- この手法が刺さる場面:ギャップアップは「最初の数分」が一番ゆがむ
- まず前提:ギャップアップの内訳を分解する
- 窓埋め逆張りスキャルの“勝ちパターン”を定義する
- 具体的なエントリー手順:見る順番を固定する
- 利確と損切り:スキャルは“出口”で勝敗が決まる
- 具体例で理解する:架空の値動きで“窓埋め”を実況する
- 失敗パターン:初心者が焼かれる典型を先に潰す
- “窓埋め”を数値化する:当日の優位性を見える化する
- 実装テンプレ:チャートと板の“見る項目”を固定する
- リスク管理:ロットを固定しない。損失上限を固定する
- 検証のやり方:過去チャートより“当日再生”が効く
- 応用:窓埋めを“全部”狙わない。部分埋めで終える
- 当日チェックリスト:これだけ満たしたら“初回の一撃”を狙う
- まとめ:窓埋め逆張りは“条件を待つ”ほど簡単になる
この手法が刺さる場面:ギャップアップは「最初の数分」が一番ゆがむ
前日終値から大きく上に飛んで寄り付く(ギャップアップ)と、寄り付き直後は「買いが強いから上がるはず」と思いがちです。ですが実戦では、寄り付き直後に高値づかみの買いが集中し、その買いを吸収した直後にスッと押され、ギャップの一部(時に全部)を埋めにいく動きが頻発します。ここに短期の歪みがあります。
ポイントは、窓埋めが「中長期の弱気」を意味するわけではないことです。むしろ、寄り付き直後の需給が一時的に買いに偏りすぎた結果として、裁定・利確・寄り付き成行の偏りが解消されるまでの“調整”として起きます。スキャルピングでは、この“調整の数分”だけを抜きます。
まず前提:ギャップアップの内訳を分解する
同じギャップアップでも、背景が違えば窓埋めの起きやすさが変わります。初心者が最初にやるべきは、ギャップを3つの要素に分解して観察することです。
1) ニュース起点(決算・材料・提携・上方修正)
材料でのギャップアップは「本尊の買い」が入りやすく、窓埋めしにくい日もあります。ただし、材料が軽い・数字が微妙・既出に近い場合は、寄り付きで飛びつき買いが集中し、その直後に「事実売り」が出て窓埋めが起きやすい。材料の質を冷静に評価できないなら、まずは“強すぎるギャップ”だけを避け、穏やかなギャップから練習するのが安全です。
2) 需給起点(空売りの買い戻し・指数イベント・踏み上げ)
需給起点のギャップは、寄り付き後に一瞬だけ買いが枯れたタイミングで急落しやすい一方、踏み上げが継続すると押し目が浅くなります。寄り付きの板が薄い銘柄ほど、窓埋めの“速度”が速いので、スキャル向きです。
3) 地合い起点(指数先物、為替、米国市場の影響)
地合いで持ち上がったギャップアップは、寄り付き後に指数や先物が反転すると一斉に剥がれます。窓埋めが「銘柄固有」ではなく「市場全体の方向転換」で起きるため、同時に複数銘柄が同じ形になりやすいのが特徴です。監視銘柄は多く持ち、最初に崩れた銘柄でサインを取り、次に崩れる銘柄で実行する、という運用が有効です。
窓埋め逆張りスキャルの“勝ちパターン”を定義する
この手法は、感覚でやると負けます。勝ちパターンを「値動き」「出来高」「板」「時間」で定義し、条件が揃ったときだけ実行します。
勝ちパターンA:寄り付きで上に走るが、1分〜3分で失速する
寄り付きの1本目〜2本目の足で急騰するものの、直後の足で高値更新ができず、上ヒゲが出ます。ここで出来高が急増していれば、寄り付き成行の買いが一巡した可能性が高い。次の足で安値を割った瞬間に、窓埋め方向への“最初の売り”が出るため、逆張りの売り(あるいはロングなら見送り)を検討します。
勝ちパターンB:寄り付き直後のVWAPを下回る
デイトレの買い方はVWAPを意識します。寄り付き直後にVWAPを割ると「上で買った勢が含み損に入り、戻り売りが出やすい」状態になります。VWAP割れ→戻りVWAPタッチ失敗→再下落、という流れは窓埋めの加速ポイントです。VWAPをただの線として見るのではなく、“含み損/含み益の境界線”として理解すると精度が上がります。
勝ちパターンC:板の買い支えが薄く、歩み値が小口連打になる
寄り付きの上昇局面では、歩み値に大口の成行買いが混じります。ところが失速局面では、歩み値が小口の買い連打に変わり、板の買いが1ティックで簡単に消えるようになります。これは「上で買う主体がいなくなった」サインです。窓埋めは“買い手不在”で進むため、この変化を最重要視します。
具体的なエントリー手順:見る順番を固定する
初心者が混乱する最大の原因は、見る情報が多すぎることです。見る順番を固定し、判断を短くします。以下は私が推奨するチェック順です。
手順1:ギャップ率と前日高値・終値の位置関係を見る
ギャップ率は「前日終値に対して何%上で寄るか」です。目安として2%〜6%程度のギャップは窓埋めが起きやすい“実戦レンジ”になりやすい。10%超のギャップは材料の強弱で振れが大きく、初心者は難易度が上がります。
さらに重要なのが、寄り付き気配が「前日高値を大きく上抜いているか」です。前日高値を大きく超えると“ブレイクアウト期待の買い”が寄り付きに集中しやすく、窓埋めの初動が速くなることがあります。逆に前日高値付近の寄り付きは、上値の重さが早く出て下に行きやすい。
手順2:寄り付き1〜3分の出来高が「前日の同時刻」より異常かを見る
出来高急増は“寄り付き成行の偏り”を示します。ここでのコツは「出来高が多い=強い」ではなく「出来高が多い=短期参加者が多い=逆流も起きやすい」と捉えることです。寄り付き直後の出来高が突出しているのに値が伸びないなら、吸収された可能性が高く、窓埋めの勝率が上がります。
手順3:高値更新が止まり、最初の押しで“前の足の安値割れ”を待つ
逆張りは早すぎると焼かれます。最初の押しで飛びついてはいけません。基本は「上昇の勢いが止まった証拠」を待ちます。具体的には、直前足の安値を割る、あるいは直近の小さな支持ライン(1分足の押し安値)を割るのを確認してから入ります。これだけで無駄な損切りが激減します。
手順4:戻りの弱さを確認してから、窓方向へ乗る
安値割れ後に一度戻ることが多いので、そこで「戻りが弱い」ことを確認します。例えば、VWAPまで戻れずに反落する、板の売りが厚くなる、歩み値の買いが細る、などです。ここで乗ると、損切りラインを戻り高値の少し上に置けるため、リスクが読みやすくなります。
利確と損切り:スキャルは“出口”で勝敗が決まる
この手法は、当たっても欲張ると戻されます。利確と損切りを数値で固定し、再現性を優先します。
損切りの基本:戻り高値+α、またはVWAP奪回で撤退
ショートで入った場合、戻り高値を明確に上抜いたら撤退が基本です。値が上に戻るということは、窓埋めの圧力が弱まったサインです。また、VWAPを明確に奪回して、その上で出来高を伴って推移するなら“買い方優勢”に戻っています。スキャルは逆の状態で粘らない。撤退が正解です。
利確の基本:まず窓の1/3、次に前日終値方向の節目
窓埋めは一気に全部埋めるより、途中で反発することが多い。だから最初の利確は“窓の1/3”を目安にします。例えば前日終値が1,000円で、寄り付きが1,060円ならギャップは60円。まず20円の下落(1,040円)を利確目標にします。そこで一部利確し、残りは次の節目(前日高値、前日終値、VWAP乖離の縮小)まで伸ばす。これで勝ちを積み上げられます。
期待値の考え方:損小利小で良いが“損だけ大”は即死
スキャルは1回の利益は小さくても成立します。ただし、損切りが遅れて1回の損失が数回分の利益を吹き飛ばすと終わりです。目安として、平均利益:平均損失を1:1以上(できれば1:0.8程度)に近づけ、勝率で積み上げます。勝率を上げるために、条件が揃うまで待つことが最重要です。
具体例で理解する:架空の値動きで“窓埋め”を実況する
以下は架空の例ですが、考え方の訓練に役立ちます。
ケース1:材料は軽め、寄り付き飛びつき後に失速
前日終値:1,000円。朝の気配:1,055円(+5.5%)。9:00に1,060円で寄り付き、最初の1分で1,078円まで上昇。しかし次の1分足で高値更新できず、上ヒゲ。出来高は寄り付き2分で前日の同時刻の5倍。ここで「短期資金が一巡している」可能性が高い。
3本目の足で1,068円の押し安値を割った瞬間に、窓埋め方向の初動。すぐに1,072円まで戻るが、VWAP(1,073円)にタッチできず反落。ここでショート(またはCFDで売り)を想定し、損切りは戻り高値1,073円の上(1,076円)に置く。
下落は1,060円→1,045円まで進み、ギャップ60円のうち15円を埋めた。ここで一部利確。残りは前日高値1,030円を意識して引っ張るが、1,042円で反発の買いが入り、出来高が再増加。VWAP乖離が縮んだ時点で残りも利確。結果、平均で12〜15円幅を取って撤退。欲張らず、再現性で勝つ。
ケース2:地合い起点、指数が反転して一斉に窓埋め
寄り付き直後は市場全体が強く、複数の大型株が高寄り。ところが9:05に先物が急落し、指数が反転。個別材料がない銘柄ほど、買いが消えて窓埋めが速い。このときは、最初に崩れた銘柄を観察用にし、次に崩れる銘柄で実行します。
例えばA銘柄がVWAP割れ→戻りVWAP失敗→再下落を見せた直後に、B銘柄も同じ形になったら、Bで入る。市場全体の波に乗ると、個別のだましが減り、損切りが浅くなります。
失敗パターン:初心者が焼かれる典型を先に潰す
この手法の最大の敵は「強い上昇に逆らってしまう」ことです。以下の状況では原則として見送ります。
1) 寄り付き後も高値更新が止まらず、押しが浅い
押してもすぐ買われ、高値更新が続くときは本尊が買っている可能性が高い。窓埋め狙いは不利です。逆張りは“失速”が前提。失速していないなら、戦う根拠がありません。
2) 板の売りが薄く、上に抜けたら一気に走る構造
上の板がスカスカだと、ちょっとした成行で踏み上げになります。初心者は板の厚みを軽視しがちですが、スキャルでは致命傷です。売りが薄い銘柄の逆張りショートは、損切りが滑りやすく危険です。
3) 大型材料(サプライズ決算、TOB、規制変更)
この場合は窓埋めの確率が下がります。特にサプライズ系は、寄り付き後も買いが継続しやすい。材料の強弱を読めないうちは触らない。触るなら、窓埋めではなく押し目順張りの領域です。
“窓埋め”を数値化する:当日の優位性を見える化する
感覚ではなく、当日の優位性を数値で判断するとブレが減ります。初心者でも扱いやすい指標を紹介します。
ギャップ率
(寄り付き − 前日終値)÷ 前日終値。2〜6%が練習帯。これより小さいと取れる幅が小さく、これより大きいと難易度が上がります。
寄り付きからの上昇余地(初動の伸び)
寄り付きから高値までの伸びがギャップの半分以上あるのに、そこからの失速が速いときは、飛びつき買いの“燃料切れ”になりやすい。逆に伸びが小さいまま推移する場合は、そもそも買いが弱く、窓埋めがじわじわ進むことが多い。
VWAP乖離
現在値がVWAPからどれだけ離れているか。寄り付き直後にVWAP乖離が一気に広がり、その後に縮小へ向かうなら、窓埋めの“圧力”が発生している可能性が高い。
実装テンプレ:チャートと板の“見る項目”を固定する
環境は人によって違いますが、テンプレ化すると上達が速いです。
チャートは「1分足+5分足」、補助線として「VWAP」「前日終値」「前日高値」「寄り付き価格」を表示。板は「上5本・下5本」の厚みと、成行の連続性を見る。歩み値は「大口が混じるか」「連打の方向」「約定の速度」を見る。これだけで十分です。
リスク管理:ロットを固定しない。損失上限を固定する
初心者が最初に壊れるのはロット管理です。スキャルは回数が多くなるので、1回の損失が大きいと精神が崩れ、ルールを破ります。おすすめは「1回の最大損失を口座の0.2〜0.5%に固定」し、その範囲内でロットを決めることです。
例えば口座100万円なら、1回の許容損失は2,000〜5,000円。損切り幅を5円に置くなら、400〜1,000株程度が上限になります。損切り幅を決めずに株数を先に決めるのは逆です。損切り幅→株数の順にします。
検証のやり方:過去チャートより“当日再生”が効く
窓埋めのスキャルは、寄り付き数分の板・歩み値が重要なので、日足の過去検証だけでは精度が出ません。可能なら、当日の寄り付きリプレイ(証券会社のヒストリカルやTradingViewのバーリプレイ等)で、寄り付きの数分を繰り返し観察します。
練習手順は、①ギャップアップ銘柄を10銘柄集める、②寄り付きから10分だけ再生、③窓方向に動いたかを分類、④動いた銘柄に共通する条件(VWAP割れ、出来高、上ヒゲ、板の薄さ)を書き出す、⑤翌日に同条件だけで“紙トレ”する。このループで、勝ちパターンが固まります。
応用:窓埋めを“全部”狙わない。部分埋めで終える
初心者ほど「窓を全部埋めるはず」と決めつけて粘ります。実戦では、窓の半分も埋めずに反転することが普通です。だから、部分埋めで終える設計にします。最初の利確を早く、残りは伸びたらラッキー程度にする。これが長く勝つコツです。
当日チェックリスト:これだけ満たしたら“初回の一撃”を狙う
最後に、実行前の最低条件を文章でまとめます。
(1)ギャップ率が2〜6%程度で、寄り付き直後に出来高が突出している。(2)寄り付き後に高値更新が止まり、上ヒゲや失速が見える。(3)VWAPを割る、またはVWAPタッチに失敗して反落する。(4)板の買い支えが薄く、歩み値が小口中心になっている。(5)損切りライン(戻り高値+α)が明確で、許容損失内にロットを収められる。これが揃ったときだけ、窓埋め方向へ短時間で乗ります。
まとめ:窓埋め逆張りは“条件を待つ”ほど簡単になる
ギャップアップ後の窓埋めは、寄り付き直後の需給の偏りが解消される過程で起きます。勝つために必要なのは、根拠のない逆張りではなく、「失速」「VWAP」「出来高」「板・歩み値」の条件を揃えて、損切りが浅い場所で入ることです。派手な大勝ちを狙わず、同じ形だけを繰り返し取る。これがスキャルの本質です。
なお、ここで示した数値や例は学習用の目安です。実際の取引では、銘柄の値幅、流動性、手数料、スリッページ、信用規制、空売り可否などで結果が大きく変わります。最初は小さく、検証と記録を優先してください。


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