再生可能エネルギー株(以下、再エネ株)は、「脱炭素=必ず伸びる」という連想で買われやすい一方、実際の収益は政策・電力市場・設備の運用に強く左右されます。つまり、同じ「再エネ」でも、どのバリューチェーンで稼いでいる会社かを外すと、テーマが追い風でも株価は伸びません。
この記事では、太陽光・風力を中心に、再エネ株の「本当の儲け方」を、初心者でも判断できるように分解します。ポイントは、売上の大きさではなく、キャッシュフローの質(安定性・伸びしろ・リスクの所在)です。
再エネ株の収益は「発電」「建設」「保守」「売電契約」「周辺ビジネス」に分かれる
再エネのビジネスは、ざっくり次の5つに分かれます。ここを押さえると、ニュースで「再エネ拡大」と出ても、どの会社が利益を取りに行けるのかが見えるようになります。
- 発電(オーナー):設備を保有し、発電した電気を売って稼ぐ
- 開発・EPC:用地確保~許認可~設計施工で稼ぐ(売り切り型が多い)
- O&M(運用・保守):点検・修理・監視で稼ぐ(ストック型になりやすい)
- PPA・電力小売:需要家に長期契約で売る/電気を仕入れて売る
- 周辺(蓄電池、系統、ソフト、金融):調整力・需給最適化・資金調達で稼ぐ
同じ再エネでも、発電は「金利と電力価格」、EPCは「資材価格と人手」、小売は「調達と解約率」のように、支配的な変数がまったく違います。ここを混ぜると、評価も失敗します。
発電オーナーの稼ぎ方:FIT/FIPと「契約の中身」で8割決まる
FITは“固定収入”だが、万能ではない
FIT(固定価格買取制度)の期間中は、基本的に売電単価が固定され、収益予測が立てやすいのが特徴です。だから過去は「発電=インフラ」扱いで、利回り投資が成立しました。
ただし、投資家が見落としやすいポイントがあります。
① 期間終了後(卒FIT)の単価が急に市場連動になる
FITが終わると、売電単価が卸電力市場(JEPX)や相対契約の価格に寄ります。ここで、収益が「天気」だけでなく「市場価格」にも振られます。
② 出力抑制・系統制約で“売りたいときに売れない”
設備があっても、系統混雑や需給バランスで出力抑制がかかると、発電量が売上になりません。発電事業は“設備産業”ですが、実は系統の空き容量がボトルネックです。
FIPは「市場価格+プレミアム」だが、リスクは増える
FIP(フィードインプレミアム)は、市場価格にプレミアム(補助)を上乗せする仕組みです。制度としては「市場統合」に近く、発電事業者は価格変動やインバランス(需給ズレ)を意識する必要が出ます。
投資判断では、次を具体的に見ます。
- 売電の比率:固定単価(または固定マージン)の比率が高いほど安定
- ヘッジの有無:相対契約、先物、価格連動条項などで変動を抑えられているか
- インバランス費用:予測精度と運用体制でコストが変わる
発電オーナーの決算で“真っ先に見る”3つの数字
初心者が最短で精度を上げるなら、以下の3点に集中してください。
1) 契約比率(Contracted vs Merchant)
売上のうち、固定価格・長期契約で確保している比率。ここが高いほど「金利上昇」や「電力価格下落」に耐えやすい。
2) 稼働率と出力抑制の開示
理論発電量に対して実際に売れた比率。出力抑制が強いエリアに偏っていると、設備増でも利益が伸びにくい。
3) 借入条件(プロジェクトファイナンス)
発電は借入で回すケースが多いです。金利・返済スケジュール・DSCR(返済余力)が収益の安全度を左右します。表面利回りが高くても、借入条件が厳しいと分配(配当)は出ません。
EPC(開発・建設)で稼ぐ会社:利益は「パイプラインの質」と「契約形態」で決まる
EPCは売上が伸びても、利益が残らないことがある
EPCは再エネ設備の設計・調達・建設を請け負います。市場が拡大すると受注は増えますが、株の儲けどころは単純ではありません。理由は、EPCが原価変動リスクを抱えやすいからです。
典型的な落とし穴は次の通りです。
- 資材価格の上昇:パネル、架台、ケーブル、変電設備、物流費が上がる
- 工期遅延:人手不足や許認可遅延で遅れ、違約金や追加コストが出る
- 固定価格一括請負:契約で値上げ転嫁できず、粗利が消える
逆に、EPCで強い会社は、開発(用地・許認可)から握って売るか、価格転嫁できる契約を取っています。
“良いEPC”を見分けるチェックポイント
決算資料で具体的に見るポイントを整理します。
① 受注残(バックログ)の中身
受注残が多くても、採算の悪い案件だと罠です。可能なら、案件の種類(太陽光/風力/系統/蓄電池)と、利益率の開示(粗利レンジ)を確認します。
② 開発権益(パイプライン)
「建てるだけ」より、「開発して売る」方が利益率が高いことが多いです。用地、系統接続、環境アセスなど、時間がかかる工程を先に押さえられる会社は、希少性が出ます。
③ 施工体制
外注比率が高いと、好況期にコストが膨らみます。自社で工事管理ができ、標準化された設計で回せる会社ほど、景気の波に強い。
O&M(運用・保守)で稼ぐ会社:地味だが「利益の質」が高い
再エネ投資で見落とされがちなのがO&Mです。発電所は建てた瞬間がピークではなく、20年・30年と運用されます。その間、点検・修理・監視・部品交換が必ず発生します。
O&Mの魅力は、ストック型で積み上がることです。発電所の数が増えるほど、契約が積み上がり、景気後退でも比較的落ちにくい。
O&M企業の“稼ぐ力”は稼働率と単価で決まる
O&Mでは次を見ます。
- 管理容量(MW):保守対象の発電所規模が増えているか
- 契約単価:監視のみ/点検込み/包括契約など、サービスの厚み
- ダウンタイム短縮:故障時に復旧が早いほど、顧客の評価が上がり更新率が上がる
初心者の盲点は、O&Mは「利益率が高い=安全」ではない点です。人手不足で現場要員が確保できないと、受注があっても回りません。人材採用と教育に投資しているかが重要です。
PPA・電力小売の収益構造:本質は「調達」と「解約率」
PPAは“長期契約”だが、契約条件で天国と地獄が分かれる
PPA(Power Purchase Agreement)は、需要家(工場・オフィスなど)と長期で電力を売買する契約です。発電側から見ると「売り先が固定」になり、金融機関の評価も上がりやすい。
ただし、PPAには2種類あります。
オンサイトPPA:需要家の敷地内に設備を置き、そこで発電して供給。送電網を使わない分、系統リスクが小さい。
オフサイトPPA:離れた発電所から供給。系統・市場・インバランスの要素が増える。
株で見るなら、PPAの“良し悪し”は、次の2つで決まります。
- 価格条項:電力市場価格やインフレに連動して改定できるか
- 信用リスク:相手先が倒産・縮小したときの補償があるか
電力小売は「顧客獲得」と「調達の差益」のゲーム
電力小売は、単純に言えば「仕入れて売る」ビジネスです。再エネ比率を売りにする会社も多いですが、利益は、顧客獲得コスト(広告・紹介料)と解約率で大きく変わります。
価格競争が激しい局面では、売上は伸びても利益が残りません。初心者は「契約数が増えている」だけで飛びつきがちですが、実務上は次を見ます。
① 解約率(チャーン):顧客が安い会社に移れば利益が消える。
② 仕入れの仕組み:市場連動の比率が高いと、調達コストが跳ねて赤字化しやすい。
③ インバランス管理:需給予測と調整力の確保が弱いと、見えないコストが積み上がる。
周辺領域の本命:蓄電池は“次の収益源”だが、過度な期待は禁物
再エネの最大の弱点は「発電が天候依存」という点です。そこで注目されるのが蓄電池です。蓄電池は、昼に余った電気を貯めて夜に売るだけでなく、調整力(周波数調整など)や容量(将来の需給ひっ迫に備える価値)でも収益機会があります。
ただし、ここはまだ制度・市場設計が動いており、収益が読みづらい領域です。投資判断では、「実運用で稼いだ実績」があるかを重視します。計画段階のIRRは、前提が少し変わるだけで簡単に崩れます。
具体例で理解する:再エネ株の“儲かる構造”3パターン
例1:発電オーナー(インフラ型)—「契約で守って、増設で伸ばす」
このタイプは、売電契約でキャッシュフローを安定させ、借入を使って設備を増やし、規模のメリットでO&Mコストを下げます。
投資家の視点では、次の「2段階」を分けて考えると失敗が減ります。
第一段階:守り(安定性)
固定契約比率、出力抑制の少ない地域、保険・保守体制、金利の固定化などで下振れを抑える。
第二段階:攻め(成長)
新規案件の開発力、取得単価(MWあたりの投資額)、資金調達力で伸ばす。
「守り」が弱いのに「攻め」だけ語る会社は危険です。発電は、一度つまずくと復活に時間がかかります。
例2:EPC・開発会社(成長型)—「権益を握って高粗利で回す」
このタイプは、案件の“入口”を押さえます。用地、系統接続、許認可、環境アセスなど、時間がかかる工程を先行投資して、完成後に売却したり、建設まで持ち込んで利益を取ります。
初心者向けの着眼点は、
「売上より、案件の“確度”と“利益率”」です。
パイプラインが大きく見えても、許認可が不透明なら実現しません。逆に、規模が小さくても確度が高く、標準化された設計で回せる会社は強い。
例3:PPA+蓄電池(複合型)—「需要家を押さえ、最適化で差益を取る」
このタイプは、長期契約で需要家を押さえ、発電・蓄電池・市場取引を組み合わせて最適化し、差益を取ります。ソフトウェアや運用ノウハウが利益源になるため、成功すれば強い参入障壁になります。
ただし、難易度は高い。投資家としては、
- 実績(稼働済み容量、稼働期間、獲得差益)
- 損失局面の耐性(価格急変時の損失限定)
- 人材(トレーダー、データ、需給管理)
を確認し、「絵に描いた計画」か「実戦で回っている」かを切り分けます。
再エネ株で“よくある失敗”と回避策
失敗1:テーマだけで買い、収益ドライバーを見ない
「再エネは国策」「ESG資金が入る」だけで買うと、利益がどこから出るかを見落とします。回避策は、まず会社を5分類(発電/EPC/O&M/PPA小売/周辺)に分け、支配変数を把握することです。
失敗2:利回りだけを見て、金利と借入を軽視する
発電オーナーはレバレッジが効く一方、金利上昇で価値が落ちます。回避策は、借入の固定化比率と返済スケジュールを見て、短期で金利が上がっても破綻しない設計かを確認することです。
失敗3:出力抑制を甘く見て、稼働率が崩れる
出力抑制は、発電所の場所で決まる要素が大きい。回避策は、地域の需給・系統事情を確認し、会社が地域分散しているか、抑制リスクをどう織り込んでいるかをチェックします。
失敗4:設備の劣化・保険・火災リスクを軽視する
太陽光はパネル劣化、風力は部品交換など、長期運用でコストが出ます。さらに火災・自然災害のリスクもあります。回避策は、O&M体制、保険条件、故障時の補償・復旧計画を開示している会社を優先することです。
初心者でもできる「再エネ株の銘柄選別」7ステップ
最後に、実際の手順を、なるべく迷わない形に落とします。
ステップ1:会社を5分類し、収益ドライバーを特定する
まず、発電/EPC/O&M/PPA小売/周辺のどこで稼ぐ会社かを1つに決めます。複合型でも、主戦場はどこかを決めます。
ステップ2:契約の“固定度”を確認する
発電なら固定売電比率、PPAなら価格改定条項、小売なら調達の固定度。固定が強いほど守りが強いが、上振れは小さい。自分の目的(安定 vs 成長)に合わせます。
ステップ3:感応度(何に弱いか)を数字で把握する
卸電力価格が10%下がると利益は何%減るか。金利が1%上がると利払いはどれだけ増えるか。材料費が5%上がると粗利は何%減るか。決算資料の前提から、ざっくりでいいので感応度を作ります。
ステップ4:キャッシュフローで“本当に稼いでいるか”を見る
会計上の利益より、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、フリーキャッシュフローを見ます。発電は減価償却が大きいので、利益が小さくてもキャッシュが出ることがあります。逆にEPCは売上が立っても回収が遅いと資金繰りが苦しくなります。
ステップ5:設備産業としてのリスク(保険・故障・災害)を確認する
再エネは「設備が止まる」と一気に収益が崩れます。保険が薄い会社、故障対応が外注任せの会社は避けるのが無難です。
ステップ6:バリュエーションは“同業比較”でズレを見つける
発電はEV/EBITDAやNAV、EPCは受注残と粗利率、O&Mは管理容量と利益率、PPA小売は顧客当たり利益と解約率など、業態に合う物差しで比べます。PERだけで判断すると、簡単に誤ります。
ステップ7:買うタイミングは「金利」「政策」「電力価格」の組み合わせで考える
発電オーナーは金利低下が追い風になりやすい。EPCは設備投資サイクルと資材価格の落ち着きが重要。小売は調達価格が落ち着き、価格転嫁が進んだ局面が狙い目です。テーマの熱量より、利益が改善する条件が揃っているかで判断します。
まとめ:再エネ株は「どこで儲けるか」を当てた人が勝つ
再生可能エネルギーは長期トレンドですが、株で勝つには「拡大する市場」と「利益を取れる会社」は別物だと理解する必要があります。
発電は契約と金利、EPCは契約と原価、O&Mは人材と稼働率、PPA小売は調達と解約率、周辺は実績。この整理ができれば、ニュースに振り回されず、銘柄選別の精度が上がります。
最後にもう一度。再エネ株は“理念”ではなく、“キャッシュフローの設計”で見る。これが最短で勝率を上げるコツです。


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