ホテルREITで稼ぐ:インバウンド回復と宿泊単価上昇を“数字で”取りに行く実践ガイド

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ホテルREITは「不動産」ではなく「オペレーション(稼働するビジネス)」だと理解する

ホテルREITは、同じJ-REITでもオフィスや物流と性格がかなり違います。オフィスは賃料改定が年1回レベルで、契約期間も長めです。一方でホテルは、部屋を毎日売るビジネスです。稼働率(Occupancy)×宿泊単価(ADR)で日々売上が変わり、そこから導かれるRevPAR(1室あたり売上)が最重要のKPIになります。

この違いを飲み込めると、ホテルREITは「インバウンド回復」「円安」「イベント需要」といった外部ショックを利益に変えやすい反面、逆回転すると分配金の下方リスクも早い、という特徴が腹落ちします。つまり、買うなら“需給・金利”ではなく、まず“運営指標の加速”を取りに行くべき商品です。

まず覚えるべき3つの指標:稼働率・ADR・RevPAR

ホテルREITを分析するとき、最初に見るべきは「稼働率」「ADR(Average Daily Rate:平均客室単価)」「RevPAR(Revenue per Available Room)」です。関係はシンプルで、RevPAR=稼働率×ADRです。

例を出します。稼働率80%でADRが20,000円ならRevPARは16,000円です。稼働率が85%に上がり、ADRも21,000円に上がれば、RevPARは17,850円になります。RevPARは11.6%上昇です。ここがポイントで、稼働率とADRが同時に上がる局面は“複利”で効いてきます。ホテル株やホテルREITが強い相場は、だいたいこれが起きています。

初心者がやりがちなミスは、「訪日客が増えた」だけで買ってしまうことです。実際は、訪日客が増えても供給(新規開業)が増えればADRが伸びません。逆に、訪日客が横ばいでも、円安や航空便増、イベント集中などで繁忙期の価格が跳ねればADRが上がり、RevPARが伸びることがあります。ニュースではなく、指標の変化率を追うのがコツです。

ホテルREITの収益構造:固定賃料と変動賃料のどちらが強いか

ホテルREITの分配金のブレは、賃料の取り方でだいぶ変わります。ざっくり、以下のパターンがあります。

(A)固定賃料型:REITは一定賃料を受け取る。景気悪化でも分配金が落ちにくいが、好況時の上振れも小さい。

(B)固定+変動(ミックス):最低限の固定賃料に加えて、売上や利益に連動する賃料が乗る。守りと攻めのバランスが取れる。

(C)変動賃料比率が高い(運営連動が強い):RevPARが伸びる局面で分配金が跳ねるが、需要ショックで急落しやすい。

投資の実務で重要なのは、「このREITは今の相場局面でどの型が有利か」を明確にすることです。インバウンド急回復や単価上昇の初期は、変動賃料の効きが強いほど“伸びしろ”が大きい。一方で、需給が一巡し景気減速が見えてきたら、固定比率が高い方が防御的です。

「宿泊単価の上昇」はどこから来るのか:インバウンドだけではない4要因

ADRが上がる要因を分解すると、分析精度が上がります。重要なのは次の4つです。

1)客層ミックスの改善:団体旅行から個人旅行へ、または富裕層比率が上がると単価が上がります。都市部の上位ブランドや、リゾートのハイエンドで起きやすい。

2)供給の制約:新規開業が少ない、あるいは人手不足で稼働できる客室数が実質的に減ると、価格決定力が上がります。ここはニュースで見落とされがちです。

3)イベント集中:大型イベント・学会・コンサート・スポーツ国際大会などは、特定エリアのADRを一時的に押し上げます。ホテルREITはエリア分散の仕方で影響度が変わります。

4)円安・航空便・ビザ/制度:円安は訪日需要を刺激しやすく、航空便の座席供給増は“実需”として効きます。制度変更(ビザ緩和等)は中期的な追い風になり得ます。

この4つを見たうえで、「需要が増えた」より「価格決定力が増えた」に焦点を当てると、ホテルREITの勝率が上がります。

数字で判断する:RevPARの“変化率”と、分配金の“耐久力”を同時に見る

ホテルREITは分配金利回りが目立つので、利回りだけで比較されがちです。しかし本質は、分配金がどれくらい“増える余地”があるかと、悪化局面でどれくらい“減りにくいか”です。

ここで使える実践的な見方が2つあります。

(1)RevPAR前年差(YoY):四半期や月次で、前年同月比の伸び率がどう推移しているか。伸び率が加速している(例:+5%→+10%→+15%)ときは、相場が強くなりやすい。

(2)“下振れ耐性”のチェック:固定賃料比率、運営会社の体力、契約条項(最低保証等)、エリア分散、そしてREITの財務(借入比率や金利固定の割合)です。好況期でも、借入条件が悪いと分配金が伸びません。

ホテルREITの金利リスク:利回り商品としての弱点を“事前に”潰す

J-REIT全体に共通ですが、ホテルREITは金利上昇局面で売られやすい傾向があります。理由は単純で、分配金利回りが債券利回りと比較され、相対的な魅力が下がるからです。さらに、REITは借入で物件を持っているので、調達金利が上がると利益が削られます。

ただし、ここで差が出ます。チェックすべきは次の3点です。

1)平均調達金利と固定金利比率:固定比率が高く、返済期限が分散されているほど、短期の金利上昇に強い。

2)LTV(Loan to Value):借入比率が高いほど、金融環境の悪化に弱い。初心者は「利回りが高い=お得」と見がちですが、背後に高LTVが隠れていることがあります。

3)物件売却・入替の実績:収益性の低いホテルを入れ替え、ポートフォリオの質を上げられる運用会社は、金利局面でも手が打てます。

実践:インバウンド回復局面で“取りに行く”売買シナリオ(具体例)

ここからは、実際にどうやって儲ける確率を上げるかです。以下はあくまで例ですが、再現性のある型として使えます。

ステップ1:マクロの追い風を「数」で確認する。見るのは、訪日客数そのものより、航空座席供給、主要都市の稼働率、旅行消費額、そして為替(円安の持続性)です。数字が連続して改善しているか、トレンドが重要です。

ステップ2:ホテルREITの月次開示でRevPARの加速を探す。前年同月比のRevPARが、直近3か月で加速している銘柄を候補にします。加速していないのに株価だけ上がっているものは、需給で上がっている可能性が高く、急落に巻き込まれやすい。

ステップ3:賃料構造と財務で“伸びの邪魔”がないか確認する。変動賃料が効くのに、借入の金利固定が薄い、もしくは大規模なリファイナンスが近いなら、伸びが相殺されることがあります。

ステップ4:買いのタイミングは「月次の数字が出た直後」か「決算で見通しが上がった直後」。ホテルREITは数字が動くときに市場が織り込みやすいので、材料が出てからでも間に合うことが多い。逆に、思惑で先回りしすぎると、指標が伸びなかったときに大きくやられます。

ステップ5:出口は“伸び率のピークアウト”と“供給増”。RevPARの伸び率が鈍化し始めたら警戒します。加えて、新規ホテル開業が増えるエリアに偏っているREITは、ADRの伸びが止まりやすい。利回りが高く見えても、分配金が下がれば意味がありません。

初心者がハマる落とし穴:高利回りに見える“理由”を必ず言語化する

ホテルREITで一番多い失敗は、「利回りが高いから買った」が、実は市場が先にリスクを織り込んでいたパターンです。高利回りの背景は主に3つです。

(1)収益がピークで、これから落ちる:RevPARが鈍化しているのに、過去の高い分配金が利回りを押し上げているケース。

(2)財務が弱い:高LTVで増資リスクがある、借入更新が近く金利上昇が刺さるなど。

(3)物件の質が低い:競争が激しいエリアの中価格帯に偏り、価格決定力が弱い。人手不足で稼働制約が出やすい等。

これらを避けるには、「なぜ利回りが高いのか」を1行で説明できるまで掘り下げることです。説明できないものは、買わない。それだけで事故率が下がります。

“宿泊単価上昇”を先読みする観点:データの当たり所と読み方

ホテルREITの分析は、意外と公開データで戦えます。使える当たり所は次の通りです。

・REITの月次レポート:稼働率・ADR・RevPARが載ることが多い。エリア別の内訳があると強い。

・観光統計:訪日客数、旅行消費額、国籍別など。客層ミックスのヒントになります。

・航空会社/空港のデータ:国際線の座席供給は、需要の上限を決めます。増便が続くなら需給が締まりやすい。

・大型イベントの開催予定:特定エリアの短期単価上昇のトリガーになります。集中する年は強い。

読み方のコツは、「水準」より「変化率」です。例えば、稼働率が元々高い都市部は、伸びしろがADRに出ます。逆に、稼働率が低い地方は、まず稼働率の改善が先に来ることが多い。エリア特性に合わせて、どちらのドライバーが効いているかを見分けます。

評価(バリュエーション)の実務:NAVとキャップレートを“ホテル仕様”で理解する

J-REITの評価でよく出てくるのがNAV(Net Asset Value)とキャップレート(不動産利回り)です。ただ、ホテルはオフィスより収益変動が大きいので、鑑定評価が「平準化」されがちです。ここが落とし穴になります。

例えば、足元のRevPARが急騰しているとき、鑑定評価は追いつかず、見かけ上P/NAVが割安に見えることがあります。逆に、需要が落ちた直後は鑑定評価が遅れて下がり、P/NAVが割高に見えることもあります。だからホテルREITは、P/NAVだけで判断するとズレやすい。

実務では、「RevPARのトレンド × 賃料構造 × 財務」を先に固め、P/NAVや分配金利回りは“最後の確認”に回す方が精度が上がります。

リスク管理:ホテルREITは「急変リスク」を前提にポジションを設計する

ホテルは外部要因に弱い面があります。感染症、自然災害、地政学、航空便の急減、為替の急反転などで、数か月単位で需給が崩れます。ここで重要なのは、「起きる確率が低いから無視」ではなく、起きたときに致命傷にならない設計にすることです。

具体的には、(1)単一銘柄に寄せすぎない、(2)買い増しは数字の確認後に分割、(3)“伸び率”が鈍化したら機械的に縮小、(4)金利急騰局面ではREIT全体が売られやすいので、指数や金利指標を監視、の4点を徹底すると事故が減ります。

まとめ:ホテルREITで勝ちやすい人の共通点

ホテルREITは、上手くやると「インバウンド × 価格決定力 × 変動賃料」のコンボで、分配金と価格上昇の両方が狙えます。逆に、利回りだけで買うと、需給悪化や金利で簡単に裏切られます。

勝ちやすい人の共通点はシンプルです。ニュースではなく、稼働率・ADR・RevPARの変化率を追う。賃料構造と財務で“伸びの邪魔”を潰す。出口は伸び率のピークアウトで判断する。これだけで、ホテルREITは「雰囲気投資」から「数字の投資」に変わります。

実践チェックリスト:買う前に必ず確認する10項目(読み物として理解できる形)

最後に、実際の検討で漏れやすい点を「チェックリスト」として整理します。箇条書きで終わらせず、なぜ重要かまで書きます。ここを潰すほど、負け筋が減ります。

1)ポートフォリオの立地は「勝ちエリア」に偏っているか:ホテルは立地がすべてと言っていい。不動産としての立地というより、「需要が年中あるか」「出張・観光・イベントの複数需要が重なるか」が重要です。都市部でも、主要駅から遠い、周辺に競合が増えている、などはADRが伸びません。

2)客層は分散しているか:インバウンド依存が高すぎると、為替反転や地政学で落ちます。逆に国内需要だけだと伸びが鈍い。出張・レジャー・訪日が混ざる構成が理想です。

3)賃料の変動連動は“どの段階”で効くか:売上連動なのか、利益(GOP等)連動なのかで感度が変わります。売上連動は早く効く一方、コスト上昇(人件費・光熱費)を吸収しにくい。利益連動は遅いが質が高い。どちらが有利かは局面次第です。

4)オペレーターは強いか:運営会社のブランド力とレベニューマネジメント(価格最適化)の巧さでADRが変わります。同じ立地でも運営で差が出ます。運営会社が弱いと、繁忙期でも値付けが甘く、取りこぼします。

5)改装(CAPEX)の計画が現実的か:ホテルは客室の改装が必須です。改装が遅れると競争力が落ち、ADRが伸びません。逆に改装投資が過大だと、短期的に分配金が圧迫されます。投資額と回収の筋が通っているかを見ます。

6)開示の粒度が高いか:月次で稼働率・ADR・RevPARをエリア別に出すREITは、投資家にとって武器です。数字が見えないREITは、後追いになりやすい。初心者ほど開示が丁寧なものを選ぶ方が運用しやすいです。

7)借入の期限分散と固定比率:先述の通り金利は避けられません。短期で返済が集中していると、金利上昇局面で“将来の分配金”が市場に叩かれます。固定比率が高いほど、想定外の金利変動に強い。

8)増資(公募増資)の蓋然性:物件取得を積極化する局面では増資が起きがちです。増資は短期的に希薄化で下がりやすい反面、優良物件の取得なら中期でプラスもあります。ここを理解しておくと、増資ショックが“仕込み場”になることがあります。

9)分配金の季節性:ホテルは繁忙期の偏りがあります。決算期のずれによって、分配金が上下に見えることがあります。単期の増減だけで一喜一憂せず、通期のトレンドで判断します。

10)供給増の影響を受けるエリアか:競合ホテルが増えるとADRが伸びません。ニュースで「新規開業〇〇件」だけを見ても意味が薄いので、同じ価格帯・同じ商圏に供給が増えるかを意識します。上位ブランドは供給の影響を受けにくいこともあります。

ケーススタディ(架空):月次の数字だけで“強い局面”を判定する

ここでは架空の例で、判断プロセスを具体化します。AホテルREIT(都市部中心、固定+変動型)とBホテルREIT(地方・リゾート中心、変動比率高め)を想定します。

直近3か月のRevPAR前年差が、Aは+6%→+9%→+12%、Bは+15%→+14%→+10%だったとします。表は不要なので文章で整理します。Aは加速、Bは減速です。この時点で「勢い」はAです。次に内訳を見ます。Aは稼働率が+2pt、ADRが+1,500円と両方伸びている。一方Bは稼働率が伸びず、ADRの伸びだけで押し上げていた。これだと、供給増や価格の天井が見えた瞬間にBは失速しやすい。

さらに財務を見ると、Aは固定金利比率が高く、返済期限が分散。Bは短期借入の更新が多い。金利上昇局面なら、Bは二重に不利です。こういうときは、Bの高利回りに飛びつくのではなく、Aで“伸び率の加速”を取りに行く方が合理的です。もちろん、Bが悪いという話ではなく、局面に合わないだけです。Bは、為替が落ち着き、金利が低下し、リゾート需要が再加速する局面で強くなり得ます。

よくある質問:ホテルREITを始める前に潰しておくべき疑問

Q1:ホテルREITは結局、利回り狙いですか?
A:利回りは入口の魅力度としては重要ですが、ホテルREITは“利回り固定”ではありません。分配金は需要ショックで変動します。だから「利回り狙い」ではなく「分配金が増える局面を取る」と考える方が実務的です。

Q2:円安なら必ず強いですか?
A:円安は追い風になりやすいですが、航空便が増えないと訪日客は物理的に増えません。また供給が増えれば単価は伸びません。円安は条件の1つで、決定打はRevPARの加速です。

Q3:いつ損切りすべきですか?
A:テクニカルの話ではなく、ファンダメンタルのルールを持つ方が再現性があります。例として「RevPAR前年差が2回連続で減速し、かつ供給増が見えているなら縮小」といった機械的なルールを作ると、感情で握り続ける事故が減ります。

Q4:税金は難しいですか?
A:J-REITの分配金は配当と同様に課税対象で、特定口座なら基本は証券会社側で処理されます。難しいのは、売買益・分配金のバランスや、損益通算の理解です。初心者はまず特定口座でスタートし、年間で通算するイメージを持てば十分です。

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お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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