セクターETFローテーション戦略:景気循環と金利局面を味方にする実装ガイド

ETF

セクターETFローテーションは、「市場全体に投資する」のではなく、相対的に勝ちやすいセクターへ資金を移すことで超過リターンを狙う方法です。個別株より分散が効き、インデックスよりもテーマ性が強い。つまり、個人投資家が“運用ルール”として扱いやすい領域です。

一方で、ローテーションは「勘」でやると高確率で負けます。セクターの強弱はニュースより先に価格に出ますし、景気や金利の“転換点”は後から説明されるからです。必要なのは、事前に決めたサイン(指標)と、淡々と回す手順です。

この記事では、景気循環・金利・インフレを軸に、セクターETFをどう選び、いつ入れ替え、何に注意して運用するかを、初心者でも実装できるレベルまで落とし込みます。最後に、実際に回せる「ルール例」を複数提示します。

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  1. セクターETFローテーションとは何か
  2. まず押さえる:セクターの性格(感応度)を覚える
    1. 1)金利に強い/弱い(デュレーションの違い)
    2. 2)景気に強い/弱い(景気感応度)
    3. 3)インフレに強い/弱い(価格転嫁力)
  3. ローテーションを“勘”から“ルール”に落とすための設計図
    1. ステップA:ユニバースを固定する
    2. ステップB:リバランス頻度を決める
    3. ステップC:サイン(指標)を2系統にする
    4. ステップD:売買ルールを単純にする(上位N本)
  4. 景気循環で見る:4局面と勝ちやすいセクター
    1. 局面1:回復初期(金融条件が緩む/景況感が底打ち)
    2. 局面2:拡大中期(景気が強く、需給も良い)
    3. 局面3:減速後期(インフレ・金利が上振れ/利益率が圧迫)
    4. 局面4:後退・危機(リスクオフ/流動性が支配)
  5. 実装ルール例1:相対モメンタム(上位3セクター)+市場フィルター
    1. ルール
    2. 狙いと強み
    3. 弱点と対策
  6. 実装ルール例2:景気サインで「攻め/守り」を切り替える
    1. サイン(例)
    2. ポートフォリオ(例)
  7. 実装ルール例3:金利局面で「金融/グロース/ディフェンシブ」を再配分する
    1. ルールの考え方
    2. 具体的な運用イメージ
  8. 個人がやりがちな失敗パターンと回避策
    1. 失敗1:ニュースを見てから乗る(遅い)
    2. 失敗2:当てにいき過ぎる(局面認定に固執)
    3. 失敗3:売買回数が多すぎる(コスト負け)
    4. 失敗4:為替を無視する(日本在住の落とし穴)
  9. 検証(バックテスト)の最低限:個人が守るべきルール
    1. 1)データの先読みをしない
    2. 2)コストを入れる
    3. 3)期間を長く、局面を跨ぐ
    4. 4)シンプルな基準に勝てるかを確認する
  10. 運用の現場:毎月やるチェックリスト(これだけで回る)
  11. まとめ:ローテーションは“当てる”より“外しても致命傷にならない設計”

セクターETFローテーションとは何か

セクターETFは、GICSなどの業種分類に沿って、特定の産業セクター(例:情報技術、金融、生活必需品、エネルギー等)にまとめて投資するETFです。ローテーション戦略は、この複数セクターを横断し、相対的に強いセクターに寄せ、弱いセクターを外すことを狙います。

超過リターンの源泉は大きく2つです。

  • マクロ要因の非対称性:金利上昇はグロースに逆風、信用環境の改善は金融に追い風など、セクターごとに感応度が違う。
  • 需給と期待のズレ:景気後退が「噂」され始める段階と、実体経済が底打ちする段階では、強いセクターが入れ替わる。

ここで重要なのは、「景気が良いから景気敏感株」では遅い、ということです。市場は先読みするので、“今の景気”より“これからの変化”を扱う必要があります。

まず押さえる:セクターの性格(感応度)を覚える

ローテーションの精度は、セクターの“性格”を理解しているかで決まります。難しい理屈は不要で、以下の3軸で把握してください。

1)金利に強い/弱い(デュレーションの違い)

将来利益への期待が大きいグロース系(情報技術、一般消費財の一部など)は、割引率(=金利)が上がると相対的に不利です。逆に、金融は金利上昇局面で利ざや改善が期待されやすい。一方で急激な金利上昇は信用不安を誘発し、金融にも逆風になり得ます。“金利が上がる”だけでなく“上がり方”まで見るのがコツです。

2)景気に強い/弱い(景気感応度)

景気が良いと売上が伸びやすいのが景気敏感(資本財、素材、エネルギー、一般消費財の一部)。逆に、景気が悪くても売上が大きく落ちにくいのがディフェンシブ(生活必需品、ヘルスケア、公益)。

3)インフレに強い/弱い(価格転嫁力)

インフレ局面では、原材料価格に連動しやすいエネルギーや素材が強くなりやすい一方、コスト増を価格に転嫁しづらい業種は利益が圧迫されます。「インフレ=全部株にプラス」ではなく、勝者と敗者が分かれるのが現実です。

ローテーションを“勘”から“ルール”に落とすための設計図

初心者が最初にやるべきは、複雑なモデルを組むことではありません。ローテーションは「判断→売買→検証→修正」を回す仕組みです。ここでは、再現性を上げるための設計図を示します。

ステップA:ユニバースを固定する

扱うETF群(ユニバース)を固定します。毎回銘柄を変えると、検証も運用も破綻します。例えば米国なら主要セクターETF(例:S&P500のセクター系)を11本程度に揃える。日本ならTOPIXのセクターETF群、または自分が理解できる範囲で「銀行」「電力・ガス」「医薬品」などに絞る。

ユニバースを固定するメリットは、比較(相対強弱)が明確になることです。ローテーションの本質は「相対的に強いものを買う」なので、比較対象がぶれると戦略が成立しません。

ステップB:リバランス頻度を決める

個人投資家は、日次で回す必要がありません。むしろ短期はノイズが多く、売買回数が増えてコストが勝ち筋を削ります。基本は以下のどちらかで良いです。

  • 月1回(毎月末 or 翌月初):実装が簡単で、指標も月次で揃いやすい。
  • 四半期1回(決算シーズン後):売買回数が減り、税務・手数料面で楽。

最初は月次がおすすめです。理由は、検証サイクルが速く、改善が早いからです。

ステップC:サイン(指標)を2系統にする

サインを1つにすると、外れたときに全損します。2系統にして、片方が誤作動してももう片方がブレーキになります。例として、以下の組み合わせが実務的です。

  • 景気系:PMI/ISM、景気先行指数、雇用の変化、企業の利益修正の方向
  • 金融条件系:政策金利の方向、実質金利、クレジットスプレッド、長短金利差

ニュースではなく、数値で条件を決めるのがポイントです。「利下げが近い気がする」ではなく、「市場金利がピークアウトして低下トレンドに入った」など、条件化します。

ステップD:売買ルールを単純にする(上位N本)

ローテーションの定番は相対モメンタムです。やり方はシンプルで、過去3〜12か月のリターンが強いセクター上位N本を保有する。これだけでも「勝ちやすいところに乗る」構造になります。

ただし、相対モメンタムはトレンドが反転する局面で弱い。そこで、次の“条件フィルター”を足します。

  • 市場全体(例:S&P500)が200日移動平均を下回っているなら、保有数を減らす、あるいはディフェンシブへ寄せる
  • クレジットスプレッドが急拡大中なら、景気敏感の比率を落とす

こうすることで、トレンドフォローの弱点である「急落局面の追随遅れ」を緩和できます。

景気循環で見る:4局面と勝ちやすいセクター

景気循環をざっくり4局面に分けると、ローテーションの地図が描けます。厳密に当てにいく必要はありません。重要なのは、局面が変わると“勝ちやすいセクター”が変わる、という事実です。

局面1:回復初期(金融条件が緩む/景況感が底打ち)

株式市場は景気の底より先に反応します。回復初期は、悲観が残る中で政策や金融条件が緩み、景気指標が改善に転じる局面です。このとき強くなりやすいのは、景気敏感の中でもβが高い領域です。例として、資本財、一般消費財(裁量消費)、素材などが候補になります。

具体例:PMIが底を打って上向き、長短金利差が改善し始めたら、景気敏感セクターの上位モメンタムを拾う。ただし、信用不安が残るなら金融は慎重に扱う。

局面2:拡大中期(景気が強く、需給も良い)

拡大中期は、企業利益が伸び、市場がリスクを取りやすい局面です。成長期待が高まりやすく、情報技術や通信のような成長セクターが強くなりがちです。ここでの注意点は、金利上昇が同時進行しやすいことです。「成長セクターが強いが、実質金利も上がる」という綱引きになります。

具体例:米国なら、ハイテクのアウトパフォームが続く一方、実質金利が急騰した瞬間にハイテクが崩れることがある。上位モメンタムに乗りつつ、金利急騰のフィルター(例えばTIPS利回りの急上昇)でポジションを軽くする。

局面3:減速後期(インフレ・金利が上振れ/利益率が圧迫)

減速後期は、金融引き締めの影響が出始め、需要が落ちてくる局面です。ここではディフェンシブ(生活必需品、ヘルスケア、公益)が相対的に強くなりやすい。さらに、インフレが残るならエネルギーが粘ることもあります。

具体例:雇用が鈍化し、信用スプレッドが拡大、景況感が悪化する中で、上位モメンタムがディフェンシブに移るなら、素直に寄せる。無理に景気敏感を握り続けない。

局面4:後退・危機(リスクオフ/流動性が支配)

危機局面は「業績」より「流動性」が支配します。多くのリスク資産が同時に売られ、セクター間の差が縮むこともあります。ここでローテーションを無理に続けると、売買だけが増えます。“戦略を止める”ルールを用意してください。

具体例:市場が大きく下落し、クレジットが壊れ、VIXが急騰する局面では、セクター選択より現金比率やヘッジが重要。ローテーションはディフェンシブを持つ程度に抑えるか、一時停止して再開条件を待つ。

実装ルール例1:相対モメンタム(上位3セクター)+市場フィルター

ここからは、実際に個人が回せる形に落とします。ルールは最初から完璧でなくて良いですが、必ず「手順」と「例外条件」を書いてください。

ルール

毎月、以下を実行します。

  • 対象:固定したセクターETF群(例:11セクター)
  • 指標:過去6か月リターンで順位付け
  • 保有:上位3本を等金額で保有
  • フィルター:市場全体が200日移動平均を下回る場合、上位3本のうちディフェンシブ(生活必需品・ヘルスケア・公益)を優先し、該当が少なければ現金比率を増やす

狙いと強み

相対モメンタムは、「強いものは強い」性質を利用します。セクターは個別株よりトレンドが持続しやすいことがあり、月次運用と相性が良い。市場フィルターは、下落相場での被弾を減らす役割です。

弱点と対策

弱点は“往復ビンタ”です。レンジ相場や転換点で、上位が入れ替わり続けると損が積み上がる。対策は2つあります。

  • 順位の入れ替えに閾値を設ける:例えば、現保有の順位が4位に落ちても、4位との差が小さいなら継続保有する。
  • 保有期間の最小値を設ける:最低2か月は保有し、売買回数を抑える。

実装ルール例2:景気サインで「攻め/守り」を切り替える

相対モメンタムだけだと不安なら、“景気の温度計”でモードを切り替える方法が有効です。ここではシンプルな二段階を示します。

サイン(例)

  • 攻めモード:PMI/ISMが上向き、かつクレジットスプレッドが縮小傾向
  • 守りモード:PMI/ISMが下向き、またはクレジットスプレッドが拡大傾向

ポートフォリオ(例)

攻めモードでは、景気敏感の上位モメンタム(例:資本財、一般消費財、素材、情報技術など)を中心に上位3〜4セクターを保有。守りモードでは、ディフェンシブ(生活必需品、ヘルスケア、公益)を中心にし、必要なら債券ETFや短期資金を組み合わせます。

ここでのポイントは、守りモードでも“完全に降りる”必要はないことです。市場は後退の初期に大きく下げ、底打ち前に反発しがちです。極端な売買を避けるために、攻め:守り=70:30のように段階的に比率を変えるのも現実的です。

実装ルール例3:金利局面で「金融/グロース/ディフェンシブ」を再配分する

金利はセクターパフォーマンスを左右します。ただし、政策金利そのものより、市場が織り込む金利(中長期金利)と実質金利の動きが効きやすい。そこで、金利のトレンドで配分を変えるルールを作ります。

ルールの考え方

以下の3状態に分類します。

  • 実質金利上昇トレンド:グロースを軽くし、金融やバリュー寄りへ
  • 実質金利低下トレンド:グロース(情報技術など)や長期資産(REIT等)が有利になりやすい
  • 金利急変・信用不安:セクター選択より守り(ディフェンシブ、現金比率)を優先

具体的な運用イメージ

毎月、実質金利(例:インフレ連動債の利回り)または長期金利の移動平均を見て、上昇なら金融・資本財寄り、低下なら情報技術・REIT寄り、急変ならディフェンシブ寄り、といった大枠のバイアスを設定します。その上で、相対モメンタムで上位を拾うと、“宏観”と“相対強弱”が噛み合います。

個人がやりがちな失敗パターンと回避策

ローテーションは、やり方を間違えると損が膨らみます。代表的な失敗を先に潰してください。

失敗1:ニュースを見てから乗る(遅い)

「AIが熱い」「原油が上がっている」「利下げが来る」というニュースが増えた頃には、すでに相場は進んでいることが多い。ニュースは事後説明になりがちです。回避策は、価格ベースの相対モメンタムを主軸にし、ニュースは“理解”の補助に留めることです。

失敗2:当てにいき過ぎる(局面認定に固執)

景気循環の局面をピタリと当てようとすると、外したときに対応が遅れます。必要なのは「今はこうに違いない」ではなく、「サインがこう変わったから、配分をこう変える」という機械的手順です。局面は後からでもいい。運用は先に動きます。

失敗3:売買回数が多すぎる(コスト負け)

セクターETFは比較的売買しやすい一方で、頻繁に入れ替えると手数料とスプレッド、税金で勝ち筋が削れます。月次・四半期のリバランスにし、閾値や最小保有期間で売買を減らしてください。

失敗4:為替を無視する(日本在住の落とし穴)

米国セクターETFを円で評価する場合、リターンの一部は為替です。セクターが当たっても円高で相殺されることがあります。回避策は3つです。

  • 為替ヘッジ型ETFを使う(商品がある場合)
  • 円建ての投資比率を別枠で管理する(国内資産や短期資金を持つ)
  • 為替のトレンドで投資額を調整する(ドル高トレンドで積み増し、など)

どれが正解というより、「為替が入っている」と自覚して管理することが重要です。

検証(バックテスト)の最低限:個人が守るべきルール

ローテーション戦略は検証しないと改良できません。ただし、凝ったバックテストで“良さそうに見える”ものほど危険です。最低限の守るべきポイントをまとめます。

1)データの先読みをしない

月次指標を使うなら、発表日を考慮する。発表前の数値を使って売買したことになっていないかを疑う。先読みが入ると、成績は簡単に“盛れます”。

2)コストを入れる

手数料、スプレッド、税金(課税口座の場合)を概算でも入れます。売買回数が多い戦略ほど、現実の成績は落ちます。ローテーションではここが致命傷になりがちです。

3)期間を長く、局面を跨ぐ

自分が都合の良い期間だけ切り取ると、偶然当たっただけになります。最低でも複数の金利局面、複数の景気局面を跨ぐ期間で見ます。

4)シンプルな基準に勝てるかを確認する

比較対象は「全世界株」や「S&P500」などのシンプルな長期保有です。これに勝てないローテーションは、やる意味が薄い。勝てるなら“どの局面で勝っているか”を確認し、負ける局面の損失を制御できるか考えます。

運用の現場:毎月やるチェックリスト(これだけで回る)

最後に、実際の運用を“作業”に落とし込みます。月次で十分です。

  • ユニバース(セクターETF群)の6か月リターンを算出し、順位を作る
  • 市場全体のトレンド(例:200日移動平均)を確認する
  • 信用環境(クレジットスプレッドの拡大/縮小)を確認する
  • ルールに従って上位N本を選び、必要な入れ替えを実行する
  • 売買理由を一行で記録する(例:「上位3に入った」「市場が下回ったので守りへ」)
  • 3〜6か月ごとに成績と売買回数を見て、閾値・保有数・フィルターを微調整する

これを回せば、ローテーションは「思いつき」ではなく「運用」になります。重要なのは、勝ち続ける魔法の組み合わせを探すことではありません。相場の変化に合わせて、負けを小さく、勝ちを伸ばすための仕組みを作ることです。

まとめ:ローテーションは“当てる”より“外しても致命傷にならない設計”

セクターETFローテーションは、うまく設計すれば個人でも扱いやすい戦略です。ただし、局面を当てるゲームにすると負けやすい。相対モメンタムと少数のフィルターでルール化し、月次で淡々と回す。これが最も現実的です。

最初の一歩は「上位3セクターを月次で持つ」だけで良い。そこから、あなたの投資目的(成長重視/安定重視/為替許容度)に合わせて、保有数やフィルターを調整してください。市場は常に変わりますが、手順を固定すれば、判断はブレません

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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