決算発表で株価が動く本当の理由:コンセンサスとガイダンス、需給の分解

株式投資

決算発表で株価が大きく動くのは「業績が良い/悪い」だけが理由ではありません。市場が反応しているのは、実は数字そのものより期待との差(サプライズ)将来の見通し、そして短期の需給です。ここを分解できると、決算のたびに振り回される側から、相場の構造を読み解く側に回れます。

本記事では、決算で株価が動くメカニズムを「何が既に織り込まれていて、何が新情報なのか」という視点で整理し、初心者でも実践できるチェック手順まで落とし込みます。特定銘柄の推奨はしません。判断フレームだけを提供します。

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株価は「現状」ではなく「未来の期待」を買っている

株価はざっくり言えば「将来キャッシュフローの現在価値」です。つまり決算の目的は、過去の成績表を見て安心することではなく、将来の期待の更新です。だから決算で重要なのは次の2つです。

市場が想定していた未来(コンセンサス、会社計画、ガイダンス、各種指標)
決算が提示した未来(実績+見通し+構造変化)

この差が大きいほど、株価は大きく動きます。逆に、業績が良くても「市場の期待どおり」なら、株価が下がることすらあります。

決算サプライズは「EPSの±」だけでは足りない

初心者が最初につまずくのは「EPSが予想を上回ったのに下がった」という現象です。理由は、サプライズが複数階層で起きるからです。

サプライズの階層
・売上(トップライン)…需要の強さやシェアの変化が出る
・粗利率/営業利益率…価格決定力、コスト構造、競争状況が出る
・営業利益…本業の稼ぐ力
・EPS…自社株買い、税率、特別損益の影響を受ける
・フリーキャッシュフロー(FCF)…実際に残る現金。設備投資や運転資本の変化が出る

たとえばEPSが良くても、粗利率が悪化していたり、FCFが弱い場合は「将来の利益の質が悪い」と判断されやすい。逆にEPSが弱くても、売上が強く粗利率が改善していれば、将来の伸びを評価して上がることがあります。

最も株価を動かすのは「次の四半期」と「通期ガイダンス」

決算で株価を動かす主役は、しばしば実績よりガイダンス(会社見通し)です。市場は「これから何が起きるか」を値付けしているので、過去四半期が良くても、次が弱い見通しなら売られます。

ガイダンスは次の3点で読みます。

成長率(売上YoY、QoQ)
利益率(粗利率、営業利益率)
投資と回収(設備投資、人員、研究開発)

ここで重要なのは、見通しの数字よりも前提です。例えば「需要は堅調だが供給制約」「価格は維持できるが数量が減る」「広告投資を増やす」など、前提が変わると評価の軸が変わります。

コンセンサスの正体:市場の期待は一枚岩ではない

「市場予想(コンセンサス)」は平均値で語られがちですが、実際の市場参加者は平均では動きません。ポイントは分布です。

・強気派が多く、予想が上振れに偏っている状態で「普通の決算」→ 失望売りになりやすい
・弱気派が多く、予想が下振れに偏っている状態で「普通の決算」→ 安心買いになりやすい

つまり同じ数字でも、事前のポジション(心理と需給)で反応が変わります。これが「良い決算でも下がる」最大の理由です。

決算前の株価上昇は「事前織り込み」のサイン

決算前に株価が上がっているときは、単純に期待が高いというだけでなく、上がった事実そのものがリスクになります。理由は2つです。

利益確定の売りが出やすい(決算というイベントで一度区切りが付く)
オプションとヘッジの解消が価格を動かす(イベント通過でボラが落ち、ポジションが巻き戻る)

ここで初心者がやりがちなのが「決算に期待して買う」ことです。期待は既に株価に混ざっています。むしろ見るべきは、決算前の上昇がどの程度の上振れを前提にしているかです。

決算後に起きる「3つの売買」:人間とアルゴの役割分担

決算直後の値動きは混沌に見えますが、実態は次の3つの売買が重なっています。

1) 初動(秒速):アルゴがヘッドライン数字(売上、EPS、ガイダンス)を読んで反応
2) 再評価(数分〜数時間):人間が注記や質疑応答、利益率、FCF、セグメントの変化を読んで修正
3) 需給調整(数日):機関のリバランス、指数、信用、空売り、オプションの巻き戻しが効く

だから「最初に上がったから安心」「最初に下がったから終わり」と決めるのは危険です。初動は薄い板で誤差も出ます。むしろ重要なのは、再評価で流れが継続するか反転するかです。

株価が動く本当の理由①:利益率と“質”の変化

決算で最も見落とされるのが利益の質です。市場は利益の「量」だけでなく「持続性」を評価します。

・粗利率が上がる:価格決定力がある、ミックス改善、競争優位が強い
・販管費が増える:成長投資の可能性もあるが、効率悪化の可能性もある
・FCFが弱い:売上は立っても現金が残らない(運転資本増、回収遅れ、在庫膨張)

例:売上が伸びているのに在庫が積み上がっている場合、次四半期以降に値引きが必要になり、粗利率が崩れる懸念が出ます。これだけで株価が急落することがあります。

株価が動く本当の理由②:ガイダンスの“控えめ文化”と上方修正余地

会社はガイダンスを保守的に出すことがあります。すると「ガイダンスは弱いが、実際には上振れしそう」という状態が生まれます。市場はこれを織り込みに行きます。

見るポイントは、過去の傾向今期の外部環境です。例えば過去に毎回保守的なガイダンス→上方修正を繰り返している企業は、ガイダンスを額面通りに受け取られにくい。一方で、需要が鈍化している局面では、保守的ガイダンスがそのまま現実になることもあります。

株価が動く本当の理由③:市場の物差し(バリュエーション)が変わる

決算は「企業の価値」だけでなく「市場の物差し」を揺らします。例えば、成長株はPERが高くなりやすいですが、金利が上がる局面では将来利益の割引率が上がり、PERが圧縮されやすい。

このとき、決算が良くても「物差しが縮む」ことで株価が伸びないことがあります。逆に、金利低下局面では同じ成長率でもPERが膨らみ、決算がそこそこでも株価が大きく上がることがあります。

決算と自社株買い:EPSが上がっても株価が上がらないケース

自社株買いで株数が減るとEPSは上がりやすいです。しかし市場が見たいのは「本業で稼ぐ力」です。

・本業利益が横ばいで、自社株買いだけでEPSが上がる → 伸びの評価が付きにくい
・FCFが弱いのに自社株買いを継続 → 財務の余力に疑念が出る
・自社株買いの規模が大きく、かつ継続性が高い → 下値の支えになりやすい

決算で自社株買いが発表されたときは、発表額だけでなく、どこから資金が出るのか(FCFか借入か)も見てください。

初心者がやるべき「決算読み」の最短ルート

全部を完璧に読む必要はありません。まずは次の順番で読めば十分に戦えます。

Step1:事前期待の確認
・決算前3か月、1か月、1週間の株価推移(上がり過ぎていないか)
・市場の注目点は何か(利益率か成長率か、あるいはガイダンスか)

Step2:ヘッドライン数字
・売上、営業利益、EPS、FCFのうち、どこが動いたか
・前年同期比だけでなく、前四半期比も確認

Step3:ガイダンスと前提
・通期見通しの上方/下方修正の有無
・利益率の想定、投資の増減

Step4:一番重要な“変化点”を1つだけ言語化
例:「粗利率が改善し、価格決定力が戻った」
例:「在庫が増え、次の四半期で値引き懸念」

変化点が言語化できると、株価の動きが説明できます。説明できない値動きは、需給要因の可能性が高いです。

具体例:同じ“良い決算”でも結果が逆になるケース

以下は架空の例ですが、現実でもよく起きる構図です。

ケースA:数字は良いが下がる
・売上とEPSは予想を上回る
・しかし粗利率が悪化し、FCFも弱い(在庫増)
・ガイダンスは据え置きで、次四半期の利益率見通しが弱い
→ 市場は「今期は良いが先が不安」と評価し、下げる

ケースB:数字は普通だが上がる
・売上とEPSはほぼ予想どおり
・粗利率が改善し、FCFが強い(回収改善)
・ガイダンスは保守的だが、前提が強い(需要が堅調、供給制約が緩和)
→ 市場は「利益の質が上がり、先が明るい」と評価し、上げる

ここでの結論は単純です。決算は点数ではなく、構造変化の発表会です。

決算トレードで“儲けに行く”前に、損を避ける設計をする

決算はイベントなので、当てに行くほど事故ります。初心者がやるべきは「当てる」より「死なない」設計です。

・決算跨ぎをするなら、ポジションを小さくする(想定外のギャップに耐える)
・決算後に入るなら、初動ではなく再評価の流れを待つ(反転の罠を避ける)
・決算前に上がり過ぎた銘柄は、期待が高い=下落余地が大きいと見なす

「決算で上がるはず」という思い込みは捨ててください。相場は、あなたの期待ではなく、市場全体の期待との比較で動きます。

チェックリスト:決算で見るべき10項目

最後に、毎回同じ型で確認できるチェックリストを置きます。

1. 決算前の株価は上がっていたか下がっていたか
2. 売上の伸びは加速しているか減速しているか
3. 粗利率は改善か悪化か(理由は何か)
4. 営業利益率はどうか(販管費の増減)
5. EPSは本業要因か、それとも一時要因か
6. FCFは強いか弱いか(運転資本、設備投資)
7. ガイダンスは上方/下方修正か据え置きか
8. ガイダンスの前提は現実的か(需要、価格、供給、投資)
9. 自社株買い・配当など株主還元の変化はあるか(資金源は何か)
10. 決算後の値動きは初動だけか、それとも再評価で継続しているか

この10項目が埋まれば、決算の値動きの多くは説明できます。説明できるようになると、無駄な売買が減り、結果としてパフォーマンスが安定します。

まとめ:決算は“期待の更新”であり“需給の再配置”である

決算で株価が動く理由は、①期待との差(サプライズ)、②ガイダンスによる未来の更新、③利益の質と構造変化、④短期需給の再配置、の合成です。数字を追うだけではなく、何が織り込まれていたかを先に確認してください。

決算は怖いイベントではありません。構造が分かれば、むしろ投資判断の精度を上げる最大の材料になります。次の決算からは、チェックリストで淡々と分解していきましょう。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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