- 0DTEとは何か:なぜ“同じオプション”でも別ゲームになるのか
- 0DTEで負ける人の共通点:ミスは“方向”ではなく“構造”
- リスク管理の全体像:0DTEは「損失上限→回収構造→再現性」の順
- まず決めるべきは「最大損失」:資金管理の最小単位を作る
- 損失上限を“形”で作る:裸を避け、スプレッドで限定する
- “ガンマ地獄”を避ける:危険な時間帯とストライクの扱い
- IV(インプライド・ボラ)急変への備え:0DTEは“値動き+IV”の二重爆弾
- “勝率”の罠:0DTEは勝率が高いほど危ないことがある
- 初心者が採るべき基本形:小さなデビット+明確な撤退(“買いから入る”のが合理的)
- 具体例:日経225(想定)での「寄り付き後30分だけ」戦略設計
- キルスイッチ(強制停止)の作り方:人間の判断を信用しない
- コストと約定の現実:スプレッドが期待値を削る場所を把握する
- バックテストの落とし穴:0DTEは“同じ日”が二度と来ない
- 最後に:0DTEで“儲ける”より先に、0DTEで“死なない”を完成させる
0DTEとは何か:なぜ“同じオプション”でも別ゲームになるのか
0DTE(ゼロ・デー・トゥ・エクスパイア)は「当日満期のオプション」です。満期までの残存時間が極端に短いので、通常のオプション取引で支配的な“時間分散”が効きません。最大の特徴は、価格変動に対する感応度が時間の経過とともに加速度的に変化する点です。特に引け前の数時間〜数十分は、ガンマ(デルタの変化率)とセータ(時間価値の減少)が同時に強烈になります。結果として、同じ枚数・同じ銘柄でも、エントリー時刻が違うだけでリスクが別物になります。
初心者が最初に理解すべき結論はシンプルです。0DTEは「当たれば大きい」以前に、「外れた時の損失形状が鋭すぎる」ため、売買の当否よりも、損失の形を事前に制御できているかが勝敗を決めます。
0DTEで負ける人の共通点:ミスは“方向”ではなく“構造”
0DTEで致命傷になる典型は、方向予想が外れることではありません。多くは次の3つの構造ミスです。
(1)ポジションサイズが“最大損失”ではなく“プレミアム”基準:買いオプションは支払ったプレミアムが最大損失なので、一見安全に見えます。しかし0DTEでは勝率が低下しやすく、連敗が速い。結果として「小さく負け続けて、勝ちが出る前に資金が尽きる」状態になります。
(2)売りで“裸”を握る:0DTEの裸売りは、相場の急変で損失が非線形に膨らみます。特に指数(SPX等)やボラが高い局面では、数分で想定が壊れます。
(3)時間帯の危険域を知らない:同じストライクでも、引け前30分のガンマと、寄り付き直後のガンマは別物です。時間帯を無視すると、バックテストの平均的な数字が現場で機能しません。
リスク管理の全体像:0DTEは「損失上限→回収構造→再現性」の順
0DTEの運用を“ギャンブル”から“戦略”に変える手順は、次の順番で設計します。
①最大損失の上限:1回の取引で口座が耐えられない損失を発生させない。
②損失上限の実装方法:スプレッド化、ヘッジ、ルール停止(kill-switch)など。
③回収構造:勝ち負けの分布(勝率×平均利益×平均損失)を、現実的な形にする。
④再現性:同じ条件が繰り返し出る場所にしか張らない。
ここで重要なのは、②の“実装”を曖昧にすると全て崩れる点です。0DTEはスピードが速いので、裁量での場当たり対応はほぼ負け筋です。
まず決めるべきは「最大損失」:資金管理の最小単位を作る
0DTEの資金管理は、一般的な「1回のトレードで資金の1%」のような抽象ルールだけだと不十分です。理由は、同じ1%でも“損失発生の速度”が速く、連続的に判断ミスが連鎖しやすいからです。
ここでは実務的に、次の2段階の上限を提案します。
・取引上限(Trade Stop):1トレードで許容する最大損失(例:資金の0.25%〜0.5%)
・日次上限(Daily Stop):その日の累積損失上限(例:資金の0.75%〜1.5%)
日次上限は「メンタル劣化に伴う連敗」を止める装置です。0DTEは短時間で連続売買になりやすく、日次上限がないと“取り返し”で破滅します。
損失上限を“形”で作る:裸を避け、スプレッドで限定する
0DTEで最も再現性が高いのは、損失上限をポジション構造に埋め込むことです。代表例がスプレッド(vertical spread)です。
例1:コール買い→コールデビットスプレッド(損失上限は同じ、ブレを減らす)
単純なコール買いは最大損失がプレミアムで限定されますが、0DTEでは“当たっても十分に伸びない”局面が多く、勝ちが小さくなりがちです。そこで、近い上のストライクを売ってデビットスプレッドにすると、上方向の利益は頭打ちになりますが、必要資金が減り、期待値のブレが落ちます。
たとえば指数が4,800、コール4,810を買い、4,830を売る。こうすると、最大利益はストライク差−支払額に限定されます。代わりに、必要なブレイクイーブンが近づき、0DTEにありがちな“少し上がったが足りない”を回避しやすくなります。
例2:プット売り→プットクレジットスプレッド(“無限損”を消す)
0DTEのプット裸売りは、急落時に損失が跳ねます。クレジットスプレッドにすれば、下のストライクを買うことで最大損失を固定できます。プレミアムは減りますが、0DTEでは生存が最優先です。収益率よりも破綻確率を下げる方が長期の期待値は上がります。
“ガンマ地獄”を避ける:危険な時間帯とストライクの扱い
0DTEで最も危険なのは、ATM(現値近辺)付近で売りを持ち、引けに向かう時間帯です。理由は、現値が少し動くだけでデルタが激変し、ヘッジが間に合わなくなるからです。
実務上の対策は3つです。
(A)引け前は“売り”を縮小または撤退:戦う場所を変えるだけで破綻確率が下がります。
(B)売りは現値から距離を取る:同じプレミアムを狙うなら、時間帯を早めるか、距離を取るか、どちらかが必要です。
(C)ヘッジを裁量にしない:ヘッジの条件(価格・デルタ・時間)を先に決める。決めていない時点で、実質ノーガードです。
IV(インプライド・ボラ)急変への備え:0DTEは“値動き+IV”の二重爆弾
0DTEでは、価格変動だけでなくIVの変化が損益に直撃します。たとえばイベント(CPI、FOMC、要人発言)前後では、IVの収縮(vol crush)や、急拡大(panic bid)が起きます。
買いはIV低下で勝ちにくく、売りはIV上昇で損失が跳ねます。ここで重要なのは「自分がIVを買っているのか、売っているのか」を常に明確にすることです。
実務的なルール例として、次のように定義します。
・イベント前の買いは、ターゲット利確を浅くする(IVが落ちる前に逃げる設計)
・イベント後の売りは、急変動が収束したことを条件にする(最初の数分は触らないなど)
“勝率”の罠:0DTEは勝率が高いほど危ないことがある
0DTEでよくある破滅パターンは「高勝率の売り戦略でコツコツ→一回で全部吐く」です。これは確率の問題ではなく、損益分布の問題です。小さな利益が積み上がっても、損失が厚い尾(ファットテール)を持つなら、いずれ必ず事故ります。
ここで使える考え方が“損失の上限が口座に対して何倍か”です。最大損失が資金の5%を超える形を常態化させると、数回の事故で終わります。0DTEでは事故の発生速度も速いので、尚更です。
初心者が採るべき基本形:小さなデビット+明確な撤退(“買いから入る”のが合理的)
初心者が0DTEを学ぶなら、最初は「デビット(買い)で最大損失固定」から入る方が合理的です。売りは“事故の尾”を管理できるようになってからで十分です。
ただし、買いの罠は「当たらないとゼロになる」ことです。これを避けるための基本形は、以下です。
・単発買いよりデビットスプレッド:必要資金を抑えつつブレイクイーブンを近づける。
・利確は小さく、損切りは機械的:0DTEは“伸びるまで待つ”が裏目になりやすい。
・回数を減らす:トレード回数が増えるほど、ランダム要因とスプレッドコストが効きます。
具体例:日経225(想定)での「寄り付き後30分だけ」戦略設計
ここでは概念を掴むため、日経225を例に“時間帯限定”の設計例を示します(実際に執行する際は、流動性・スプレッド・建玉制限など市場仕様を必ず確認してください)。
前提:寄り付き後は方向が出やすい一方、ニュースで飛びやすい。そこで「寄り付き後30分」だけに限定し、引け前は触らない。
ルール例
・観測:寄り付き後10分の高値・安値をレンジとして確定。
・エントリー:レンジ上抜けでコールデビットスプレッド、下抜けでプットデビットスプレッド。
・損切り:レンジ内に戻った時点で即撤退(プレミアムの一定割合でも可)。
・利確:ストライク差の50〜70%到達で利確(欲張らない)。
・無取引条件:初動の値幅が大きすぎる/スプレッドが広すぎる/イベント当日など。
この設計の狙いは、「いつ戦うか」を先に固定して、ガンマが暴れる時間帯を避けることです。0DTEのリスク管理は、指標やテクニカルより“時間帯”の方が効きます。
キルスイッチ(強制停止)の作り方:人間の判断を信用しない
0DTEで最強のリスク管理は「その日の取引を強制的に終わらせる」仕組みです。具体的には次の3層にします。
(1)損失到達で当日終了:日次上限に達したら、チャートを閉じる。
(2)連敗で当日終了:損失額より先にメンタルが壊れる場合がある。3連敗で終了、など。
(3)時間帯で強制終了:引け前は触らない、など“ルールで市場から退場”する。
ポイントは「例外なし」です。例外を作る瞬間、ルールは崩壊します。
コストと約定の現実:スプレッドが期待値を削る場所を把握する
0DTEは売買回数が増えがちで、スプレッドや手数料の影響が大きくなります。特に流動性が薄い銘柄・限月・ストライクに飛ぶと、期待値が簡単に逆転します。
実務では、次のチェックが必須です。
・板の厚み:希望価格でどの程度約定するか。
・スプレッド比率:プレミアムに対してスプレッドが何%か。
・利確の難易度:利確指値が刺さらず、結局成行で不利約定になるなら戦略が成立しません。
バックテストの落とし穴:0DTEは“同じ日”が二度と来ない
0DTEの検証でありがちな誤りは、終値ベースや粗い足で判断してしまうことです。0DTEは分単位の挙動で損益が決まるため、日足・60分足だけで期待値を論じると、実運用で再現しません。
最低限、次の観点で検証します。
・時間帯別(寄り、昼、引け)で分ける
・イベント日を別扱いにする
・IV水準で分類する(低IVの日に買い、など)
さらに実務では、紙のバックテストよりも「小ロットでのフォワード検証」を重視すべきです。0DTEは市場構造(参加者、ヘッジフロー、ルール変更)で性格が変わります。
最後に:0DTEで“儲ける”より先に、0DTEで“死なない”を完成させる
0DTEは短期でリターンを狙える一方、破綻も同じ速度で来ます。勝つための最短ルートは、予想精度を上げることではなく、損失上限を構造に埋め込み、戦う時間帯を限定し、例外のない停止ルールを持つことです。
この3点が揃えば、0DTEは「運試し」ではなく「設計されたリスクの売買」になります。まずは最大損失の小さいデビットスプレッドで、時間帯限定の検証から始め、取引回数を絞ってデータを蓄積してください。それが最も現実的で、最も資金が残る進め方です。


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