0DTEオプション取引の設計図:当日満期で時間価値を売買するためのルールと落とし穴

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0DTEとは何か:同じ「オプション」でも別競技だと理解する

0DTE(0 Days To Expiration)は「当日満期のオプション」です。満期までの時間がほぼゼロのため、通常のオプションで重視される“数日〜数週間かけて効いてくる要素”が急激に圧縮されます。結果として、価格の動き方・リスクの出方・必要なルールが、ふつうのオプション取引とは別物になります。

最大の特徴は、ガンマ(デルタの変化率)が極端に大きいことです。価格が少し動いただけでデルタが急変し、ポジションが一瞬で「ほぼ先物と同じ」挙動になり得ます。さらに、満期が近いほどセータ(時間価値の減衰)も急激なので、時間経過で利益が出やすい局面もありますが、同時に「一撃でひっくり返る」局面も増えます。

つまり0DTEは、時間価値(セータ)を取りにいく取引であると同時に、ガンマに殴られる取引でもあります。ここを曖昧にしたまま参入すると、勝っているように見えた期間の後に、単発の大損で全部持っていかれます。

0DTEで起きる典型的な事故:なぜ「小さく勝って大きく負ける」になりやすいのか

0DTEの事故はだいたい同じ形をしています。まず、アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)のオプションを売る(ショート)と、短時間でプレミアム(受取)が入ります。勝率が高く見え、コツを掴んだ気になります。しかし、相場が一定以上動くと、売った側の損失が急カーブで増え、逃げ遅れると取り返しがつきません。

これは0DTE特有のガンマの大きさが原因です。たとえばSPXで、午前中はレンジだったのに、FOMC議長発言や経済指標のサプライズでトレンドが出ると、数分で「安全そうだった距離」が消えます。OTMがITMになり、デルタが0.2→0.6→0.9のように跳ね、損益曲線が一気に立ち上がります。

よくある誤解は「損切りすれば大丈夫」というものです。0DTEはスプレッドが広がりやすく、板が薄い時間帯もあります。自分が“損切りしたい価格”で約定しない、あるいは滑ることが現実に起きます。したがって、そもそも損失が限定される構造(定義済みリスク)を優先して設計し、損切りは保険として扱うのが合理的です。

初心者が最初に押さえるべき「商品」と「満期」の選び方

0DTEは個別株でも可能ですが、初心者は指数(SPX / NDX / RUTなど)から入るほうが設計しやすいです。理由は、個別株はニュース1本で飛ぶ一方、指数は分散されていて“事故の形”が読みやすいからです。また、SPXは欧米の主要イベントに反応しやすく、ボラティリティの構造(VIXなど)も情報が豊富です。

もう一つ重要なのは「週次満期」か「日次満期」かです。0DTEでも、同日に複数シリーズがある銘柄では、板の厚さが違います。出来高・建玉が厚いシリーズを選ぶと、スプレッド(売買差)が狭くなり、撤退コストが下がります。0DTEは撤退コストが成否を左右するので、板の厚さは軽視できません。

実務的な目安として、最初は売買が活発な指数の0DTEで、リスクを限定したスプレッド戦略に絞り、単体ショート(裸売り)は避けます。これは精神論ではなく、構造的に破綻しやすいからです。

0DTEの「地図」:ギリシャ指標をどう使うか

0DTEで重要なのは、デルタ・ガンマ・セータ・ベガのうち、とくにデルタ/ガンマ/セータです。ベガ(IVの変化への感応度)は満期が近いほど小さくなる傾向がある一方、イベント直前はIVが上下し、スプレッドの価格形成に影響します。よって、ベガは“完全に無視”ではなく、“主役ではないが舞台装置として見る”のが現実的です。

デルタ:今この瞬間の方向感

デルタは「原資産が1動いたとき、オプションがどれだけ動くか」の近似です。0DTEでは、デルタは時間帯で急変します。引けが近づくほど、少しの価格変化でデルタが跳ねます。したがって、同じデルタ0.10のOTMでも、午前と午後では危険度が違います。

ガンマ:0DTEの本体

ガンマはデルタがどれだけ速く変化するかです。0DTEで負ける人は、ガンマを“見ない”のではなく、“存在を過小評価”しています。利益が出ているときほど、ガンマの逆襲で損益が反転する速度は速い。これを前提に、ポジションサイズと撤退条件を設計します。

セータ:時間価値は「取りにいく」より「扱う」

セータは時間の経過でオプション価格が減ることです。0DTEではセータが大きいので、売り手は“時間が味方”になり得ます。ただし、セータで得られる利益の上限はプレミアム受取額です。一方、裸売りの損失は理論上無限です。したがって、セータを取りにいくほど、リスクリワード設計を厳格にしないと破綻します。

戦略1:クレジットスプレッドで「損失上限」を固定する

0DTEの基本戦略として最も再現性が高いのは、クレジットスプレッド(売り+買いの組み合わせ)です。たとえば「プット・クレジットスプレッド」は、下方向の保険(買いプット)をセットにして、プレミアムを受け取りつつ最大損失を限定します。

具体例として、SPXが5000付近で推移している日に、4950のプットを売り、4930のプットを買う(幅20)という形です。受取が仮に2.0(=200ドル相当)なら、最大利益は200ドル、最大損失は(幅20-2.0)×100=1800ドルです。ここで大事なのは、最大損失を口座の何%まで許容するかを先に決めることです。0DTEは“当たる日”が続くので、気分でサイズを上げると一撃で終わります。

この戦略の狙いは「毎日小銭を拾う」ではありません。狙いは、相場が“レンジ寄り”のときに、統計的に有利な時間減衰を取りつつ、事故の上限を固定して生存することです。生存しなければ優位性は意味を持ちません。

戦略2:アイアンコンドルは「イベントの無い日限定」で使う

アイアンコンドルは、上側と下側のクレジットスプレッドを同時に組む戦略です。レンジが続けば、両側のプレミアムが減衰し、利益が出ます。しかし0DTEでこれを乱用すると、トレンドの日に片側が燃えます。よって、条件を厳しくします。

条件の例は以下です。まず、重要指標(CPI、雇用統計、FOMCなど)や主要企業決算で市場全体が動きやすい日は避けます。次に、寄り付き直後の方向感が定まらない時間帯を避け、一定時間(例:米国市場なら開始30〜60分)を観察します。そして、当日の実現ボラ(直近の値動き)が落ち着いていることを確認します。

コンドルの幅は狭すぎると損切りが間に合わず、広すぎると受取が薄くなります。初心者は「幅を狭くして受取を増やす」方向に行きがちですが、0DTEでは逆です。幅を狭くするとガンマの影響で損益が跳ねやすくなり、撤退が難しくなります。まずは、撤退可能性を優先して設計します。

戦略3:0DTEのロング(買い)は「シナリオ勝負」で限定的に

0DTEは買いでも勝てます。ただし、買いは“当たらないとゼロになる”ので、雑にやると資金が溶けます。ロングが有利になるのは、短時間で方向性のある値動きが出る確率が高い局面です。たとえば、重要指標発表直後にトレンドが出て、押し目・戻りが浅いときなどです。

ただし、指標前に買うのは別のゲームになります。指標前はIVが上がり、オプションが割高になりやすい。指標が予想通りで値動きが小さいと、方向が当たってもIV低下(いわゆるIVクラッシュ)で利益が伸びません。よって、初心者が0DTEロングをやるなら、「指標後に方向が出たのを確認してから」「最大損失=支払プレミアムで固定」し、サイズも小さくするのが現実的です。

エントリーの型:0DTEは「時間帯」と「距離」の2軸で組み立てる

0DTEの優位性は、どのストライクを選ぶか(距離)と、いつ入るか(時間帯)で決まります。一般論として、引けが近いほどセータは大きくなる一方、ガンマも大きくなります。つまり“甘い時間帯”は存在しません。自分がどちらのリスクを取るのかを明確にします。

たとえば、午前中に入るなら、時間はあるが受取は薄い。午後に入るなら受取は厚いが、値動き1回で燃えやすい。ここで、初心者は午後の「受取の厚さ」に惹かれて爆死しやすい。よって、最初は午前〜昼の流動性がある時間帯に限定し、ルールが守れる範囲で学習します。

撤退ルール:損切りより先に「想定損失」と「撤退コスト」を数値化する

0DTEで最重要なのは撤退です。撤退ルールは“気合”ではなく数値で決めます。具体的には、(1)最大損失の上限、(2)含み損がどこまで来たら撤退するか、(3)撤退が不利になる状況を避ける、の3点です。

(1)は口座残高に対する割合で決めます。たとえば1回の最大損失を0.5〜1.0%に抑えるだけで、連敗しても再起が可能になります。(2)はスプレッドの価格やデルタで決める方法があります。例えば「受取の2倍の損失で撤退」「ショート側デルタが0.25を超えたら撤退」などです。大切なのは、ルールがシンプルで、場中に迷わないことです。

(3)はイベント回避です。指標や要人発言は突然ボラを上げます。0DTEはイベント耐性が低いので、最初は“イベントの日はノートレ”を徹底したほうが期待値が安定します。

実戦の具体例:SPX 0DTEプット・クレジットスプレッドの一連の流れ

ここでは一例として、SPXが寄り付き後に上昇し、前日高値付近で揉み合っている日を想定します。重要指標がなく、VIXも落ち着いている。こういう日は、下方向の急落リスクはゼロではないが、確率は相対的に低いと仮定できます。

まず、当日の安値と出来高の厚い価格帯を確認します。次に、下側に十分距離を取ったOTMのプットを選び、デルタ0.10前後を目安にします(目安であって絶対ではありません)。そして、同時にさらに下のプットを買い、幅を決めます。幅は口座規模に合わせます。受取が薄すぎて意味がない構造なら、その日は見送ります。

エントリー後は、相場が急変したときに備えて、撤退条件を画面にメモしておきます。値動きが想定と違い、ショート側デルタが急上昇する、あるいはスプレッド価格が一定以上に広がったら、機械的に撤退します。利益確定は「受取の50〜70%が取れたら終了」のようにすると、引け間際のガンマ事故を避けられます。最後の数十分は“利益が増える時間”でもありますが、“事故が起きる時間”でもあります。

日本の個人投資家が落としがちな盲点:手数料・税・建玉管理

0DTEは回転が速いので、手数料とスプレッド(見えないコスト)が積み上がります。短期で頻回売買をすると、実質的な期待値がコストで削られます。最初から「毎日やる」発想ではなく、「条件が揃った日だけ」「週に数回」など、取引回数を制限するほうが成績が安定しやすいです。

また、同じ戦略でも建玉管理が雑だと事故ります。たとえば複数本のスプレッドを入れると、実質的にガンマが増幅します。証拠金(必要証拠金)が想定外に跳ね、強制的に縮小させられると、最悪のタイミングで損失確定になります。建玉数は“ルール化”して上限を持たせます。

検証のやり方:バックテストより先に「日次ログ」を作る

0DTEは市場構造(0DTEの出来高比率、ディーラーのヘッジフロー、規制や商品設計)に影響されるため、長期のバックテストがそのまま未来を保証しません。個人が最初にやるべきは、統計の前に自分の取引ログを作ることです。

ログに残す項目は、エントリー時刻、銘柄、ストライク、受取、スプレッド幅、VIX、当日のイベント有無、撤退理由(利確・損切り・時間切れ)です。これを20〜50回分溜めると、自分がどの局面で事故るかが見えます。「午後に入ると勝率は高いが損失がデカい」「イベントの日に負けが集中する」など、改善点が定量化できます。

資金管理:0DTEで最も効くのは「損失上限の固定」と「連敗時の縮小」

0DTEは勝率が高く見える戦略が多い一方、損失が非対称です。したがって、資金管理が成績の大部分を決めます。まず、1回の最大損失を口座の一定割合に固定します。次に、連敗したらサイズを落とします。これはメンタル対策ではなく、相場環境が変わった可能性への対応です。

具体的には「2連敗でサイズ半分」「3連敗でノートレ期間を1週間」など、機械的なルールが有効です。0DTEは短期で結果が出るので、環境の変化が速い。自分のルールが効いていないときは、無理に取り返しに行くほど悪化します。

チェックリスト:0DTEを“仕事”として回すための最低条件

最後に、0DTEを運用する前に満たすべき最低条件を文章でまとめます。まず、その日に重要イベントがあるかを確認します。イベントがあるなら基本的に見送ります。次に、出来高が十分でスプレッドが狭い銘柄・シリーズを選びます。そして、戦略は定義済みリスク(スプレッド)に限定し、裸売りは避けます。最大損失を口座の一定割合に固定し、撤退条件を数字で決めます。利確は引け間際まで粘らず、受取の一定割合で切り上げます。

この一連を守れるなら、0DTEは「短期でボラティリティを収益化する道具」になり得ます。守れないなら、0DTEは最も速く資金を失う道具になります。0DTEは才能よりも、ルールの堅さで勝敗が決まります。

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