PTS夜間市場で学ぶ『決算ギャップ・トレード』入門——最初の“勝ちパターン”を作るための完全ガイド

日本株
「夜のうちに動いた株価を、翌朝の寄りでどう活かすか」。日本株の個人投資家が最初に磨くべき勝ちパターンの一つが、PTS(私設取引システム)夜間市場を使った決算ギャップ・トレードです。本稿は、初心者でも明日から実務に落とせるよう、口座準備から板の読み方、発注のコツ、具体的ルール設計、資金管理、想定外への対処までを手順で解説します。

重要なのは「難しい予想」を当てることではありません。起きた事実(決算の発表とPTSでの価格ギャップ)に反応し、機械的にリスクを限定した意思決定を積み重ねることです。感情を排したルール運用こそが、初心者の勝率と損益曲線を安定させます。

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1. PTS夜間市場とは何か——なぜ初心者に有利なのか

PTSは証券取引所(東証)とは別に、証券会社のシステム上で売買をマッチングする市場です。国内には複数のPTSがあり、多くのネット証券が夜間(例:16:30〜23:59頃)に取引機会を提供しています。東証の取引時間外にIRや決算が出る日本では、「情報の初動」がしばしばPTSで起きます。ここに、個人投資家にとっての明確な優位性が生まれます。

  • 情報の反映が早い:決算短信・業績修正・大型IRが出ると、夜間のうちに需給が動く。
  • 相対的に板が薄い:小さな資金でも価格が動きやすく、学習に向く(一方でスプレッド拡大に注意)。
  • 翌日の準備ができる:PTSの値動きと出来高から、翌朝寄り付きの戦略とシナリオを事前に作成可能。

欠点も明確です。流動性の薄さ約定の不安定さ成行発注が制限される全銘柄が対象ではないなど。したがって、小さいサイズで、板と出来高を確認しながら指値中心で運用するのが基本です。

2. 口座準備:実務フローとつまずきやすいポイント

2-1. 証券口座の開設とPTS利用設定

  1. 主要ネット証券で口座開設申込(本人確認書類・マイナンバー提出、オンライン手続可)。
  2. ログイン後、PTS取引の利用申請が必要な場合は有効化(約款・リスク説明の確認)。
  3. 入金方法の準備(即時入金・振込)。夜間に備え、余力を事前に確保。
  4. アプリ/PCツールのインストール。板(気配)、歩み値、出来高、価格帯別出来高が見える画面を用意。

2-2. 夜間の発注仕様の理解

  • 指値中心:夜間は成行が使えない/非推奨の場合が多い。指値で主導権を持つ。
  • 有効期限:当日限り(夜間まで)か、翌日に繰り越せるかは証券会社による。
  • 注文単位:最低売買代金(100株など)と呼値(ティック幅)を事前確認。
  • 手数料:PTSと東証で異なる場合がある。スプレッド込みで総コストを意識。

3. 取引の土台:ニュース→板→価格の三点読み

決算ギャップ・トレードは、「材料の質」「板と出来高の反応」「価格の位置」の三点を同時に見る癖が肝心です。

3-1. 材料の質

良い材料でも「織り込み済み」なら上がりにくい一方、サプライズの方向と大きさが明確だとPTSの初動が強くなります。数字(売上・営業益・見通し)に「上振れ/下振れ」がはっきり出たか、定量的に捉えます。

3-2. 板と出来高の反応

買い板が厚いのに上に飛ばないときは、目先の大口売りが吸収している可能性。歩み値で連続成約方向とサイズを観察し、「成り買い→板が切り上がる→再び成り買い」のリズムが続くかを確認。

3-3. 価格の位置

前日終値と比べ、PTS価格が±5〜10%動いているかで戦術が変わります。やりやすいのは、大きくギャップ→半値戻しや、ギャップ後に続伸する順張りです。

4. コア戦略A:半値戻し(Mean-Reversion)

狙い:好材料でPTSが急騰(または悪材料で急落)した直後、過熱の一部が冷める動きを取りに行く手法。初心者に向くのは、小さなサイズでの反発狙いです。

4-1. ルール(買いの例)

  1. 条件:前日終値に対してPTS価格が+6%以上上昇し、出来高が自社過去PTS平均の2倍以上
  2. 板:最良気配のスプレッドが呼値の3刻み以内で、歩み値で連続約定が見られる。
  3. エントリー:直近高値から38.2%〜50%押した価格帯に指値を置く(複数枚分割)。
  4. 損切り:押しの61.8%を明確に割れたら撤退。
  5. 利確:直近高値手前、または押し幅と同等のリバウンドで半分、残りはトレーリング。

4-2. 具体例(数値シミュレーション)

前日終値1,000円→PTS直後高値1,120円(+12%)。
押し38.2%=1,120→1,070円付近、50%=1,060円付近。
1,070円で100株、1,060円で100株の分割指値
損切りは1,050円割れ、利確は1,110円で半分、残りは1,115円に指値置き直し。

ポイントは「待つ」こと。飛びつかず、押し目ゾーンだけで約定させる。板が薄いときは枚数をさらに落とし、一撃で取ろうとしない

5. コア戦略B:高値更新の順張り(Momentum)

狙い:サプライズの質が高く、買いの勢いが継続している場面で、「直近高値の上抜け」に合わせて小さく乗る。

5-1. ルール(買いの例)

  1. 条件:歩み値で高値更新直前の連続成約が確認でき、出来高が増勢。
  2. エントリー:直近高値+1ティック上に指値(指値成行イメージ)。
  3. 損切り:直近高値の下2〜3ティック。すぐ戻らなければ撤退。
  4. 利確:+0.8%〜+1.5%で素早く半分。残りは伸びなければ撤退。

5-2. 実務の注意

  • 板が薄い時は約定スリップが起きやすい。最良売気配の枚数を確認し、枚数を抑える。
  • 「高値更新→即戻り」はアルゴのフェイクの可能性。同値撤退を躊躇しない

6. 翌朝の寄りをどう扱うか(持ち越し/手仕舞い判断)

PTSのポジションを翌朝に持ち越すかは、ギャップ幅・出来高・ニュース続報・先物の気配で決めます。

  • 持ち越し向き:良材料で出来高も強く、夜間の引けにかけて高値圏で押し目買いが支配。先物も堅調。
  • 見送り/手仕舞い:悪材料で出来高が細り、戻り売りが勝つ。先物が重い。IRの中身が曖昧。

初心者は、原則は夜間のうちに完結させる方が安全です。翌朝のギャップは正にも負にも働きます。寄り成行は避け、指値で主導権を維持しましょう。

7. ロット管理と損益の設計

勝ちパターンを作るには、1トレードあたりの許容損失を資金の0.5〜1.0%に固定するのが基本。たとえば資金100万円なら、1回の損失は5,000〜10,000円に抑えます。

  1. 想定損失幅(エントリー〜損切りの距離)を先に決める。
  2. 許容損失額 ÷ 損失幅 = 株数でロットを算出。
  3. 約定しない・滑る前提で、半分のロットで分割発注する。

これだけで、「たまたまの大損」をほぼ防げます。

8. 画面設計(初心者用の標準レイアウト)

  • 左:板(最良気配〜5本)、出来高、歩み値。
  • 中央:1分足チャート(夜間のみ表示)、価格帯別出来高。
  • 右:注文パネル(IFD-OCO/指値・逆指値)。

チャートに多くの指標は不要。価格・出来高・時間だけで十分です。むしろ板と歩み値を音で通知(高値更新・出来高急増時)できると判断が速くなります。

9. 初心者が避けるべき落とし穴

  • 成行の乱用:板が薄い時間は一撃で飛ぶ。必ず指値で。
  • 一発逆転狙い:ロットを急に上げない。勝ち方を標準化してから。
  • ニュース未確認:二次情報だけで売買しない。一次情報(企業の公式IR)を読む癖。
  • 持ち越しの安易化:翌朝のギャップを「祈る」行為は、初心者の損失の典型。

10. 具体的ワークフロー(時間軸で手順化)

(A)16:00〜18:00:決算・IRの初動チェック

  1. ウォッチ銘柄のIR更新とPTS価格の変化を同時監視。
  2. ギャップが±5%以上、出来高が増勢の銘柄だけに絞る。
  3. 材料の質を素早く評価(上振れ幅、ガイダンス、セグメントの内訳)。

(B)18:00〜22:00:戦術選択と小さく実行

  1. 半値戻しか、順張りかを決める(両方は狙わない)。
  2. 分割指値・IFD-OCOを準備し、待ちの姿勢で約定を引きつける。
  3. 「想定外の値動き」には、即時で損切り。迷ったら撤退。

(C)22:00〜23:59:ポジション整理と翌日の計画

  1. 持ち越すなら、シナリオとサイズを明文化。寄り付きの指値を準備。
  2. 持ち越さないなら、夜のうちに完結。体験をメモに残す。
  3. 翌朝のチェックリスト(先物気配、関連セクター、続報の有無)を用意。

11. 口座開設の実務メモ(初心者向け)

どのネット証券でも大枠は同じです。

  1. 公式サイトから申込。メール・SMS認証
  2. 本人確認(運転免許証・マイナンバー)。スマホで撮影→即時審査が主流。
  3. ログイン後、取引口座の初期設定(株式、PTSの有効化、入出金、二段階認証)。
  4. アプリの通知設定(価格アラート・高値更新・出来高急増)。
  5. 少額でテスト発注(指値・取消・訂正)。実弾投入前に操作に慣れる

12. 学習を加速する記録術(テンプレ付)

初心者が最短で上達する方法は、同じ型で繰り返し検証することです。以下のテンプレを毎回埋めれば、勝てる条件負ける条件が数週間で見えてきます。

【日付】
【銘柄】
【材料の要約】(上振れ幅/下振れ幅、ガイダンス、定性的ポイント)
【PTSギャップ】(+◯%)/【PTS出来高】(自社平均比)
【選択戦術】(半値戻し/順張り)
【エントリー根拠】(板・歩み値・価格位置)
【損切り位置】/【利確位置】/【サイズ】
【結果】(約定価格、損益)
【学び】(再現性のある/ない要因)

13. よくある質問(FAQ)

Q1:夜間は板が薄くて怖いです。
— 正常な感覚です。分割・小ロット・指値が基本。慣れるまでは「見送る力」を磨く方が期待値が高いです。

Q2:持ち越しはダメですか?
— ルール化できるまで原則回避。翌朝ギャップはプロでも制御が難しいため、まずは夜間で完結する型から。

Q3:ニュースはどこで見ますか?
— 一次情報(会社開示)を最優先に。要約サイトは補助です。

Q4:空売りは使いますか?
— 初心者は不要。ルール運用と資金管理が身につくまでは、買い戦略のみで十分です。

14. まとめ——「夜に準備し、朝に迷わない」

PTS夜間市場は、情報が生まれる瞬間に最も近い舞台です。事実→反応→位置の三点を見て、半値戻し高値更新のどちらか一つを小さく繰り返す。ロットは常に一定の許容損失から逆算。この当たり前を継続できる人だけが、損益曲線を右肩上がりにできます。

まずは1ヶ月、同じ手順を反復してください。あなた専用の「勝ちパターン」が、夜の静かな板の向こう側に見えてきます。

付録:チェックリスト(印刷用)

  • 一次情報の確認(IR原文・決算短信)
  • ギャップ幅(前日終値比%)
  • PTS出来高(自社平均比)
  • 板の厚みとスプレッド(呼値何刻み)
  • 戦術の選択(半値戻し/順張りのどちらか一つ)
  • 分割指値の価格帯と枚数
  • 損切り位置(ティックで明確化)
  • 利確の分割設計(半分利確の水準)
  • 持ち越し判断(翌朝の指値、先物気配)
  • トレード後の記録(テンプレを埋める)

このチェックリストを毎回読み上げるだけで、感情的な判断をかなり減らせます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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