セクターETFローテーション戦略:景気循環と金利で「勝ち筋」を作る実践ガイド

ETF

セクターETFローテーションは、「市場全体を当てる」のではなく、「同じ株式の中で、勝ちやすい領域へ資金を移す」運用です。指数(S&P500やTOPIX)に対して相対的に強いセクターは、景気循環、金利、クレジット、インフレ期待、政策(財政・規制)といったドライバーで入れ替わります。これを“体系化したルール”で捉え、機械的に配分を切り替えるのがローテーション戦略の本質です。

個人投資家がやりがちな失敗は、ニュースを見て「今はAIだ」「今は防衛だ」とテーマに飛び乗り、ピークに掴んで降りられないことです。ローテーションは、①どの環境でどのセクターが優位になりやすいか②環境が変わったサインを何で確認するか③売買の頻度とコストをどう抑えるかを事前に決め、例外を減らして勝率を上げます。

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  1. セクターETFローテーションが機能しやすい理由
  2. まず押さえる:主要セクターと“勝ちやすい環境”の地図
  3. ①景気拡大(リスクオン)で優位になりやすいセクター
  4. ②景気減速(リスクオフ)で相対的に強いセクター
  5. ③金利低下で追い風になりやすいセクター
  6. ④インフレ上振れで優位になりやすいセクター
  7. ローテーションの“設計思想”を決める:予測型 vs 追随型
  8. 使うETFの選び方:最初にここを間違えると勝てない
  9. 実務で使いやすいセクターETFの例(米国中心)
  10. 最小構成で作る:3つのローテーションモデル
  11. モデルA:景気循環(レジーム)×ディフェンシブ切替
  12. モデルB:相対強度(モメンタム)上位セクターを買う
  13. モデルC:金利レジーム(長期金利の方向)でグロース/バリューを切替
  14. バックテストで“勝ち筋”を作る手順(個人がやる現実的な方法)
  15. 具体例:モメンタム3本ローテーションの運用イメージ
  16. ローテーションで最重要のリスク管理:勝っていても死ぬパターンを潰す
  17. ①ポジションサイズ(比率)を固定し、ナンピンしない
  18. ②“例外処理”を減らす(裁量を入れる場所を限定)
  19. ③最大損失を先に決める:ドローダウン許容で設計する
  20. ④コストと税の最適化:個人の実利はここで決まる
  21. 日本株・日本ETFでローテーションをやるときの注意点
  22. ありがちな失敗と、回避するためのチェックリスト
  23. 実装テンプレ:今月から始める最小ルール(文章で完結する形)
  24. 最後に:ローテーションは「当てる技術」ではなく「負け方を設計する技術」
  25. 成績評価のしかた:指数に勝てない月があっても慌てない
  26. 売買タイミングの実務:月末リバランスの“クセ”を利用する
  27. ローテーションを長期で続けるための“メンタル設計”

セクターETFローテーションが機能しやすい理由

株式市場のセクターは、同じ「株」という資産クラスでも、収益構造とバリュエーション要因が異なります。代表的には次の違いが大きいです。

金利感応度:将来利益の比重が大きいグロース(情報技術など)は、割引率(長期金利)上昇でバリュエーションが縮みやすい。一方、金融は金利上昇で利ざやが改善しやすい局面があります。

景気感応度:景気拡大では資本財・一般消費財・素材が強くなりやすい。景気減速では生活必需品・ヘルスケア・公益が相対的に底堅い。

インフレ・コモディティ感応度:エネルギーや素材は商品価格に連動しやすく、インフレ局面で相対優位になりやすい。

つまり、マクロ環境の変化は「全体の上げ下げ」だけでなく、「どのセクターがより得をするか/損をするか」を生みます。セクターETFはその差分を取りにいく道具です。

まず押さえる:主要セクターと“勝ちやすい環境”の地図

ローテーションを始める前に、セクターを“性格”で分類します。ここが曖昧だと、ルールを作ってもブレます。

①景気拡大(リスクオン)で優位になりやすいセクター

一般消費財(消費裁量):可処分所得と消費マインドが改善すると伸びやすい。金利が急騰しない範囲で強い。

資本財・工業:設備投資と受注が増える局面で強い。物流、航空、機械、建設関連などを含み、PMIや受注統計の改善と相性が良い。

素材:在庫循環と中国・世界需要、コモディティ価格に反応しやすい。景気の“加速”局面で目立ちやすい。

金融:景気が悪化しない範囲で金利が上がる局面(イールドカーブが立つ局面)で強い傾向。信用コストが悪化すると逆回転します。

②景気減速(リスクオフ)で相対的に強いセクター

生活必需品:景気が悪くても需要が落ちにくい。指数下落局面で相対パフォーマンスが出やすいが、上昇相場では置いていかれやすい。

ヘルスケア:需要の非循環性に加え、ディフェンシブ寄り。ただし薬価規制や政策リスクが局地的に出ます。

公益(ユーティリティ):配当・ディフェンシブとして選好される一方、金利上昇に弱い局面がある(債券代替として見られるため)。

③金利低下で追い風になりやすいセクター

情報技術:長期金利低下は割引率を下げ、バリュエーションが上がりやすい。ただし業績が伴わない“PER膨張”だけの相場では反転も早い。

不動産(REITを含む):金利低下で資金調達環境が改善しやすい。逆に金利上昇は逆風。

④インフレ上振れで優位になりやすいセクター

エネルギー:原油・ガス価格の上昇でキャッシュフローが改善しやすい。配当・自社株買い余力が増える局面がある一方、急落局面のボラは大きい。

素材:同様に価格転嫁と商品価格が鍵。ただし需要崩れと同時にインフレが収束する局面では弱い。

ローテーションの“設計思想”を決める:予測型 vs 追随型

セクターローテーションには大きく2系統あります。

予測型(トップダウン):景気・金利・インフレの見立てで「次に強くなるセクター」を先回りして仕込む。うまく当たれば大きいが、外した時の損失と粘りが問題になりやすい。

追随型(モメンタム):実際に強いセクターを相対強度で選び、弱くなったら機械的に入れ替える。ピークを完全には取れないが、外れ続けるリスクを下げやすい。

個人投資家が安定させやすいのは追随型です。予測型は「当たった時の快感」でロットが膨らみやすく、外れた時に損切りが遅れがちです。まずは追随型で骨格を作り、経験が積めたら予測型の“バイアス”を少しだけ足す、が現実的です。

使うETFの選び方:最初にここを間違えると勝てない

ローテーションは戦略より先に「器」で差が出ます。ETF選定のチェックポイントは以下です。

①流動性:売買代金が小さいETFはスプレッドが広く、回転売買でコスト負けします。ローテーションではここが致命傷になりやすい。

②経費率:長期で持つほど効きます。ローテーションは回転するので「経費率だけで決める」のは危険ですが、同等なら低い方が良い。

③指数の中身:同じ“半導体ETF”でも構成銘柄の偏りが違います。上位銘柄の集中度、米国比率、海外売上比率、時価総額バイアスを確認します。

④税務・口座:海外ETFは配当課税や二重課税調整の手間が増えます。回転頻度が上がるほど、税コストがパフォーマンスを削ります。

実務で使いやすいセクターETFの例(米国中心)

米国はセクター分類が明確で、ETFも厚いので、ローテーションの“教材”として最適です。代表例として、S&P500のセクターETF群(いわゆるSPDRセクター)をベンチにすると設計しやすいです。情報技術、金融、ヘルスケア、生活必需品、一般消費財、資本財、素材、エネルギー、公益、不動産、通信サービスなどが揃います。

日本だけで完結させる場合は、TOPIX-17や業種別ETFを組み合わせる設計になりますが、銘柄数や流動性の制約で“実行可能性”が落ちることがあります。最初は米国セクターで検証し、勝ちパターンを掴んでから日本に転用する方が失敗が少ないです。

最小構成で作る:3つのローテーションモデル

ここから具体的に「ルール」の話に入ります。いきなり複雑にすると運用できません。最初は次の3モデルのどれかで十分です。

モデルA:景気循環(レジーム)×ディフェンシブ切替

狙い:景気拡大では循環株、景気後退ではディフェンシブへ寄せる。

判定指標(例):景気先行指数(LI)、ISM/PMI、失業率のトレンド、クレジットスプレッド(HY-OAS)、イールドカーブ(2年-10年)など。

ルール例:月1回判定。景気加速シグナルが優勢なら「資本財+一般消費財+金融」を均等配分。景気減速シグナルが優勢なら「生活必需品+ヘルスケア+公益」を均等配分。

ポイント:景気指標は遅行・改定があるため、単一指標で決めない。必ず複数の“同じ方向”を確認します。

モデルB:相対強度(モメンタム)上位セクターを買う

狙い:実際に強いセクターに乗る。先入観を排除する。

ルール例:毎月末に、各セクターETFの過去6か月リターン(または12か月)を計算。上位3つを選び、翌月はそれを等金額で保有。次の月末に再計算して入れ替え。弱いセクターを持ち続けない。

実装のコツ:短すぎる期間(1か月)だとノイズが大きい。長すぎる(3年)と鈍い。6〜12か月が現実的な落とし所になりやすいです。

落とし穴:急騰後に上位入りしたセクターを“天井買い”しやすい。これを抑えるために「トレンドフィルター(200日移動平均上)」を追加するのが定番です。

モデルC:金利レジーム(長期金利の方向)でグロース/バリューを切替

狙い:長期金利の上げ下げがバリュエーションに効くセクター差を利用する。

ルール例:10年金利が過去3か月で上昇トレンドなら「金融+エネルギー+資本財」。下落トレンドなら「情報技術+不動産+一般消費財」。

補助条件:金利上昇でも景気が悪い場合(スタグフレーション的局面)は、金融が弱くなることがある。クレジットスプレッド悪化が出たら金融比率を落とす、という“安全装置”が効きます。

バックテストで“勝ち筋”を作る手順(個人がやる現実的な方法)

ローテーションは検証しないと「雰囲気投資」になります。ただし、個人が完璧なバックテスト環境を作る必要はありません。必要なのは、再現可能なルールコスト込みの期待値です。

手順

1) 対象ETFを決める(10〜11セクター)。

2) リバランス頻度を決める(月次が基本)。

3) 選定ルールを一つに絞る(最初はモデルB)。

4) 手数料・スプレッドを“ざっくり控除”する(売買ごとに0.1%〜0.3%を仮置き、など)。

5) 最大ドローダウン、月次勝率、負け月の大きさを確認する。

勝っていてもドローダウンが大きい戦略は、途中でやめてしまい実現損が最大化します。パフォーマンスより「続けられる痛み」に合わせるのが現実解です。

具体例:モメンタム3本ローテーションの運用イメージ

ここではモデルB(上位3セクター)を例に、運用の流れを文章で具体化します。

毎月末、例えば「情報技術、通信サービス、一般消費財」が上位3つに入ったとします。翌営業日にこの3つを各33.3%で購入します。翌月末に再計算すると、今度は「エネルギー、金融、資本財」が上位に入れ替わったとします。その場合、前の3つは全売却し、新しい3つを購入します。

この運用はシンプルですが、売買回数が多くなりやすいので、次の工夫が効きます。

工夫1:入れ替えの閾値を設ける…例えば4位以下に落ちたら売る、3位→2位の入れ替え程度では売買しない。無駄な回転を減らします。

工夫2:現金(または短期債)フィルター…全セクターが200日移動平均を下回る局面は株式全体が弱いことが多い。そういう月は現金比率を上げる(または短期国債ETFへ逃がす)。

工夫3:上位の偏りを許容する…同じ“成長株”が上位に固まることがあります。相関が高い3本だと分散の意味が薄い。セクターを「景気循環」「ディフェンシブ」「金利敏感」などに分類し、各分類から1本ずつ選ぶ制約を入れると、ドローダウンが改善することがあります。

ローテーションで最重要のリスク管理:勝っていても死ぬパターンを潰す

セクターローテーションは「当たり外れ」よりも、外れた時に致命傷を避ける設計が収益の安定に直結します。以下は優先度が高いです。

①ポジションサイズ(比率)を固定し、ナンピンしない

負けているセクターに追加投入(ナンピン)すると、ローテーションの思想と矛盾します。相対的に弱いものに資金を増やす行為だからです。比率は固定、入れ替えはルール、が鉄則です。

②“例外処理”を減らす(裁量を入れる場所を限定)

裁量を入れるなら、例えば「リバランス日を月末の翌営業日から3営業日以内にする」など、機械的に運用できる範囲に限定します。「今回はニュースが不安だから見送る」は、長期的にはパフォーマンスを悪化させやすいです。

③最大損失を先に決める:ドローダウン許容で設計する

戦略の想定最大ドローダウンが30%なら、運用資金は“30%下がっても生活が崩れない金額”にするべきです。ここを無視すると、最悪の局面で撤退し、その後の回復を取り逃がします。ローテーションは“続けた人が勝つ”側面が強いです。

④コストと税の最適化:個人の実利はここで決まる

回転売買は税コストを増やします。特定口座で損益通算が効く形に揃える、同じ口座で完結させる、分配金が多いETFに偏らない(分配課税が増える)など、実務面で差が出ます。

日本株・日本ETFでローテーションをやるときの注意点

日本でも業種別ETFはありますが、米国ほどセクターETFの流動性が厚くない場合があります。その結果、スプレッドが広く、月次の入れ替えでもコスト負けしやすいことがあります。日本市場で実行するなら、次の考え方が現実的です。

①セクター数を絞る:多くても5〜7程度に圧縮する。回転頻度を落とす。

②個別株の“業種バスケット”で代替する:ETFの流動性が弱いなら、業種代表銘柄を3〜5銘柄でバスケット化する。ただし銘柄固有リスクが増えるため、決算リスクの管理が必要です。

③TOPIXをベースに“上乗せ”する:コアはTOPIX/日経225、サテライトでセクター比率を変える。これなら売買の総量を抑えつつ、ローテーションの旨味を取りにいけます。

ありがちな失敗と、回避するためのチェックリスト

失敗1:テーマに恋をする…「半導体は永遠に強い」など。ローテーションは“強さが変わる”前提の運用です。強い理由が消えたら機械的に降ります。

失敗2:指標が増えすぎて動けない…情報過多で判断が止まります。最初は「月次・6か月モメンタム・上位3つ・200日フィルター」程度で十分です。

失敗3:短期で結果を求めすぎる…ローテーションは年単位で効く戦略です。3か月単位でブレるのは普通です。

失敗4:売買コストを無視する…最終利益は“摩擦控除後”です。手数料無料でもスプレッドは必ず残ります。

実装テンプレ:今月から始める最小ルール(文章で完結する形)

ここまでを踏まえ、迷わず始められるように、最小の実装テンプレを提示します。

対象:米国セクターETF(情報技術、金融、ヘルスケア、生活必需品、一般消費財、資本財、素材、エネルギー、公益、不動産、通信サービス)

頻度:月1回(毎月最終営業日)

選定:過去6か月リターン上位3本

フィルター:各ETFが200日移動平均を上回るものだけを採用。条件を満たすETFが0本なら、当月は短期国債(または現金)に退避。

配分:採用ETFを均等配分(1〜3本)

売買:翌営業日に成行ではなく指値(スプレッドが広い時間帯を避ける)

見直し:年1回だけルールを振り返る(途中で頻繁に改造しない)

最後に:ローテーションは「当てる技術」ではなく「負け方を設計する技術」

セクターETFローテーションは、派手な一発当てではありません。相場の局面が変わるたびに、資金が移る先を“ルール”で追いかけ、弱い場所に居続けない。その積み重ねで、指数に対する優位性(アルファ)を狙う運用です。

重要なのは、完璧な予測より、単純で継続可能な手順と、コスト・税・リスクを織り込んだ現実的な設計です。まずは小さく始め、月次のルール運用に慣れ、想定外の局面で自分がどう反応するかを確認してください。ローテーションは「運用者の癖」が成績を決める戦略です。

成績評価のしかた:指数に勝てない月があっても慌てない

ローテーションは「常に市場に勝つ」戦略ではありません。評価の軸を間違えると、良い戦略でも途中で捨てます。最低限、次の3つを同時に見ます。

①相対リターン(対ベンチマーク):米国ならS&P500、日本ならTOPIXなど、コア指数に対して中長期で勝てているか。単月や四半期で判断しない。

②リスク調整後リターン:リターンが同等なら、変動(ボラティリティ)が小さい方が再現性が高い。Sharpe比や下方リスク(最大ドローダウン)を重視します。

③“悪い時の姿”:負ける局面がどういう局面かを特定します。例えば、急落後のリバウンド相場ではディフェンシブから循環へ切替が遅れて取り逃がしやすい、など。弱点が分かれば、フィルターや回転頻度の調整で改善できます。

売買タイミングの実務:月末リバランスの“クセ”を利用する

セクターETFは、月末・四半期末に機関投資家のリバランス需要が出やすく、引けにかけて出来高が増えることがあります。個人が無理に引けで戦う必要はありませんが、スプレッドが広い時間帯(寄り直後)を避ける指値を置いて滑りを抑えるといった基本動作でコストが変わります。

また、入れ替えの頻度を月次に固定することで、ニュースに振り回されにくくなります。「途中でルールを破った月」が一番損失を出しやすい、というのは運用現場でも典型です。

ローテーションを長期で続けるための“メンタル設計”

ルールがあっても、人間は負けるとルールを破ります。これを防ぐには、あらかじめ“破りたくなる状況”を想定しておくのが有効です。具体的には、(1)想定最大損失を下回る資金規模で始める、(2)リバランス日はカレンダーに固定し、迷う時間を減らす、(3)成績は月次でしか見ない、の3点が効きます。

ローテーションは、相場観の勝負ではなく、運用プロセスの勝負です。プロセスが崩れると、どれだけ良いルールでも意味がありません。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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