- なぜ「値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率」が効くのか
- 基本指標:比率の作り方(初心者でもすぐ分かる)
- データはどこで見る?(日本株の現場の導線)
- 読み方のコア:地合いを4象限で分類する
- 具体例:よくある「指数高値更新なのに勝てない日」の正体
- 寄り付き直後のブレッドスはノイズが多い:見るべきタイミング
- 「比率」の閾値を決める:私の目安(過度な最適化はしない)
- ブレッドスをトレードルールに落とす(日本株デイトレの具体的な型)
- 「セクター別ブレッドス」で一段深く読む:資金移動を捕まえる
- 騙しを避ける:ブレッドスが効かない日・効きにくい環境
- 「上げているのに弱い」を定量化:分布を見る発想
- 実戦シナリオ:前場のブレッドスで「午後の作戦」を決める
- 中長期(スイング)での使い方:トレンドの“健全性”を測る
- 初心者がやりがちな失敗と、現実的な改善策
- 簡易バックテスト発想:ブレッドスで“取引しない日”を作る
- まとめ:ブレッドスは「戦う環境」を決める指標
- 発展:A/Dライン(累積)で「相場の体力」を測る
- Excelで自作する最短ルート(数分で終わる)
- 「ブレッドス・スラスト」で転換点を早期検知する
- 暗号資産・FXに応用する場合の考え方(市場の違いを吸収する)
- 最終チェックリスト:今日の「攻め/守り」を5項目で決める
なぜ「値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率」が効くのか
日経平均やTOPIXが上がっているのに、体感では「ぜんぜん儲からない」と感じる日があります。逆に指数は横ばいでも、個別は全面高で取りやすい日もあります。このズレの正体が、値上がり銘柄数(Advance)と値下がり銘柄数(Decline)の比率=いわゆる市場のブレッドス(breadth)です。
指数は時価総額の大きい銘柄の影響を強く受けます。極端に言えば、数社の大型株が上がるだけで指数は上昇します。しかし、あなたが触るのは必ずしも大型株だけではありません。ブレッドスは「市場の参加者がどれだけ広く買っているか/売っているか」を可視化し、指数の見えない部分(地合い)を補完します。
基本指標:比率の作り方(初心者でもすぐ分かる)
最もシンプルなのは次の2つです。
① A/D比(Advance/Decline Ratio):値上がり銘柄数 ÷ 値下がり銘柄数
② ネットブレッドス(Advance − Decline):値上がり銘柄数 − 値下がり銘柄数
例:東証プライムで値上がり900、値下がり600なら、A/D比=900/600=1.5、ネットブレッドス=+300です。A/D比が1より大きいほど買い優勢、1より小さいほど売り優勢。ネットブレッドスはプラスが大きいほど強い、マイナスが大きいほど弱い、という直感的な読み方ができます。
さらに実戦では、値上がり銘柄比率(Advance %)=値上がり銘柄数 ÷(値上がり+値下がり+変わらず)も便利です。「変わらず」を含めることで、薄商いの日にA/D比が暴れにくくなります。
データはどこで見る?(日本株の現場の導線)
日本株なら、証券会社のマーケット情報や取引所データ、主要ポータルで「値上がり銘柄数/値下がり銘柄数/変わらず」が日次で確認できます。ポイントは、指数と同じ市場区分で揃えることです。
- TOPIXを見るなら:東証プライムのブレッドス
- グロースの地合いを見るなら:グロース市場のブレッドス
- 監視銘柄がスタンダード中心なら:スタンダードのブレッドス
区分が違うと、地合いの温度感がズレます。「TOPIXは強いのに個別が弱い」の原因が、実はあなたが触っている市場が別区分、ということも普通に起きます。
読み方のコア:地合いを4象限で分類する
ブレッドスは「その日の勝ちやすさ」を判断する実務ツールです。私は、指数(例:TOPIX)とブレッドス(A/D比またはネットブレッドス)を組み合わせて、相場を4象限に分類します。
(1)指数↑ × ブレッドス↑:素直に強い。上昇が広く分散しやすく、押し目買いが機能しやすい。
(2)指数↑ × ブレッドス↓:「大型株だけで指数が上がる」疑い。体感は弱い。追いかけ買いは事故りやすい。
(3)指数↓ × ブレッドス↑:指数は弱いが個別は底堅い。セクター回転や小型優位の可能性。逆張りより“選別”が効く。
(4)指数↓ × ブレッドス↓:全面安。リスクを落とす日。勝ちに行くより守るのが正解になりやすい。
この4象限に落とすだけで、エントリーの攻め/守りが決まります。初心者がやりがちな「毎日同じ強さで戦う」を止めるのが最大の効果です。
具体例:よくある「指数高値更新なのに勝てない日」の正体
たとえば、寄り付きから日経平均が堅調でニュースもポジティブ。しかし後場にかけて、あなたの監視している中小型がじわじわ下がる。引けで指数はプラスなのに、口座はマイナス。これは(2)指数↑×ブレッドス↓の典型です。
この局面では、指数寄与度の大きい銘柄(半導体主力、メガバンク、商社など)が強く、その他が弱い構図になりがちです。指数だけ見て「地合いが良い」と誤認すると、弱いグループを買って負けます。対処は明確で、ブレッドスが戻るまで“銘柄選択を指数寄与銘柄側へ寄せる”か、“トレード回数を減らす”のどちらかです。
寄り付き直後のブレッドスはノイズが多い:見るべきタイミング
寄り付き直後は気配更新・成行の偏りで、値上がり/値下がりが急変します。ここを根拠にするとブレます。私が実務で重視するのは次の3点です。
① 9:05〜9:15の落ち着いた時点:初動の偏りが一巡した後。
② 前場引け(11:30):午前の需給を確定させる。
③ 後場寄り(12:30)から30分:昼休みの先物・海外動向の影響が出る。
特にデイトレの場合、前場引けのブレッドスが「午後も勝負するか/撤退するか」の判断に効きます。前場で指数がプラスでも、値下がり優勢なら、午後は“取りに行く”より“逃げ切る”優先が合理的です。
「比率」の閾値を決める:私の目安(過度な最適化はしない)
閾値を細かく最適化すると、環境が変わった瞬間に機能しなくなります。初心者はまず、粗い目安で十分です。例として、東証プライムのA/D比で以下を採用します(市場環境で多少ずれます)。
A/D比が1.5以上:強い地合い。順張りの成功率が上がりやすい。押し目を待って買う価値が出る。
A/D比が0.7以下:弱い地合い。逆張りの期待値が落ちる。ロスカットが連発しやすい。
0.7〜1.5:中間。銘柄選別と時間帯の工夫が重要。
ここで重要なのは、「強いから何でも買う」ではなく、強い日は“普段より条件を緩めても勝てる”、弱い日は“条件を厳しくしても負ける”という期待値の調整です。
ブレッドスをトレードルールに落とす(日本株デイトレの具体的な型)
ブレッドスは指標そのものより、運用に落とすことで価値が出ます。初心者でも再現しやすい、シンプルな型を3つ示します。
型A:地合いフィルター(エントリー許可/禁止)
・前場9:10時点でA/D比が1.2以上 → ロング戦略のみ許可(ショートは原則やらない)
・A/D比が0.8以下 → ショート戦略のみ許可(ロングは原則やらない)
・中間 → 監視銘柄を絞り、ブレイクのみ(レンジは見送り)
「ロングもショートも両方やる」ほど難易度は上がります。ブレッドスで片側に寄せるだけで、初心者の事故は減ります。
型B:利確・損切りの“伸ばし/縮め”を決める
強い地合い(A/D比高い)では、利確幅を広げ、損切りは一定に保つとリスクリワードが改善しやすい。逆に弱い地合いでは、利確を早め、損切りも早める(粘らない)方が生存確率が上がります。
例:普段は利確+1.0%、損切り-0.6%のルールなら、強い日は利確+1.5%、損切り-0.6%、弱い日は利確+0.7%、損切り-0.5%のように、地合いで“伸びる期待”を調整します。
型C:銘柄ユニバースの切り替え
・ブレッドスが弱い日:指数寄与度が高い大型株、ディフェンシブ、インデックスETF中心(値動きが素直になりやすい)
・ブレッドスが強い日:中小型、テーマ株、グロースの押し目・ブレイク(資金が広がる)
同じ監視リストで戦わない。これが“地合いを読む”の実装です。
「セクター別ブレッドス」で一段深く読む:資金移動を捕まえる
相場はいつも全面高・全面安ではありません。資金がセクターを回転します。ここで効くのが、セクター別の値上がり/値下がりです。証券会社の業種別騰落、テーマ別ランキングと併用すると、次のような読みが可能になります。
例:全体のA/D比は1.0で中立。しかし、半導体・電線・機械は値上がり優勢、内需小売・不動産は値下がり優勢。これは「景気敏感へ寄っている」地合いです。あなたが小売を買って負けるのは“銘柄が悪い”のではなく、“資金の流れと逆”だからです。
初心者はまず、自分の監視している10〜30銘柄を、業種で色分けするだけで十分です。自分の得意な業種がその日“順風”か“逆風”か、ブレッドスで確認してから勝負する。これだけで無駄打ちは減ります。
騙しを避ける:ブレッドスが効かない日・効きにくい環境
万能な指標はありません。ブレッドスが効きにくい典型を押さえておくと、期待しすぎを防げます。
① 大型イベント日(重要指標・中銀イベント等):発表前は様子見で「変わらず」が増え、発表後はアルゴの一方向で急変しやすい。
② メジャーSQや指数イベント近辺:先物主導の値動きで指数とブレッドスが乖離しやすい。
③ 低流動性(連休前後、夏枯れ):薄い板で小さな売買が株価を動かし、値上がり/値下がりが振れやすい。
こうした日は、閾値を少し緩めるのではなく、ポジションサイズを落とす/回数を減らすのが合理的です。ブレッドスは“戦闘力の倍率”を教える指標なので、環境が悪いなら倍率を下げるのが正解です。
「上げているのに弱い」を定量化:分布を見る発想
もう一歩オリジナルな視点として、値上がり銘柄の“中身”を見ます。値上がり銘柄数が多くても、+0.1%が大量で、-3%が少数あるだけで、体感は悪くなります。そこで、可能なら次を併用します。
・騰落率の分布(+1%以上が何銘柄、-1%以下が何銘柄)
・ストップ高/ストップ安の本数
同じ「値上がり優勢」でも、+1%以上が多い日は“本当に強い”。+0.1%が多い日は“弱い強さ”です。初心者は分布まで追わなくても、ストップ高/安の本数を眺めるだけでも、勢いの違いが見えます。
実戦シナリオ:前場のブレッドスで「午後の作戦」を決める
ここで、日中の意思決定を具体的に文章化します。例として、9:10でA/D比=1.35、TOPIXは+0.4%。前場引けでA/D比=1.10へ低下、TOPIXは+0.6%。この場合、午前は強かったが、じわじわ広がりが失速しています。
午後の作戦はこうなります。
・新規の追いかけ買いは封印(ブレッドス低下=上値が重くなりやすい)
・午前の含み益は一部でも確定(“勝ち逃げ”優先)
・午後にやるなら、指数寄与度の高い銘柄の押し目だけ(広がりが弱い日は大型が最後に残ることが多い)
逆に、前場引けでA/D比が1.35→1.60へ上昇しているなら、午後は“押し目買いで追加”が合理的になります。こういう判断を、感覚ではなく数値でやるのがブレッドス運用です。
中長期(スイング)での使い方:トレンドの“健全性”を測る
ブレッドスはデイトレだけでなく、スイングにも効きます。指数が上昇トレンドでも、ブレッドスが悪化しているなら、上昇は“狭い”。これは天井形成の前兆になりやすい。
実務では、週次で「値上がり銘柄比率の移動平均」を見ると分かりやすいです。たとえば、値上がり比率(Advance %)の5日平均が下がり続けるのにTOPIXが上がるなら、上昇は大型依存です。スイングなら、新規の買いを減らし、利確を早め、下落に備えるという安全運転の判断ができます。
初心者がやりがちな失敗と、現実的な改善策
失敗1:ブレッドスが強い=何でも買って良い
強い地合いでも、決算・材料・需給が悪い銘柄は落ちます。ブレッドスは“追い風”であって“エンジン”ではありません。改善策は、銘柄側の条件(出来高、節目、トレンド)を最低限は満たすことです。
失敗2:ブレッドスが弱いのに、いつものロットで粘る
弱い地合いの日は、普段勝てるパターンでも負けます。改善策はシンプルで、弱い日はポジションサイズを半分以下にする。これだけで資金曲線が滑らかになります。
失敗3:一回の数値で決め打ちする
9:03のブレッドスだけで判断するとノイズです。改善策は、最低でも9:10と前場引けの2点を見ること。トレンドとして改善か悪化かを見れば、判断の質が上がります。
簡易バックテスト発想:ブレッドスで“取引しない日”を作る
初心者にとって最大の武器は、当てることより「負ける局面を避ける」ことです。ブレッドスは、取引回避ルールに落としやすい。
例:A/D比が0.75未満の日はデイトレを原則休む、または“最小ロットで練習”に切り替える。これだけで、全面安の日の連敗を減らせます。勝ちに行く日と守る日を分けるのは、プロの資金管理の基本です。
まとめ:ブレッドスは「戦う環境」を決める指標
値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率は、個別の売買シグナルではありません。あなたの武器(手法)が機能しやすい“環境”かどうかを判定する、地合いのメーターです。
指数だけで判断すると、「大型だけの上げ」を見抜けずに負けます。ブレッドスを足すと、相場を4象限に整理でき、ロット、回数、銘柄選択、利確の伸ばし方まで一貫して決められます。まずは、9:10と前場引けのブレッドスを毎日メモし、勝てた日/負けた日の共通点を探してください。そこから、あなた専用の地合いルールが出来上がります。
発展:A/Dライン(累積)で「相場の体力」を測る
日次のA/D比は、その日の天候を教えてくれます。もう少し長い目で「相場の体力」を見たいなら、A/Dライン(Advance-Decline Line)が有効です。A/Dラインは、ネットブレッドス(値上がり−値下がり)を日々累積していく指標です。
作り方は簡単で、毎日「値上がり−値下がり」を計算し、それを足し上げます。A/Dラインが上向きなら、市場の上昇は幅広く支持されている。指数が横ばいでもA/Dラインが上がるなら、水面下で買いが増えている可能性が高い。逆に指数が上がっているのにA/Dラインが下がるなら、上昇は一部銘柄に偏り、トレンドが脆いサインになりやすい。
スイングでは、この「指数 vs A/Dラインのダイバージェンス」を見るだけで、天井・底の“準備段階”を捉えやすくなります。完璧に当てるのではなく、攻めを弱める/守りを厚くする判断に使うのが現実的です。
Excelで自作する最短ルート(数分で終わる)
「毎日メモする」を仕組みにすると継続できます。Excel(またはスプレッドシート)で、次の列を用意してください。
・日付 / 値上がり / 値下がり / 変わらず / A/D比 / ネットブレッドス / A/Dライン(累積)
A/D比は「=値上がり/値下がり」、ネットは「=値上がり-値下がり」、A/Dラインは「=前日のA/Dライン+ネット」です。値下がりが0の日は割り算ができないので、A/D比は「値下がりが0なら最大値扱い」にする(例:999)か、Advance %を併用します。
この表に、当日の自分の成績(勝ち/負け、トレード回数、損益)を1行だけ追加すると、ブレッドスと成績の関係が一気に見えます。初心者が上達する最短ルートは、派手な手法ではなく、環境と成績の相関を自分のデータで掴むことです。
「ブレッドス・スラスト」で転換点を早期検知する
もう一段だけ実戦的な概念として、ブレッドス・スラスト(breadth thrust)があります。これは、弱い地合いから強い地合いへ、短期間に急回復する局面を指します。体感的には「昨日まで何を買ってもダメだったのに、突然、押し目が全部跳ねる」日です。
シンプルに運用するなら、以下のように定義できます。
・Advance %(値上がり比率)の5日平均が、40%未満から60%以上へ上抜けた
この形は、“総悲観からの反転”で出やすい。そこでのコツは、初動で最大ロットを張らないことです。最初は小さく入り、ブレッドスが2〜3日続くのを確認してから増やす。これで、転換点の「一日だけの戻り(単発)」に振り回されにくくなります。
暗号資産・FXに応用する場合の考え方(市場の違いを吸収する)
ブレッドスの強みは「多数の銘柄(資産)が同時に上がるか」を測れる点です。株は銘柄数が多いので直接使えます。暗号資産でも同じ発想が使えます。例えば、取引所の上位100銘柄を対象に「24時間でプラスの銘柄数」と「マイナスの銘柄数」を数えれば、クリプト版ブレッドスになります。
暗号資産でよくあるのは、BTCだけ上がってアルトが死ぬ局面(BTCドミナンス上昇)です。これは「指数↑×ブレッドス↓」と同型です。逆にアルトも一斉に上がる局面はブレッドス↑で、短期資金がリスクを取りに来ています。アルトのスキャルピングをするなら、この“追い風”の日だけ触る、というルールは非常に合理的です。
FXは通貨ペア数が少ないため、ブレッドスをそのまま作るより、ドル高/ドル安の幅広さを測る発想に置き換えます。例:ドル円、ユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドルなど主要ペアで「ドルが買われているペアが何本か」を数える。ドル全面高ならトレンドが出やすく、ドルまちまちならレンジになりやすい、という判定に使えます。
最終チェックリスト:今日の「攻め/守り」を5項目で決める
最後に、ブレッドスを実務に落とすためのチェックリストを示します。毎朝(または9:10時点)に、これだけ確認してください。
1)対象市場区分の値上がり/値下がり/変わらずは?(区分は揃える)
2)A/D比(またはAdvance %)は強い/弱い/中間のどれか?
3)指数は上/下/横ばいのどれか?(4象限に分類)
4)セクターで優位なものは何か?(自分の得意分野は追い風か)
5)今日は攻める日か、守る日か?(ロットと回数を決める)
これを習慣化すると、「負けやすい日に無理をしない」状態が作れます。勝てる手法を探す前に、負ける環境を避ける。ブレッドスは、そのための最短の道具です。


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