REIT(不動産投資信託)は、金利サイクルに強く影響を受ける資産クラスです。金利が上昇すると価格が売られ、金利がピークアウトして低下に転じると、遅れて大きく戻るというパターンがよく見られます。本記事では、この「金利サイクル」との関係に着目し、あえて悲観が強い局面で仕込む逆張り型REIT戦略について、初心者でも取り組みやすい形で具体的に解説します。
ここで紹介するのは、「いつもREITを持ちっぱなしにする」のではなく、「金利サイクルの特定の局面だけに絞って投資する」考え方です。これにより、値動きの荒さを抑えつつ、キャピタルゲインと分配金の両方を狙うことを目指します。
REITが金利に敏感な3つの理由
まず、なぜREITが金利に敏感なのかを整理しておきます。ポイントは次の3つです。
① 将来の賃料収入を現在価値に割り引くから
REITはオフィスビルや商業施設、物流施設、住宅などから得られる賃料収入が主な収益源です。投資家はこの将来の賃料収入を「割引率」で現在価値に換算します。この割引率のベースに使われるのが、国債利回りなどの金利です。
金利が上昇すると割引率が上がるため、同じ賃料収入でも現在価値が下がり、REIT価格は下落しやすくなります。逆に金利が低下すれば割引率が下がり、REITの理論価値は上昇します。
② 借入コストが利益に直結するから
REITは物件を買う際に、自己資本だけでなく銀行借入や社債などの負債も使います。金利が上がれば借入コストが増え、分配原資となる利益が圧迫されます。市場はこれを織り込み、分配金の減額懸念から価格を下げやすくなります。
一方、金利が低下すると既存の借入を低金利に借り換えできる可能性が高まり、REITにとってコスト削減要因になります。これもまた、中長期的には価格の押し上げ要因です。
③ 債券や預金との利回り比較の対象になるから
投資家は常に、「ほかの商品と比べて割に合うか」を考えます。金利が高いときは、国債や定期預金、MMFの利回りが魅力的になり、相対的にREITの魅力は低下します。
逆に、金利が十分に下がると、安全資産の利回りが物足りなくなり、「比較的高い利回りが期待できるREITに資金が戻る」という動きが起こりやすくなります。この「資金の行き来」も、金利サイクルとREIT価格の関係を形作っています。
金利サイクルとREIT価格のざっくりとした関係
金利サイクルを大まかに3つの局面に分けて、REITの反応イメージを整理します。
① 利上げ局面:下落トレンド+選別
政策金利や長期金利が上昇している局面では、REIT全体が売られやすくなります。とくにレバレッジが高い銘柄や、景気敏感なホテル・商業系REITは大きく下げることがあります。
ただし、すべてのREITが同じように悪化するわけではありません。長期契約が多い物流施設や住宅系など、一部のセクターは賃料の安定性から、相対的に下落が限定的な場合もあります。
② 金利ピーク局面:悲観と底打ち候補
利上げが最終局面に近づき、「そろそろ打ち止めかもしれない」と市場が意識し始めると、金利の上昇ペースが鈍り、長期金利は横ばい~やや低下に転じることがあります。
このタイミングは、ニュースでも「REITは逆風」「分配金減額リスク」などネガティブな見出しが増え、個人投資家のセンチメントも弱気になりがちです。しかし、金利のピークアウトが近いほど、将来の「金利低下→評価見直し」への期待も高まる局面と言えます。
③ 利下げ・金利低下局面:評価見直しとリバウンド
政策金利が据え置き・利下げに転じ、長期金利も低下基調になると、REITにとって「割引率低下」「借入コスト低下」「安全資産との利回り差拡大」という追い風が同時に働きやすくなります。
この局面では、利上げ時に過度に売られた銘柄や、分配利回りが高止まりしていた銘柄が、急激に見直されることがあります。逆張り戦略は、この「評価見直し」を事前に狙いにいくアプローチです。
金利サイクル逆張り戦略の基本コンセプト
金利サイクル逆張り戦略の核になる考え方は、次の3点に集約できます。
- ① 「利上げが続いている途中」ではなく、「利上げ終盤~金利ピークアウトが近い局面」を狙う
- ② マクロ金利指標だけでなく、「REITインデックスの下落」と「分配利回りの上昇」を組み合わせて判断する
- ③ 一度に全額買うのではなく、複数回に分けて時間分散しながら逆張りしていく
次の章では、より具体的なシンプルなルール例を紹介します。
初心者向けシンプルルール:REITインデックス+長期金利で判断する
ここでは、個別銘柄ではなく、REIT全体に投資できるインデックス型のETFや投資信託を使う前提で、シンプルな戦略ルールを例示します。あくまで考え方の一例ですが、初心者でもイメージしやすい形にまとめています。
ステップ1:ウォッチする指標を決める
最低限、次の3つをチェック対象にします。
- ・REITインデックス(例:国内REIT指数、グローバルREIT指数など)
- ・10年国債利回り(その市場の代表的な長期金利)
- ・対象REITインデックスの想定分配利回り
証券会社や投信会社のサイト、金融情報サイトなどで、これらは日々確認できます。
ステップ2:逆張りエントリーの条件を決める
一例として、次のような条件を組み合わせます。
- ・直近6か月でREITインデックスが▲15%以上下落している
- ・同期間に10年国債利回りが明確に上昇している(例:+0.5%ポイント以上)
- ・REITインデックスの想定分配利回りが、過去5年平均より十分に高くなっている(例:+1%ポイント以上)
この3条件が同時に満たされるとき、「金利上昇による悲観が織り込み済みで、利回り的に魅力が出てきた局面」と判断します。このタイミングで、一度にではなく、例えば3~5回に分けて買い始めるイメージです。
ステップ3:分割エントリーのイメージ
例えば、REITに合計100万円投資したい場合、次のように分割します。
- ・1回目:条件を初めて満たした日に20万円
- ・2回目:さらにインデックスが5%下落したら20万円
- ・3回目:そこからさらに5%下落したら20万円
- ・4回目:金利上昇が一服し、インデックスが底打ち気配を見せたところで20万円
- ・5回目:インデックスが短期移動平均線を明確に上抜けたタイミングで20万円
このように時間と価格を分散することで、「底だと思って買ったら、さらに下がった」というリスクを和らげることができます。
ステップ4:出口戦略(売却ルール)
逆張り戦略は出口ルールが非常に重要です。目安として次のような基準を組み合わせます。
- ・含み益が20~30%程度に達したら、段階的に利益確定を始める
- ・インデックスの分配利回りが、過去5年平均近くまで低下してきたら売却を検討する
- ・10年国債利回りが明確に低下しきり、今度は再上昇リスクが意識され始めたらポジションを軽くする
「いつまでも利回りが高いまま」という状態は永続しにくく、人気が戻れば利回りは低下(=価格は上昇)します。その「平常化」が見えてきたところで、欲張り過ぎずに部分売却していくのが現実的です。
個別REITを使った応用編:セクター分散と利回りギャップ
インデックスETFに慣れてきたら、次のステップとして個別REITを組み合わせる方法もあります。ここでは考え方の枠組みだけ紹介します。
① セクター別に金利感応度を考える
一般に、オフィス、商業施設、ホテルなど景気感応度が高いセクターは、金利上昇局面では売られやすく、金利低下局面では強く戻りやすい傾向があります。一方、住宅や物流、データセンターなど、長期契約・構造的需要に支えられたセクターは、金利の影響を相対的に受けにくいことがあります。
金利サイクル逆張り戦略では、あえて「金利上昇で売られ過ぎたセクター」に絞る、または「景気と金利が同時に悪化しにくいセクター」に分散するなど、いくつかのアプローチが考えられます。
② 個別REITの指標チェック項目
個別銘柄を選ぶ際は、少なくとも次の指標を確認することが重要です。
- ・分配利回り(過去の水準と比較して高すぎないか)
- ・LTV(総資産に占める有利子負債の割合)
- ・平均借入金利と借入期間(短期固定ばかりになっていないか)
- ・物件ポートフォリオの分散状況(物件・エリア・テナント分散)
分配利回りが高くても、LTVが極端に高かったり、借入期間が短くて金利上昇時に一気にコストが上がりそうな銘柄は、逆張りのつもりがリスクを取り過ぎてしまう可能性があります。
リスク管理:金利だけでなく「不動産の実態」を見る
金利サイクル逆張り戦略で特に注意すべきリスクは、次の3つです。
① 金利が長期間高止まりするリスク
中央銀行がインフレ抑制を最優先し、景気よりも物価を重視する姿勢を長く続けると、想定よりも金利の高止まりが続くことがあります。この場合、REITの分配金はじわじわと圧迫され、投資回収に時間がかかる可能性があります。
このリスクに備えるには、あまりに早いタイミングで逆張りし過ぎないこと、そして一度に全額投資しないことが重要です。
② 不動産市況の悪化リスク
金利が下がっても、オフィス空室率が高止まりしたり、商業施設のテナント撤退が続いたりすると、賃料収入が伸びず、REITの分配金回復が遅れることがあります。金利が下がれば何でも上がるわけではない、という点は常に意識しておく必要があります。
物件ポートフォリオの立地や用途、入居テナントの分散状況など、「不動産そのものの質」を確認することが、金利以上に重要になるケースもあります。
③ 流動性リスク・価格変動リスク
市場がストレス局面に入ると、REITは株式と同様に短期間で大きく値動きすることがあります。出来高が少ない銘柄では、売買したいタイミングで思うように取引できない可能性もあります。
このため、初心者はまず、一定の流動性があり、分散の効いたインデックスETFや大規模REITから始める方が、実務上のストレスは小さくなります。
実践ステップ:少額から経験を積む
最後に、金利サイクル逆張り戦略を実際に始めるうえでのステップを整理します。
ステップ1:自分の資産全体の中での位置づけを決める
まず、REITにどの程度の比率を割くかを決めます。例えば、「株式・債券・現金・REIT」という4つの柱で考え、REITは全体の10~20%程度にとどめる、といったイメージです。あまり比率を高め過ぎると、不動産市況にポートフォリオが偏り過ぎるリスクが高まります。
ステップ2:ウォッチリストとチェック頻度を決める
日々すべての銘柄を追う必要はありません。対象とするREITインデックス、代表的なREIT ETF、長期金利指標を数個に絞り、週1回程度チェックするルールにしておくと続けやすくなります。
ステップ3:あらかじめ「買う条件」と「売る条件」を紙に書いておく
逆張り戦略は、どうしても「怖いときに買う」行為になります。その場の感情に流されないよう、あらかじめ次のような項目を決めて書き出しておきます。
- ・REITインデックスがどの程度下がったら買い始めるか
- ・分配利回りが何%以上になったら投資対象とみなすか
- ・1回あたりいくらずつ買うか、最大何回に分けるか
- ・含み益が何%になったら利益確定を開始するか
- ・含み損がどこまで広がったら一旦見直すか
このようにルールを言語化しておくことで、「ニュースに振り回されて売買する」状態から一歩抜け出すことができます。
まとめ:金利サイクルを味方に付けるREIT逆張り
REITは金利に敏感な資産クラスですが、それは裏を返せば、「金利サイクルを理解すれば、悲観のピーク付近で仕込むチャンスがある」ということでもあります。
本記事で紹介した金利サイクル逆張り戦略は、
- ・金利上昇で売られた局面をあえて狙う
- ・インデックスと長期金利、分配利回りを組み合わせて判断する
- ・時間分散と出口ルールでリスクを管理する
というシンプルな枠組みに基づいています。少額から実際に取り組み、自分なりに指標やルールを微調整していくことで、金利サイクルを味方に付けたREIT投資の感覚が少しずつ身についていきます。
焦って一度に大きな金額を投じるのではなく、ルールと仕組みでコツコツと経験を積み重ねることが、長く市場に残るための近道になります。


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