通貨ペア相関係数で作るFX分散ポートフォリオ:リスクを“見える化”して無駄な重複を消す方法

FXは「通貨ペアが違えば分散できる」と思われがちですが、現実は逆です。ドル円(USD/JPY)とユーロ円(EUR/JPY)を同時に持つと、実質的には“円ショート(円を売る)”のレバレッジを増やしているだけ、という場面が頻繁にあります。分散どころか、同じ方向のリスクを重ねている。これを数値であぶり出すのが通貨ペアの相関係数です。

この記事では、投資初心者でも使えるように、相関係数の意味から、計算手順、見方、落とし穴、そして「どう儲けに近づけるか」までを、具体例で徹底的に解説します。結論から言うと、相関係数は“予測”ではありません。ですが損失を減らし、利益を残しやすくするための強力な道具です。FXで一番やってはいけないのは、気づかないうちに同じリスクを重ねて一撃で飛ばすこと。その事故を減らすのが目的です。

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  1. 相関係数とは何か:FXでの意味を一言で言う
  2. なぜ“通貨ペア分散”は失敗しやすいのか:実質リスクが重複する構造
  3. 相関係数で“事故”を防ぐ:初心者が最初に得るべきメリット
  4. 相関の計算に必要な“3つの決め事”
    1. 1. 期間(何日/何週で見るか)
    2. 2. 足(時間足)
    3. 3. データ(価格ではなくリターン)
  5. Excelでできる:相関係数の具体的な計算手順
    1. 手順A:終値データを用意する
    2. 手順B:日次リターンを計算する
    3. 手順C:CORREL関数で相関を出す
  6. 相関の“読み方”を間違えると死ぬ:初心者が踏みがちな罠
    1. 罠1:相関が高い=同じ値動き=ヘッジになる(誤り)
    2. 罠2:相関がマイナス=常に逆に動く(誤り)
    3. 罠3:価格で相関を取る(危険)
    4. 罠4:相関だけ見てボラ(値動きの大きさ)を無視する(危険)
  7. FXでよく使う“相関の型”:代表的な組み合わせ例
    1. 1)円クロス同士:相関が高くなりやすい
    2. 2)ドルストレート同士:USD要因で同方向になりやすい
    3. 3)資源国通貨:リスクオン・商品市況で束になる
    4. 4)避難通貨:危機時に相関が“集約”しやすい
  8. 相関を“儲け”につなげる3つの実務パターン
    1. パターン1:同方向エントリーの“重複”を削る(最も効果が出やすい)
    2. パターン2:相関が低いペアを“意図的に混ぜる”(ポートフォリオのブレを減らす)
    3. パターン3:簡易ヘッジとして“相関が崩れにくい逆相関”を探す(過信は禁物)
  9. 相関とボラを同時に扱う:初心者向け“実効分散”の作り方
    1. 考え方:相関が高いならロットを下げ、ボラが高いならロットを下げる
  10. ローリング相関で“今の相場”を掴む:相関は固定ではない
  11. 相関を使った“具体的な運用ルール”の例
    1. ルール例1:相関フィルター(同時保有の制限)
    2. ルール例2:グループ制(リスク因子ごとに枠を決める)
    3. ルール例3:相関が急上昇したら“守りに入る”
  12. 相関を使って“逆張りの罠”を避ける:同時に負ける局面を知る
  13. 相関の限界:これだけで勝てるわけではない
  14. 初心者が今日からやるチェックリスト

相関係数とは何か:FXでの意味を一言で言う

相関係数(Correlation)は「2つの値がどれくらい同じ方向に動きやすいか」を-1~+1で表します。

  • +1に近い:ほぼ同じ方向に動く(同時に上がり、同時に下がる)
  • 0付近:関係が薄い(同じ方向に動くとは限らない)
  • -1に近い:逆方向に動く(片方が上がると片方が下がりやすい)

ここで重要なのは、FXでは「価格」そのものより、一定期間の変化率(リターン)で相関を見るのが基本という点です。価格同士をそのまま相関計算すると、トレンドの影響で誤解しやすいからです。

なぜ“通貨ペア分散”は失敗しやすいのか:実質リスクが重複する構造

通貨ペアは見た目が違っても、リスク因子(ドライバー)が同じことが多いです。FXの短期~中期の値動きをざっくり分解すると、次の3つが支配的になります。

  • 金利差(キャリー):高金利通貨買い・低金利通貨売りの魅力とコスト
  • リスクオン/オフ:株が強いと高金利・新興国通貨が買われ、リスクオフで逃避通貨が買われやすい
  • 基軸通貨要因:USDが全体を動かす局面(米金利、米景気、ドル需給)

たとえばUSD/JPYとEUR/JPYは、円側が共通です。しかもリスクオン局面では、EURも買われやすく、USDも買われやすい(あるいは円が売られやすい)。結果、両者は似た方向に動くことが多くなり、相関が高くなりやすい。

つまり、通貨ペアを増やすだけでは分散になりません。分散とは「値動きの源泉が違うものを組み合わせる」ことです。源泉が同じなら、銘柄数を増やしても事故の規模が増えるだけです。

相関係数で“事故”を防ぐ:初心者が最初に得るべきメリット

初心者にとって相関係数の最大メリットは、次の2つです。

(1)隠れレバレッジ(重複ポジション)を見抜ける
「複数ポジション=分散」と思っていたものが、実は同じ方向のベットだったと気づけます。

(2)損失の連鎖を減らせる
相関が高いペアを複数持つと、逆行した瞬間に全部が同時にやられます。逆に相関が低い(または負の)組み合わせを入れると、損失の波が平準化され、ロスカット事故が減ります。

相関の計算に必要な“3つの決め事”

相関は条件次第で値が変わります。計算前に以下を決めてください。

1. 期間(何日/何週で見るか)

デイトレ寄りなら「直近20営業日」、スイングなら「直近60~120営業日」、中期なら「半年~1年」といった具合です。期間が短いほど最新の状態を反映しますが、ブレやすい。長いほど安定しますが、相場環境の変化に鈍い。初心者はまず60営業日(約3か月)を基準にすると扱いやすいです。

2. 足(時間足)

日足で見るのが基本です。1時間足など短い足はノイズが増え、スプレッド・指標発表・ロンドンNYの時間帯要因が混ざります。まずは日足で「大枠の相関」を掴み、その後に時間足を短くして確認する順番が安全です。

3. データ(価格ではなくリターン)

一般に使うのは日次リターンです。初心者は次のどちらかでOKです。

  • 単純リターン:今日の終値÷昨日の終値 – 1
  • 対数リターン:ln(今日の終値/昨日の終値)

どちらでも大勢は変わりません。Excelなら単純リターンが簡単です。

Excelでできる:相関係数の具体的な計算手順

ここでは「USD/JPYとEUR/JPYの相関」を例にします。無料データでも構いません。流れは次の通りです。

手順A:終値データを用意する

日付、USD/JPY終値、EUR/JPY終値を並べます。日付は同じに揃え、欠損がある行は除外します(ここがズレると相関が壊れます)。

手順B:日次リターンを計算する

例:B列がUSD/JPY終値なら、B3に「=B3/B2-1」を入れて下へコピー。EUR/JPYも同様に。最初の行は計算できないので空欄でOKです。

手順C:CORREL関数で相関を出す

リターン列を指定して「=CORREL(USDJPYリターン範囲, EURJPYリターン範囲)」。これで相関が出ます。

次に、3か月(約60営業日)だけで相関を出したい場合、範囲を直近60本だけにします。さらに実務的には「ローリング相関(移動窓)」を作り、相関がどう変化しているかを可視化します。相関は固定値ではなく、相場環境で変わるからです。

相関の“読み方”を間違えると死ぬ:初心者が踏みがちな罠

相関係数を使ううえで、致命的な誤解がいくつかあります。ここは強めに言います。ここを外すと、相関のせいで逆に損します。

罠1:相関が高い=同じ値動き=ヘッジになる(誤り)

相関が高いものを同時に持つのは、基本的にリスクの増幅です。ヘッジは相関がマイナス寄りのものを組み合わせるか、ポジションの方向(ロング/ショート)を調整して作ります。

罠2:相関がマイナス=常に逆に動く(誤り)

相関-0.6でも、同じ方向に動く日も普通にあります。相関は「傾向」であって保証ではありません。特に危機時は相関が一気に+1に寄る(“相関の収束”)ことがある。リスクオフ時に全部同時に崩れるのはこれです。

罠3:価格で相関を取る(危険)

価格同士の相関はトレンドの共有で高く出やすく、誤認を生みます。必ずリターン(変化率)で見る癖を付けてください。

罠4:相関だけ見てボラ(値動きの大きさ)を無視する(危険)

相関が低くても、片方のボラが極端に高いとポートフォリオのリスクを支配します。相関は「方向の似ている度合い」、ボラは「揺れの大きさ」。両方が必要です。

FXでよく使う“相関の型”:代表的な組み合わせ例

ここでは初心者が使いやすい、相関の考え方の型を紹介します。相関の数値は時期で変わるので、ここでは「構造としてそうなりやすい」理由を重視します。

1)円クロス同士:相関が高くなりやすい

例:USD/JPY、EUR/JPY、GBP/JPY、AUD/JPY。円が共通です。円が売られる相場では円クロスが一斉に上がりやすく、相関が高くなりがちです。初心者が「通貨ペアを増やしたのに同時に損する」典型パターンです。

2)ドルストレート同士:USD要因で同方向になりやすい

例:EUR/USD、GBP/USD、AUD/USD。ドル高局面だとこれらは下がりやすく、似た動きになることが多いです。USDが強い日(米金利上昇・米指標強い)に同時に逆行しやすい。

3)資源国通貨:リスクオン・商品市況で束になる

AUD、NZD、CADはリスクオン/オフや商品市況、金利差でまとまりやすい。特にAUD/NZDは相関が強く出やすいペアの代表格です。

4)避難通貨:危機時に相関が“集約”しやすい

JPYとCHFはリスクオフで買われやすいとされますが、局面によって差が出ます。相関を盲信せず、ローリング相関で“いま効いているか”を確認する発想が必要です。

相関を“儲け”につなげる3つの実務パターン

相関は「当てる道具」ではなく「負けにくくする道具」だと言いました。ただ、負けにくくすると、結果として儲けに近づきます。実務的には次の3パターンが王道です。

パターン1:同方向エントリーの“重複”を削る(最も効果が出やすい)

たとえばあなたが「円安トレンド」に乗りたいとして、USD/JPYロング、EUR/JPYロング、GBP/JPYロングを同時に持っているとします。見た目は分散ですが、実質は「円を売る」ベットが重複しています。ここで相関を見て、相関が0.8以上の組み合わせなら、ポジションを絞るか、同時保有するならロットを落とす

具体例:通常1ロットで取引する人が、3ペア持つなら各0.3ロットにする、といった調整です。すると同じテーマに乗りつつ、逆行時の損失の跳ね上がりが抑えられます。初心者ほどこの効果が大きい。理由はシンプルで、初心者の破綻原因は「読み違い」より「過剰レバレッジ」だからです。

パターン2:相関が低いペアを“意図的に混ぜる”(ポートフォリオのブレを減らす)

相関が低い、つまり別の要因で動きやすいペアを混ぜると、損益の波が平準化されます。これはメンタル面でも効きます。含み損が一気に膨らむと判断が壊れ、損切りできない・ナンピンする・ロットを上げて取り返そうとする、という事故が起きます。波が小さくなれば、ルールを守りやすい。

例として、円クロス中心の運用なら、円以外の要因が強いペア(たとえばEUR/USDなど)を少量混ぜる、あるいは短期のテーマ(指標トレード)と中期のテーマ(キャリー)を混ぜない、などです。相関係数は「混ぜる/混ぜない」の判断材料になります。

パターン3:簡易ヘッジとして“相関が崩れにくい逆相関”を探す(過信は禁物)

例えば、ある期間でUSD/JPYと金(XAU/USD)が逆相関になりやすい局面があります(必ずではありません)。また、AUD/JPYとVIXが逆方向に動きやすい局面もあります。こうした関係は相場のレジーム(環境)で変わりますが、ローリング相関で「いま逆相関が機能しているか」を確認し、ヘッジとして少量入れると、急変時の損失を抑えられることがあります。

ただし、初心者はヘッジを“利益目的”で使うと破綻します。ヘッジは保険であり、保険料を払う行為です。ヘッジで儲けようとすると、両建て地獄に入りやすい。ここは割り切りが必要です。

相関とボラを同時に扱う:初心者向け“実効分散”の作り方

相関だけでは不十分と言いました。ここから一歩だけ進めて、初心者でも扱える「実効分散」の考え方を紹介します。難しい数式は不要です。

考え方:相関が高いならロットを下げ、ボラが高いならロットを下げる

超シンプルに言うと、次の2つを同時にやります。

  • 相関が0.7以上のペアは“同じグループ”として扱い、グループ合計ロットを制限する
  • ATR(平均的な値動き)が大きいペアは、同じ損失許容額になるようロットを小さくする

例えば、あなたが「1回の損失上限を1万円」と決めたとします。USD/JPYの損切り幅が50pips、GBP/JPYが80pipsだとしたら、同じ1万円リスクにするにはGBP/JPYのロットを小さくします。さらにGBP/JPYとEUR/JPYの相関が高いなら、両方同時に持つ際は合計ロットを制限する。これで“見た目の分散”から“実効分散”に進化します。

ローリング相関で“今の相場”を掴む:相関は固定ではない

相関が固定だと思うと必ず痛い目を見ます。特に、危機時は相関が一気に同方向へ収束しやすい。よって、相関は「直近○日でどう変わっているか」を見ます。

Excelでもできますが、初心者はまず次をやってください。

  • 60日相関(基準)
  • 20日相関(直近の変化)

この2つを並べます。60日で相関0.2だったのに、直近20日で0.8になっているなら、「最近は動きが束になっている」と判断します。逆に、60日で0.8でも直近20日で0.1なら「相関が崩れている」=分散が効きやすい(あるいは、リスク因子が変わっている)と考えられます。

相関を使った“具体的な運用ルール”の例

ここからが実用です。初心者がそのまま使える形のルール例を提示します。あくまで型なので、あなたのスタイルに合わせて数字は調整してください。

ルール例1:相関フィルター(同時保有の制限)

新規エントリー前に、候補ペアと保有中ペアの20日相関を確認します。

  • 相関が0.75以上:同方向の新規は原則禁止。入れるならロットを半分以下。
  • 相関が0.40~0.75:ロットを2/3に落として許可。
  • 相関が0.40未満:通常ロットで許可。

このルールだけで、初心者の“気づかない過剰レバ”事故が激減します。

ルール例2:グループ制(リスク因子ごとに枠を決める)

通貨ペアを「円クロス」「ドルストレート」「資源国通貨」などに分類し、各グループの合計リスク(損切り想定額)を制限します。例:

  • 円クロス:最大2万円
  • ドルストレート:最大2万円
  • その他:最大1万円

こうすると、たとえ同じ方向に動いても、グループごとに損失上限が効き、口座が壊れにくい。

ルール例3:相関が急上昇したら“守りに入る”

相関が急に上がるのは、市場が単一テーマで動いているサイン(例:米金利ショック、リスクオフ)であることが多い。こういう局面はスプレッド拡大・急変・滑りが起きやすい。よって、次の行動をルール化します。

  • 主要ペア間の20日相関が0.8超に増えたら、総リスクを30~50%削減
  • 重要指標前は相関が崩れやすいので、新規を控える

相関を使って“逆張りの罠”を避ける:同時に負ける局面を知る

初心者がやりがちなのが「別ペアで逆張りして分散したつもり」パターンです。例えばUSD/JPYが上がっているからショート、同時にEUR/JPYが上がっているからショート、さらにGBP/JPYもショート。実は全部「円高を当てる」一点張りです。円安トレンドが続くと、全滅します。

相関を見ていれば、これが“同じ賭け”だとすぐ分かります。逆張りは当たると気持ちいいですが、トレンドが伸びる局面で口座を壊しやすい。相関は、その事故を減らします。

相関の限界:これだけで勝てるわけではない

相関係数は万能ではありません。限界を理解したうえで使うと、武器になります。

  • 相関は原因を教えてくれない:なぜ相関が高いのか(米金利なのか、リスクオフなのか)を別途考える必要がある
  • 相関は将来を保証しない:レジームが変わればすぐ変わる
  • 危機時に相関が収束する:一番守りたいときに分散が効きにくいことがある

したがって、相関は「ポジションを組むときの安全装置」として使うのが正解です。勝ち筋(エントリー/損切り/利確)は別のロジックで作り、相関は“壊れないための制御”に回す。これが実務的に最も強い使い方です。

初心者が今日からやるチェックリスト

最後に、今日からそのまま実行できるチェックリストを置きます。

  • 取引する候補ペアを5~8個に絞る(増やしすぎない)
  • 日足終値から日次リターンを作る
  • 20日相関と60日相関を出す
  • 相関0.75以上の組み合わせは同時に大きく持たない
  • ATRや損切り幅でロットを調整し、1回の損失上限を固定する
  • 相関が急上昇した局面は“守り”に切り替える

この一連をやるだけで、「なんとなく複数持っていたら全部同時にやられた」という典型的な負け方が減ります。FXは予測よりも、まず生き残る設計が先です。相関係数は、そのための最短ルートです。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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