メジャーSQ(3月・6月・9月・12月の先物・オプション清算)当日は、いつもの「寄り付き」と別物です。先物とオプションの建玉が一斉に精算されるため、寄り前の気配も、寄った後の値動きも、アルゴも裁定も“イベント仕様”になります。
この日に個人投資家が狙いやすいのが、寄り付き後30分でできた「高値・安値」を基準にしたブレイクアウトです。ポイントは“レンジを抜けた瞬間に叩く”ではありません。SQ特有のノイズ(寄りの振られ、寄り直後のだまし、指数の踏み)をやり過ごし、30分で市場が示した方向性にだけ乗る。これが再現性を上げる考え方です。
- メジャーSQとは何か:まずは仕組みを理解する
- なぜ「寄り付き30分の高安」が効くのか
- この戦略が向く人・向かない人
- 準備編:前日までにやること(ここで勝負が決まる)
- 当日ルール:エントリー条件を具体化する
- 利確と損切り:SQ日は“最初から数字で固定”する
- 具体例:2つのシナリオで“同じルール”を当てはめる
- だまし回避:SQ日にありがちな“負けパターン”を潰す
- 派生戦略:エントリーを1回に絞ると精度が上がる
- 初心者向け:チェックリスト(この順で見る)
- 検証と改善:たった3項目だけ記録する
- 寄り前の観察:9:00までに“今日の地雷”を避ける
- “指数主導”を数値で見る:主観を減らす簡易指標
- 注文方法:SQ日は“滑る前提”で設計する
- ロット設計:勝率ではなく“最大損失”から逆算する
- 例外ルール:9:30前の売買を“完全禁止”にしない場合
- よくある質問:初心者がつまずくポイント
- まとめ:SQ日は“イベント日用のルール”で戦う
メジャーSQとは何か:まずは仕組みを理解する
メジャーSQは、日経225先物・TOPIX先物・オプションなどの清算値(SQ値)が決まる日です。SQ値は寄り付きの一発で決まるわけではなく、対象銘柄の寄り付き(場合によっては時間差)を積み上げて算出されます。これにより、寄り付き前後は以下が同時発生しやすくなります。
(1)裁定取引の回転が増え、指数寄与度の高い銘柄に強いフローが入る。
(2)オプションのガンマ・デルタ調整が絡み、指数が“ある価格帯”を中心に不自然に振れる。
(3)寄り付きの値決めが荒れ、個別の板・歩み値が普段よりスパイク的になる。
つまり「いつも通りのテクニカル」がそのまま通用しにくい日です。だからこそ、ルールを単純化して“指数の初動”だけを抜くのが現実的です。
なぜ「寄り付き30分の高安」が効くのか
寄り付き直後は、SQ由来の注文、寄りで取り切れなかった大口、短期勢の逆張り、アルゴの初期ポジション構築が混ざり、だましが増えます。ここで5分足や1分足のブレイクに反応すると、往復ビンタになりがちです。
一方で「寄り付きから30分」は、フローが一巡しやすい区切りです。30分もあれば、①寄りの特殊要因が減衰し、②指数の方向性(買い主導か売り主導か)が板と出来高に現れ、③先物主導のトレンドが出るなら輪郭が出ます。ここで作られた高安は、その日の“初期レンジ”として機能しやすく、抜けた方向に追随注文が入りやすい。
ただし、効くのは「SQ特有のボラ」を前提にした運用をしたときだけです。通常日と同じロット、同じ損切り幅、同じ指値癖だと、機能する前に焼かれます。
この戦略が向く人・向かない人
向く人:短時間で完結したい、ルールで淡々と売買したい、損切りを躊躇しない、指数の動き(先物・寄与度)を観察できる。
向かない人:値動きに感情で反応しやすい、損切りを伸ばしがち、逆張りが好き、指値で安く買いたい/高く売りたい欲が強い。
ブレイクアウトは「取れる日は大きいが、だましの日は連敗する」性質があります。SQ日はさらにノイズが増えるので、勝つ日を増やすより、負けの日の損失を小さく固定する設計が重要です。
準備編:前日までにやること(ここで勝負が決まる)
当日慌てて銘柄を探すと、ボラに飲まれます。前日までに下記を作っておきます。
1. 監視対象を「指数寄与度上位」に寄せる
メジャーSQは指数フローが主役になりやすいので、日経225の寄与度が高い値嵩株(例:半導体、通信、ファストリ系のような値がさ)や、TOPIX主導なら大型金融・商社などを中心にします。個別材料の小型株は、SQとは別理由で飛ぶので“ブレイクの根拠”が混ざり、検証しにくくなります。
2. 30分レンジを作りやすい銘柄だけ残す
朝から一直線の銘柄は「30分高安の意味」が薄れます。理想は、寄りから一度振れてレンジを作り、どちらかに抜ける銘柄です。前日のチャートで、寄り付き後にレンジを作る癖がある銘柄(値嵩大型に多い)を優先します。
3. 想定ボラを決める(損切り幅の前提)
普段の5分足ATRや前日値幅を見て、SQ日はその1.2〜1.8倍動く前提にします。損切り幅を決めずに入ると、損切りが遅れて致命傷になります。
4. 当日の“やらない条件”を先に決める
・日経先物が寄りから方向感なく上下を往復
・指数が急騰/急落した直後で、30分レンジが極端に狭い(抜けた瞬間に逆流しやすい)
・寄り直後から出来高が異常で、板がスカスカ(滑りやすい)
この「やらない条件」が、SQ日の損失を大きく減らします。
当日ルール:エントリー条件を具体化する
ここからが本題です。基準はシンプルですが、条件を3段階に分けると精度が上がります。
ステップ0:開始時刻の固定
基準レンジは「9:00〜9:30の高値・安値」。この30分の確定を待ちます。9:30までの間は、原則として売買しません(例外は後述)。
ステップ1:指数フィルター
個別だけ見てブレイクすると、指数逆行で潰されます。最低限、次を満たすときだけ検討します。
・日経225先物(または現物指数)が9:30以降、直近高値/安値を更新している
・指数の上昇(下落)局面で、対象銘柄が相対的に強い(弱い)
指数が横ばいなら、勝負しません。
ステップ2:銘柄側の条件
・9:00〜9:30のレンジ幅が、前日終値比で0.6%〜1.8%程度(狭すぎるとだまし、広すぎると損切りが厳しい)
・ブレイク方向に出来高が増えている(抜けた瞬間だけでなく、直前の5分足から増え始めている)
・板の薄さが致命的でない(1ティック飛びが頻発するなら見送り)
ステップ3:ブレイクの“確定”の取り方
SQ日はヒゲが増えます。おすすめは「5分足終値で30分高値/安値を超えたら成行」ではなく、抜けた直後の押し(戻り)を1回だけ待つやり方です。
具体例:30分高値を上抜け→1〜3分以内に高値付近へ軽く押す→押しで売りが続かず、歩み値が再び買い優勢→そこで成行(または指値を浅く置く)。
利確と損切り:SQ日は“最初から数字で固定”する
ブレイク戦略は、出口が曖昧だと破綻します。SQ日は特に、急騰急落で感情が揺れやすいので、数値で固定します。
損切り(例)
・エントリー方向と逆に、30分レンジ内へ戻って「さらに反対側へ1/3進んだら損切り」
・または、エントリー足の直近安値/高値を割ったら即損切り
ボラが大きい日は、固定のティック数ではなく「レンジ幅の何割」で決めると、銘柄差に対応できます。目安はレンジ幅の25%〜35%。
利確(例)
・第1利確:レンジ幅の50%伸びたら半分利確
・第2利確:レンジ幅の100%伸びたら残りを利確、またはトレーリング
“伸びたら利確”より、“レンジ幅基準で利確”の方が、SQ日の過剰変動を取り込みやすいです。
トレーリングの現実解
SQ日は急反転が多いので、きれいなトレンドを期待しすぎない方が良いです。残り玉は「直近5分足の安値/高値割れで手仕舞い」のように単純化します。
具体例:2つのシナリオで“同じルール”を当てはめる
ここでは銘柄名を固定せず、値動きパターンで説明します(再現性を上げるためです)。
ケースA:上方向ブレイク(指数上昇+値嵩株が先導)
9:00〜9:30で高値10,200・安値10,050のレンジ(幅150)。9:30以降、指数が高値更新し、対象銘柄も10,200を上抜け。抜けた直後に10,205→10,195と小さく押すが、歩み値は買いが継続。10,200近辺で再加速したところを10,205で成行買い。
損切り:レンジ幅150の30%=45。10,160割れで損切り。
利確:第1利確=75(10,280)、第2利確=150(10,355)。
SQ日は“第2利確に届かず急反落”もあるので、10,280到達で半分利確できていることが精神的に効きます。
ケースB:下方向ブレイク(指数下落+リスクオフ)
同様に30分レンジを作った後、指数が失速し、対象銘柄も30分安値を割る。割れた直後、いったん戻して安値付近で反発を試すが、買い板が薄く、歩み値は成行売り優勢に切り替わる。戻りの失敗を見て成行売り。
SQ日は下げの加速が速い日がある一方、急反発も激しいので、損切り基準は必ず機械的に置きます。
だまし回避:SQ日にありがちな“負けパターン”を潰す
勝ち方より、負け方を潰す方が収益が安定します。SQ日の負けパターンは大体同じです。
1. 9:30前のブレイクに飛び乗る
寄り直後のブレイクは、SQの値決めフローの残りで振られているだけのことが多いです。原則ルールを破ると、期待値が崩れます。
2. レンジが狭すぎるのに入る
レンジが狭い=損切りも浅い=良さそうに見えます。しかしSQ日はノイズで簡単に戻されるので、狭いレンジは“だまし製造機”になりやすい。狭いなら見送る、もしくはロットを落とす。
3. 指数を見ない
個別がブレイクしても、指数が逆行すると、裁定で潰されます。指数フィルターは必須です。
4. 損切りを「様子見」する
SQ日は値が飛びます。「少し戻るだろう」が通用しない瞬間が増えます。損切りは最初から注文として入れるくらいがちょうど良いです。
派生戦略:エントリーを1回に絞ると精度が上がる
ブレイクアウトは回数を増やすほど、だましを踏みます。SQ日は特に、“当日1回だけ”のルールが有効です。
例:午前中に上ブレイクで取ったら、午後は見送り。逆に午前がだましで負けたら、午後は取り返そうとしない。SQ日は取り返しムーブが最も危険です。再現性は「良い条件のときにだけ張る」で作れます。
初心者向け:チェックリスト(この順で見る)
当日9:30以降、次の順で判断すると迷いが減ります。
(1)指数は方向が出ているか(上か下か)
(2)監視銘柄は指数に同調して強い/弱いか
(3)30分レンジ幅は適正か(狭すぎ/広すぎは除外)
(4)ブレイクに出来高が伴っているか
(5)押し(戻り)で失敗を確認できたか
(6)損切り幅・利確幅はレンジ基準で固定できているか
検証と改善:たった3項目だけ記録する
この戦略は、細部を増やすほど迷いが増えます。記録は最小限で十分です。
1) 30分レンジ幅(%):狭い/広いの境界を自分の市場・銘柄で最適化できます。
2) ブレイク時の指数の状態:指数が強かったのに負けたのか、指数が弱かったのに入ったのかが分かります。
3) 押し(戻り)を待てたか:SQ日はここが勝敗を分けます。
寄り前の観察:9:00までに“今日の地雷”を避ける
9:00を迎える前に、最低限これだけは確認してください。SQ日は寄り前の情報量が多く、ここで見誤ると一日が壊れます。
1. 日経225先物(CMEや夜間)と当日寄り前気配の乖離
夜間で大きく動いたのに、寄り前の気配が妙に落ち着いている日は、寄りで一気にギャップが埋まったり、逆方向に走ってから戻ったりします。こういう日は「寄り後30分レンジ」が極端に荒れやすいので、ブレイク狙いは後ろ倒し(10:00以降)にするか、そもそも見送る判断が合理的です。
2. 主要値嵩株の気配がそろっているか
指数寄与度上位がバラバラ(半導体は強いのに通信が弱い、など)だと、指数自体がレンジになりやすい。指数がレンジだと、個別のブレイクも伸びません。逆に寄与度上位が“同じ方向”に寄っている日は、30分高安のブレイクが機能しやすいです。
3. 特別気配・特買い/特売りが多いか
特別気配が多い日は、30分レンジの形成そのものが歪みます。レンジが歪む=ブレイクの基準が壊れる、です。特別気配が監視銘柄の中心に多いなら、その日は指数(先物)だけに絞る、または現物の個別はやらない、と割り切った方が良いです。
“指数主導”を数値で見る:主観を減らす簡易指標
指数フィルターを「雰囲気」でやると、負けたときに改善できません。初心者でも実装しやすい簡易指標を置きます。
1. 寄り付き後30分の指数レンジ幅
指数自体の30分レンジが小さすぎる日は、個別ブレイクも伸びにくい。目安は、日経平均で0.3%未満なら慎重、0.5%超なら動きやすい、という感覚でまず良いです(相場環境で変わります)。
2. 先物の上昇/下落の“歩み値密度”
先物が上に抜けたのに約定が薄い(飛び飛び)ならだましが増えます。逆に同じ方向に一定密度で約定が積み上がるなら、トレンドが出やすい。これは板読みが苦手でも、ティックチャートや出来高の増え方で判断できます。
3. 寄与度上位の“同時性”
指数が上に行くとき、寄与度上位がほぼ同時に上に走るなら本物。1〜2銘柄だけが飛んで指数を引っ張っているなら、後で失速しやすい。これも主観になりがちですが、「上位10銘柄のうち7銘柄以上が同方向」くらいの基準を置くと判断が速くなります。
注文方法:SQ日は“滑る前提”で設計する
SQ日はスリッページが増えます。だから、注文方法も戦略の一部です。
成行=最速だが、最も滑る
ブレイクの押し(戻り)を確認して入るなら、成行でも許容しやすいです。一方、抜けた瞬間に成行を叩くと、想定より数ティック悪い約定になり、損切り幅が実質的に縮みます。
指値=滑らないが、刺さらない
押し(戻り)で入る場合、指値は“浅く”置きます。深く置くと刺さらずに走られ、追いかけ成行で悪い価格を掴みがちです。刺さらないなら見送る、が基本です。
逆指値(ストップ)=便利だが、SQ日はだましに弱い
30分高値/安値にストップを置くと、SQ日のヒゲで狩られやすい。ストップを使うなら「抜け+押し」を条件にする(=裁量が必要)か、ストップ注文で入るのはやめて、手動で押しを見て入るのが無難です。
ロット設計:勝率ではなく“最大損失”から逆算する
初心者が最もやりがちな失敗は、勝ちそうな日にロットを上げることです。SQ日は“勝ちそうに見える日ほど荒れる”ことがあるので、ロットは固定ルールにします。
1日あたりの損失上限を先に決め、1トレードの損失上限をその半分(あるいは3分の1)に固定します。例えば、1日-1%で停止、1回あたり-0.3%で損切り、2回連続で負けたら終了、のような形です。SQ日は連敗しやすいので、早期停止ルールが効きます。
ロットは「損切り幅(価格)×数量=許容損失」に合わせて計算します。損切り幅が広い銘柄ほど数量を落とす。これだけで、ボラの大きい銘柄での致命傷が減ります。
例外ルール:9:30前の売買を“完全禁止”にしない場合
原則は触らない方が良いですが、経験が積めると例外を作りたくなります。例外を作るなら、条件を極端に厳しくします。
・指数が寄り直後から明確にトレンド(5分足2本連続で同方向、出来高増加)
・監視銘柄が指数より先行して同方向に走っている
・押し(戻り)が浅く、レンジを作らずに走るタイプ(値嵩大型に多い)
この場合のみ、9:10〜9:20あたりの“最初の押し”を狙う選択肢があります。ただし、これは別戦略です。検証せずに混ぜると、手法が崩れます。
よくある質問:初心者がつまずくポイント
Q. 30分高安を抜けたのに伸びません。なぜ?
A. 多くは「指数がレンジ」「寄与度上位がバラバラ」「レンジが狭すぎる」のどれかです。抜けた事実より、抜けた背景(フロー)を重視してください。
Q. ブレイク後の押し(戻り)が来ません。
A. 来ない日は、無理に入らない方が期待値が高いです。押しが来ない=勢いが強いこともありますが、SQ日はそのまま急反転することもあります。追いかけ成行は損失の温床です。
Q. 先物でやるべきですか、現物株でやるべきですか。
A. 初心者は現物株(あるいは信用)で、寄与度上位の流動性が高い銘柄に絞る方がコントロールしやすいです。先物は値幅が大きく、損切りが遅れると損失が跳ねます。先物に移るのは、ルール通りに損切りできるようになってからで十分です。
まとめ:SQ日は“イベント日用のルール”で戦う
メジャーSQ当日は、普段の相場よりも「大口の都合」が前に出ます。個人が勝ちやすい形に寄せるなら、寄り付き後30分の高安を基準に、指数方向にだけブレイクで乗る戦略が現実的です。
肝は、①9:30までは触らない、②指数フィルターを必須にする、③押し(戻り)を1回待つ、④損切り・利確をレンジ幅で固定する。この4つだけで、だましの被弾率が下がり、取れる日に伸ばしやすくなります。
最後に一言。SQ日は“当てに行く日”ではなく、“条件が揃ったら淡々と取る日”です。条件が揃わないなら、何もしないのが最適解です。


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