- VIXとは何か:まず「恐怖指数」を誤解しない
- 平均回帰が起きやすい理由:ボラは「需要ショック」で跳ねる
- 「ボトムフィッシング」を定義する:狙うのはVIXの天井ではなく“降りる局面”
- エントリーの考え方:3つのチェックポイント
- 商品選び:VIXを「どう売るか」で難易度が激変する
- ①最も安全寄り:現物株(広い指数)を小さく拾う
- ②中級:オプションで「限定損失」の形にする
- ③上級:VIX先物連動ETFの“構造”を理解して使う
- 勝ち筋の核心:分割・時間分散・撤退ルールの三点セット
- 1)分割エントリー:3回に分けるだけで破綻確率が下がる
- 2)時間分散:最短で当てにいかない
- 3)撤退ルール:損切りは“価格”ではなく“シナリオ崩れ”で決める
- 具体例:あなたが最初にやるべき「簡易VIX平均回帰」プロトコル
- よくある失敗:VIX平均回帰で焼かれる典型パターン
- リスク管理:ポジションサイズの現実的な決め方
- VIXを“相場の温度計”として使う:投資判断への落とし込み
- まとめ:VIX平均回帰は「当てるゲーム」ではなく「設計のゲーム」
VIXとは何か:まず「恐怖指数」を誤解しない
VIX(Volatility Index)は、S&P500指数(SPX)のオプションから算出される、今後30日程度の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)の指標です。価格が上がるほど「市場が不安で、保険(プット)を買う人が増えている」状態を示しやすい一方で、VIXは株価そのものではなく、あくまでオプションの“保険料の高さ”に近い指標です。
ここを誤解すると、VIXを「株が下がったから上がるもの」と短絡してしまい、タイミングと商品選びで大きな損失を抱えます。VIXを使う戦略は、基本的に“恐怖が高値に張り付く期間のリスク”と、“商品固有の構造(先物の期限構造)”を理解した上で組み立てる必要があります。
平均回帰が起きやすい理由:ボラは「需要ショック」で跳ねる
暴落局面では、投資家は現物を売るだけでなく、下落に備える保険としてプットを急いで買います。保険需要が急増するとオプションの価格が跳ね、その結果としてVIXが急騰します。しかし恐怖は永遠に続きにくい。急落が一服したり、政策対応や需給整理が進むと、保険需要が剥落し、オプション価格が沈静化してVIXが下がります。
この「恐怖→保険買い→VIX急騰→沈静化→VIX低下」という循環が、平均回帰っぽい動きを作ります。ただし注意点があります。平均回帰は“必ず”起きるわけではなく、“起きやすいが、時間と痛みが読めない”という性質です。ここが勝ち筋と破綻筋の分岐点になります。
「ボトムフィッシング」を定義する:狙うのはVIXの天井ではなく“降りる局面”
VIX平均回帰で最も危険なのは、VIXが上がった瞬間に「もう天井だ」と決め打ちで逆張りすることです。パニックが続くとVIXはさらに上がり得ます。狙うべきは、天井当てではなく“高止まり後に降り始める局面”です。
具体的には、以下のような「恐怖がピークアウトしたサイン」を複数確認して、初めて“ボトムフィッシングの設計”に入ります。
エントリーの考え方:3つのチェックポイント
チェック1:VIXの上昇が鈍化している
例:VIXが急騰した翌日以降、日中の高値更新が止まり、終値が上ヒゲで終わる/連続陽線が途切れる、など。
チェック2:株価側で「売り切れ感」が出ている
例:S&P500やナスダックが大陰線のあと、翌日に下げ渋って長い下ヒゲを出す/出来高が増えて投げが出た形跡がある、など。VIXだけ見ず、現物側の需給も観察します。
チェック3:短期の恐怖が“行き過ぎ”に見える
例:ニュースの見出しが連日同じ悪材料で埋まり、SNSが静まり返る(売り手の燃料が尽きる)/市場が「何でも売り」になっている、など。これは定量化が難しいですが、実戦では重要です。
これらは単独では弱いので、2つ以上が重なったら小さく入る、という発想が現実的です。
商品選び:VIXを「どう売るか」で難易度が激変する
VIXに直接投資する商品は複数ありますが、初心者ほど“分かりやすさ”だけで選ぶと痛い目を見ます。ここでは難易度順に整理します。
①最も安全寄り:現物株(広い指数)を小さく拾う
VIX平均回帰を「ボラが落ちる=株価が戻る局面」と解釈し、S&P500連動のETFなどを分割で拾うやり方です。VIXそのものを売らず、現物側でリバウンドを取りに行きます。VIXが高いときは株の期待リターンが上がりやすいという経験則はありますが、当然ながら下落が続けば含み損になります。
ただ、VIX先物やレバレッジVIX商品に比べると構造が単純で、破綻しにくいのがメリットです。まずはここから設計するのが堅いです。
②中級:オプションで「限定損失」の形にする
例えば、S&P500のコールを買う、あるいはプットを売る(ただし証拠金・急落リスクが大きい)など、ボラ沈静化を利用して損失を限定する設計ができます。初心者がいきなりプット売りに行くのは危険なので、まずはコール買い(損失=支払ったプレミアム)などの限定損失型が無難です。
「ボラが高いとオプションが高い」という不利もありますが、代わりに“当たり”を引いたときの伸びも大きく、撤退判断も明確です。
③上級:VIX先物連動ETFの“構造”を理解して使う
VIX連動ETF(短期先物をロールするタイプ)は、VIXそのものではなくVIX先物のバスケットに連動します。ここで重要なのがコンタンゴ/バックワーデーションという期限構造です。
平常時はコンタンゴ(期先が高い)になりやすく、短期先物を持ち続けるとロールで目減りしやすい。一方、パニック時はバックワーデーション(期近が高い)になり、構造的な目減りが止まったり、逆に有利に働く局面もあります。
つまり、VIX連動ETFは「VIXが下がるから儲かる」ではなく、期限構造とロールの影響で勝ち負けが変わる商品です。初心者がここにいきなり突っ込むのは推奨しません。理解した上で“量を絞って”使うべきです。
勝ち筋の核心:分割・時間分散・撤退ルールの三点セット
VIX平均回帰は、タイミングが数日ズレるだけで損益が激変します。だから勝ち筋は「当てる」ではなく「耐える設計」です。以下の三点セットを必須にしてください。
1)分割エントリー:3回に分けるだけで破綻確率が下がる
例として、投入したい資金を100とします。1回目は30、2回目は30、3回目は40のように分けます。1回目は「ピークアウトしそう」段階で小さく、2回目は「VIXが陰線で下げた」などの確認後、3回目は「株価が反転して高値更新を始めた」など、確度が上がった段階で入れると、平均回帰の“時間差”に強くなります。
2)時間分散:最短で当てにいかない
平均回帰は「すぐ戻る」こともあれば「高止まりが数週間続く」こともあります。日足だけでなく、週足で見て“恐怖が長引いているか”を判断します。週足でVIXが高値圏でもみ合いなら、無理に逆張りを厚くしない、という判断が必要です。
3)撤退ルール:損切りは“価格”ではなく“シナリオ崩れ”で決める
VIX戦略の難点は、価格だけで損切りすると、最悪のタイミング(パニックのピーク)で投げやすい点です。そこで撤退は「シナリオが崩れたか」で決めます。
シナリオ崩れの例:
・株価が安値更新を続け、下げ渋りのサインが消えた
・VIXが高止まりのまま、さらに上方ブレイクして定着した(複数日)
・クレジット市場(社債スプレッド等)が悪化し続け、株だけの問題ではなくなった
この場合は、ポジションを縮小するか、損失限定の形(オプション)へ組み替えるなど、設計を変えます。
具体例:あなたが最初にやるべき「簡易VIX平均回帰」プロトコル
ここでは、初心者が実行しやすい“シンプルな手順”を提示します。商品は「広い指数ETF」前提です。
ステップA:条件の確認
・VIXが急騰し、直近3~5日で大きく上がっている
・S&P500が急落し、日中に長い下ヒゲが出るなど、投げが出た形がある
ステップB:1回目(小さく)
・VIXが「高値更新が止まった」日に、予定資金の30%だけETFを買う
ステップC:2回目(確認して)
・VIXが前日比で明確に下がり、株価が陽線になったら、さらに30%
ステップD:3回目(トレンドが戻ったら)
・株価が5日移動平均を回復して押し目を作ったら、残り40%
利確の目安
・VIXが急騰前のレンジに戻り始めたら、部分利確を検討
・株価が急落の起点(ギャップや大陰線の始点)に近づいたら、段階的に利確
これは“勝率を上げる”というより、“破綻しにくくする”設計です。短期で最大値を狙うより、長く生き残る方が結果としてパフォーマンスが安定します。
よくある失敗:VIX平均回帰で焼かれる典型パターン
失敗1:VIXショートをレバレッジでやる
ボラがさらに吹き上がると、損失が雪だるま式に増えます。特にレバレッジ型のVIX商品は値動きが荒く、想定より早く退場します。
失敗2:下落理由を軽視する
暴落の原因が「一過性のショック」なのか「景気後退・信用不安」なのかで、恐怖の滞留時間が変わります。後者なら平均回帰が遅れます。
失敗3:一括で入る
当たれば気持ちいいですが、外れたときに再起不能になります。分割は“保険料”です。
リスク管理:ポジションサイズの現実的な決め方
初心者がVIX系の局面でやりがちなミスは「チャンスに見えて、普段より大きく張る」ことです。パニック局面はボラが大きく、同じ金額でもリスクが跳ね上がります。ルールとして、通常時の半分以下のサイズから始めるのが無難です。
もう一つは、最悪ケースを想定することです。例えば株価がさらに10~15%下がる可能性を前提に、耐えられる額しか入れない。これだけで退場確率が大きく下がります。
VIXを“相場の温度計”として使う:投資判断への落とし込み
VIX平均回帰を狙う場合でも、VIXは売買対象というより、相場の温度計として使う発想が強いほど安定します。具体的には、
・VIXが高い=保険料が高い=市場が脆い
・VIXが下がってきた=恐怖が解けた=リスクオンが戻る余地
この温度計を見ながら、現物の買い増し/ヘッジの強弱を調整する。これが長期的には最も再現性が高い使い方です。
まとめ:VIX平均回帰は「当てるゲーム」ではなく「設計のゲーム」
VIXが跳ねた瞬間の逆張りはギャンブルになりやすい。狙うのは“降り始め”で、分割・時間分散・シナリオ撤退をセットにする。商品は構造が単純なものから始め、VIX先物連動商品は理解してから少量で試す。この順番を守るだけで、VIX平均回帰は「総悲観を味方につける」強力な武器になり得ます。


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