コモディティETF逆張りローテーション戦略:インフレ局面での資金配分と損益管理

ETF

コモディティ(商品)は、株や債券とは値動きの原因が異なります。需要と供給、在庫、天候、地政学、政策、そしてドル金利など、複数の要因が絡み合います。そのため、株式中心のポートフォリオに「価格の動きがズレやすい資産」を入れる目的でコモディティを検討する人は多いです。

ただし、コモディティは「長期で持てば安心」というタイプの資産ではありません。先物ロール(期近→期先への乗り換え)に伴うコストが発生しやすく、銘柄によっては長期保有が不利になる局面もあります。ここで有効になりやすいのが、逆張り(下がったものを買う)ローテーション(資金を回す)を組み合わせた運用です。

この記事では、コモディティETFを使い、初心者でも再現できる形で「逆張りローテーション戦略」を構築・運用する方法を、具体例を交えながら徹底解説します。特定銘柄の推奨ではなく、再現性のある手順と判断基準を中心に説明します。

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  1. コモディティETFの「クセ」を先に理解する
  2. 逆張りローテーション戦略の基本コンセプト
  3. 対象ユニバース:何をローテーションするか
  4. 戦略の全体設計(最初に決める5つ)
    1. 1)評価頻度:毎日か、週次か
    2. 2)逆張りシグナル:何をもって“売られ過ぎ”とするか
    3. 3)保有本数:1本集中か、2〜3本分散か
    4. 4)エグジット:いつ手仕舞うか
    5. 5)損切り:どこで負けを確定するか
  5. 具体例:週次・2本分散・8週騰落率の逆張りローテーション
    1. ルール(例)
    2. なぜ8週間なのか
  6. 勝ちやすい局面・負けやすい局面
    1. 勝ちやすい局面:需給の揺り戻しが起きやすいとき
    2. 負けやすい局面:一方向の崩壊トレンド
  7. リスク管理:初心者が最初に守るべき3つ
    1. 1)ポジションサイズを小さく固定する
    2. 2)損切りとタイムアウトは“セット”で使う
    3. 3)総合指数を“逃げ先”として用意する
  8. 実践シナリオ:インフレ鈍化→金利高止まり→景気減速の流れ
  9. コモディティETF特有の注意点:見落としやすい落とし穴
    1. 先物ロールと「価格が合っているのに成績が違う」現象
    2. ボラティリティが高いので、逆指値が滑ることがある
    3. 分散のつもりが、実は相関が高い局面
  10. 上級者向けの拡張:フィルターを1つだけ追加するなら
    1. (A)トレンドフィルター:総合指数が20週線より上のときだけ逆張り
    2. (B)ボラフィルター:直近の値動きが極端なときは保有本数を減らす
  11. チェックリスト:毎週末にやること(運用手順)
  12. まとめ:この戦略が向いている人・向かない人

コモディティETFの「クセ」を先に理解する

コモディティETFには大きく2種類あります。

  • 現物型(現物保管):代表例は金(ゴールド)の現物保管型など。ロールコストの影響が小さめ。
  • 先物型(先物を保有):原油、天然ガス、農産物などで一般的。先物ロールに伴う損益(ロールイールド)が出る。

先物型で重要なのは、先物曲線がコンタンゴ(期先が高い)かバックワーデーション(期先が安い)かです。コンタンゴの局面ではロールでコストが積み上がりやすく、長期保有がじわじわ不利になります。逆にバックワーデーションではロールがプラスになりやすく、同じ価格推移でも成績が改善しやすいです。

つまり、コモディティETFは「当たれば大きい」反面、仕組みを理解せずに握り続けると、思ったより増えない/減り続けることが起こり得ます。そこで、長期保有前提ではなく、一定の規律で回す発想が合理的になります。

逆張りローテーション戦略の基本コンセプト

この戦略の狙いはシンプルです。

「短期間で売られ過ぎた商品セクターを拾い、回復したら次の“売られ過ぎ”に資金を移す」

コモディティは、需給ショックやニュースで急落し、その後に供給調整や季節性、在庫減少で急反発することがよくあります。これを「当てにいく」のではなく、ルールで拾うのがポイントです。

ローテーションを組み合わせる理由は、コモディティの各セクター(エネルギー、金属、農産物など)が同時に上がるわけではないからです。例えば、景気後退懸念で原油が下がる一方、地政学で金が上がる、というような「時間差」が頻繁に起きます。勝ち筋は“当たりセクターに居座る”より“売られ過ぎを拾って、戻ったら移る”です。

対象ユニバース:何をローテーションするか

初心者が扱いやすいのは、まず「商品セクターETF」です(個別商品1本よりも分散され、急変リスクを減らしやすい)。設計例は以下です。

  • 貴金属(金・銀・プラチナなどを含む、または金/銀ETF)
  • エネルギー(原油・ガソリン・天然ガス等のバスケット)
  • 産業金属(銅・アルミ等)
  • 農産物(小麦・トウモロコシ・大豆など)
  • 幅広い商品指数(総合コモディティ指数連動)

実務上は「取引できる市場/口座」「信託報酬」「出来高」「スプレッド」「分配金の扱い(あれば)」などで候補が変わります。ここでは銘柄名の列挙は避け、セクター単位で戦略を作ることに集中します。

戦略の全体設計(最初に決める5つ)

逆張りローテーションを“運用できる形”に落とすには、次の5つを先に決めます。

1)評価頻度:毎日か、週次か

初心者ならまず週次が無難です。コモディティはノイズが大きく、日次でやると売買が増えやすいからです。例として「毎週末に判断→翌営業日に発注」という形にすると、生活に組み込みやすいです。

2)逆張りシグナル:何をもって“売られ過ぎ”とするか

おすすめは「過去X週間の騰落率」や「移動平均からの乖離」です。難しい指標より、検証しやすく再現性が高いからです。例:

  • 過去8週間の騰落率がユニバース内で最下位(=いちばん下げた)
  • 価格が20週移動平均を大きく下回る(乖離率が一定以上)

重要なのは、ニュースや感情ではなく、数字で「売られ過ぎ」を定義することです。

3)保有本数:1本集中か、2〜3本分散か

初心者は2本分散を推します。1本集中は勝てるときは強いですが、コモディティは外すと痛い。2本なら“外れ”のダメージを抑えやすいです。例:上位2つの「売られ過ぎ」セクターを同金額で買う。

4)エグジット:いつ手仕舞うか

逆張りは「戻ったら降りる」が基本です。代表的な出口は次です。

  • 一定の利益(例:+8%)で利確
  • 一定期間(例:6週間)でタイムアウト
  • 移動平均を回復したら利確(例:20週線を上抜け)

出口を決めないと、「戻らない銘柄」を抱え続ける罠にハマります。

5)損切り:どこで負けを確定するか

逆張りは損切りを嫌がる人が多いのですが、コモディティは“一段下”が普通にあります。損切りを事前に決めないと、資金が拘束され、次のチャンスを逃します。例:

  • -7%で損切り(週次なら終値ベースで判断)
  • 直近安値を明確に割ったら撤退

損切りは「当てる技術」ではなく、「生き残る技術」です。

具体例:週次・2本分散・8週騰落率の逆張りローテーション

ここからは、具体的に運用できる形に落とします。仮にユニバースを次の5セクターとします。

  • 貴金属
  • エネルギー
  • 産業金属
  • 農産物
  • 総合コモディティ指数

ルール(例)

  • 毎週末(例:金曜終値)に各セクターの「過去8週間の騰落率」を計算する
  • 騰落率が低い順に並べ、下位2セクターを次週の保有候補とする
  • 同時に、各ポジションに損切りライン(-7%)と利確ライン(+8%)を設定する
  • 利確/損切りに到達したら翌週の判断日に現金化し、ルールに従い入れ替える
  • タイムアウトは6週間(6週経っても利確できない場合は一旦降りる)

なぜ8週間なのか

短すぎるとニュースのノイズに反応しやすく、長すぎるとトレンドが変わっても気づきにくい。8週間は“初心者が扱える中期の短さ”で、季節性(農産物)や需給変化(エネルギー)もある程度反映しやすい期間です。もちろん最適値ではなく「運用しやすい妥当値」と捉えてください。

勝ちやすい局面・負けやすい局面

勝ちやすい局面:需給の揺り戻しが起きやすいとき

例えば、原油が景気後退懸念で急落した後、OPEC+の供給調整観測や在庫統計の改善で反発するような局面は、逆張りが機能しやすいです。農産物なら天候で急騰/急落し、その後に需給が落ち着いて戻る、という形がよくあります。

負けやすい局面:一方向の崩壊トレンド

逆張りが壊れる典型は「構造的な下落」です。例えば、供給過剰が長期化し、先物曲線が強いコンタンゴで固定されると、価格が横ばいでもETFの成績が悪化しがちです。こういう局面では“買っても戻らない”が続きます。だからこそ、タイムアウトと損切りが必要になります。

リスク管理:初心者が最初に守るべき3つ

1)ポジションサイズを小さく固定する

最初から大きく張ると、数回の損切りでメンタルが崩れます。運用資金のうち、コモディティ枠を例えば10〜20%の範囲に決め、そこから2本に割る(各5〜10%)と、損益のブレを抑えられます。

2)損切りとタイムアウトは“セット”で使う

損切りだけだと、ノイズで振られて終わることがあります。タイムアウトだけだと、戻らない銘柄を抱え続けます。両方をセットにして、戦略の“崩壊”を避けます。

3)総合指数を“逃げ先”として用意する

ローテーションで買う候補がどれも極端に崩れているとき、無理に逆張りをすると連敗しやすいです。そういうときは総合指数(バスケット)を代替として使う、あるいは現金比率を上げる、という逃げ道をルールに入れておくと安定します。

実践シナリオ:インフレ鈍化→金利高止まり→景気減速の流れ

ここでは、よくあるマクロの流れを仮定して、戦略の意思決定がどうなるかをイメージします。

フェーズA:インフレが鈍化し、商品全体が売られる

市場が「インフレは終わった」と見始めると、商品セクターが一斉に売られることがあります。このとき、8週騰落率の下位にエネルギーと産業金属が来やすい。ルール通り買うと、“嫌われているところ”を拾う形になります。

フェーズB:供給制約や地政学で一部だけ急反発

エネルギーはニュースで急反発しやすく、利確ライン(+8%)に到達することがあります。利確したら、次週は「今度は農産物が最下位」など、別の売られ過ぎに移ります。

フェーズC:景気減速で再び金属が弱い

産業金属が戻らずタイムアウトに達したら、一旦降りて次の候補へ。戻らない局面を抱え続けないのがこの戦略の強みです。

コモディティETF特有の注意点:見落としやすい落とし穴

先物ロールと「価格が合っているのに成績が違う」現象

同じ“原油”でも、ETFの設計(期近中心か、複数限月分散か)でロールの影響が変わります。ニュースで見るスポット価格や先物期近のチャートだけで判断すると、実際に保有するETFの損益とズレることがあります。戦略を回す前に「そのETFが何を持つのか(どの限月か)」は確認してください。

ボラティリティが高いので、逆指値が滑ることがある

急変時はスプレッドが広がり、逆指値が想定より悪い価格で約定することがあります。週次で終値判定→翌日成行、のように「ルールを簡単にする」場合でも、急変時の実行コストは想定に入れてください。

分散のつもりが、実は相関が高い局面

商品は別々に見えて、リスクオフではまとめて売られることがあります。2本分散でも同時に負ける週は普通にあります。だからコモディティ枠を取り過ぎない、という話に戻ります。

上級者向けの拡張:フィルターを1つだけ追加するなら

ルールが複雑になると再現性が落ちます。拡張するなら、フィルターは1つに絞るのが現実的です。おすすめは次のどちらかです。

(A)トレンドフィルター:総合指数が20週線より上のときだけ逆張り

商品全体が上向きのときは、逆張りが成功しやすい傾向があります。全体が下向きのときは、逆張りが連敗しやすい。総合指数を“地合い”として使う発想です。

(B)ボラフィルター:直近の値動きが極端なときは保有本数を減らす

例えば、直近2週間の変動が大きすぎる場合は2本→1本にする、などです。やりすぎると裁量になりますが、極端な局面でのダメージを抑える狙いがあります。

チェックリスト:毎週末にやること(運用手順)

最後に、作業を“ルーチン化”します。週次運用なら、次の流れです。

  1. 各セクターETFの終値を取得する(同じタイミングの終値で揃える)
  2. 過去8週の騰落率を計算し、下位2つを抽出する
  3. 保有中のポジションが利確/損切り/タイムアウト条件に該当するか確認する
  4. 該当するものは翌週に手仕舞いし、下位2つに入れ替える
  5. 各ポジションに損切り(-7%)と利確(+8%)を再設定する
  6. コモディティ枠がポートフォリオ上限(例:20%)を超えていないか確認する

このチェックリストを守れば、ニュースでブレずに運用できます。コモディティは「当てる」より「崩れない運用」が重要です。

まとめ:この戦略が向いている人・向かない人

向いている人:ルールに従って淡々と入れ替えられる人、長期で握り続けるより“回して取りにいく”方が性格に合う人、株・債券以外の値動きをポートフォリオに入れたい人。

向かない人:損切りができない人、短期の損益に強くストレスを感じる人、売買の手間を一切かけたくない人。

コモディティETFは扱い方次第で武器になります。まずは小さく、週次の逆張りローテーションから始め、ルールを守れるかどうかを確認してください。

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の状況に照らして行ってください。

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