り約定が一定回数で逆側の注文を引き、残ポジのみで対応。
・維持率監視… 維持率が所定以下で建玉を機械的に圧縮。
この3点だけでも、裁量の“遅れ”を大幅に削れます。

チェックリスト:エントリー前30秒で確認

□ その時間帯の板厚は十分か(自分のサイズ×3倍以上の板厚が連続しているか)。
□ ファンディングはどちらに偏っているか。
□ 直近の指標・ニュースで板が薄くなっていないか。
□ ストップは価格維持率の二重で置いたか。
□ エグジットは複数の利確階層に分けたか。

よくある損失パターンと対策

成行多用でコスト過大… 入口は必ず指値分割。
片張り残の放置… 一定時間で強制クローズ、または小ヘッジを必ず差す。
ファンディング狙いの固着… 偏りが薄れたら素早く解体、欲張らない。
レバ先行… 有利方向に進んだ後の追加に限定。

Q&A

Q. どの銘柄から始めるべき?

A. まずは板厚と出来高が十分な大型銘柄から。スプレッドとインパクトの影響が小さいため、コスト最適化の効果が出やすいです。

Q. どのくらいの資金で始める?

A. 維持率監視とストップを試すため、清算距離を広く確保できる金額から始めます。額よりも、ルールが機能する最小単位を見つけることが優先です。

Q. メイカー回転は今でも通用する?

A. “素のまま”では厳しくても、時間帯選別・分割・置き直しの半自動化を加えれば期待値は依然として作れます。

まとめ:Vertexで勝つ人の共通点

コストを設計する(メイカー中心、インパクト最小化、時間帯最適化)
資金調達率を拾う(デルタ中立で粘り強く)
清算距離を一定化(有利方向でのサイズ追加、維持率監視)
この3点を回し続けると、価格方向の“当て”に頼らず、統計的に利益を残せます。派手さはありませんが、続けられる設計こそが個人トレーダーの最大の武器です。

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