金利スワップが示す『利上げ回数』の読み方:個人投資家が相場の先回りに使う手順

市場解説
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金利スワップは「市場の本音」を数値化する

金利スワップは、一定期間の「固定金利」と「変動金利」を交換するデリバティブです。ここで重要なのは、スワップが“景気の解説”ではなく、市場参加者が実際にヘッジや投機に使う価格だという点です。ニュースや解説よりも早く、しかも金額を伴って織り込みが進みます。

個人投資家がまず押さえるべきは、一般の金利スワップ(IRS)よりも、政策金利の期待をダイレクトに映すOIS(Overnight Index Swap)です。米国ならSOFR、日本ならTONA、英国ならSONIAなど「翌日物金利」に連動するOISが、中央銀行の政策金利見通しの温度計になります。

「利上げ回数」はどうやってスワップから読めるのか

発想はシンプルです。OISの各年限(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年…)のレートは、ざっくり言えば「その期間に平均して実現しそうな翌日物金利」を表します。翌日物金利は政策金利の近辺に誘導されるため、OIS曲線を見れば「何回、どのタイミングで政策金利が動く想定か」が透けます。

利上げ回数に落とすときは、次の考え方で整理します。

(1)観測点を決める:次回会合の手前(1ヶ月)と、数回会合をまたぐ(6ヶ月〜1年)をセットで見る。
(2)差分で考える:短いOIS(例:1ヶ月)と中期OIS(例:1年)の差を取る。差が広がるほど、将来の利上げ(または利下げ)を多く織り込む。
(3)“1回あたりの刻み”で割る:政策金利の通常の変更幅(米国は0.25%刻みが多い)で差分を割ると、概算の回数が出ます。

例えば、現状の短期OISが4.75%相当で、1年OISが5.25%相当なら差は0.50%。通常が0.25%刻みなら、概算で「年内に2回の利上げを平均的に織り込む」イメージです。もちろん実務では会合ごとの確率分布(何月に何bp)で表しますが、個人が相場感を掴むなら差分と刻み幅で十分に戦えます。

初心者が混乱しやすい3つの落とし穴

落とし穴①:名目金利と政策金利を混同する
10年国債利回りが上がった=利上げ回数が増えた、とは限りません。長期金利は成長率・インフレ期待・需給・国債発行など要因が多すぎます。政策の回数を読みたいなら、まずOIS(翌日物連動)に寄せるのが合理的です。

落とし穴②:中央銀行の発言をそのまま信じる
要人発言は市場を誘導する“コミュニケーション政策”でもあります。発言がタカ派でも、OISが動かなければ「市場は本気で受け取っていない」可能性が高い。逆に発言が無難でも、OISが先に動くなら「市場が先回りした」局面です。個人は“言葉”より“価格”に張り付くべきです。

落とし穴③:織り込みは常に早い
利上げは会合当日に決まるのではなく、数週間〜数ヶ月かけて織り込まれます。ニュースで「利上げ観測」と言われたときには、OISの曲線がすでにピークに近いこともあります。だからこそ、毎日見る価値があります。

個人投資家向け:スワップ曲線の「見る順番」テンプレ

毎日すべてを見る必要はありません。負荷を下げつつ、判断精度を上げるためのテンプレを提示します。

Step1:当面(1〜3ヶ月)OISの方向
ここが上がるなら「次回会合での引き締め確率が上昇」。下がるなら「据え置き・緩和方向」。短期が動かないのに株だけ荒れる日は、ノイズの可能性が高い。

Step2:1年OISの水準と、短期との差(スプレッド)
差が拡大=利上げ回数の増加(または利下げ回数の減少)。差が縮小=利上げ回数の減少(または利下げ回数の増加)。ここが相場の“シナリオ変更”を映しやすい。

Step3:2年〜5年のスロープ(傾き)
2年と5年の差が縮む(フラット化)ときは「引き締めが景気を冷やす」連想が強まりやすく、株式のグロースが弱くなりやすい。逆にスティープ化はリスク選好の土台になることが多い。

Step4:直近イベント前後の“変化量”
CPI、雇用、会合、要人発言の前後で、OISが何bp動いたかを見る。値そのものより、イベントが“どれだけ期待を更新したか”が武器になります。

「利上げ回数の増減」が株・FX・債券に効くメカニズム

利上げ回数の織り込みが変わると、主に3つのチャネルで価格が動きます。

(A)割引率チャネル:株価は将来キャッシュフローを割引いて評価します。利上げ回数が増えると割引率が上がり、特に将来利益に依存するグロース株に逆風になりやすい。

(B)為替チャネル:金利差が拡大すると高金利通貨が買われやすい。米国の利上げ回数が増える織り込みなら、一般にドル買い要因になりやすい(ただしリスクオフ時は例外が起きる)。

(C)信用・流動性チャネル:短期金利が上がると資金調達コストが上がり、信用スプレッドや株式のリスクプレミアムが見直されやすい。レバレッジがかかったポジションほど影響が出ます。

具体例①:米OISが急騰した日の「デイトレ初動判断」

想定シナリオ:米国のインフレ指標が予想を上回り、発表直後に1年OISが上方向に跳ねた(=年内利上げ回数の織り込み増)。このときの初動は、ニュース本文を読むより先に、「金利→ドル→株指数先物」の順で反応が出がちです。

個人がやるべきは、次の“二択”を早めに決めることです。

二択1:ドル高トレンド追随(短期)
OISの上振れが継続し、ドル円が直近高値をブレイクしていくなら、短期はドル高に乗りやすい。ここで重要なのは、ドル円だけでなく、米国株指数先物(特に金利感応度の高い銘柄群)に売り圧力が出ているかを同時に見ることです。ドル円が上がっているのに株が崩れないなら、金利上昇が“良い金利(成長期待)”として受け取られている可能性があります。

二択2:リスクオフ初動(短期)
OISが上がり続け、同時に株指数先物が下に走るなら、リスクオフの初動になりやすい。個別株のデイトレでは、指数寄与度が高いセクター(半導体、ハイテク、成長株)から売られやすい。逆に銀行など金利メリット銘柄が相対的に強いかを見て、ロング/ショートの組み合わせを作ると“地合い”の影響を薄められます。

具体例②:OISは動かないのに長期金利だけ動く日

よくある罠がこれです。10年金利が大きく上下して、SNSが騒ぐ。しかし短期OIS(政策見通し)はほぼ不変。この場合、政策の回数は変わっていないので、相場は「需給(国債入札)」「財政」「タームプレミアム」「リスクオン/オフ」の要因で長期だけが振れている可能性が高い。

個人にとっては、ここで“思い込み”を捨てるのが勝ち筋です。政策見通しが変わっていないなら、為替や株のトレンドは持続しやすいことがあります。こういう日は、短期のレンジ・逆張り(スキャルピング)が機能しやすく、スワップを起点にした大きな方向感は出にくい、と割り切れます。

具体例③:日本(TONA OIS)と海外(SOFR OIS)の“ズレ”を使う

日本の政策金利は海外と比べて変化が遅いことが多く、為替(ドル円)は金利差で動きやすい構造があります。ここでポイントは、「米国の利上げ回数が増える織り込み」かつ「日本側の織り込みがほぼ動かない」局面です。金利差の拡大がストレートに意識されやすく、ドル円がトレンドを作りやすい。

逆に、米国側の利上げ回数が減る(利下げが早まる)織り込みが進むと、ドル円は“天井を作りやすい”。ただし、同時に株が崩れるリスクオフが強いときは円高が加速しやすい一方、危機時のドル需要が勝つ局面もあり得ます。結論として、ドル円を触るなら「OISの差分」と「株指数先物の方向」をセットで見ると、単純な金利差だけより事故が減ります。

スワップ曲線で「騙し」を減らすチェックリスト

価格はときどき嘘をつきます。特に短期はアルゴの揺さぶりが入ります。騙しを減らすためのチェックを固定化します。

チェック1:変化が“点”か“線”か
イベント直後に1年OISが跳ねても、数時間で戻るなら“点”。翌日も水準が維持されるなら“線”。個人は線だけを採用し、点は見送るのが合理的です。

チェック2:複数市場の整合性
OISが上がるなら、短期国債・FRAs・先物(例:Fed funds futures)も同方向になりやすい。どれか一つだけが突出しているなら、特殊要因(需給、ロール、期末)を疑います。

チェック3:ボラティリティとの同時上昇
利上げ回数の織り込み増に加えてボラが上がると、株の下振れが出やすい。逆に利上げ回数が増えてもボラが落ち着くなら、「景気が強いから金利が上がっている」解釈が優勢になりやすい。

ポジションサイズとリスク管理:金利テーマは“急変”が本体

金利テーマで個人が負けやすい理由は、方向性の誤りよりも、急変に耐えられないサイズを持つことです。スワップ由来の相場は、指標1本で織り込みが10〜30bp動くことがあり、為替や株の値幅が一気に拡大します。

実務的には、次のルールが有効です。

(1)イベント前は想定損失でサイズを決める
「CPIでドル円が平均何銭動くか」「株指数が何%振れるか」を自分の過去トレードから見積もり、許容損失から逆算します。ロットは“当てにいく”のではなく“耐える”ための数値です。

(2)利上げ回数の“更新”が出たら、分割で入る
OISが明確に線で変わったと判断できても、初動で全力は危険です。1/3→1/3→1/3と分割し、逆行したら早めに撤退できる構造にします。

(3)損切りは「価格」より「前提」で切る
金利テーマの前提はOIS曲線です。例えば「年内2回利上げ織り込み」を根拠にしたなら、その織り込みが1回に戻った時点で、相場がまだ含み益でも“前提崩れ”として手仕舞いを検討する。これが長期的に最もブレません。

株式への落とし込み:セクター別の“勝ちやすい相性”

利上げ回数の増減は、セクター相性がはっきり出ます。初心者はまず、銘柄選定を難しくしないために、相性の良い領域から触るのが無難です。

金利上昇(利上げ回数増)に比較的強いことが多い:銀行・保険など金融(利ざや期待)、資源(インフレ局面)、バリュー寄り。
金利上昇に弱いことが多い:ハイテク・グロース、PERが高い銘柄、将来利益期待が大きい新興。
中立になりやすい:生活必需品、公益などディフェンシブ(ただし債券代替として買われる/売られる局面はある)。

ここでのコツは、個別の材料よりも「金利の前提が変わった日だけ」セクター回転を見ることです。毎日やるとノイズに飲まれます。OISが線で変わった日をトリガーにすれば、作業は減り、勝率は上がります。

FXへの落とし込み:ドル円トレードの“金利版セットアップ”

ドル円は「金利差」で説明されがちですが、実戦では“金利差の変化”が最も効きます。OISを使ってセットアップを作るなら、次の2パターンが扱いやすいです。

パターンA:米利上げ回数の織り込み増+株が堅い
これは“良い金利上昇”の可能性があり、ドル円が素直に上を向きやすい。押し目買いが機能しやすいので、5分足〜15分足で直近の押し安値を基準に、損切りを浅く置けます。

パターンB:米利上げ回数の織り込み増+株が崩れる
これは“引き締めショック”になりやすく、値動きが荒くなります。スキャルピングなら、戻り売り・ブレイクの追随を短時間で切り上げる。スイングは、日足の節目を背にするまで待つ方が生存率が上がります。

逆に「利上げ回数の織り込み減」は、ドル円の天井形成の燃料になりやすい。ここでは、下げの初動で追いかけるより、戻りで売る方がリスク/リワードが安定します。

債券・債券ETFへの落とし込み:初心者がやりがちな誤解

「利上げ回数が増えるなら債券は下がる」は概ね正しいですが、期間(デュレーション)で感応度が大きく違います。短期債は政策金利に近いので価格変化は小さく、長期債は期待とプレミアムで大きく動きます。初心者が混乱するのは、OISが変わらないのに長期債が乱高下する局面です。

実践的には、債券を触るなら「どの期間の金利を取っているのか」を言語化します。短期を取るのか、長期の期待を取るのか。前者は政策見通し(OIS)に近く、後者は景気・需給要因が強くなります。自分が見ている指標と、持っている商品が一致していないと、永遠に噛み合いません。

毎朝5分のルーティン:スワップ起点で“相場の地図”を更新する

最後に、初心者でも継続できる運用フローをまとめます。ポイントは「毎日やるが、軽くやる」です。

(1)短期OISと1年OISの方向を確認:上か下か、前日比でどれだけ動いたか(bp)。
(2)差分を0.25%刻みで回数換算:年内±何回のイメージか。
(3)株・為替の“反応のズレ”を確認:金利が動いたのに株が動かない、またはその逆。ズレが出たらチャンスとリスクが同時に増えます。
(4)今日のトレード方針を一行で書く:「利上げ織り込み増→グロースは戻り売り優勢」「織り込み減→ドル円は戻り売り待ち」など。

これを続けると、ニュースに振り回されずに、価格ベースで相場観を更新できます。金利スワップは難しそうに見えますが、個人が使うべき核心は“差分”と“変化量”です。ここを押さえれば、株・FX・債券のすべてで判断が速くなり、無駄なトレードが減ります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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