ユーロドル(EUR/USD)は世界で最も取引される通貨ペアで、板(流動性)が厚い分だけ「値が飛びにくい」一方、特定の価格で急に反転・加速する癖があります。その代表がキリ番(big figure)です。1.1000、1.1050、1.1100のような端数の少ない水準は、チャート上で目立つだけでなく、実需・ヘッジ・アルゴ・個人の注文が重なりやすい。だからこそ、同じ1.1000でも“触れ方”によって勝率が大きく変わります。
この記事では「1.1000付近で、何が起きているのか」「どんな条件なら逆張りが機能し、どんな条件ならブレイクが伸びるのか」を、短期トレード(数分〜数時間)向けに設計します。一般的な“水平線を引く”で終わらせず、エントリー判断・損切り位置・利確設計・ダマシ回避まで落とし込みます。
- キリ番が効く本当の理由:チャートではなく「注文の集積点」だから
- まず結論:キリ番は「近い」だけでは触らない。見るのは“接近の質”
- 観察の型:キリ番を“ゾーン”として扱う(点で見ない)
- セットアップ1:キリ番での「吸収」逆張り(最も再現性が高い)
- セットアップ2:キリ番の「準備されたブレイク」順張り(伸びるブレイクだけを取る)
- セットアップ3:ストップラン(フェイクブレイク)を取る。上級に見えて初心者向きの理由
- 時間帯で勝率が変わる:キリ番は「いつ触れるか」で別物になる
- 「1.1000」だけ見ない。周辺の構造で“逃げ道”を消す
- エントリーを雑にすると負ける:注文方法の選び方(成行・指値)
- 損切り・ロット設計:キリ番手法で最も差がつく部分
- よくある負けパターン:キリ番で狩られる人の共通点
- 練習法:過去チャートで「同じ形」だけを集めて検証する
- 実戦用の最終チェックリスト(エントリー前に10秒で確認)
- まとめ:キリ番は「線」ではなく「需給が歪む場所」。だから設計で勝てる
- 応用:キリ番と「ニュース」「経済指標」を一緒に扱うと、判断が一段ラクになる
- 応用:キリ番×上位足の「節目」を重ねると、勝率が上がりやすい
- 具体的な1日の立ち回り例:キリ番を狙うなら「待つ場所」を先に決める
- トレードの記録方法:上達を速くする「1行レビュー」
- 最後に:キリ番は“万能の魔法”ではない。だからこそ、条件を絞る
キリ番が効く本当の理由:チャートではなく「注文の集積点」だから
キリ番は「人が意識するから止まる」という精神論だけでは説明できません。実際には、次のような注文が同じ価格帯に集まりやすいため、流動性とストップが同居し、短期の需給が歪みます。
1)指値(リミット)注文の集積:企業のヘッジや運用のリバランス、個人の“切りの良いところで買う/売る”が重なります。たとえば「1.1000で買いたい」「1.1000で利確したい」など。
2)逆指値(ストップ)注文の集積:キリ番の少し上/下は“わかりやすい損切り置き場”です。1.1000割れに損切り、1.1000超えに損切り……が集まり、一瞬の踏み上げ/投げが発生しやすい。
3)オプション関連の防戦/攻勢:ユーロドルはオプション市場も巨大です。特定のストライク(例:1.1000)に関連するヘッジ取引が、スポット価格の動きに影響する場面があります。短期では「止まりやすい」「抜けると走りやすい」両方の要因になり得ます。
4)アルゴのトリガー:機械は“丸い数字”を特別扱いすることがあります。レンジ検知→ブレイク検知→加速の順に、同一水準で売買が重なると、短期足で見たときに急に値動きが変わります。
まず結論:キリ番は「近い」だけでは触らない。見るのは“接近の質”
キリ番に近づいたから逆張り、抜けたから順張り——この発想は危険です。勝率を上げるには、キリ番への接近が以下のどれかを判定します。
A:減速して触れる(吸収される) → 逆張りが有利になりやすい
B:加速して突っ込む(ストップを巻き込む) → いったん“行き過ぎ”を作りやすい(フェイク・反転も多い)
C:レンジを作ってから抜ける(準備して抜ける) → ブレイクが伸びやすい
このA〜Cを見分けるために、あなたが見るべき情報は多くありません。短期なら次の3点で十分です。
①直前の値動き(1〜5分足の角度とローソクの形) ②直前の高値/安値の更新パターン ③時間帯(ロンドン開始・NY開始・指標前後)
観察の型:キリ番を“ゾーン”として扱う(点で見ない)
初心者がやりがちなのが「1.1000に線を一本引いて終わり」です。実際の注文は点ではなく帯で置かれます。スプレッド、約定遅延、ブローカー差もあるので、実務的にはキリ番±5〜10pipsを“ゾーン”として扱うと判断が安定します(ユーロドルなら1pip=0.0001)。
例:1.1000が主役なら、1.0995〜1.1005を“攻防地帯”、さらに外側の1.0990や1.1010を「ストップが溜まりやすい外縁」としてイメージします。
セットアップ1:キリ番での「吸収」逆張り(最も再現性が高い)
狙いはシンプルです。キリ番に売り/買いが集まり、突っ込みが吸収されて反転する瞬間を取ります。ポイントは“触れた”ではなく“吸収された”を確認してから入ることです。
条件(チェックリスト)
・直前の勢いが弱い:1分足でヒゲが増える、実体が小さくなる、連続陽線/陰線が途切れる。
・キリ番でいったん止まる:1.1000付近で何度も叩かれ、抜けきれない。
・直近の小さな戻り高値/安値を超える(ミニブレイク):反転の初動確認。完全に戻る必要はない。
具体例
相場が1.1020→1.1002まで下落。1.1000手前で陰線の実体が縮み、下ヒゲが増える。1.1004→1.1001→1.1005のように“押しても割れない”動きが出たとします。
この場合、エントリーの候補は1.1006〜1.1008での買い(ミニ反発の高値を超えたところ)。損切りはゾーン外縁の1.0990〜1.0988(キリ番割れストップのさらに外側)。利確はまず1.1020付近(直前の戻り)、伸びれば1.1030/1.1050など次の節目。
この手法の肝:損切りを“キリ番の直下”に置かない
1.0999に損切りを置くと、典型的な“ストップ狩り”に巻き込まれます。キリ番はストップが集まりやすいので、割れた瞬間に一度走ってから戻ることが多い。だから損切りは「割れたら即アウト」ではなく、割れて走った後でも戻れない場所に置く必要があります。これが逆張りの生存率を上げます。
セットアップ2:キリ番の「準備されたブレイク」順張り(伸びるブレイクだけを取る)
キリ番ブレイクは魅力的ですが、ダマシも多い。勝率を上げるには「抜けた」ではなく抜ける前に準備が整っているかを見ます。
条件(準備があるブレイク)
・キリ番手前でレンジ(箱)を作る:たとえば1.0988〜1.1000で何度も往復し、安値が切り上がる。
・押し目が浅くなる:下げてもすぐ戻る=売りの成行が続かない。
・時間帯が“流動性が入る瞬間”:ロンドン開始(日本時間夕方)やNY開始(日本時間夜)で抜けやすい。
具体例
1.0990〜1.1000で30分ほどレンジ。安値が1.0990→1.0992→1.0994と切り上がり、上値は1.1000で抑えられる。これは買いが下で溜まり、売りが上で吸収されている状態です。
エントリーは1.1002〜1.1005の上抜け。ただし、勢い任せに飛び乗るより、初心者はいったん上抜け→1.1000への押し(リテスト)を待つ方が安定します。リテストが1.1000で止まり、再び1.1003を超えたら買い。損切りは箱の下限(例:1.0988)より少し下。
利確設計:次の“半キリ番”までを最低目標にする
ブレイクが伸びるとき、価格は次の節目まで走りやすい。1.1000を抜けたなら、まず1.1050、さらに1.1100が目標になりやすい。もちろん相場は保証しませんが、利確を“適当に”決めるより、節目→節目で区切ると機械的に運用できます。
セットアップ3:ストップラン(フェイクブレイク)を取る。上級に見えて初心者向きの理由
一見すると難しそうですが、実は初心者に向く面があります。理由は、損切りが明確だからです。狙うのは「キリ番を抜けた直後の急加速(ストップ巻き込み)→失速→戻り」という形。
条件(フェイクの匂い)
・直前にレンジがなく、勢いだけで突っ込む
・抜けた直後に長いヒゲを出す:1分足や5分足で顕著。
・抜けた方向に“追随する続き足”が出ない:つまり一度は超えたが、同方向の成行が続かない。
具体例
1.1000を上抜けし、瞬間的に1.1012まで急騰。しかし次の1分足で上ヒゲを残して1.1003に押し戻される。このとき「上に抜けたのに伸びない」=上抜けはストップ巻き込みで、本体は売りが優勢の可能性があります。
エントリーは1.1000割れ(1.0998〜1.0996)で売り。損切りはストップラン高値の少し上(例:1.1015)。利確はまずレンジ起点の1.0980〜1.0970など。フェイクは“戻る”だけでなく、逆方向に走ることが多いので、利が乗ったら一部利確→残りはトレーリングで伸ばす設計が噛み合います。
時間帯で勝率が変わる:キリ番は「いつ触れるか」で別物になる
ユーロドルは時間帯で参加者が入れ替わります。同じ1.1000でも、アジア時間の静かな攻防と、ロンドン・NYの攻防は別ゲームです。
アジア時間:レンジになりやすく、キリ番反発(吸収逆張り)が機能しやすい。ただし一度抜けると戻りも早いことがある。
ロンドン開始:流動性が一気に増え、レンジの上抜け/下抜けが起きやすい。準備されたブレイクを狙う価値が高い。
NY開始〜指標:突発的なボラが出やすく、ストップラン→フェイク→急反転が増える。フェイク狙いと相性が良いが、スプレッド拡大や滑りに注意。
「1.1000」だけ見ない。周辺の構造で“逃げ道”を消す
キリ番で勝ちやすい人は、必ず直近の構造を一緒に見ています。最低限、次の3つだけで十分です。
・直近の高値/安値(直近30〜60分):そこを抜けると加速しやすい。
・上位足(1時間足)の流れ:上位足が上昇トレンドなら、同じ1.1000でも“下で買われやすい”。
・直近の値幅(平均的な動き):直近の値幅が小さい日は、ブレイクしても伸びずに戻りやすい。
エントリーを雑にすると負ける:注文方法の選び方(成行・指値)
ユーロドルはスプレッドが狭いので、初心者ほど成行で入ってしまいがちですが、キリ番周りは約定が荒れます。状況で使い分けるのが正解です。
吸収逆張り:基本は指値が有利。ゾーン上側/下側で待ち、吸収が見えたら“少し上で買う/少し下で売る”。ただし、吸収確認前の指値は捕まるので、ローソク形状で条件を満たしてから置く。
準備されたブレイク:上抜け直後は滑りやすい。初心者はリテスト待ちの指値が安全。上抜け→押し→再上昇の二段階を待つ。
ストップラン(フェイク):戻りのスピードが速いので、条件を満たしたら成行が有利な場面もある。代わりにロットを落とし、損切りを明確にする。
損切り・ロット設計:キリ番手法で最も差がつく部分
勝てない原因の多くは“方向当て”ではなく、損切りとロットです。キリ番周りはノイズが大きいので、損切りを浅くしすぎると負けが増えます。ここで具体的な型を置きます。
・損切りはゾーン外縁のさらに外側:例:1.1000なら、逆張り買いの損切りは1.0990の少し下、順張り買いの損切りは箱下限の少し下。
・リスクリワードは固定しすぎない:最初の利確は“次の節目/直近高安”。その後は建値移動や分割利確で期待値を上げる。
・1回の損失許容を口座の一定比率に固定:例えば口座100万円で1回の許容損失を0.5%(5,000円)に固定し、損切り幅(pips)からロットを逆算する。これだけで破綻確率が下がります。
よくある負けパターン:キリ番で狩られる人の共通点
1)“触れた瞬間”に入る:確認なしの反射神経トレード。キリ番は罠が多いので、最低でも「止まった形」か「抜けた形」を見てから。
2)損切りが近すぎる:1〜3pipsの損切りで勝とうとする。ユーロドルでもキリ番周りはノイズが大きい。構造の外に置く。
3)時間帯を無視:アジア時間の逆張りをNY指標でやる、など。勝ちパターンの“土俵”を揃える。
4)利確が適当:伸びる局面で早利確し、伸びない局面で粘って逆行される。節目と直近高安で“利確の理由”を作る。
練習法:過去チャートで「同じ形」だけを集めて検証する
このテーマは、感覚ではなく型で強くなれます。おすすめは、過去の1分足/5分足で「1.1000付近」の場面だけを100個集め、次の3分類に振り分ける作業です。
・吸収→反転 ・準備→ブレイク ・ストップラン→フェイク
分類できるようになると、リアルタイムでも「今はどれに近いか」が瞬時に分かります。さらに、あなたの生活時間に合わせて“得意な時間帯”を固定すると、再現性が上がります。
実戦用の最終チェックリスト(エントリー前に10秒で確認)
・いまはアジア/ロンドン/NYのどこか
・キリ番に“減速して触れている”か、“加速して突っ込んでいる”か
・直近30分の高値/安値はどこか(逃げ道=利確目標)
・損切りはゾーン外に置けているか(近すぎないか)
・ロットは損切り幅から逆算できているか
まとめ:キリ番は「線」ではなく「需給が歪む場所」。だから設計で勝てる
ユーロドルのキリ番は、誰でも見えるからこそ“簡単そうに見えて難しい”領域です。しかし、見るべき点を絞り、ゾーンで捉え、3つのセットアップ(吸収逆張り/準備ブレイク/ストップランフェイク)を使い分ければ、優位性を作れます。最後に強調します。キリ番に近いから入るのではなく、キリ番で起きている現象を確認して入る。この一点だけでも、負け方が変わります。
応用:キリ番と「ニュース」「経済指標」を一緒に扱うと、判断が一段ラクになる
短期で一番事故が起きるのは、キリ番に到達した瞬間に重要指標が重なるケースです。値が飛び、スプレッドが広がり、普段なら機能する“吸収”が一瞬で壊れます。ここでのコツは「指標を避ける」ではなく、指標前後で狙う型を変えることです。
指標の10〜30分前はポジション整理が起きやすく、レンジ化しやすい一方、突然のストップランも出ます。初心者は、ここでは“吸収逆張り”を狙うならロットを落とし、利確を近めに固定する方が安全です。
指標直後(数分)は方向感が出やすいが、ダマシも増えます。この局面は「準備されたブレイク」より、ストップラン→フェイクの形が頻出します。なぜなら、発表直後に一方向へ飛んだあと、すぐに反対側へ巻き戻すことが多いからです。飛んだ瞬間の追随は難易度が高いので、初心者は“戻りを待ってから”入る方が期待値が残ります。
指標から15〜60分後は本格的なトレンドが出やすい時間帯です。ここでキリ番を抜けた場合、伸びるブレイクになる確率が上がります。つまり「ニュースを避ける」よりも、ニュースを時間帯の判定材料に使う方が合理的です。
応用:キリ番×上位足の「節目」を重ねると、勝率が上がりやすい
1.1000が効くかどうかは、上位足の文脈で変わります。たとえば1時間足で見たときに、1.1000が以下のどれに該当するかを確認してください。
・直近高値/安値:過去に何度も反転した価格。ここは吸収が起きやすい。
・トレンドラインや移動平均の交差点:同じ価格に複数の根拠が集まると、短期の反応が強くなる。
・レンジの中央 or 端:レンジ中央のキリ番は“吸収”になりやすいが、レンジ端のキリ番は“抜け”で走りやすい。
初心者がやるべきことはシンプルです。上位足で1本だけ水平線を引く。それが偶然1.1000に近いなら、短期のキリ番戦略は“根拠が重なる場所”になり、勝率が上がりやすい。
具体的な1日の立ち回り例:キリ番を狙うなら「待つ場所」を先に決める
キリ番トレードで勝つ人は、チャートを見ながら思いつきで売買しません。先に待つ場所を決めて、来たら型で処理します。例として、1.1000が当日の主戦場になりそうな日のルーチンを置きます。
ステップ1:朝(またはトレード開始前)に環境認識。1時間足で「上昇・下降・レンジ」を判定し、直近の高値/安値をメモします。今日の平均的な値幅が小さそうなら、ブレイク狙いは控えめにします。
ステップ2:キリ番ゾーンの設定。1.1000なら1.0995〜1.1005を攻防地帯、1.0990と1.1010を外縁として決めます。ここは“変更しない”のがコツです。
ステップ3:ロンドン開始の15分前から監視。価格がゾーンへ向かうとき、角度が強いか弱いかを見ます。弱いなら吸収逆張り、箱を作るなら準備ブレイク、強い突っ込みならストップランの可能性を優先します。
ステップ4:エントリーは1日最大2回まで。キリ番は誘惑が多く、回数を増やすほど“罠”にハマります。回数制限は期待値を守るための仕組みです。
トレードの記録方法:上達を速くする「1行レビュー」
短期は感情でブレやすいので、記録が強い武器になります。ただし丁寧すぎる記録は続きません。おすすめは、トレードごとに次の1行だけを書きます。
「型(吸収/準備ブレイク/フェイク)+時間帯+損切りが構造外か」
例:「吸収逆張り/アジア後半/損切り1.0988で構造外=OK」
これを20回分集めるだけで、負けの原因が“方向”ではなく「型の取り違え」「時間帯のミスマッチ」「損切りの浅さ」に集中しているのが見えてきます。
最後に:キリ番は“万能の魔法”ではない。だからこそ、条件を絞る
キリ番は誰でも見える情報です。だから、勝ち続けるには「自分が触る条件」を絞る必要があります。この記事の内容を最小限に圧縮すると、次の3行になります。
・減速して触れたら吸収を疑う
・箱を作ってから抜けたら順張りを疑う
・勢いだけで抜けてヒゲを出したらフェイクを疑う
この3行を、1.1000以外(1.1050、1.1100、1.0950など)にも横展開できれば、ユーロドルの短期トレードは“運ゲー”から脱却します。


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