本記事は、IPO(新規上場)2日目のセカンダリー(上場直後の短期売買)で、「初値形成後にVWAP(出来高加重平均価格)を回復したことを確認して、押し目で買う」戦略を、再現性が出る形まで分解して解説します。狙いはシンプルですが、IPOは値動きが荒く、板が薄く、アルゴが走りやすいので、一般的な押し目買いの感覚のまま入ると簡単に焼かれます。ここでは“入る条件”よりも、“入らない条件”と“切り方”を厚めにします。
- IPO2日目が「設計」しやすい理由
- この戦略のコア:VWAP回復=「買い手が平均コストを取り戻した」
- 前日の準備:2日目の地図を作る(ここが勝率を決める)
- エントリー条件:必須条件(これが揃わない日は触らない)
- 加点条件:揃うほど“伸びやすい”
- 具体的なエントリー手順:3段階で「損切り位置を先に決める」
- 利確と損切り:IPOの“正しい逃げ方”
- よくある罠:VWAP回復に見えて“回復していない”パターン
- 銘柄選別:同じ戦略でも「向くIPO」と「向かないIPO」がある
- 1日の運用モデル:時間帯ごとの“やること”を固定する
- 具体例(架空):数字で“入る/入らない”を決める
- ロット管理:初心者は“値幅”より“流動性”でサイズを落とす
- チェックリスト:エントリー前に10秒で確認する
- まとめ:VWAP回復は“合図”であって、“免罪符”ではない
- 制度・注文の注意点:IPO特有の“足かせ”を理解しておく
- 注文の作り方:指値・成行を“状況で切り替える”
- 検証のやり方:スクリーンショットではなく“数値”で残す
- 最後に:この戦略を“やらない日”を決める
IPO2日目が「設計」しやすい理由
IPO初日(上場初日)は、初値がつくまで売買が成立しないことが多く、ついた瞬間から一気に価格帯が跳びます。初値形成の直後は、上場イベントの熱狂で買いが先行しやすい一方、初値で配分を受けた投資家の利確、短期勢の回転、空売り規制や信用制限などの制度要因が絡み、値動きが“ランダムに見えやすい”時間帯です。
一方、2日目は次の要素が揃いやすいのがポイントです。
①初値と前日終値が存在する(基準点が増える)/②前日の高値・安値・出来高ピークが「市場参加者の記憶」になっている/③初日の熱狂が一巡し、資金の強弱(本気買いか、回転か)が板と歩み値に出やすい。つまり、価格がどこで“攻防”になりやすいかを事前に設計しやすく、VWAPという軸に沿って「上方向に勢いが戻った瞬間」を判定しやすいのが2日目です。
この戦略のコア:VWAP回復=「買い手が平均コストを取り戻した」
VWAPは、その日の参加者の平均約定コストに近い指標です。価格がVWAPの下にいる時間が長いほど、買っている側は含み損を抱えやすく、戻り売りが出やすくなります。逆に、VWAPを上に抜けて定着すると、平均コストを取り戻した買い手が“利確しなくてもよい状態”になり、押し目が買われやすくなります。
IPO2日目は、指数や大型株と違い「ファンダが評価されてVWAPを守る」というより、「需給と短期資金がVWAPを基準に反応する」側面が強いです。だからこそ、“VWAPを一瞬抜けた”ではなく、“回復して押しても崩れない”まで確認する必要があります。
前日の準備:2日目の地図を作る(ここが勝率を決める)
朝の気配を見る前に、前日(初日)のチャートと板の履歴から、2日目に反応しやすい価格帯を3〜5本に絞ります。目安は以下です。
・初値(最重要):2日目の参加者が最も意識しやすい“イベント価格”
・初日の高値:利益確定が出やすい上値の壁
・初日の出来高ピーク付近:大口の平均取得帯になりやすい
・初日の引け値:持ち越し勢の損益分岐になりやすい
・値幅が一気に跳んだ価格帯(飛び石):板が薄く再訪時に急変しやすい
この地図がないまま「VWAP回復したから買い」は危険です。VWAP回復が起きても、すぐ上に初日の出来高ピークや高値が控えているなら、上値余地が薄く、押し目を待つ前に利確の波に飲まれやすいからです。
エントリー条件:必須条件(これが揃わない日は触らない)
以下は“必須”。1つでも欠けるなら見送る方が、長期的に資金が残ります。
必須1:初値形成後に「VWAP上抜け→5分足終値でVWAP上」
瞬間的な上抜けは、板が薄いIPOでは簡単に起きます。最低でも5分足の終値がVWAP上で確定すること。できれば、上抜けの足が出来高を伴い、次の足で高値更新しようとする“継続意思”が見えること。
必須2:VWAP回復直後の押しで「VWAPを割らない(または割っても即座に戻す)」
押し目買いの本質は、押した瞬間に買いが入るかどうかです。理想は、VWAP付近まで押しても下ヒゲを付けて戻し、VWAPの上で再び買いが優勢になる形。VWAPを明確に割って、戻りも弱いなら“回復失敗”です。
必須3:歩み値で「成行買いの連続」または「同ロットの連続約定(アルゴの回転)」が確認できる
IPOは板が薄く、指値だけでは価格を支えにくい。押し目で“成行が吸い上げる”動きが出るか、あるいは一定ロットが連続約定して板を食う動き(アイスバーグやアルゴ回転)が見えるかが重要です。押し目で出来高が死ぬなら、買いが不在です。
必須4:スプレッドと板厚が「許容範囲」
スプレッドが広すぎる(例:ティックが飛ぶ、最良気配のロットが極端に薄い)と、押し目で入っても即座に不利約定になりやすい。目安として、最良気配に一定の厚みがあり、1ティック飛びが常態化していない銘柄を優先します。
加点条件:揃うほど“伸びやすい”
必須を満たしたうえで、以下は加点。全部揃う日は強いです。
加点1:初値が前日高値に近すぎない(上値余地がある)
2日目の寄りが既に高値圏だと、VWAP回復しても上は重い。前日高値まで十分な距離(たとえば2〜3%以上)があると、短期でも取りやすい。
加点2:押し目の形が「時間調整」になっている
理想は、急落ではなく、横に揉んで出来高が落ち、VWAPが追いついてくる形。価格が横ばいでVWAPが上がってくると、次の上抜けが軽くなります。
加点3:押し目で売り板が薄くなる/買い板が増える
板の厚みが押しの局面で“買いに傾く”なら、下を支える参加者がいる。逆に、押しで買い板が消えるのは危険信号です。
具体的なエントリー手順:3段階で「損切り位置を先に決める」
初心者が一番やりがちなのは、VWAP回復を見て焦って成行で飛びつくことです。IPOはこれで負けやすい。順番はこうです。
ステップ1:VWAP回復を“確定”で見る
5分足終値でVWAP上。ここで初めて監視対象にします。まだ買わない。
ステップ2:押し目の候補ゾーンを決める
候補は(a)VWAP付近、(b)直近の上抜け起点、(c)1分足の直近安値、のどれか。どこまで押したら“失敗”か(損切りライン)を先に決めます。たとえば「VWAPを明確に割って1分足終値で下」など、ルール化します。
ステップ3:押し目で“買いの再点火”を確認して入る
入るトリガーは、押し目での下ヒゲ+次の足で高値更新、あるいは歩み値で成行買いが連続し、売り板が薄くなる瞬間です。エントリーは指値でもよいですが、板が薄い時は約定しないこともあります。約定させたいなら、ロットを小さくして成行にする代わりに、損切りは躊躇なく実行します。
利確と損切り:IPOの“正しい逃げ方”
利確と損切りを曖昧にすると、IPOは一撃で持っていかれます。ルール例を提示します(あなたの銘柄特性に合わせて調整してください)。
損切り(固定)
・エントリー根拠がVWAP回復なら、VWAPを明確に割って定着したら撤退(1分足終値で下、またはVWAP下で出来高増=崩れ)
・押し目の直近安値を割ったら撤退(“押し目が押しでなくなった”)
・板が急に薄くなり、1ティック飛びが増えたら一段ロットを落とすか撤退(流動性リスク)
利確(分割が基本)
IPOは伸びる時は伸びますが、戻す時も速い。全部を高値で取ろうとすると、結局戻りに巻き込まれます。具体的には、
・第一利確:直近高値(VWAP回復後の戻り高値)付近で1/3〜1/2を落とす
・第二利確:前日高値や出来高ピークなど“地図の壁”でさらに落とす
・残り:トレーリング(1分足の安値更新で手仕舞い、またはVWAP割れで手仕舞い)
この分割により、当たりの日は伸ばし、外れの日は小さく負ける構造が作れます。
よくある罠:VWAP回復に見えて“回復していない”パターン
失敗の多くは、VWAPの扱いを誤るか、需給を読み違えます。典型例を挙げます。
罠1:VWAP上抜けが「出来高なし」
出来高が伴わない上抜けは、薄い板の跳ねであることが多い。すぐ下に大量の指値売りが控えていて、押し目で踏まれて終わります。
罠2:VWAP回復直後に“上で揉む”のに、歩み値が買っていない
価格は上にいるのに、約定は小ロット中心で、売りがぶつけられている。これは上値の買いが弱い。押し目で崩れやすい。
罠3:前日高値が目の前
上値余地が薄いのに入ると、押し目が来る前に利確が出て失速します。地図の壁は必ず意識します。
罠4:寄り直後の“最初のVWAP”に過度に反応する
寄り直後はVWAPが安定しません。特に2日目寄りはギャップが出やすく、最初の数分はVWAPが急角度で動く。最低でも初値形成後の一定時間(例:10〜15分)を経てから判断するとブレが減ります。
銘柄選別:同じ戦略でも「向くIPO」と「向かないIPO」がある
IPO2日目といっても、全てが同じではありません。以下の条件を満たすほど向きます。
・出来高が十分(押し目で数分待っても約定が継続する)
・ティックサイズが細かく、スプレッドが極端に広くない
・前日に「初値→上→下→引け」のような攻防があり、価格帯に記憶がある
・テーマ性があり、短期資金が集まっている(ただし過熱しすぎは別)
逆に、出来高が細り、板がスカスカで、価格が飛び石になっている銘柄は、VWAP戦略の前に“流動性リスク”が勝ってしまいます。初心者はまず、板が比較的厚いIPO(大型寄り、あるいは出来高がついている銘柄)から練習する方が安全です。
1日の運用モデル:時間帯ごとの“やること”を固定する
場中に迷う最大の理由は、判断の順序が決まっていないからです。2日目の典型的な流れに沿って、やることを固定します。
寄り前:前日の地図(初値、前日高値、出来高ピーク、引け)をライン化。寄りの気配でギャップの大きさを確認。
初値形成〜その後10分:“観察だけ”。VWAPはまだ不安定。出来高の付き方と、上値で売りが出る場所を確認。
10〜60分:VWAP回復の有無を判定。回復した銘柄だけを押し目待ち。回復しない銘柄は触らない。
後場:午前の高値更新があるか、あるなら押し目を狙う。ないなら無理に触らず、出来高が戻る局面のみ。
具体例(架空):数字で“入る/入らない”を決める
例として、初値2,000円、前日高値2,240円、前日引け2,080円、2日目の初値2,120円で始まったケースを考えます(あくまで説明用の架空例です)。
・寄り後、2,120→2,060まで下落し、VWAP(当初)は2,090付近。
・その後、出来高を伴って2,100を上抜け、5分足終値がVWAP上で確定。ここで監視開始。
・押し目が2,090(VWAP)付近まで来た時、歩み値に成行買いが連続し、2,090の売り板が薄くなる。1分足が下ヒゲで反転。
→エントリー:2,095〜2,105(約定優先なら小ロット成行)
→損切り:VWAP(2,090)を明確に割って1分足終値が下、または押し目安値2,088割れで撤退(-0.5〜-0.8%程度)
→第一利確:直近高値2,135で1/2
→第二利確:前日高値2,240手前で追加利確(届かなければトレーリング)
この例のポイントは、「VWAP回復を確認してから押し目で入る」「損切り幅を先に固定」「利確は分割」の3点です。IPOで一撃を避けるには、この構造が必要です。
ロット管理:初心者は“値幅”より“流動性”でサイズを落とす
IPOでの事故は、方向性ではなく“約定と滑り”で起きます。損切りを決めても、板が飛んで約定が悪化し、想定以上に負ける。だからロットは、テクニカルよりも流動性で決める方が現実的です。
目安として、
・最良気配の板が薄い/1ティック飛びが頻発:ロットは通常の半分以下
・出来高が急減している:ロットを落とすか、見送る
・出来高が継続し、板も厚い:通常ロットでもよいが、損切りは機械的に
この運用にすると、“運が悪い一回”で資金が壊れる確率が下がります。
チェックリスト:エントリー前に10秒で確認する
最後に、場中で迷いを減らすためのチェックリストを置きます。全部にYESが付く銘柄だけ触る。これだけで無駄なトレードが減ります。
・前日の地図(初値/高値/出来高ピーク/引け)を把握しているか
・初値形成後、5分足終値でVWAP上にいるか
・押し目でVWAPを割っていない(または割っても即戻す)か
・歩み値で成行買いの連続、または同ロット連続約定が見えるか
・スプレッドと板厚が許容範囲か(飛び石が常態化していないか)
・損切りラインを数値で言えるか(VWAP割れ、直近安値割れなど)
・利確の第一地点が地図上にあるか(直近高値、前日高値など)
まとめ:VWAP回復は“合図”であって、“免罪符”ではない
IPO2日目の「VWAP回復→押し目買い」は、短期資金が最も反応しやすい形の一つです。ただし、VWAP回復は合図にすぎず、それ単体で勝てるわけではありません。前日の地図で上値余地を測り、押し目で買いの再点火(歩み値・板)を確認し、損切りを先に固定し、利確を分割する。これを徹底すると、荒い値動きの中でも、期待値をプラス側に寄せやすくなります。
最初は小ロットで、同じ手順を“毎回同じ順序”で回してみてください。上手くいった日・ダメだった日を、VWAP回復の質(出来高)と押し目の質(板・歩み値)で分類できるようになると、精度が一段上がります。
制度・注文の注意点:IPO特有の“足かせ”を理解しておく
IPOのセカンダリーは、銘柄によって信用取引の可否、空売り規制、値幅制限、増担保などのルールが絡みます。初心者が混乱しやすいのは「思った通りにヘッジできない」「買いだけで勝負するしかない」状況です。買い戦略でも、次の点は最低限押さえます。
・信用の可否:信用が使えない(または制限が強い)と、回転勢の参加が減って値動きが急に細ることがあります。出来高の継続性に直結します。
・値幅制限とストップ高/安:上値が値幅上限に近いほど、利確が早まりやすく、板が急に薄くなります。逆に下値が近い銘柄は、崩れた時に逃げ場がなくなる。VWAP戦略は“逃げられる市場”でのみ機能します。
・売買停止(ボラティリティ・インタラプション等):急変時は売買が止まり、再開気配でギャップが出ます。押し目買いで入っていると、損切りを置いていても想定外の位置で約定することがあります。急変局面では「入らない」判断も戦略の一部です。
注文の作り方:指値・成行を“状況で切り替える”
IPOは、同じ銘柄でも時間帯で板の厚みが変わります。注文方法は固定せず、状況で切り替えます。
板が厚い(スプレッドが狭い)とき:押し目ゾーンに指値を置き、約定後に即座に逆指値(または手動の損切りルール)を準備。
板が薄い(飛びやすい)とき:指値は刺さらず、刺さっても不利約定になりやすい。小ロットで成行→すぐに損切りラインを監視、という形の方が事故が減ることもあります。
一番危険:板が薄いのに大ロット成行。滑りで期待値が崩壊します。
また、押し目で“買いの再点火”を見て入る場合、エントリーを1回で決めず「2回に分ける」手も有効です。たとえば半分を押し目反転で入れ、残り半分は直近高値を再度超えた瞬間に追随する。こうすると、反転が失敗した時の損切りが軽くなり、成功した時は乗り遅れを減らせます。
検証のやり方:スクリーンショットではなく“数値”で残す
再現性を上げるには、感想ではなく数値で記録します。最低限、次の5項目を毎回メモすると、改善点が見えるようになります。
①VWAP回復の足の出来高(直前平均との差)/②押し目の深さ(VWAPからの乖離%)/③押し目での出来高の減り方(ピーク比)/④損切りまでの時間と滑り幅(ティック数)/⑤利確地点(地図のどの壁で反応したか)
これを20〜30回分ためると、「自分は出来高が伴わないVWAP回復に手を出している」「前日高値が近いのに粘って戻されている」など、負けパターンが定量化されます。IPOは相場観よりもプロセスの改善で成績が伸びやすい領域です。
最後に:この戦略を“やらない日”を決める
勝ちパターンを増やすより先に、負けパターンを減らす方が効きます。具体的には「寄りから30分で出来高が急減した」「VWAP付近で反発せず、VWAPが下向きに傾いた」「一度の成行で数ティック飛ぶ状態が続く」など、環境が整っていない日はノートレードにします。IPO2日目は毎日チャンスがあるわけではありません。条件が揃った“少ない日”だけ打つ方が、結果として資金効率が上がります。


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