IPO(新規上場)初日は、需給が極端に偏ります。上場株数が少なく、売り手が限定され、買い手は「話題」「テーマ」「軽さ」「初値の勢い」だけで殺到しやすい。結果として、公開価格比で+100%(2倍)を超えるような過熱が起きます。
この過熱は、永遠には続きません。多くのIPOで見られるのが「前場に一気に駆け上がり、後場で失速する」パターンです。狙いどころは、単なる“高値掴みの整理”ではなく、需給が崩れ始めた瞬間の短期下落(5〜30分)です。上手く取れれば、指数や地合いに関係なく、値幅と速度が出ます。
ただしIPO逆張りは、難易度が高い。下手に触れば即死する相場です。この記事では、公開価格比+100%超の過熱からの後場失速を、「再現性のある条件」「入る瞬間」「切る瞬間」まで落とし込み、初心者でも手順通りに検証できる形にします。
- この戦略が刺さる理由:IPO初日の需給は「時間帯」で豹変する
- 対象銘柄の選別:全部のIPOを触るな
- 「天井の形」を定義する:感覚ではなくチェック項目で判断する
- 時間帯の使い方:後場のどこを狙うか
- 具体的な売買ルール:観察→判断→執行を分離する
- 損切り設計:IPO逆張りは「利確より損切りが先」
- 利確設計:伸びる時は想像以上に伸びる
- 具体例:チャートの“物語”として理解する
- よくある失敗パターンと回避策
- 検証のやり方:主観を排して「型」の勝率を見る
- 応用:暗号資産の新規上場(CEX上場)にも似た構造がある
- 実戦のチェックリスト:1分で確認してから入る
- まとめ:IPO逆張りは“型”に落とせば戦える
- 板・歩み値の“崩れ方”をもう一段具体化する
- 逆張りを“順張り化”するコツ:平均足ではなく「構造」を売る
- トレード環境の整え方:初心者がやりがちな“情報不足”を潰す
- 簡易アラートの作り方:押し安値割れを見逃さない
- 最後に:勝てる人の共通点は「見送りの技術」
この戦略が刺さる理由:IPO初日の需給は「時間帯」で豹変する
IPO初日は、参加者の顔ぶれが時間帯で変わります。
前場は「初値形成の勢い」「SNSの拡散」「値動きの軽さ」に引っ張られ、追随買いが増えます。成行買いが連続し、板は薄いのに価格だけ飛び、歩み値は同じサイズの約定が連続しやすい。ここでは合理性よりも速度が支配します。
一方、後場に入ると、午前中に買った層が利確を意識し始めます。さらに、上場初日の信用取引可否、貸借区分、手数料体系などによっても参加者が変わりますが、多くのケースで「後場は利確が優勢になりやすい」。ここで買いが弱った瞬間、薄い板が逆回転し、下落が加速します。
この戦略は、その「豹変」を狙います。ポイントは、過熱のピークそのものを当てにいかないことです。狙うのは“天井ができた後の初動の崩れ”です。
対象銘柄の選別:全部のIPOを触るな
まず前提。IPOは銘柄ごとにクセが違い、同じ手法でも勝率がぶれます。触る銘柄を絞るだけで期待値が上がります。
必須条件(フィルター)
① 公開価格比+100%超を一度でも達成している:過熱がないと失速も弱い。2倍は“過熱”の最低ラインとして扱います。
② 前場で急騰している(上昇の速度が速い):じわじわ上げは崩れも緩い。狙うのは“短時間で伸びた反動”。
③ 板が薄い(特に上方向の板が薄い):板が厚いと崩れに時間がかかり、逆張りの損切りが難しくなります。
④ 後場に入っても出来高が一定以上ある:出来高が枯れるとスプレッドが広がり、下落で利が乗っても利確できないリスクが出ます。
できれば避けたい条件(地雷)
① 連続ストップ高(値幅制限に張り付く):空売り不可・買いの熱狂が強すぎる局面は、崩れが“翌日”に持ち越されやすい。今日崩れる前提で逆張りすると焼かれます。
② 需給が“供給不足”すぎる(流通株が極端に少ない):板が薄すぎる銘柄は、下落も急ですが反発も急で、損切りが滑ります。初心者は避けるべきです。
③ 材料が二重三重(国策・超大型テーマ・著名人絡み):合理を超えて買われる銘柄は、崩れが遅れることがある。テーマの強さは“滞空時間”を伸ばします。
「天井の形」を定義する:感覚ではなくチェック項目で判断する
IPO逆張りで最悪なのは、「そろそろ天井だろう」で入ることです。必要なのは、天井の“形”を定義し、条件が揃ったら入る、揃わなければ見送る、というルールです。
天井候補のシグナル(単体では不十分)
・上ヒゲが連続する:5分足で上ヒゲが続くのは、上で売りが出ているサイン。ただし上昇トレンド中は“ただの押し”にもなるので、これだけで売らない。
・出来高ピークアウト:上昇中に出来高が最大を付け、その後に価格だけ上を試すが出来高が増えない。これは燃料切れの典型です。
・歩み値の成行買い連続が途切れる:同サイズの成行買いが続いていたのに、途切れて指値約定が増える。推進力が落ちています。
・買い板が“見せ板”っぽくなる:買いが厚く見えるのに、約定が近づくと消える。実需の買いが弱い。
エントリーの決定打(これが出て初めて売る)
・直近の押し安値(5分足)を割り、戻りで同水準がレジスタンスになった:これが最重要です。上昇トレンドが終わったかどうかは“高値”ではなく“押し安値”で判断します。
・割れた直後の戻りが弱い(戻りの出来高が増えない):割れた後に買い戻しが入るのは普通ですが、戻りが弱いなら“売り優勢”が確定します。
・板の上方向が急に薄くなる(買いが飛ぶ):上に売りが積み上がり、買いが薄い状態になると、少しの売りで値が滑ります。ここが失速の加速点です。
まとめると、理想は次の流れです。
(1)前場で公開価格比+100%超まで過熱 →(2)後場で高値更新に失敗 →(3)押し安値割れ →(4)戻り弱い →(5)売りで入る。この順序を守ることで、「天井当てゲーム」から脱出できます。
時間帯の使い方:後場のどこを狙うか
後場と言っても、ずっと同じではありません。狙いどころは2つです。
① 後場寄り(12:30〜12:50)
昼休みで参加者がリセットされ、板の並びが変わります。ここで、午前中の高値圏で買った層が「一旦逃げる」動きを出しやすい。特に、後場寄り直後に寄りの成行売りが連続し、前場の押し安値を試す動きが出たら要注意です。
ただし後場寄りはボラが出やすく、逆行も速い。初心者は「寄りの最初の5分」は触らず、12:35以降に形が見えてからに絞ると安定します。
② 大引け前(14:30〜15:00)
IPOは持ち越しリスクが大きいので、当日中に手仕舞いしたい参加者が増えます。前場で過熱して後場で崩れ始めた銘柄は、引けに向けて“投げが連鎖”しやすい。ここは下落の伸びが取りやすい一方、引け間際は約定が荒くなるので、利確ルールを機械的に決めておくべきです。
具体的な売買ルール:観察→判断→執行を分離する
IPO逆張りは、見ているうちに感情が入ります。だから工程を分けます。
観察(エントリー前に必ず見る)
・5分足:直近の押し安値:割れたら“売り候補”。割れてないなら売らない。
・出来高:ピークを付けた足の特定:天井候補の目印になる。以降、ピーク足の高値更新に失敗し続けるなら弱い。
・歩み値:成行の方向の連続性:売り成行が連続する瞬間があるか。単発ではなく連続が重要。
・板:買いの厚みが“残る”か“消える”か:見せ板は信じない。約定の直前に消えるなら弱い。
判断(エントリー条件)
条件A:押し安値割れ(5分足確定)
条件B:割れ後の戻りが弱い(戻りの出来高が割れ足より小さい)
条件C:戻りで同水準が上値抵抗になり、再び売り成行が連続
A〜Cが揃ったら、売りで入ります。Aだけで飛びつかない。BとCで“騙し”を排除します。
執行(注文の出し方)
IPOは値が飛ぶので、基本は成行ではなく指値が有利です。とはいえ、崩れ初動は速度が命なので、以下のように使い分けます。
・割れの瞬間は見送る:割れは踏み上げ(戻し)が起きやすい。ここで売ると最悪の位置になる。
・戻りの弱さを確認してから、戻り高値の少し下に指値:狙いは“戻り売り”。この位置は損切りが置きやすい。
・約定しないなら追わない:追うほど滑って不利になります。IPOで追いショートは破滅の入口です。
損切り設計:IPO逆張りは「利確より損切りが先」
この手法の本質は、小さく切って、当たった時に伸ばすです。損切りが遅いと、1回で全損コースになります。
損切りラインの置き方(シンプルに2択)
① 戻り高値の上(ティックで明確に抜けたら即撤退):戻り売りで入ったなら、戻り高値を超えた時点で仮説が崩れています。
② 押し安値割れを“戻して再度上”に走ったら撤退:割れが騙しになったパターン。IPOではここから再加速が多い。
ポジションサイズ
初心者は、普段のデイトレの半分以下に落としてください。理由は「滑り(スリッページ)」が大きいからです。損切りを置いても、約定が想定より悪くなります。
利確設計:伸びる時は想像以上に伸びる
利確もルール化します。IPOは下落が一方向に進むと、反発の買いが弱く、下げが続くことがあります。逆に言えば、当たった時は伸ばせます。
利確の基本形
① 直近の出来高が増えた下落足の安値付近で半分利確:一旦の買い戻しが入りやすいポイントです。
② 残りはVWAP(当日)まで、または5分足で反発サインが出るまで引っ張る:IPOの失速はVWAPまで戻ることが多い。ただしVWAPは万能ではないので、下ヒゲ連発+売り成行が止まるなど、反発の兆しが出たら手仕舞い。
トレーリング(利益を守る)
利益が乗ったら、損切りを「建値」ではなく「直近戻り高値の少し上」に下げていきます。こうすると、踏み上げで利益を吐き出しにくい。
具体例:チャートの“物語”として理解する
ここでは数字ではなく、相場の流れで理解します。
あるIPOが公開価格1,000円で上場し、前場で2,100円まで到達(+110%)。SNSで盛り上がり、板は薄いのに上に飛びます。ところが、2,100円付近で何度も叩かれ、高値更新に失敗。5分足は上ヒゲが増え、出来高はピークアウトします。
後場寄り。最初の数分は乱高下しますが、12:40頃、前場の押し安値(たとえば1,980円)を5分足終値で割れます。割れた直後に2,000円まで戻しますが、戻りの出来高が増えず、買い板が薄い。2,000円手前で売り成行が連続し、再び1,980円を割り込みます。
ここがエントリーです。「割れ→戻り弱い→再下落」の確認が取れている。損切りは戻り高値(2,000円少し上)に置く。下は1,900円、1,850円と一気に滑り、途中で半分利確。残りはVWAP近辺まで引っ張る。こういう“物語”の再現性を狙います。
よくある失敗パターンと回避策
失敗①:天井を当てに行って焼かれる
「+100%だからそろそろ下がる」は根拠になりません。IPOは+200%、+300%もあります。回避策は、押し安値割れと戻り弱いの確認を必須にすること。
失敗②:割れた瞬間に飛び乗りショート
割れは買い戻しが入りやすい。割れの瞬間は最も逆行しやすい。回避策は、割れ直後の戻りを待つこと。戻り売りで入れば損切りが近い。
失敗③:損切りができず“お祈り”になる
IPOは踏み上げが速い。損切りを迷った瞬間に終わります。回避策は、損切りラインを約定と同時に決めること。建てた後に考えない。
失敗④:出来高が枯れた銘柄を触って利確できない
下がってもスプレッドが広く、買い戻せず利益が消える。回避策は、後場でも出来高が残る銘柄だけに絞る。
検証のやり方:主観を排して「型」の勝率を見る
この手法は裁量に見えますが、型に落とせます。検証は次の順で進めると早いです。
ステップ1:サンプルを集める
過去のIPOから「公開価格比+100%超」を達成した初日だけを抽出します。全IPOを見ない。過熱していない銘柄を混ぜると結果がブレます。
ステップ2:後場の押し安値割れが起きたかを分類
起きた銘柄と起きなかった銘柄で、失速の深さが変わります。押し安値割れがないのにショートすると、踏み上げの確率が上がるはずです。
ステップ3:割れ後の戻りの出来高を比較
「割れ足 > 戻り足」のパターンだけを採用すると、騙しが減ります。逆に戻りで出来高が増えるのは“買いが強い”ので危険です。
ステップ4:期待値を“損切り幅基準”で測る
IPOは値幅がバラバラなので、円幅ではなく「損切り幅1に対して利幅が何倍か」で見ます。理想は、平均で1.5〜2.5倍以上。そうでないならルールが緩い可能性があります。
応用:暗号資産の新規上場(CEX上場)にも似た構造がある
株のIPOと、暗号資産の取引所上場(CEX上場)は別物ですが、需給の偏りという意味では似ています。上場直後に過熱し、流動性が落ちた瞬間に急落する。ここでも「高値当て」ではなく、押し安値割れ→戻り弱い→再下落という型は有効です。
ただし暗号資産は24時間でボラが極端です。株よりも損切りがさらに重要で、レバレッジを使うならなおさらです。
実戦のチェックリスト:1分で確認してから入る
最後に、エントリー直前の最終確認を文章でまとめます。
公開価格比+100%超の過熱があり、前場で急騰している。後場に入って高値更新に失敗し、5分足の押し安値を終値で割った。割れ後の戻りは弱く、戻り足の出来高が増えていない。板の買い厚は消えやすく、歩み値では売り成行が連続する。戻りで割れ水準がレジスタンスになった。損切りは戻り高値の上に置ける距離で、ポジションサイズは普段の半分以下に落としている。
この条件が揃っているなら、逆張りではなく「戻り売りの順張り」に近い形で、失速の初動を取りにいけます。
まとめ:IPO逆張りは“型”に落とせば戦える
IPO初日の後場失速は、派手で怖い値動きに見えますが、需給が崩れる瞬間には共通のサインがあります。公開価格比+100%超という過熱を起点に、押し安値割れと戻り弱さで“崩れ”を確定させ、損切り優先で短期回転する。これが勝ち筋です。
一番重要なのは、触らない日を作ることです。条件が揃わないIPOは見送る。見送れる人だけが、生き残って次のチャンスを取れます。
板・歩み値の“崩れ方”をもう一段具体化する
ここからは、より実務的に「何が見えたら危険か」を掘ります。IPOの失速は、チャートだけでなく、板と歩み値に先に出ます。
歩み値:同サイズ連続が「逆方向」に出たら警戒レベルが上がる
前場の上昇局面では、同じロットの成行買いが連続しやすい(アルゴや群集が同じ発注単位で追随するため)。失速の初動では、これが逆転して同サイズの成行売りが連続します。重要なのは“1回の大口”ではなく、同じテンポで何度も出ることです。これは「買い手が撤退して、売り手が主導権を握った」合図になりやすい。
板:買い厚が「近づくと消える」→「薄いまま」へ変化したら崩れやすい
高値圏のIPOでは、買い板が厚く見えることがあります。しかし、見せ板のように約定が近づくと消えるなら、価格を支える意思がありません。さらに悪いのは、消えた後に“補充されない”ことです。補充がない状態で売りが出ると、ティック飛びで下に落ちます。
スプレッド:急に広がったら「ゲームのルールが変わった」
売買が活発なときはスプレッドが相対的に安定します。ところが失速局面でスプレッドが急に広がると、マーケットメイクが弱くなり、約定コストが跳ね上がる。この瞬間に無理に追うと、損切りも利確も滑ります。スプレッドが広がった時点で、サイズを落とすか、見送る判断も合理的です。
逆張りを“順張り化”するコツ:平均足ではなく「構造」を売る
この戦略を安定させる最大のコツは、逆張りという言葉を忘れることです。あなたが売っているのは「高値」ではなく、上昇構造の崩壊です。構造が崩れていないのに売るのは、単なる当てものです。
構造の崩壊とは、具体的には「押し安値割れ→戻りが弱い→戻り高値が切り下がる」という連鎖です。ここまで確認できれば、売りは逆張りではなく、下落トレンドの初動に乗る順張りに近づきます。
トレード環境の整え方:初心者がやりがちな“情報不足”を潰す
IPOの短期売買は、情報が足りないと負けます。必要なのは“高機能”ではなく、“必要最低限が揃っている”ことです。
・板:最低でも5本以上、できれば10本以上(薄い板の変化を捉えるため)
・歩み値:連続約定の方向とテンポが分かる表示(秒単位でなくても良いが、同ロットの連続が見えること)
・5分足:出来高表示つき(ピークアウトと戻りの弱さを判定するため)
・当日VWAP(利確の目安として使う)
これが揃っていないなら、この戦略は“やらない”が正解です。見えていないものは取れません。
簡易アラートの作り方:押し安値割れを見逃さない
裁量トレードでも、見逃しを減らす仕組みを入れると成績が安定します。ここでは、MQL4で「直近N本(5分足)の安値を割ったらアラート」を出す最小コード例を示します。あくまで監視補助で、売買ロジックそのものではありません。
// MQL4: 5分足の直近N本の最安値を割ったらアラート(監視用)
// チャート時間足をM5にして使う想定
#property strict
input int LookbackBars = 6; // 直近N本
input int CooldownSec = 60; // 連発防止
datetime lastAlert = 0;
int OnInit(){ return(INIT_SUCCEEDED); }
void OnTick(){
if(Period() != PERIOD_M5) return;
// 直近N本(確定足のみ)で最安値を計算
double minLow = Low[1];
for(int i=2; i<=LookbackBars; i++){
if(Low[i] < minLow) minLow = Low[i];
}
// 現在値(Bid)が最安値を下回ったらアラート
if(Bid < minLow){
if(TimeCurrent() - lastAlert >= CooldownSec){
Alert(Symbol(), " M5: lookback low break. Bid=", DoubleToString(Bid, Digits), " minLow=", DoubleToString(minLow, Digits));
lastAlert = TimeCurrent();
}
}
}
このアラートが鳴った瞬間に売るのではありません。鳴ったら“監視を強める”。そして本文で説明した通り、割れ→戻り弱い→再下落の確認を待ってから判断してください。
最後に:勝てる人の共通点は「見送りの技術」
IPOは派手なので、つい触りたくなります。しかし勝っている人は、条件が揃わない日は平気で何もしません。あなたの仕事は、チャンスを増やすことではなく、期待値の低い取引を減らすことです。IPO逆張りは、その原則が最も効く領域です。


コメント