REITの金利サイクル逆張り戦略:インカム投資で金利の行き過ぎを狙う

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REITの金利サイクル逆張り戦略とは何か

REIT(不動産投資信託)は、賃料収入などから得られるインカムを投資家に分配する仕組みを持つ金融商品です。不動産から発生するキャッシュフローを原資にしているため、株式よりも配当利回りが高くなることが多く、一見すると安定したインカム投資先として魅力的に見えます。しかし、REITの価格は「金利サイクル」に大きく振り回されます。金利が上昇するときには売られ、金利が低下するときには買われるという動きが典型です。この金利と価格の関係を逆手に取り、「金利サイクルに対して逆張りする」ことで、価格の歪みからリターンを狙うのが本稿で扱う戦略の概要です。

多くの初心者は、REITの価格変動を「不動産市況」だけで捉えがちです。しかし、実務的には「金利」の影響のほうが短期〜中期の値動きに対して支配的になる局面が少なくありません。逆張り戦略を組むには、まずこの構造を正しく理解し、どの局面で市場が行き過ぎているのかを冷静に判断できるようになる必要があります。

なぜ金利が上がるとREITが売られやすいのか

REITと金利の関係を理解するには、いくつかの視点を整理する必要があります。第一に、投資家の目線から見ると、REITは「高配当をくれる資産」として、債券や預金と競合する存在です。例えば、REITの分配金利回りが年4%で、国債の利回りが1%であれば、「リスクを取ってもREITに投資する価値がある」と感じる投資家が多くなります。しかし、国債利回りが3%や4%に近づいてくると、わざわざ価格変動リスクの大きいREITに投資する魅力が相対的に低下します。その結果、資金が安全資産へと移動し、REITが売られる圧力が高まります。

第二に、REITは借入を活用して不動産を保有しているため、金利の上昇は「コストの上昇」として効いてきます。借入金利が上がれば、同じ賃料収入でも利益が圧迫され、将来の分配金の伸びが鈍化する懸念が強まります。市場参加者はこれを先回りして価格を調整しようとするため、金利が急上昇する局面では、実際にはまだ業績が悪化していなくてもREITが売られやすくなります。逆張り戦略では、この「先回りの行き過ぎ」を狙います。

金利サイクルを4つのフェーズに分解する

金利サイクル逆張りを行うためには、「今が金利サイクルのどのフェーズなのか」をざっくりで良いので把握することが重要です。ここでは、金利サイクルを分かりやすく次の4フェーズに分解して考えます。

  • フェーズ1:低金利維持期(景気の回復初期〜安定期)
  • フェーズ2:利上げ加速期(インフレ懸念が意識される局面)
  • フェーズ3:高金利ピーク&景気減速期
  • フェーズ4:利下げ開始〜低金利回帰期

一般的には、フェーズ2〜3の局面でREITは売られやすく、フェーズ3終盤〜4の局面でREITが見直されやすくなります。逆張り戦略としては、「フェーズ3の終盤〜フェーズ4の入り口」で、売られ過ぎているREIT指数や銘柄に徐々にエントリーしていくスタンスが基本になります。

フェーズ2:利上げ加速期の注意点

利上げが始まった直後のフェーズ2では、「まだ金利上昇がどこまで続くか分からない」ため、安易な逆張りは危険です。金利見通しが修正されるたびにREITが売られ、ナンピンしても含み損が積み上がりやすい環境になります。初心者はここで「割安に見えるから」といって早く飛びつきやすいですが、金利のトレンドがはっきりと変わるまで待つ忍耐が求められます。

フェーズ3〜4:逆張りのチャンスゾーン

逆張りのメインステージは、金利が高止まりし始め、景気指標の弱さや金融政策転換の議論が増えてくるフェーズ3の後半です。このあたりから、「次は利下げかもしれない」という市場の期待が少しずつ織り込まれます。しかし、その時点ではニュースヘッドラインはまだ強気な金利見通しを語っていることも多く、市場全体はREITに対して悲観的なムードを維持していることが少なくありません。この「雰囲気とデータのズレ」が、逆張りの入り口になります。

逆張りのためのチェック指標の考え方

具体的な銘柄を選ぶ前に、まずは「市場全体がどの程度売られ過ぎているか」を把握することが大切です。指標の例としては、以下のような観点が挙げられます。

  • REIT指数の配当利回りが、長期国債利回りに対してどの程度上乗せされているか(スプレッド)
  • 過去数年の平均利回りと比べてどれくらい高いか
  • 価格が過去の調整局面と比べてどの程度落ち込んでいるか(高値からの下落率)
  • 空室率や賃料トレンドなど、不動産のファンダメンタルが大きく崩れていないか

例えば、あるREIT指数の分配金利回りが5%で、同じ期間の長期国債の利回りが1.5%だったとします。利回り差は3.5%です。過去数年の平均利回り差が2%程度であれば、「通常よりも利回り差が広がっている=REITが売られ過ぎている」可能性があります。ただし、これはあくまで一例であり、実際の投資判断では複数の指標を組み合わせることが重要です。

エントリーとエグジットのルール設計例

逆張り戦略は「安く買って高く売る」ことを狙うため、エントリーとエグジットのルールを事前に決めておくことが不可欠です。ここでは、投資初心者でもイメージしやすいシンプルな設計例を挙げます。

エントリールールの一例

  • 長期国債利回りがピークから明確に反転し、直近数か月で高値から一定程度低下している
  • REIT指数の分配金利回りが、過去5年平均よりも一定以上高くなっている
  • REIT指数の価格が、過去3年のレンジの下限付近または下限を一時的に割り込んでいる
  • マクロ環境として、急激な不況や金融危機のリスクが高まっていない

これらの条件のうち、複数が同時に満たされつつあるタイミングを「分割して買い始める」イメージです。一度に大きく投資するのではなく、時間を分散させて複数回に分けてエントリーすることで、タイミングのブレに対応しやすくなります。

エグジットルールの一例

  • REIT指数の分配金利回りが、過去5年平均を下回る水準まで低下した
  • 長期国債利回りが再び上昇トレンドに転じた兆候が出ている
  • 価格が高値圏に近づき、利回りの魅力が薄れてきた

利回りが低下してきたということは、それだけ価格が上昇したことを意味します。逆張り戦略では、「利回りが魅力的な水準から平常モードに戻ったあたり」で、欲張り過ぎずに利益確定することがポイントです。

シミュレーション的なイメージで戦略を捉える

ここでは、あくまでイメージをつかむための仮想的なシナリオを考えてみます。実在の指数や銘柄を特定するものではなく、構造を理解するための例として捉えてください。

例えば、ある時点でREIT指数の分配金利回りが6%、長期国債利回りが2%だとします。過去5年平均の利回り差は2.5%、現在は4%の差があると仮定すると、市場は金利上昇不安を過度に織り込んでREITを売り込んでいる可能性があります。この局面で、投資家Aは3回に分けて資金を投入することにしました。

1回目は、金利がまだ高止まりしているが、上昇ペースが鈍化してきた時点。2回目は、実際に金利がピークアウトしたと判断できる統計や政策メッセージが出た時点。3回目は、利下げの議論が明確に増えてきた時点です。その後、金利が徐々に低下していくにつれ、REIT指数は価格を回復し、分配金利回りは6%から4%台まで低下したとします。このとき、投資家Aは決めていたエグジット基準に従い、保有ポジションを段階的に利益確定します。

リスク管理:逆張りだからこそ「逃げ道」を先に決める

逆張り戦略は、タイミングがずれると含み損が長期間続くリスクを抱えます。そのため、あらかじめ「どこまで想定するのか」「どの程度の下落まで耐えるのか」を定量的に決めておくことが極めて重要です。具体的には、次のようなルールを自分なりに設定しておくと良いでしょう。

  • 1銘柄・1指数あたりの投資額を、総資産の何%までとするか
  • 想定外の金利ショックが起きた場合、どの水準で一旦損切りするか
  • レバレッジ型の金融商品を使う場合は、最大レバレッジ倍率を事前に決めておくか、基本的に使わない方針にするか

逆張りでありがちなのは、「ここまで下がったからにはさすがに反発するはずだ」と思い込み、計画以上に資金を追加してしまうことです。金利サイクルの変化は、時に想定以上に長引きます。事前に決めたルール以上のリスクを取らないことが、長く市場に残るための最低条件と言えます。

個別REITを選ぶか、指数連動商品を使うか

金利サイクル逆張り戦略は、「構造的な歪み」を狙う発想のため、個別銘柄の選別よりも「セクター全体」「指数」への投資のほうが、初心者には分かりやすいことが多いです。個別REITには、物件ポートフォリオや運用方針、スポンサーの違いなど、多くの固有要因が存在し、金利とは別のリスク要因が増えます。一方、指数連動型の投資手段であれば、金利サイクルに対するセクター全体の反応を素直に取りにいくイメージになります。

一方で、個別REITの中には、堅実な賃貸需要と安定したスポンサーを持ちながらも、金利上昇局面で他の銘柄と一緒に売られ過ぎているケースもあります。このような銘柄を見つけられれば、指数よりも高いリターンを狙える可能性がありますが、分析負荷が高まる点には注意が必要です。最初は指数連動商品でシンプルに構造を体感し、慣れてきたら一部を個別REITに振り分けるというステップを踏むのも一案です。

ポートフォリオ全体の中での位置づけ

REITの金利サイクル逆張り戦略は、「株式のボラティリティは高過ぎるが、債券だけではリターンが物足りない」という投資家が、ポートフォリオにアクセントとして組み込む使い方が考えられます。例えば、株式・債券・現金を中心としたコア資産に対して、全体の数%〜10数%程度を目安に、タイミングを見ながらREIT逆張り枠として運用するイメージです。

このとき重要なのは、「REITも株式と同様に価格変動リスクを負う資産である」という前提を忘れないことです。配当利回りが高いからといって、値動きが小さいわけではありません。特に金利が急激に変動する局面では、短期間で価格が大きく動くことがあります。ポートフォリオ全体で見たときに、「どの程度の下落なら心理的にも耐えられるか」をイメージしながら、REITへの配分比率を決めていくことが大切です。

初心者が意識しておきたい心理面

逆張り戦略は、「周りが悲観しているときに買う」「周りが楽観しているときに売る」という行動を求められます。これは理屈としては簡単ですが、実際に自分の資金を投入するときには強い心理的抵抗が生じます。ニュースやSNSでは悲観的な情報が溢れ、専門家のコメントもネガティブなトーンが増える中で、「本当に今買って大丈夫なのか」と不安になるのは自然なことです。

この心理的ハードルを乗り越えるためには、「事前に決めたルールに従う」という仕組みづくりが有効です。例えば、「利回り差が一定以上に拡大し、長期金利がピークから一定幅低下したら、淡々と定額で買い付ける」といったルールを決めておけば、その瞬間の感情に左右されにくくなります。また、日々の価格変動を細かく追い過ぎると、逆張りポジションの含み損益に一喜一憂してしまうため、チェック頻度を意図的に減らす工夫も有効です。

まとめ:金利と時間を味方につけるREIT逆張り

REITの金利サイクル逆張り戦略は、派手な売買で短期に大きな利益を狙うスタイルではなく、金利と不動産市場の構造的な関係性を理解し、「行き過ぎた悲観」から「平常モードへの回復」をじっくりと取りにいくアプローチです。ポイントは、金利サイクルを4つのフェーズで捉え、フェーズ3終盤〜フェーズ4の入り口で、分配金利回りや利回り差、価格水準を冷静に観察しながら段階的にエントリーすることです。

また、あらかじめエグジットルールとリスク許容度を決めておき、想定外の金利ショックや不動産市況の悪化が起きた場合でも、感情に流されずに対応できるように準備しておくことが重要です。REITはインカムとキャピタルの両方を狙える資産クラスですが、その魅力を引き出すには「金利」というもう一つの軸を意識する必要があります。構造を理解し、自分なりのルールに落とし込むことで、長期的に再現性のある投資行動に近づいていくことができるでしょう。

最後に、どのような戦略であっても、将来の結果は不確実です。ここで述べた内容は、金利とREITの関係性を整理し、戦略の考え方を提示するものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断は、自身の資金状況やリスク許容度を踏まえて慎重に検討することが大切です。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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