「月が替わると、なぜか相場が底堅い日がある」——こうした体感は、気のせいではないことがあります。日本株では、月初にかけて機関投資家や投資信託の“機械的な買い”が入りやすく、寄り付き〜前場にかけて需給が支えられる局面が出ます。
本稿では、毎月1日(および月初数営業日)に起きやすい積立資金の流入を「観測する」→「狙う」→「守る」の3段階で、初心者でも迷子にならないように設計します。結論から言うと、ここで勝ちやすいのは“当て物の予想”ではなく、需給の偏りに乗る短期の型です。
- 1. 「毎月1日の機関投資家買い」とは何か:中身は“積立フロー”
- 2. 月初フローを“見える化”する:初心者向けの観測チェックリスト
- 3. 具体戦略:月初の「押し目→反発」を狙う2つの型
- 4. 銘柄選びの実践:月初アノマリーと相性が良い“3タイプ”
- 5. 「月初でも負ける日」を先に決める:撤退ルールの作り方
- 6. 資金管理:1回の失敗で退場しない設計
- 7. オリジナリティ:月初フローは「銘柄」より「時間帯」で勝ちやすい
- 8. スイングに拡張する:月初1〜3営業日の「押し目→再上昇」
- 9. よくある失敗と対策:月初アノマリーの落とし穴
- 10. 最低限の検証方法:エクセルでもできる“ざっくりバックテスト”
- 11. 実践テンプレ:当日の流れ
- 12. まとめ
1. 「毎月1日の機関投資家買い」とは何か:中身は“積立フロー”
月初の買いは、ニュースで語られるような「誰かが強気になった」ではなく、もっと事務的な動きです。代表例は次の3つです。
(1)投資信託の積立・定期買付:個人の積立設定は月初に集中しやすく、信託銀行や運用会社は受け入れた資金を一定のルールで市場に投下します。約定日・受渡日のズレはありますが、月初数日で買い需要がまとまりやすいのがポイントです。
(2)年金・機関のリバランス:月末・月初はポートフォリオ比率を目標に戻す(リバランス)を実行しやすいタイミングです。特に株が月末に下げた場合、月初に“戻しの買い”が出ることがあります。
(3)指数連動の機械的執行:TOPIXや日経平均など、指数に連動した運用は「できるだけ市場に逆らわず、淡々と買う」ことが多い。結果として、先物や大型株で下値が固く見える時間帯が生まれます。
重要なのは、これが「常に上がる」魔法ではない点です。月初でも地合いが弱い日は普通に下がります。ただし、下げたときに“止まり方が違う”日がある。ここを観測できると、初心者でも再現性が上がります。
2. 月初フローを“見える化”する:初心者向けの観測チェックリスト
難しいデータベースは不要です。まずは、毎月1日の朝に次の順番で確認してください。
2-1. 市場全体:先物と寄り前気配で「売りの勢い」を測る
寄り付き前に見るべきは、個別銘柄より先に日経225先物・TOPIX先物です。月初フローが効く日は、多少の悪材料があっても先物が売り込まれにくい傾向があります。
目安の考え方:前日比で先物が-0.5%程度下げていても、寄り前の板で下げが加速しない、あるいは-0.2%〜-0.3%まで戻す動きがあるなら、「売りが一巡しやすい地合い」です。逆に、寄り前の段階で-1.0%を超えてズルズルなら、月初でも“支え切れない日”として無理をしません。
2-2. 需給の芯:大型株と指数ETFの「下ヒゲ」を観察する
月初のフローは、まず大型株・指数周辺に出やすい。ここで初心者におすすめの“観測銘柄”は、TOPIXコア30級の大型株と、売買代金が大きい指数ETFです。あなたがそのETFを買う必要はありません。相場の体温計として使います。
観察ポイントは単純で、寄り後の5分〜15分で下げたときに「下ヒゲが出るか」、そして次の足で戻りが続くかです。下ヒゲが頻発する日は、「下で待っている買い」がいる可能性が高い。
2-3. 個別へ降りる:候補は“指数に近い銘柄”から
月初フローは、まず指数→大型→セクター→個別の順に波及しがちです。初心者がいきなり低位株や材料株に飛び込むと、フローの恩恵が弱く、値動きだけ荒くなりがちです。
最初の候補は、(A)売買代金が大きい、(B)スプレッドが狭い、(C)指数に採用されている、この3条件を満たす銘柄から選びます。なぜなら、月初の“機械的買い”は、流動性が高いところから入るからです。
3. 具体戦略:月初の「押し目→反発」を狙う2つの型
ここからは実戦の型です。初心者でも運用しやすいように、ルールを絞ります。
3-1. 型A:寄り付き後の押し目買い(5分足VWAPを基準)
狙い:月初の買いフローがある日に、寄り直後の“ぶん投げ”を拾い、短時間で抜く。
準備:前日終値付近〜ギャップダウン(下窓)で寄った大型株・準大型株を監視。値幅がある方が利幅が出ますが、初心者はボラが強すぎる銘柄は避けます。
エントリー条件(例)
(1)寄り後5〜15分で一度下げる(初動の売りが出る)
(2)その下げで出来高が膨らむ(投げが出た証拠)
(3)5分足のVWAP付近まで戻してきて、VWAPを割らずに反発する(買いが優勢)
手仕舞い条件(例):直近高値の手前で半分利確、残りはVWAPを明確に割ったら撤退。強い日はVWAPの上で推移しやすいので、VWAP割れを“撤退の合図”にすると迷いが減ります。
具体例(イメージ):9:00に1000円で寄った銘柄が、9:10に990円まで急落(出来高急増)→9:20に997円まで戻り、VWAP=996円の上で下ヒゲ→9:30に1006円。ここで半分利確、残りはVWAP割れまで追随。こういう“戻りの速さ”が月初フローが効く日の典型です。
3-2. 型B:月初1〜3営業日の「前日安値割れ失敗」を拾う(小さく負ける前提)
狙い:地合いが弱くても、月初は“底を叩いた後の戻し”が出やすい。前日安値を割っても続落しない銘柄を、需給の軽さで買う。
エントリー条件(例)
(1)当日、前日安値を一瞬割る(ストップを巻き込む)
(2)割った直後に出来高が跳ねる(投げが出た)
(3)5分足で前日安値を回復し、その価格帯がサポートになる
損切り:前日安値の少し下(0.3%〜0.6%など)に置く。ここはケチらない。月初でも崩れるときは一気に崩れるため、“小さく負ける”が命綱です。
利確:前日終値〜当日寄り値を目標にし、到達したら分割で利確。伸びる日だけ伸びます。初心者は「毎回ホームラン」を捨てて、まずは回転を覚えます。
4. 銘柄選びの実践:月初アノマリーと相性が良い“3タイプ”
「どの銘柄でも良い」では勝てません。月初フローと相性が良いのは次のタイプです。
4-1. 指数寄りの大型株:最も再現性が高い
月初の資金は、まず大きな器に入ります。大型株は値動きがマイルドで初心者向きです。「動かないから儲からない」と感じたら、それはポジションサイズと損切り幅の設計が未熟な可能性が高い。大事なのは、安定した期待値です。
4-2. セクターで資金が集まりやすい局面:金融・半導体・商社など
月初は、運用会社が「今月のテーマ」を決めて寄せることがあります。たとえば米金利が上昇しやすい局面なら金融、ナスダックが強いなら半導体、資源高なら商社・資源株など。ここで初心者がやるべきは、テーマ当てではなく、“強いセクター内の押し目”を狙うことです。
具体的には、値上がり率ランキングで上位に複数並ぶセクターを見つけ、同セクターで一度売られてVWAPで止まる銘柄を優先します。テーマが当たっていれば、押し目が買われやすい。
4-3. 決算・材料“後”の需給整理銘柄:月初は整理が終わりやすい
決算やニュースで大きく動いた銘柄は、その後に信用・短期勢の整理が起きます。月初はフローが支えになるため、整理が終わった銘柄が“自律反発”しやすい局面があります。
見極めはシンプルで、(A)悪材料で急落した後に出来高がピークアウト、(B)同じ価格帯で何度も止まる、この2点。月初の買いが入ると、重い上値も一気に抜けることがあります。
5. 「月初でも負ける日」を先に決める:撤退ルールの作り方
初心者が一番やりがちなのは、月初だからといって“希望的観測で粘る”ことです。月初フローは万能ではありません。だからこそ、事前に「今日はやらない」を決めます。
5-1. ノートレード条件:この3つが出たら休む
(1)寄り前の先物が大幅安で、寄り後も戻らない(売りが支配)
(2)指数ETFや大型株で下ヒゲが出ない(買いが待っていない)
(3)リバウンドしても出来高が伴わない(戻りが弱い)
この3つのうち2つが当てはまるなら、月初でも無理をしません。勝てる日は、驚くほど分かりやすい形で“止まり方”が出ます。
5-2. 損切りは「価格」ではなく「シナリオ崩壊」で切る
月初戦略のシナリオは「積立フローで下がりにくい」です。したがって、下がりにくさが消えた瞬間が損切りポイントです。具体的には、VWAPを明確に割って戻らない、前日安値を割って反発できない、出来高が増えた下げが連発する、など。
価格だけで切ろうとすると、損切りが遅れます。初心者は特に、「見ていた根拠が崩れたら切る」を徹底してください。
6. 資金管理:1回の失敗で退場しない設計
短期トレードは、1回の判断ミスで大きく負けると続けられません。ここは派手さより、生き残りが優先です。
6-1. 1回のトレードで失う上限を先に決める
例として、証拠金・現金100万円なら、1回の損失上限を0.5%(5000円)〜1%(1万円)に設定します。損切り幅が0.5%なら、ポジションサイズは「損失上限 ÷ 0.5%」で決まります。損失上限1万円なら、建玉は200万円相当が上限。信用を使うなら、ここを厳格に守らないと、月初アノマリーどころではなくなります。
6-2. 利確は分割、損切りは一括
月初の戻りは早いことがありますが、途中で上下に揺さぶられます。利確を分割にすると、「利益を確保しながら伸ばす」形になり、判断のストレスが減ります。逆に損切りは一括で素早く。損切りを分割すると、ズルズルが始まります。
7. オリジナリティ:月初フローは「銘柄」より「時間帯」で勝ちやすい
月初の買いは、いつでも均等に出るわけではありません。市場参加者が多い時間帯、執行が集中する時間帯がある。
初心者がまず狙うべきは、寄り付き〜10:30です。理由は単純で、機械的な執行が入りやすく、出来高があるため、売りも買いも“見えやすい”からです。後場はニュースで歪みが出ることもありますが、初心者はまず前場で型を固めた方が勝ち筋が早い。
8. スイングに拡張する:月初1〜3営業日の「押し目→再上昇」
デイトレだけだと取りこぼす日があります。月初フローが効くとき、指数は数日かけてじわじわ戻すことがあるためです。
ルール(例):月初1〜3営業日で、(1)前日比マイナスから切り返し(2)終値が5日移動平均を回復(3)出来高が前日より増加。この3つを満たした銘柄を、翌日寄りで小さく買い、損切りは直近安値割れ。利確は25日線や直近高値付近で分割。
9. よくある失敗と対策:月初アノマリーの落とし穴
(1日だけを神格化する):1日が土日なら、実際の月初は2日や3日になります。狙いは「月初数営業日の需給の傾き」です。
(材料株で期待する):材料株は機械的買いが効きにくいことが多い。まずは指数寄りで型を作る方が安全です。
(損切りを広げて祈る):月初でも崩れる日は崩れます。損切り幅を固定し、ポジションサイズで調整します。
10. 最低限の検証方法:エクセルでもできる“ざっくりバックテスト”
過去6〜12か月分のチャートで、各月の第1〜第3営業日の(A)寄りからの最大下落率、(B)引けまでの戻り幅、(C)VWAPを割った回数、をメモします。効かない月の共通点(先物主導の大幅安、海外イベント、指数トレンド転換など)を探すのがコツです。
11. 実践テンプレ:当日の流れ
8:30〜8:55:先物の方向と下げの勢いを確認。危険ならノートレード。
9:00〜9:15:指数周辺で下ヒゲが出るか観測。出ないなら無理しない。
9:15〜10:30:型A(VWAP押し目)または型B(前日安値割れ失敗)で条件一致のみエントリー。
利確は分割、損切りは即断:VWAP割れや安値更新で撤退。
12. まとめ
毎月1日の底堅さは、積立・リバランス・指数運用などの機械的フローが作る需給の偏りです。先物で地合いを確認し、指数周辺の下ヒゲで買いを観測し、VWAP基準で小さく入り、崩れたらすぐ切る。この型を月初の数日だけ繰り返すと、相場の読みが速くなります。


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