「オルカン」と呼ばれる全世界株式インデックスファンドは、一本で世界中の株式市場に分散投資できる便利な商品です。個別株を選ぶ時間がない人や、これから投資を始める人にとって「これ一本で、まずは世界の成長を取りに行く」というシンプルな戦略を実現できます。

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オルカンとは何か ― 商品の中身を正しく理解する

一般的に「オルカン」と言われるのは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を指します。このファンドは、MSCI ACWI(除く日本を含む場合もありますが、オルカンは日本を含む全世界株式)という指数に連動する運用を目指しており、先進国株、新興国株、日本株をまとめて1本でカバーするのが特徴です。

投資対象は、アメリカ、ヨーロッパ、日本、新興国など約50カ国以上、銘柄数は数千銘柄におよびます。個人投資家が自力でここまでの分散をするのは現実的ではありませんが、オルカンを1本持つだけで、世界中の上場企業の利益成長に乗ることができます。

オルカンの基本的な仕組みとリスク・リターンのイメージ

オルカンの値動きは、世界株式市場全体の時価総額加重平均のようなイメージです。時価総額の大きなアメリカ企業(とくにS&P500やNASDAQに採用されている巨大テック企業)の比率が高くなり、結果として「なんとなくアメリカ株が多めの世界株」という構造になっています。

リターンのイメージとしては、「長期で見れば右肩上がりだが、短期的には大きく上下に振れる」タイプです。世界経済の成長と企業の利益成長に連動しつつ、景気後退や金融ショックの局面では一時的に大きな下落もあり得ます。ただし、単一国や単一セクターに集中するよりは、世界中に分散されている分、極端なリスクはやや抑えられます。

オルカンが評価される3つのポイント

1. 国分散:日本に住みつつ「日本偏重」から抜け出せる

日本で生活していると、給与所得も、年金も、不動産も、すべて円と日本経済に集中してしまいます。そこにさらに日本株だけを買い足すと、資産全体が「日本リスク」に大きく偏ります。オルカンを活用すると、資産の一部を世界の株式にシフトできるため、「日本偏重」から脱却する手段になります。

たとえば、総資産1,000万円のうち、現金・預金が700万円、日本株が200万円、オルカンが100万円という構成からスタートし、その後の積み立てをオルカン中心にすることで、時間をかけて「日本+世界」のバランスを調整していく、といった運用が可能です。

2. 通貨分散:円安・円高どちらの局面でも極端に振られにくい

オルカンは、基本的に為替ヘッジを行わないタイプが多く、円ではなく外貨建ての資産を保有することになります。円安になれば、外貨建て資産の評価額が円ベースで押し上げられますし、円高になれば逆に押し下げられます。

これは一見リスクにも見えますが、日本円だけに集中している状態から見れば、「通貨の分散」が進むという意味でもあります。長期的なインフレや通貨価値の変動リスクを考えると、一部を外貨建て資産(世界株)に振り向けておくのは合理的な選択です。

3. シンプル運用:銘柄選び・タイミング判断から解放される

個別株投資やセクターETF投資は、銘柄選定や売買タイミングの判断が難しく、初心者ほど「どれを買えばいいかわからない」「いつ売ればいいかわからない」という悩みに陥りがちです。オルカンを中核に据える戦略では、「世界株を毎月一定額ずつ買い続ける」というシンプルなルールで完結します。

投資判断の回数を減らし、「悩む時間」「迷って売買してしまう回数」を減らすことで、結果的に長期リターンを取りやすくなる、という心理面でのメリットもあります。

S&P500やナスダックとの違い ― なぜオルカンを選ぶのか

日本の個人投資家の間で人気なのは、米国株インデックス(S&P500、NASDAQ100)とオルカンです。どれを選ぶべきか迷う場面も多いでしょう。ここでは、S&P500との比較でオルカンの特徴を整理します。

S&P500:アメリカ一国集中で成長性を取りに行く

S&P500はアメリカの代表的企業500銘柄で構成される指数です。歴史的に高いリターンを上げてきましたが、「アメリカ一国に集中している」という前提があります。今後もアメリカ企業が世界で圧倒的優位を保てば良い選択ですが、もし相対的な成長が鈍化した場合には、リスクが顕在化します。

オルカン:世界のシェアを時価総額ベースで自動調整

オルカンは、各国・各企業の時価総額に応じて構成比が変わるため、アメリカ以外の地域が伸びれば、その分だけ自動的に比率が高まります。逆に、ある国やセクターの競争力が落ちれば、指数の中でのウエイトも自然と低下します。投資家が自分で国別配分を調整しなくても、世界の資本市場全体が「勝ち残った企業・国」に資本を配分してくれる仕組みになっているのです。

「今後30年、どの国が一番伸びるかを当てる自信はないが、世界全体の成長はそこそこ期待できる」と考えるのであれば、オルカンのような全世界株インデックスをコアに置く考え方は合理的です。

具体的な積立シミュレーションのイメージ

ここでは、数値はあくまでイメージですが、長期積立の感覚をつかむためのシナリオを示します。

前提:

  • 毎月3万円をオルカンに積立
  • 投資期間:20年間
  • 年平均リターン:3~5%程度(インフレ込みの保守的な想定)

この条件の場合、単純な掛け金の合計は3万円×12ヶ月×20年=720万円です。年3%の運用成果が得られたと仮定すると、20年後の評価額は約970万円前後、年5%なら約1,150万円前後といったイメージになります(実際の結果は、相場の上下動や為替の影響により大きく変動します)。

ポイントは、「20年間ほとんど触らず、コツコツ積み上げた」という行動そのものが、複利効果を最大化するということです。途中で暴落局面があっても、積立を継続すれば、安く仕込めた口数が将来の回復局面で効いてきます。

NISAとオルカンの相性が良い理由

新NISAでは、つみたて投資枠・成長投資枠を使って長期運用がしやすくなりました。オルカンは、つみたて投資枠に対応していることが多く、「毎月一定額を自動で買い続ける」仕組みと非常に相性が良い商品です。

具体的な使い方の例として、以下のような設計が考えられます。

  • つみたて投資枠:オルカンを毎月定額で購入
  • 成長投資枠:興味のあるセクターETFや個別株に少額を振り分ける

このように、「土台(コア)」としてオルカンを据え、その上に「サテライト」としてテーマ株や個別株を少しだけ乗せる構成にすると、全体としては安定性を保ちつつ、自分なりのリスクテイクもできます。

オルカンを使ったポートフォリオ設計のシンプルな型

オルカンは万能ではありませんが、「資産運用の出発点」として非常に扱いやすいファンドです。たとえば、次のようなシンプルなポートフォリオが考えられます。

  • 現金・短期資金:20~30%(生活防衛資金+近い将来使う予定の資金)
  • オルカン:50~70%(長期成長を狙う中核部分)
  • その他(債券、REIT、テーマETFなど):0~20%(リスク許容度に応じて調整)

リスク許容度が低い人はオルカン比率を下げて現金や債券を増やし、リスク許容度が高い人はオルカン比率を高める、といった調整が可能です。重要なのは、「自分が暴落局面で耐えられるかどうか」を基準に配分を決めることであり、「最大リターン」ではなく「途中で投げ出さず続けられる設計」を優先することです。

よくある疑問に答える ― いま買っていいのか?一括か積立か?

Q1. いま株価が高そうだが、買うタイミングを待つべきか

全世界株式インデックスは、長期で見れば何度も高値更新を繰り返します。「今が高値かもしれない」と感じても、その判断だけで何年も投資を見送ると、複利効果を享受できません。タイミングを完璧に当てるのはプロでも難しいため、「今から少額でスタートし、時間分散しながら増やしていく」という考え方が現実的です。

Q2. 一括で入れるべきか、それとも積立が良いのか

理論的には、期待リターンがプラスであれば早く投資した方が有利ですが、心理的な許容度も重要です。一括で大きな金額を入れてしまうと、その直後の下落で精神的ダメージが大きくなり、長期戦略を投げ出してしまうリスクがあります。

現実的な折衷案として、「手元資金の一部だけを初期投資に回し、残りは1~2年かけて分割して積立する」という方法が考えられます。たとえば、手元に300万円余裕資金があれば、100万円を初期投資、残り200万円を毎月10万円ずつ20ヶ月に分けて積み立てる、といった形です。

オルカン投資で気を付けたいポイント

信託報酬と実質コスト

オルカンは低コストが売りですが、それでも「信託報酬が永続的に差として効いてくる」点は意識すべきです。同じ全世界株式インデックスファンドでも、運用会社や設定時期によって信託報酬が微妙に異なります。長期で運用するなら、できるだけ低コストで、純資産残高が十分に大きく、資金流入も安定している商品を選ぶのが無難です。

短期売買に向かない

オルカンは基本的に長期保有を前提とした商品です。短期で売買を繰り返しても、指数の大きなトレンドを取ることは難しく、むしろ手数料やスプレッド、税金の負担だけが増える可能性があります。「最低でも5年以上、できれば10年以上」という時間軸で考えると、オルカンの本来の価値が見えやすくなります。

暴落時のメンタル管理

世界株とはいえ、暴落時には30~50%程度の下落も起こり得ます。その局面で「もうダメだ」と感じて売ってしまうと、その後の回復局面に乗れません。あらかじめ、「このくらいの下落までは想定内」「むしろ安く積み増しできるチャンス」と考えられるよう、事前にシミュレーションしておくことが重要です。

オルカンを活用して「投資を生活に組み込む」

オルカンの強みは、「難しいことを考えなくても、世界の成長に乗れる」という点です。投資を特別なイベントにせず、毎月の家計の中に組み込んでしまうことで、気付いたら資産が積み上がっている状態を作りやすくなります。

具体的には、給与が入る日に合わせて自動積立の引き落とし日を設定し、残ったお金で生活するスタイルにすると、「余ったら投資する」ではなく「投資を先に済ませてから生活費を考える」逆転の発想になります。この仕組みを一度作ってしまえば、相場を毎日チェックしなくても、淡々と資産形成が進みます。

まとめ ― オルカンは「考えすぎて動けない」人の第一歩になり得る

投資の世界には、個別株、オプション、レバレッジETF、暗号資産、DeFiなど、さまざまな商品や戦略が存在します。しかし、最初の一歩としては、複雑なことを考えずに世界全体に分散投資できるオルカンのようなファンドを軸に据えるのが合理的です。

銘柄選びに疲れてしまった人、情報量の多さに圧倒されてまだ何も始められていない人にとって、「オルカンを使った長期・積立・分散」というシンプルな戦略は、有力な選択肢となり得ます。まずは無理のない金額から、時間を味方につける仕組みを作ることが、世界株インデックス投資で結果を出すための出発点になります。

最終的な投資判断はご自身のリスク許容度や資産状況に基づいて行い、無理のない範囲で、長期的な視点を持って取り組むことが重要です。