- はじめに:指数が上がっているのに「自分の銘柄は下がる」現象の正体
- ブレッドス(市場の広がり)とは何か
- なぜ“比率”が効くのか:指数の歪みを補正する
- まず押さえる3つの基本指標(初心者はこれで十分)
- どこでデータを見るか:日本株の現場で迷わないために
- 地合い判定の実戦ルール:数字を“意思決定”に変換する
- 具体例で理解する:よくある3つの相場パターン
- ブレッドスを「売買戦略」に落とし込む5つの実用テンプレ
- “寄り付き〜前場”での使い方:短期の地合いを最速で掴む
- スイングでの使い方:翌日以降の勝率を上げる“環境認識”
- 初心者がやりがちな誤読と回避策
- 最短で使いこなすための「毎日のチェックリスト」
- まとめ:ブレッドスは「地合いの温度計」—温度を無視して勝てる人はいない
はじめに:指数が上がっているのに「自分の銘柄は下がる」現象の正体
相場を始めたばかりの頃、よく起きる違和感があります。ニュースでは「日経平均が上昇」「TOPIXが堅調」と言っているのに、保有銘柄や監視銘柄は下がっている。あるいは指数は横ばいなのに、なぜか周りの銘柄は強い。これはあなたの銘柄選びが下手だから、という単純な話ではありません。
指数は“時価総額の大きい一部の銘柄”の影響を強く受けます。特に日経平均は株価平均型なので、値がさ株の寄与が大きい構造です。一方、個人投資家が触りやすい中小型株は、指数の動きと噛み合わないことが普通にあります。そこで役に立つのが「値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率」=市場のブレッドス(広がり)です。
ブレッドスを読むと、指数の上昇が“市場全体の追い風”なのか、それとも“少数の大型株だけの独走”なのかを見分けられます。結果として、無駄なエントリーを減らし、勝率が上がります。本記事では、初心者でも再現できる形で、ブレッドスの見方と具体的なトレードへの落とし込みを徹底的に解説します。
ブレッドス(市場の広がり)とは何か
ブレッドスは「上がっている銘柄が市場全体でどれくらい多いか」を表す概念です。代表的な材料が以下です。
- 値上がり銘柄数(ADV:Advancers)
- 値下がり銘柄数(DEC:Decliners)
- 変わらず銘柄数
ここで重要なのは「指数の方向」と「市場参加者の実感」をつなぐ橋渡しになる点です。値上がりが多数なら市場は買い優勢、値下がりが多数なら売り優勢。単純ですが、これがトレードの地盤(地合い)です。
なぜ“比率”が効くのか:指数の歪みを補正する
指数は、構成銘柄の中でも影響力が偏ります。たとえば、指数がプラスでも、値上がり銘柄が少なく値下がり銘柄が多いなら、上昇は一部銘柄の寄与で作られている可能性が高い。これは「見た目の相場」と「実態の相場」が乖離している状態です。
この乖離は、次のようなトレードの失敗につながります。
- 指数上昇を見て強気に入ったら、実は市場全体は弱く、押し戻されやすかった
- 指数が弱いから見送ったら、実は市場全体は強く、押し目買いの好機だった
比率(ADV/DEC、あるいはADV÷(ADV+DEC)など)にすると、単なる銘柄数よりも“市場の傾き”が一目で掴めます。絶対数は市場区分や採用銘柄数で変動しますが、比率なら比較しやすいからです。
まず押さえる3つの基本指標(初心者はこれで十分)
1)ADV/DEC比(値上がり÷値下がり)
最も直感的です。値上がりが1,200、値下がりが600なら、比は2.0。買いが優勢で、地合いが良いと言えます。逆に0.7など1を割り込むなら売り優勢です。
2)ネット・アドバンス(値上がり−値下がり)
差分で見る方法です。値上がり1,200−値下がり600=+600なら、上昇の広がりがある。マイナスなら市場の空気は重い。比率よりも“勢いの差”が直に出ます。
3)上昇銘柄比率(値上がり÷(値上がり+値下がり))
0〜1に収まるので管理しやすい指標です。0.60(=60%)を超えると買い優勢、0.40を割ると売り優勢、といった目安に使えます。初心者はまずこれを“地合いスイッチ”として使うと失敗が減ります。
どこでデータを見るか:日本株の現場で迷わないために
ブレッドスは、証券会社のマーケット情報、ポータル、チャートツールなどで見られます。重要なのは「毎日、同じ場所で、同じ形式で確認する」ことです。データ源をコロコロ変えると、判断がブレます。
おすすめの運用は次の通りです。
- 場中:値上がり/値下がりの“リアルタイム更新”が見られる画面を1つ決める
- 引け後:その日の値上がり・値下がり比率をメモし、翌日との比較材料にする
「指標を増やす」より「習慣化」が勝ちます。初心者の勝率は、テクニックより運用で決まる部分が大きいからです。
地合い判定の実戦ルール:数字を“意思決定”に変換する
ブレッドスは“見て終わり”だと意味がありません。トレードは意思決定のゲームなので、数字をルールに落とし込みます。ここではシンプルで再現性の高い基準を示します。
ルールA:上昇銘柄比率で「攻めの日/守りの日」を分ける
- 上昇銘柄比率が0.55以上:攻め(順張りを優先、ブレイクアウト狙いも可)
- 0.45〜0.55:中立(銘柄要因を優先、無理に増やさない)
- 0.45未満:守り(新規買いを絞る、逆張りは短期限定)
数値は完璧ではありませんが、これだけで“地合いが悪い日に強引に買い向かう”事故が減ります。初心者ほど、地合いの悪さを個別銘柄の分析で覆そうとして負けがちです。
ルールB:指数とブレッドスが逆行したら「罠」を疑う
次の逆行は特に危険です。
- 指数は上昇なのに、値下がり銘柄が明確に多い
- 指数は下落なのに、値上がり銘柄が明確に多い
前者は“大型株だけ買われている”ケースが多く、指数の見た目より地合いは弱い。後者は“指数の重し(特定大型株)の下落”で見た目が悪いだけで、実は市場は強い可能性があります。逆行はチャンスにもなりますが、初心者はまず「ポジションサイズを落とす」「無理に追わない」といった守りのルールに使うのが安全です。
具体例で理解する:よくある3つの相場パターン
例1:日経平均プラスでも、値下がり多数(大型株独走)
状況:日経平均+200円、しかし値上がり700・値下がり1,200。指数のニュースだけ見ると強そうですが、市場の“面”は弱いです。
この日の特徴は、指数寄与度の大きい銘柄(値がさ・大型)が買われ、その他が売られている構図です。初心者がやりがちなミスは、指数高に安心して「中小型の押し目」を拾いに行き、さらに下に連れて行かれることです。
対応:新規買いは厳選し、できれば“指数寄与の大きいテーマ”か“地合いと無関係に強い個別材料株”だけに絞る。中小型の逆張りは、ロットを半分以下にするか、見送るのが無難です。
例2:指数横ばいでも、値上がり多数(静かな強さ)
状況:日経平均±0円付近、値上がり1,300・値下がり600。体感としては「上がっている銘柄が多い」。
これは“市場全体に買い余力がある”状態です。指数が動かないのは、特定大型株が重しになっているだけかもしれません。こういう日は、押し目買いが機能しやすいです。
対応:順張り・押し目買いの勝率が上がる環境なので、監視していた銘柄の「支持線反発」「出来高増」「高値更新」など、基本的なトリガーが出たら素直に実行しやすい。逆に、いつもより損切りが浅く済む可能性が上がります。
例3:指数もブレッドスも悪い(全面安)
状況:指数下落、値下がりが圧倒的。これは分かりやすく危険な日です。大事なのは「当てに行かない」ことです。
初心者は、こういう日に“安いから買う”をやりがちですが、下落局面では安い理由が増殖します。狙うなら「反発を確認してから」の短期だけに限定します。
対応:新規は原則見送り。保有はリスクを落とす。どうしても触るなら、反発確認(後述)+小ロット+厳格な損切りを条件にします。
ブレッドスを「売買戦略」に落とし込む5つの実用テンプレ
テンプレ1:順張りの“許可証”として使う(ブレイクアウトの勝率を上げる)
ブレイクアウトは地合いが悪いとダマシが増えます。そこで、ブレッドスで“GO/NO-GO”を決めます。
- 条件:上昇銘柄比率0.55以上、かつネット・アドバンスがプラス圏で拡大
- エントリー:高値更新やレジスタンスブレイクで入る
- 撤退:ブレッドスが急悪化(0.50割れなど)したら利確・撤退を早める
ポイントは「自分の銘柄が良い形に見えても、地合いが悪いなら無理をしない」です。初心者の損失は、ほとんどがこの“無理”で発生します。
テンプレ2:押し目買いの“深さ”を調整する(地合いで待ち方を変える)
同じ押し目でも、地合いが良い日は浅い押しでも反発しやすく、地合いが悪い日は深くまで掘りやすい。ブレッドスで待ち方を変えます。
- 地合い良:移動平均線やVWAPなど浅い支持で反発を狙う
- 地合い悪:直近安値・節目価格・出来高の山など“強い支持”まで待つ
これにより「地合いが悪いのに浅い押し目で飛びつく」失敗を回避できます。
テンプレ3:逆張りは“反発確認”とセットで(恐怖の底を当てに行かない)
値下がり多数の日は恐怖が強く、逆張りが魅力的に見えます。しかし底当ては難易度が高い。初心者は、ブレッドスの“改善”を確認してから入る方が安全です。
- 条件:値下がり優勢(比率0.45未満)から、0.48→0.52など改善が出る
- エントリー:個別銘柄で下げ止まり+反発足を確認
- 撤退:改善が止まり再悪化したら即撤退
「悪い地合いで買う」のではなく、「悪い地合いが“戻り始めた”ところで買う」発想に切り替えると、初心者でも勝てる形になります。
テンプレ4:利益確定のサインにする(天井を当てずに降りる)
上昇相場でも、ある日突然ブレッドスが崩れます。指数は高値圏でも、値下がりが増え始める。これは“内部崩壊”の初期サインになり得ます。
- シグナル:指数高値更新なのにネット・アドバンスが悪化、上昇比率が低下
- 行動:ポジションを一部利確、損切りラインを引き上げる
利益を守るのが上手い人は、こういう“空気の変化”で動きます。天井ピンポイントを狙わないのがコツです。
テンプレ5:その日の“触る市場”を選ぶ(Primeだけ/Growthだけ等)
日本株は市場区分やセクターで温度差が出ます。もし可能なら、Prime全体のブレッドスに加えて、Growth(グロース)や特定セクターのブレッドスも意識すると精度が上がります。
ただし初心者は、最初は「全体(市場全体)」だけで十分です。慣れてきたら「自分が触る市場のブレッドス」を追加すると良いでしょう。
“寄り付き〜前場”での使い方:短期の地合いを最速で掴む
デイトレでは、1日を通して地合いが変わります。特に寄り付き直後は、先物主導や海外の影響で荒れやすい。ここでブレッドスを見ると、無駄な追いかけが減ります。
実践手順はこうです。
- 寄り付き5〜10分後に、値上がり・値下がりの比率を1回チェック
- その後、前場引け(11:30)で再チェック
寄り付き直後は気配のズレが大きく、ノイズも多いので「5〜10分待ってから」見るのが現実的です。比率が改善しているなら買い目線を維持、悪化しているなら攻めを止めます。たった2回のチェックでも、負け方が劇的に変わります。
スイングでの使い方:翌日以降の勝率を上げる“環境認識”
スイングでは、個別の形だけを見て入ると、地合いに潰されます。ブレッドスは環境フィルターとして機能します。
- 買いスイングを増やす局面:上昇銘柄比率が複数日0.55以上、ネット・アドバンスが安定してプラス
- 守り局面:比率が0.50を割り込み、戻っても上値が重い日が続く
さらに実務的には「週のはじめに先週のブレッドスを振り返る」だけでも良い習慣になります。上げ相場に見えても内部が弱いなら、無理にポジションを積み増さない。逆に、指数は冴えなくても内部が強いなら、押し目候補を増やす。こういう“準備”がスイングの成績を分けます。
初心者がやりがちな誤読と回避策
誤読1:比率が良い=何でも買っていい、と思う
地合いが良くても、個別のチャートが崩れている銘柄は普通に下がります。ブレッドスは“追い風”であって“保証”ではありません。まずは「良い地合いの日に、良い形の銘柄だけを買う」という当たり前を徹底してください。
誤読2:一回の数値で結論を出す
場中は数値が揺れます。寄り付き直後だけ悪くて、その後改善する日も多い。1回の値で相場観を固定すると、機会損失と損失の両方が増えます。最低でも「寄り付き後」「前場引け」「大引け」のどれか2点は見てください。
誤読3:市場区分の違いを無視する
Primeが弱くGrowthが強い日、逆もあります。あなたが触る銘柄群と、見ているブレッドスが噛み合っていないと精度が落ちます。最初は全体でOKですが、違和感が続くなら「自分の主戦場に近いブレッドス」を探すべきです。
誤読4:イベント日の特殊要因を忘れる
指数リバランス、先物の特殊要因、決算集中、権利落ち、メジャーSQ付近などは、指数とブレッドスの関係が崩れやすいです。そういう日は、ブレッドスが示す“平常時の意味”が薄れます。初心者はイベント日を当てに行かず、ポジションを落としてやり過ごすのが賢いです。
最短で使いこなすための「毎日のチェックリスト」
最後に、行動レベルに落としたチェックリストを置きます。これをそのままルーティンにしてください。
- (前日夜 or 朝)先物・為替などを軽く確認し、ギャップの大きさを把握
- 寄り付き後5〜10分で、上昇銘柄比率をチェック(0.55以上/0.45未満を意識)
- 前場引けで再チェック。改善か悪化かだけを見る
- 自分のエントリーは「地合いが許可しているか」を最後に確認してから実行
- 大引け後に、その日の比率と指数の方向をメモ(逆行の有無が重要)
これだけで「地合いの悪い日に無理をする」損失が減り、勝ちやすい日だけを取りに行けます。勝率が上がる人は、いつも“勝てる環境に寄せる”のが上手いです。
まとめ:ブレッドスは「地合いの温度計」—温度を無視して勝てる人はいない
値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率は、相場全体の地合いを最短で掴むための温度計です。指数は一部銘柄の影響で歪むことがある一方、ブレッドスは“面”としての強弱を映します。
初心者がまず身につけるべきは、難解な指標ではなく「勝ちやすい日だけ戦う」設計です。ブレッドスはそのための強力なフィルターになります。今日から、寄り付き後と引け後の2回だけでも見てください。小さな習慣が、成績の差を作ります。


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