個人投資家のための「損切りルール」の作り方と守り方

リスク管理

投資で生き残るために最も重要なルールのひとつが「損切り」です。どれだけ銘柄選びやチャート分析に自信があっても、損切りルールが曖昧だと、たった数回の失敗トレードで口座資金の大半を失うことがあります。

一方で、多くの個人投資家は「損切りの大切さ」は頭ではわかっていても、具体的なルール作りと運用方法までは落とし込めていません。本記事では、株・FX・暗号資産など、どのマーケットでも使える「損切りルールの作り方と守り方」を、初歩からていねいに解説します。

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損切りが必要なシンプルな理由

損切りは「負けを認める行為」ではなく、「次のチャンスに資金を残すためのコスト」です。相場に絶対はありません。どれだけ入念に分析しても、一定の確率でシナリオは外れます。そのときに損失を小さく止められるかどうかで、長期的な成績は決まります。

具体的には、次の2点が損切りの本質です。

  • ① 1回の失敗で致命傷を負わないようにすること
  • ② コントロールできる「最大損失額」をあらかじめ決めておくこと

「どこまで耐えるか」をその場の感情で決めてしまうと、含み損が膨らむごとに判断が鈍り、結果として損失が想定以上に大きくなります。これを避けるために、あらかじめルールとして損切りラインを決めておく必要があります。

損切りルール作りの3つの基本方針

損切りルールは、次の3つの観点を組み合わせて設計すると、ブレにくくなります。

  • 価格ベース:エントリー価格から何%逆行したら損切りするか
  • 時間ベース:想定した期間内に動かなければ損切りするか
  • 資金管理ベース:1回のトレードで口座資金の何%までをリスクにさらすか

多くの初心者は「価格ベース」だけで損切りを決めがちですが、実際には「資金管理ベース」が軸になります。なぜなら、口座全体のリスクをコントロールできなければ、たとえ勝率が高くても、数回の連敗で資金が大きく減ってしまうからです。

価格ベースの損切りラインの決め方

価格ベースの損切りは、エントリー価格を起点に「どれだけ逆行したら損切りするか」を決める方法です。たとえば、株であれば「エントリーから−5%で損切り」、FXであれば「エントリーから−50pipsで損切り」といったイメージです。

チャート上の「意味のあるライン」を基準にする

単純に「何%」と決めるだけでなく、チャート上のサポート・レジスタンスを基準にすると、より論理的な損切りラインになります。具体的には、次のようなポイントです。

  • 直近の安値(上昇トレンドで買いを入れる場合)
  • 重要なサポートライン(水平線や移動平均線)
  • ボリンジャーバンドの−2σ、前回の押し安値など

たとえば、上昇トレンド中の株を押し目買いする場合、「直近安値を終値ベースで割り込んだら損切り」というように、「トレンドが崩れたと判断できるポイント」を損切りラインに設定します。

パーセンテージで補助ルールを入れる

チャートの形だけだと損切り幅が大きくなりすぎるケースもあります。その場合は、「チャート上の意味あるライン」か「口座資金に対して許容できる損失幅」のどちらか厳しい方を優先する、といったルールにしておくとバランスが取れます。

例として、次のような組み合わせが考えられます。

  • 直近安値までの距離が−4% → 許容範囲なのでそのまま採用
  • 直近安値までの距離が−12% → 口座リスクが大きすぎるため見送り、あるいはロットを減らす

時間ベースの損切りルールの決め方

価格だけでなく「時間」を基準にした損切りも重要です。シナリオ通りに動かないのに、ダラダラとポジションを持ち続けると、資金もメンタルも拘束されます。

時間ベースの損切りとは、たとえば次のようなルールです。

  • スイングトレードなら「3〜5営業日以内に想定方向へ動かなければ一度手仕舞う」
  • デイトレードなら「エントリー後○分経っても方向感が出なければ撤退」
  • 暗号資産の短期売買なら「24時間以内に高値を更新できなければ一度クローズ」

時間ベースの損切りの目的は、「期待値の低いポジションを抱え続けないこと」です。相場が想定と違う動きをしている時点で、「損は出ていなくてもポジションを閉じる」という考え方も、立派なリスク管理です。

資金管理から逆算する損切りルール

損切りルールの中心となるのは「1回のトレードで口座資金の何%までをリスクにさらすか」という視点です。これを「1トレードあたりの許容リスク」と呼びます。

よく使われる目安は、次の通りです。

  • 比較的保守的なスタイル:口座資金の0.5〜1%
  • やや積極的なスタイル:口座資金の1〜2%

たとえば、口座残高が100万円で、1トレードあたりの許容リスクを「1%」と決めた場合、1回のトレードで失ってよい金額は1万円です。この1万円の範囲内に、損切り幅とロット数を収めるように逆算します。

具体例:株式の損切り幅とロット数の決め方

例として、次の条件で考えてみます。

  • 口座残高:100万円
  • 1トレードの許容リスク:1%(=1万円)
  • 銘柄の株価:1,500円
  • チャートから見た損切りライン:エントリーから−5%(=1,425円)

このとき、1株あたりの想定損失は「1,500円 − 1,425円 = 75円」です。許容できる総損失額は1万円なので、購入できる株数は「10,000円 ÷ 75円 ≒ 133株」となります。実際には100株単位で取引されることが多いので、100株までに抑える、という判断になります。

このように、「損切りライン → 1株あたりの損失額 → 許容リスク以内に収まる株数」を逆算することで、感情ではなくロジックでロットを決められます。

実践例:株・FX・暗号資産での損切り設定

次に、マーケット別にもう少し具体的なイメージを持てるよう、簡単なパターンを見てみます。

株式投資の例:決算またぎのスイングトレード

たとえば、決算を控えた成長株を短期で狙うケースを考えます。

  • 想定シナリオ:決算内容が市場予想を上回ればギャップアップ、悪ければギャップダウン
  • エントリー:決算発表数日前に打診買い
  • 損切りルール:決算発表後にギャップダウンし、直近安値を明確に割れたら即座に損切り

決算ギャンブルは値動きが荒くなるため、通常よりもロットを落とし、「最悪のケースを想定した損切り幅」を前提に資金配分を行うことが重要です。

FXの例:短期トレンドフォロー

FXではレバレッジが効くため、損切り幅の設定を間違えると、口座資金に対する影響が大きくなりがちです。

  • 想定シナリオ:主要通貨ペアが上昇トレンドにあり、押し目買いを狙う
  • 損切りライン:直近の押し安値の少し下(例:20pips下)
  • 1トレードの許容リスク:口座の1%以内

この場合も、まず「損切りまでのpips」を決め、それに応じてロット数を調整します。許容リスクを固定しておけば、一時的な連敗が続いても口座資金が一気に減ることを防げます。

暗号資産の例:ボラティリティの高い銘柄

暗号資産は値動きが激しく、株やFXと同じ感覚で損切り幅を設定すると、簡単にノイズで刈られてしまうことがあります。そのため、次のような工夫が有効です。

  • 価格変動が大きい銘柄ほど、損切り幅はやや広めに設定する
  • その代わり、ロットを小さくし、資金全体に対するリスクを一定に保つ
  • 24時間市場が動くため、アラートや逆指値注文を積極的に活用する

「損切り幅は広く、ロットは小さく」という考え方を徹底すれば、大きな値動きの中でも、口座全体を守りながらチャンスを取りにいくことができます。

損切りできない心理をどう乗り越えるか

現実には「損切りルールを決めること」よりも、「決めた損切りを実行すること」のほうが何倍も難しいです。多くの投資家が、次のような心理に苦しみます。

  • 「ここで切ったら、ちょうどそこが底になりそうで怖い」
  • 「もう少し待てば戻るかもしれない」
  • 「損を確定させるのがつらい」

これらの心理を乗り越えるには、「損切りを1回ごとの結果ではなく、シリーズ全体のルールとして見る」ことが重要です。1回の損切りだけを切り取って見ると、「損を確定させたくない」という感情が強くなりますが、10回、100回と続くトレードの中で見れば、「損切りは期待値を守るための必要経費」と捉えられます。

また、「自分の感情を信用しない仕組み」を作るのも有効です。たとえば、次のような工夫があります。

  • 逆指値注文(ストップ注文)をあらかじめ入れておき、チャートを見ない時間を増やす
  • エントリー時に、損切り価格とロットをメモし、「ルール通りならこれだけの損失で済む」と視覚化しておく
  • 損切りできなかったトレードを記録し、「ルール違反の代償」を定量的に振り返る

損切りルールを自分仕様にチューニングする手順

損切りルールは、人それぞれの性格・資金量・トレードスタイルによって最適解が変わります。他人のルールをそのまま真似るのではなく、自分のデータに基づいて「微調整」を続けることが大切です。

具体的なステップは次の通りです。

  • ① 過去30〜50トレード分の記録を取る(エントリー理由、損切りライン、実際の損益など)
  • ② 「損切りした後に、すぐに戻ってしまった」ケースと、「もっと早く切るべきだった」ケースを分類する
  • ③ それぞれのケースで、損切り幅や時間軸にどんな傾向があったかを振り返る
  • ④ 「自分にとってストレスが少ない損切り幅・時間軸」を探して微調整する

このプロセスを繰り返すことで、「感覚」ではなく「自分のデータ」に基づいた損切りルールになっていきます。その結果、ルールを守りやすくなり、メンタルのブレも小さくなります。

損切り後にやってはいけないこと

損切りをした直後は、感情が大きく動きます。そのときの行動次第で、その日の成績どころか、今後のトレードスタイルまで大きく変わってしまうことがあります。代表的な「やってはいけないこと」は次の通りです。

  • 損を取り返そうとして、すぐにロットを倍にしてエントリーする
  • 同じ銘柄に感情的に再エントリーし、「意地の張り合い」になる
  • 損切りした価格より少し上がっただけで「悔しい」と感じ、ルールを変えてしまう

損切り後に最も大切なのは、「一度立ち止まること」です。たとえば、次のようなルールを自分に課しておくと、冷静さを取り戻しやすくなります。

  • 損切りした後は、最低30分〜1時間は新規エントリーをしない
  • その日のトレードは「最大損失額」に達した時点で終了する
  • 損切りしたトレードについて、一言でもいいのでノートに理由を書く

今日から使える「損切りルール」チェックリスト

最後に、今日からすぐに見直せる「損切りルール」のチェックリストをまとめます。実際のトレード前に、次の項目を確認してみてください。

  • □ 口座残高に対して、1トレードの許容リスク(金額・%)を決めているか
  • □ エントリー前に、損切りライン(価格・pips)を具体的な数値で決めているか
  • □ チャート上の意味のあるライン(直近高値・安値、サポート・レジスタンス)を基準にしているか
  • □ 時間ベースの撤退ルール(「○日動かなければ手仕舞い」など)を決めているか
  • □ 損切り後の行動ルール(クールダウンの時間、1日の最大損失額など)を決めているか
  • □ トレード記録に「損切り理由」と「ルール遵守の有無」を残しているか

損切りルールは、一度作って終わりではなく、トレード経験を積むごとにアップデートしていくものです。大事なのは、「自分の資金を守りながら、次のチャンスに参加し続けること」です。

勝ちトレードに目が行きがちですが、長く相場に残っている投資家ほど、損切りに対して非常に真面目で、一貫したルールを持っています。まずは、小さな金額でもかまわないので、「損切りルールを決めて、それを守る」という経験を積み上げていきましょう。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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