この手法は、前日比+5%以上のGU(ギャップアップ)で始まった銘柄に対して、「寄り付き直後の勢いが一度失速し、VWAP近辺まで押す」局面を狙う逆張りスキャルです。ポイントは“寄ってすぐの高値更新に失敗した”という失速サインを、5分足で機械的に捉えること。ここで曖昧にすると、ただの落ちナイフ拾いになります。
狙いは単純です。GU銘柄は注目を集めやすく、寄り直後は成行が飛び交います。しかし「最初の熱狂」が一巡すると、買いの深さ(板・成行の連続性)が途切れ、利確や空売りが入り、価格は“フェアな水準”に引き戻されやすい。そこで、VWAPまでの押しを低リスクで拾い、VWAP付近〜少し上で回収する設計にします。
この戦略が効きやすい市場構造
GU銘柄は、材料(決算・上方修正・提携・新製品・需給イベントなど)が背景にあることが多く、寄り前から板が厚くなったり気配が跳ねたりします。寄り直後は「買いたい人が一斉に買う」ため上に伸びやすい一方、数分で需給が偏り、次のような“初動失速”が出やすいのが特徴です。
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寄り直後の高値を更新できない:上を買う成行が続かず、同値〜上での吸収が増える。
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上昇スピードが急に鈍る:ティックの進みが止まり、約定の連続性が切れる。
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短期勢の利確が集中:GUを見て飛び乗った層が、数分で利益確定に転じる。
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VWAPが“短期の磁石”になる:寄り付き直後はVWAPから大きく乖離しやすく、落ち着くと回帰が起きやすい。
つまり、この戦略は「材料の強さ」そのものを当てに行くのではなく、寄り付き直後の需給の過熱→一巡という短期現象を取りに行きます。材料が強すぎてそのまま張り付く銘柄は対象外にします。
対象銘柄の厳格な条件(ここがブレると負ける)
まず、候補を絞る段階で“負け筋”を排除します。条件は以下の通りです。
必須条件
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前日比+5%以上でGU(寄り前気配ではなく、実際の寄り値が前日比+5%以上)。
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寄り後の最初の5分で高値更新に失敗:具体的には、寄り付き直後に付けた高値(または寄り後1〜2分の高値)を、5分足確定までに更新できない。
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寄り後5分足が“上ヒゲ or 実体小さめ”で終わる:勢いが続かない形(大陽線で抜け続ける形は除外)。
除外条件(やらない)
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ストップ高気配〜張り付き:押しが来ない。来たとしてもギャップの大きい崩れになりやすい。
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超小型で板が極薄:VWAPが機能しにくく、スリッページが致命的。
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寄り直後に出来高ピークで急落→反発なし:需給が壊れている。VWAPに“回帰しない”ことがある。
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指数・セクターの強烈な追い風で、同セクターが全面高:失速サインが出ても再加速しやすく、逆張りの優位性が落ちる。
チャートで見る「寄り後5分の高値更新失敗」とは何か
言葉だけだと曖昧なので、5分足の“合格形”を具体化します。
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合格例A:寄り直後に一瞬跳ねるが、上で吸収される
寄り値→1〜2分で高値→そこから上が重くなり、5分足確定で上ヒゲが長い。これは「買いの燃料が切れた」サインです。 -
合格例B:寄り後に高値を付けた後、同値圏で揉む
上に行きそうで行けない状態。5分足確定で実体が小さく、出来高が最初の1〜2分に偏る。 -
不合格例:5分足が大陽線で高値引け
失速ではなく“始まったばかり”。この局面で逆張りすると、ただ踏まれます。
エントリー設計:VWAPまで待つ(最重要)
この手法の肝は「失速を見てすぐ買わない」ことです。失速直後は、利確と空売りが連鎖しやすく、値動きが荒い。ここで手を出すと、逆張りではなく“落下中に掴む”だけになります。
ルールはシンプルです。
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エントリーは原則VWAP付近(またはVWAPの少し上)まで待つ。
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VWAP到達の前に反発しそうでも追わない:反発が早すぎる場合、上で掴まされやすい。
“VWAPまで待つ”のは、価格の基準点を固定し、再現性を作るためです。スキャルは「その場の雰囲気」で勝てません。基準点に対してどこで買うかを固定して、統計的に優位な場所だけを撃ちます。
執行条件:VWAPタッチだけでは買わない
VWAPに触れた瞬間は、まだ売りが残っていることがあります。そこで、以下の“最低限の反転条件”を追加します。これで無駄な損切りが減ります。
反転条件(どれか2つ以上)
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ティックの下げ止まり:安値更新の間隔が空く、下げのスピードが鈍る。
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板の買いが厚くなる:VWAP付近で買い板が積まれる/下の買い板が剥がれにくい。
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歩み値で同サイズ買いが連続:小口ではなく、一定ロットの買いが続く。
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1分足で下ヒゲが出る:短期の投げが一巡した可能性。
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VWAPを一度割っても即座に戻す:割れが“だまし”になりやすい。
ここまで整ったら、VWAP近辺での逆指値付きロングを入れます。逆張りは“入る前に負けを決める”のが基本です。
利確:VWAP回復で取る(欲張らない)
この手法は「VWAPへの回帰」で利益を取る設計です。よって利確も“回帰したら終わり”が原則です。
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第一利確:VWAP到達〜上抜け1〜2ティックで半分。
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第二利確:直近の戻り高値(1分足〜5分足)で残り。
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伸びたらラッキーくらいに扱う:伸びの期待でホールドすると、スキャルの勝率が落ちます。
“GU銘柄だから上に戻るはず”という期待は捨てます。狙いは短期の歪み修正だけ。そこを外すと、戦略の前提が崩れます。
損切り:VWAPの下に“構造的なライン”を置く
逆張りで一番大事なのは撤退です。損切りを“気分”でやると、損が膨らみます。以下のように、構造の下にストップを置きます。
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基本ストップ:VWAPの下0.2〜0.5%(銘柄のボラに合わせて調整)。
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より堅い方法:VWAP到達前の直近安値割れで撤退。
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最悪パターンを想定:GU銘柄は急落が早い。迷っている暇はない。
損切り幅を広げたくなる局面は、そもそもエントリーが遅いか、銘柄選定が悪いことが多い。“ここで切れないなら最初から入らない”と決めておく方が、結果的に資金が残ります。
ポジションサイズ:1回の負けを小さく固定する
短期売買で資金が減る原因の多くは「負けたときのサイズが大きい」ことです。スキャルは負けがゼロになりません。だからこそ、損失を固定します。
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1トレードの許容損失は資金の0.2〜0.5%程度に固定(例:100万円なら2,000〜5,000円)。
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損切り幅(ティック)×株数で数量を逆算する。
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同時に複数銘柄を触らない:逆張りは判断が遅れると終わる。
具体例:当日の板・歩み値でどう判断するか
架空の例で、当日の流れを文章で再現します。
状況:前日終値1,000円 → 寄り値1,080円(+8%)。寄り直後に1,120円まで一瞬跳ねるが、その後は1,110円を超えられない。最初の5分足は上ヒゲが長く、確定値は1,090円。
ここでやること
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「初動失速」確定。すぐ買わず、VWAP(例えば1,070円)を確認。
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価格が1,080→1,075→1,070へ下落。VWAP付近で売り成行が続くが、安値更新の間隔が空き始める。
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板を見ると、1,068〜1,070に買い板が厚くなり、1,070で同サイズの買い約定が連続。
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1分足で下ヒゲが出て1,072へ戻す。
エントリー:1,071〜1,073で分割買い。ストップは1,066(VWAP下)。
利確:VWAP回復(1,070→上抜け)後、1,080付近で半分。残りは1,090手前で回収。
“取り過ぎない”ことで、次の同型を淡々と狙えます。
負けパターンの典型と、事前に避ける方法
この戦略が崩れる典型は次の3つです。全部、事前のチェックで回避できます。
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パターン1:VWAPを割って戻らない
材料が弱い/需給が崩壊している可能性。寄り後の出来高がピークアウトした後に、買いが消える。→ 寄り後5分の形が“崩れ”に近い場合はそもそも触らない。 -
パターン2:VWAP手前で反発し、上で掴む
待てずに入ると、上値で捕まる。→ VWAP到達前は“観察だけ”と決める。 -
パターン3:一度戻るが、再度急落
GU銘柄は反発後も二段下げがある。→ 第一利確を必ず入れ、建値ストップへ引き上げる。
スクリーニング手順:寄り前〜寄り後10分でやること
実務(実際の手順)として、朝の動きを固定します。迷うほど負けます。
寄り前
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上昇率(前日比)で+5%以上の候補を抽出。
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出来高見込み(気配の厚さ、板の厚み)で“薄すぎる銘柄”を除外。
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当日の材料(決算・IR・ニュース)をざっくり確認し、ストップ高張り付き濃厚なら除外。
寄り後0〜5分
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高値更新の有無を観察。更新できないなら候補として残す。
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5分足確定の形(上ヒゲ、実体小)を確認。大陽線高値引けなら撤退(見送り)。
寄り後5〜15分
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VWAPと価格の距離を確認し、VWAPまで“押す余地”があるかを見る。
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VWAP付近の板・歩み値で反転条件を待つ。
改善版:時間帯フィルターと“2回目のチャンス”
より勝率を上げたい場合、次の工夫が効きます。
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時間帯フィルター:寄り後30分を過ぎると、VWAPの信頼性が上がる一方、スキャルのスピードが落ちる。基本は寄り後5〜30分で完結させる。
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2回目のVWAPタッチ:1回目のタッチが弱く、いったん小反発→再度VWAPに戻ってきたときの方が、投げが一巡して入りやすい。ただし回数を増やすと手数が増えるため、トレード回数は上限を決める。
検証(バックテスト)の現実的なやり方
この戦略は“裁量っぽく見えて、ルール化できる部分が多い”のが強みです。検証は次の項目を数値化すると良いです。
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GU率:寄り値の前日比。
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寄り後5分の高値更新失敗:5分足確定までに寄り直後高値を超えない。
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VWAP到達までの最大下落幅。
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VWAP到達後の最大反発幅(どこまで戻るか)。
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VWAP割れ率:VWAP到達後にどれだけ下に走るか。
最低でも50〜100サンプルを取り、「勝つ日」ではなく「負ける日」を先に潰すのがポイントです。逆張りは、条件が崩れたときの損が大きいので、フィルターの価値が高い。
実戦チェックリスト(毎回これだけ確認)
最後に、実行前の確認事項をまとめます。ここだけは固定して下さい。
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寄り値は前日比+5%以上か。
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寄り後5分で高値更新に失敗したか(大陽線高値引けではないか)。
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VWAPまで押す余地があるか(すでにVWAP付近で寄っていないか)。
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VWAP付近で反転条件を2つ以上満たしたか(板・歩み値・下ヒゲなど)。
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損切り位置は“構造の下”に置けているか(VWAP下/直近安値割れ)。
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許容損失から株数を逆算したか(大きく張っていないか)。
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利確はVWAP回復で終える設計になっているか(欲張りで引っ張らない)。
この戦略は、派手な一撃を狙うものではありません。「GUの熱狂が冷める瞬間」を定義し、VWAPという基準点に対して淡々と回収することで、再現性を上げる考え方です。逆張りの怖さは常にありますが、条件と撤退を固定すれば、“やってはいけない逆張り”からは脱出できます。


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