コモディティETFの逆張りローテーション――“行き過ぎ”だけを拾う実践フレーム

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  1. この戦略は何を狙うのか
  2. なぜコモディティETFなのか(株・FXと違う“歪み”)
    1. ① 需給ショックが起きると、価格が極端に振れやすい
    2. ② “供給が増える”まで時間がかかるため、反動も大きい
    3. ③ 先物ロールの影響が、商品ごとの差を作る
  3. 対象にするETFユニバース(初心者向けの現実解)
    1. 商品別ETF(代表例)
    2. バスケット型(総合コモディティ)
    3. まずは「5~8本」から始める
  4. 逆張りローテーションの中核ロジック
    1. (1)行き過ぎ指標:初心者は「価格だけ」で十分
    2. (2)逆張りしてはいけない局面:トレンドが強すぎるとき
    3. (3)ローテーション:その週の“最も下げ過ぎ”に資金を寄せる
  5. 具体的ルール例(初心者が回せる“週次”モデル)
    1. ユニバース
    2. 判定タイミング
    3. 買い条件(“行き過ぎ”の定義)
    4. 選択ルール(ローテーション)
    5. 資金配分
    6. 利確ルール(“平均に戻ったら降りる”)
    7. 損切りルール(“間違いを早く認める”)
  6. ロール(コンタンゴ/バックワーデーション)をどう扱うか
    1. 初心者向けの割り切り:保有期間を短くする
    2. 保有上限ルールを追加する
    3. 総合コモディティを“待機先”にする理由
  7. 実例でイメージする(架空の週次判断)
    1. 週1回のチェックで、買うか・待つかを決める
    2. 翌週、反動が出たら“淡々と利確”
    3. 反動が来ない場合は、損切りか時間切れ
  8. “勝ちやすい局面”と“危険な局面”の見分け方
    1. 勝ちやすい局面:ショック後の反動が出やすいとき
    2. 危険な局面:マクロの大きなトレンドが走っているとき
  9. リスク管理:商品は“想定外”が普通
    1. ① 1回のトレードで“致命傷”を負わない
    2. ② レバレッジ型は“別物”として扱う
    3. ③ 為替リスク(円建て投資家の盲点)
    4. ④ 取引コストと税制を無視しない
  10. 戦略を“自分仕様”にする調整ポイント
    1. ① 判定頻度(週次→隔週)
    2. ② 乖離幅(-8%→-10%)
    3. ③ 利確の早さ(-2%→0%)
    4. ④ コア資産の選び方
  11. よくある失敗パターン(ここだけは避ける)
    1. 失敗①:下がったから買う(ルールなし)
    2. 失敗②:損切りしない/ナンピンする
    3. 失敗③:商品を増やしすぎて管理不能
    4. 失敗④:短期反発に期待しすぎる
  12. 初心者のための運用チェックリスト(毎週これだけ)
  13. まとめ:逆張りは“選別”と“撤退”がすべて

この戦略は何を狙うのか

コモディティ(商品)ETFの「逆張りローテーション」とは、商品市場で起きやすい急騰・急落(行き過ぎ)を定量的に捉え、下げ過ぎた商品を買い、上げ過ぎた商品は買わない(または利益確定する)というルールを、複数のコモディティETF間で資金を回しながら運用する手法です。

株式のモメンタムと違い、商品は需給ショック(天候・地政学・在庫・OPEC・精製能力・運賃など)で価格が飛びやすい一方、時間が経つと「供給が増える/需要が減る/代替が進む」などで落ち着きやすい面があります。つまり、短期~中期で“平均回帰”が起きやすい局面があるのが特徴です。ここを狙います。

ただし、無差別に逆張りすると大損します。商品はトレンドが続くこともあり、さらにETFには先物ロールの影響(コンタンゴ/バックワーデーション)もあります。そこで本記事では、初心者でも事故りにくいように、「逆張りする条件」「避ける条件」「資金配分」「損失管理」までを一体にして解説します。

なぜコモディティETFなのか(株・FXと違う“歪み”)

コモディティは「現物が存在する」資産クラスです。現物の保管・輸送・精製・季節性・在庫制約があり、価格形成が株と異なります。これが“歪み”を生み、逆張りローテーションが成立しやすい土壌になります。

① 需給ショックが起きると、価格が極端に振れやすい

例として原油なら、OPEC政策、地政学リスク、精製所トラブル、在庫急増、景気減速などで短期に急落・急騰します。農産物なら天候(干ばつ・洪水)、病害、輸出規制などが引き金になります。金は実質金利・ドル・リスクオフで急変します。こうしたイベントは、短期に「行き過ぎ」を作りやすいです。

② “供給が増える”まで時間がかかるため、反動も大きい

価格が上がれば本来は供給が増えますが、商品は増産に時間がかかります。逆に価格が暴落すると投資が止まり、後から供給不足が生じます。つまり、価格は「行き過ぎ → 反動」を繰り返しやすい構造があります。

③ 先物ロールの影響が、商品ごとの差を作る

多くのコモディティETFは先物を使います。先物は満期があるため、ETFは定期的に乗り換え(ロール)ます。このとき、近い限月より先の限月が高い(コンタンゴ)と、ロールで目減りしやすい。一方、近い限月が高い(バックワーデーション)だと、ロールが追い風になります。

重要なのは、「同じ上昇でも、ロール構造が良い商品は持ちやすい」「ロールが悪い商品は短期で切り上げたい」という差が生まれることです。逆張りローテーションでは、この差をルールに組み込みます。

対象にするETFユニバース(初心者向けの現実解)

日本の個人投資家が扱いやすいのは、米国上場ETF(米ドル建て)と日本上場ETFです。ここでは“考え方”が主題なので、具体名は例示に留めます(売買推奨ではありません)。

商品別ETF(代表例)

原油、ガソリン、天然ガス、金、銀、銅、プラチナ、農産物(小麦・とうもろこし・大豆など)には、ETF/ETNが複数あります。商品ごとに値動きが違うため、ローテーションの素材になります。

バスケット型(総合コモディティ)

総合コモディティ指数に連動するETFは、商品単体の偏りが薄く、初心者でも扱いやすい反面、“尖った行き過ぎ”を拾いにくいという特徴があります。逆張りローテーションのコア資産(待機先)として使うと運用が安定しやすいです。

まずは「5~8本」から始める

いきなり商品を増やすと管理不能になります。初心者の現実解は、エネルギー(原油)、貴金属(金)、産業金属(銅)、農産物(小麦またはコーン)、総合コモディティの5本程度から。まずは“ルール通りに回せる”ことが最優先です。

逆張りローテーションの中核ロジック

この戦略の肝は、以下の3点です。

(1)行き過ぎを定義する指標を決める(2)逆張りして良い局面とダメな局面を分ける(3)複数商品から“最も下げ過ぎ”を選ぶ。これを週1回(または隔週)で回します。

(1)行き過ぎ指標:初心者は「価格だけ」で十分

最初から在庫統計やCOTを入れると挫折します。まずはチャート上の価格データだけで成立する形にします。おすすめは次の2段構えです。

・トレンドからの乖離(下げ過ぎ):例)価格が200日移動平均より大きく下に乖離している(-10%など)

・短期の過熱(投げ売り):例)14日RSIが30未満、または20日騰落率が-15%以下

両方を満たすときだけ「行き過ぎ」と判定します。これで“なんとなく逆張り”を排除できます。

(2)逆張りしてはいけない局面:トレンドが強すぎるとき

商品はトレンドが続くことがあります。特に景気後退の局面でのエネルギー暴落、金融引き締め局面での金属下落などは長引きます。ここで逆張りすると、ナンピン地獄になります。

そこで、「逆張り禁止フィルター」を入れます。実装が簡単で効果が出やすいのは次の2つです。

・長期移動平均の向き:200日移動平均が下向きなら買わない(または購入額を半分)

・急落の“継続”:直近5日でさらに-8%など、崩れが止まっていないときは見送る

これだけで「落ちてくるナイフ」を掴む頻度が下がります。

(3)ローテーション:その週の“最も下げ過ぎ”に資金を寄せる

ローテーションの考え方は単純です。候補(ユニバース)を並べ、行き過ぎ指標を計算し、最も条件に合致した商品を選びます。候補が複数なら、下げ過ぎの度合いが最大の上位1~2本に絞ります。

なぜ絞るのか。逆張りは勝率が高く見えても、勝ち幅が小さく、負けが大きいことがあるからです。分散しすぎると“薄い勝ち”になりやすい。逆に、ルールで選んだ少数に集中し、損失はルールで切るほうが運用がシンプルになります。

具体的ルール例(初心者が回せる“週次”モデル)

ここからは、そのまま運用設計に使えるよう、数値例を提示します。数値は“出発点”です。自分のリスク許容度で調整してください。

ユニバース

(例)原油ETF/金ETF/銅ETF/農産物ETF/総合コモディティETFの5本。

判定タイミング

毎週1回、同じ曜日・同じ時間(例:金曜終値ベース、または月曜寄り前)に判定。頻度を上げるほど判断がブレます。初心者は週次が現実的です。

買い条件(“行き過ぎ”の定義)

次をすべて満たすときだけ買い候補にする。

① 価格が200日移動平均より-8%以下に乖離(下に離れている)

② 14日RSIが30未満

③ 直近5日騰落率が-2%より小さくない(=直近が崩れっぱなしなら見送り)

選択ルール(ローテーション)

買い条件を満たすETFの中で、「200日MA乖離が最もマイナスのもの」を1位として選ぶ。2本目を持つ場合は2位も採用。ただし最大2本まで。

資金配分

初心者の安全設計として、資金を3つに分けます。

・コア(待機資金):50%…総合コモディティETFまたは現金(短期国債・MMF相当でも可)

・戦術(逆張り枠):40%…選択ルールで選ばれた1~2本に投入

・保険(想定外):10%…追加チャンス or ドローダウン時の調整用として温存

最初からフルインベストしない理由は、商品はギャップが起きやすく、想定以上に振れるからです。

利確ルール(“平均に戻ったら降りる”)

逆張りは欲張らないほうが成績が安定します。おすすめの利確は次のどちらか(または併用)です。

・200日移動平均乖離が-2%まで戻ったら利確(平均に戻った)

・14日RSIが50を超えたら利確(過熱が解消)

利確後はコアに戻すか、次の週のローテーション判定まで待機します。

損切りルール(“間違いを早く認める”)

逆張りの致命傷は「ナンピンで耐える」ことです。損切りは機械的に。

・エントリー後、終値ベースで-8%に達したら損切り

・または、200日移動平均が下向きに転じたら半分撤退

損切りが怖いなら、最初から逆張り枠(40%)を20%に落としてください。戦略よりも“継続できる”ことが価値です。

ロール(コンタンゴ/バックワーデーション)をどう扱うか

コモディティETFの難しさは、先物ロールの影響が「じわじわ効く」ことです。特に原油・天然ガスはコンタンゴが強い局面があり、長期保有に不利になることがあります。

初心者向けの割り切り:保有期間を短くする

逆張りローテーションは、原則として短期~中期(数週間~数カ月)の反動を取る戦略です。長期で抱えるほどロールコストが効きやすい商品は、「利確を早める」「保有上限を決める」が有効です。

保有上限ルールを追加する

例えば、エントリーから8週間(約2カ月)経っても利確条件を満たさないなら、一度手仕舞う。これは「反動が来ない=相場観が外れている可能性が高い」という割り切りです。ダラダラ持つと、ロール負け+機会損失の二重苦になります。

総合コモディティを“待機先”にする理由

単一商品はロール構造の影響が大きい場合があります。そこで、待機先(コア)を総合コモディティにすると、特定商品に偏ったロール負けを抑えやすい。逆張り枠だけを単一商品に寄せる設計が、初心者には扱いやすいです。

実例でイメージする(架空の週次判断)

ここでは架空の数字で流れを示します。実際の価格は不要で、判断手順を掴むのが目的です。

週1回のチェックで、買うか・待つかを決める

ある週の判定で、5本のうち「銅ETF」が200日MA乖離-12%、RSI28、直近5日-1%(崩れは止まり気味)。「原油ETF」は乖離-15%、RSI25だが直近5日-10%(崩れ継続)。この場合、ルール上は原油は見送り、銅が1位として採用されます。

逆張り枠40%を銅ETFに投入(2本持つ場合でも、原油は見送りなので銅のみ)。待機の50%はコアへ。

翌週、反動が出たら“淡々と利確”

2週間後、銅ETFが反発し、乖離が-3%まで戻り、RSIも52。利確条件に到達したため、逆張り枠を手仕舞いし、コアへ戻します。ここで“もっと伸びるかも”は禁物です。逆張りは平均回帰の取り分を抜く戦略で、欲張ると回転率が落ち、結局パフォーマンスが鈍ります。

反動が来ない場合は、損切りか時間切れ

もし銅ETFがさらに下落し、終値ベースで-8%の損切りラインに到達したら損切り。あるいは下落せずに横ばいが続き、8週間経っても戻らないなら時間切れで撤退。次の“行き過ぎ”に備える。これが生き残りの作法です。

“勝ちやすい局面”と“危険な局面”の見分け方

同じ逆張りでも、局面で成績が激変します。ここは初心者が最も損しやすいポイントなので、実務的に整理します。

勝ちやすい局面:ショック後の反動が出やすいとき

・ニュースで悪材料が出尽くし、急落が止まってから(出来高が増え、下ヒゲが出るなど)

・在庫・需給の「次の一手」が見え始めたとき(例:増産の発表、輸出規制緩和など)

・ドル高が一服して、商品全体が落ち着き始めたとき

このとき逆張りは、比較的短期間で戻りが出やすいです。

危険な局面:マクロの大きなトレンドが走っているとき

・景気後退が明確で、需要減が続く局面(エネルギーや産業金属が下げ続けやすい)

・金融引き締めが加速し、実質金利が上がり続ける局面(貴金属が弱くなりやすい)

・コンタンゴが極端で、ロールコストが重い局面(短期反発が弱いことがある)

この局面では、逆張り枠を減らす・フィルターを厳しくする・待機を増やす、のいずれかが必要です。

リスク管理:商品は“想定外”が普通

初心者が最初に身につけるべきは、指標よりリスク管理です。商品はギャップが出ます。しかもレバレッジ商品やETNなど、商品以上にリスクが高い器も混じります。ここでは、事故を避けるための実務ルールをまとめます。

① 1回のトレードで“致命傷”を負わない

逆張り枠40%のうち、1本に全投入するなら、そのETFの最大許容損失(例:-8%)を掛け算して、口座全体の損失が何%になるかを先に計算します。40%×8%=3.2%。この程度なら、連敗しても再起が可能です。ここが大きすぎるなら、逆張り枠自体を減らしてください。

② レバレッジ型は“別物”として扱う

レバレッジETFは、同じ逆張りでも損切りが滑りやすく、リバランスの影響もあります。初心者はまず“非レバ”で完成させてから検討するのが安全です。

③ 為替リスク(円建て投資家の盲点)

米国上場のコモディティETFを買うと、商品価格に加えてドル円の変動も乗ります。商品が上がっても円高で相殺されることがある。逆張りローテーションの初心者は、まずは為替ヘッジなしで、「ポジションを小さくする」「週次で淡々と回す」で対応するほうが管理が簡単です(ヘッジは高度)。

④ 取引コストと税制を無視しない

週次とはいえ回転が増える戦略です。スプレッド、売買手数料、為替手数料、税金で手取りが削られます。だからこそ、“大きな行き過ぎ”だけを拾うように条件を厳しめにするのが合理的です。小さな逆張りを頻繁にやるほど、コスト負けしやすい。

戦略を“自分仕様”にする調整ポイント

本記事のルール例は出発点です。ここから、自分の性格・資金・時間に合わせてチューニングします。

① 判定頻度(週次→隔週)

忙しい人は隔週でも成立します。隔週にすると売買回数が減り、コスト負けが減る一方、反動の初動を逃しやすい。どちらが合うかは生活に合わせて決めてください。

② 乖離幅(-8%→-10%)

条件を厳しくするとトレード回数が減り、勝率が上がりやすい一方、機会損失が増えます。初心者はまず厳しめ(-10%など)で“選別”するほうが安全です。

③ 利確の早さ(-2%→0%)

平均まで戻るのを待つと利幅が増えるが、戻り切らずに再下落することもある。初心者は早め利確(-3%やRSI50超え)で回転率を上げ、経験を積むのが現実的です。

④ コア資産の選び方

コアを総合コモディティにすると“商品に居続ける”設計になります。現金・短期国債にすると、リスクを落として“チャンス待ち”になります。自分が求めるボラティリティ(値動き)で選びます。

よくある失敗パターン(ここだけは避ける)

失敗①:下がったから買う(ルールなし)

逆張りは、下げた“理由”が解消する前にやると危険です。だから、価格ベースでも良いので「下げ過ぎ+崩れ停止」の条件を置く。これを外すと、ただのギャンブルになります。

失敗②:損切りしない/ナンピンする

商品は想定外が連発します。ナンピンは“正しい時は儲かる”が、“外れた時に破滅する”。初心者は最初からナンピン禁止をルール化してください。

失敗③:商品を増やしすぎて管理不能

ローテーションは“比較”が命です。銘柄が増えると比較が増え、判断がブレます。5本で回せないなら、10本は無理です。

失敗④:短期反発に期待しすぎる

反発は来ないこともある。だから損切りと時間切れが必要です。逆張りは“来たら取る、来なければ撤退”の割り切りが成績を作ります。

初心者のための運用チェックリスト(毎週これだけ)

最後に、作業を最小化したチェックリストを置きます。これを回せるなら、戦略は実装できます。

1)ユニバース5本の価格を確認(終値)

2)各ETFの「200日MA乖離」「RSI」「直近5日騰落率」を確認

3)買い条件を満たすものだけ候補化

4)候補の中で乖離が最大の1本(最大2本)を選択

5)資金配分ルールに従って購入/または見送り

6)保有中は利確・損切り・時間切れを機械的に実行

7)取引結果をメモ(ルール遵守できたかだけで良い)

まとめ:逆張りは“選別”と“撤退”がすべて

コモディティETFの逆張りローテーションは、商品市場の“行き過ぎ”を取る戦略です。ポイントは、逆張りする回数を減らす(選別)ことと、外れたら早く撤退する(損切り・時間切れ)こと。これさえ守れば、初心者でも再現性を作れます。

そして、最も重要なのは「大当たりを狙わない」ことです。平均回帰の取り分を淡々と積み上げ、損失を限定し、次のチャンスに備える。これが商品逆張りで生き残る現実的なやり方です。

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