再生可能エネルギー株の本当の収益構造:FIT後に伸びる企業の見分け方

株式投資

再生可能エネルギー株(以下、再エネ株)は、「脱炭素=必ず伸びる」という連想で買われやすい一方、実際の収益は政策・電力市場・設備の運用に強く左右されます。つまり、同じ「再エネ」でも、どのバリューチェーンで稼いでいる会社かを外すと、テーマが追い風でも株価は伸びません。

この記事では、太陽光・風力を中心に、再エネ株の「本当の儲け方」を、初心者でも判断できるように分解します。ポイントは、売上の大きさではなく、キャッシュフローの質(安定性・伸びしろ・リスクの所在)です。

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  1. 再エネ株の収益は「発電」「建設」「保守」「売電契約」「周辺ビジネス」に分かれる
  2. 発電オーナーの稼ぎ方:FIT/FIPと「契約の中身」で8割決まる
    1. FITは“固定収入”だが、万能ではない
    2. FIPは「市場価格+プレミアム」だが、リスクは増える
    3. 発電オーナーの決算で“真っ先に見る”3つの数字
  3. EPC(開発・建設)で稼ぐ会社:利益は「パイプラインの質」と「契約形態」で決まる
    1. EPCは売上が伸びても、利益が残らないことがある
    2. “良いEPC”を見分けるチェックポイント
  4. O&M(運用・保守)で稼ぐ会社:地味だが「利益の質」が高い
    1. O&M企業の“稼ぐ力”は稼働率と単価で決まる
  5. PPA・電力小売の収益構造:本質は「調達」と「解約率」
    1. PPAは“長期契約”だが、契約条件で天国と地獄が分かれる
    2. 電力小売は「顧客獲得」と「調達の差益」のゲーム
  6. 周辺領域の本命:蓄電池は“次の収益源”だが、過度な期待は禁物
  7. 具体例で理解する:再エネ株の“儲かる構造”3パターン
    1. 例1:発電オーナー(インフラ型)—「契約で守って、増設で伸ばす」
    2. 例2:EPC・開発会社(成長型)—「権益を握って高粗利で回す」
    3. 例3:PPA+蓄電池(複合型)—「需要家を押さえ、最適化で差益を取る」
  8. 再エネ株で“よくある失敗”と回避策
    1. 失敗1:テーマだけで買い、収益ドライバーを見ない
    2. 失敗2:利回りだけを見て、金利と借入を軽視する
    3. 失敗3:出力抑制を甘く見て、稼働率が崩れる
    4. 失敗4:設備の劣化・保険・火災リスクを軽視する
  9. 初心者でもできる「再エネ株の銘柄選別」7ステップ
    1. ステップ1:会社を5分類し、収益ドライバーを特定する
    2. ステップ2:契約の“固定度”を確認する
    3. ステップ3:感応度(何に弱いか)を数字で把握する
    4. ステップ4:キャッシュフローで“本当に稼いでいるか”を見る
    5. ステップ5:設備産業としてのリスク(保険・故障・災害)を確認する
    6. ステップ6:バリュエーションは“同業比較”でズレを見つける
    7. ステップ7:買うタイミングは「金利」「政策」「電力価格」の組み合わせで考える
  10. まとめ:再エネ株は「どこで儲けるか」を当てた人が勝つ

再エネ株の収益は「発電」「建設」「保守」「売電契約」「周辺ビジネス」に分かれる

再エネのビジネスは、ざっくり次の5つに分かれます。ここを押さえると、ニュースで「再エネ拡大」と出ても、どの会社が利益を取りに行けるのかが見えるようになります。

  • 発電(オーナー):設備を保有し、発電した電気を売って稼ぐ
  • 開発・EPC:用地確保~許認可~設計施工で稼ぐ(売り切り型が多い)
  • O&M(運用・保守):点検・修理・監視で稼ぐ(ストック型になりやすい)
  • PPA・電力小売:需要家に長期契約で売る/電気を仕入れて売る
  • 周辺(蓄電池、系統、ソフト、金融):調整力・需給最適化・資金調達で稼ぐ

同じ再エネでも、発電は「金利と電力価格」、EPCは「資材価格と人手」、小売は「調達と解約率」のように、支配的な変数がまったく違います。ここを混ぜると、評価も失敗します。

発電オーナーの稼ぎ方:FIT/FIPと「契約の中身」で8割決まる

FITは“固定収入”だが、万能ではない

FIT(固定価格買取制度)の期間中は、基本的に売電単価が固定され、収益予測が立てやすいのが特徴です。だから過去は「発電=インフラ」扱いで、利回り投資が成立しました。

ただし、投資家が見落としやすいポイントがあります。

① 期間終了後(卒FIT)の単価が急に市場連動になる
FITが終わると、売電単価が卸電力市場(JEPX)や相対契約の価格に寄ります。ここで、収益が「天気」だけでなく「市場価格」にも振られます。

② 出力抑制・系統制約で“売りたいときに売れない”
設備があっても、系統混雑や需給バランスで出力抑制がかかると、発電量が売上になりません。発電事業は“設備産業”ですが、実は系統の空き容量がボトルネックです。

FIPは「市場価格+プレミアム」だが、リスクは増える

FIP(フィードインプレミアム)は、市場価格にプレミアム(補助)を上乗せする仕組みです。制度としては「市場統合」に近く、発電事業者は価格変動やインバランス(需給ズレ)を意識する必要が出ます。

投資判断では、次を具体的に見ます。

  • 売電の比率:固定単価(または固定マージン)の比率が高いほど安定
  • ヘッジの有無:相対契約、先物、価格連動条項などで変動を抑えられているか
  • インバランス費用:予測精度と運用体制でコストが変わる

発電オーナーの決算で“真っ先に見る”3つの数字

初心者が最短で精度を上げるなら、以下の3点に集中してください。

1) 契約比率(Contracted vs Merchant)
売上のうち、固定価格・長期契約で確保している比率。ここが高いほど「金利上昇」や「電力価格下落」に耐えやすい。

2) 稼働率と出力抑制の開示
理論発電量に対して実際に売れた比率。出力抑制が強いエリアに偏っていると、設備増でも利益が伸びにくい。

3) 借入条件(プロジェクトファイナンス)
発電は借入で回すケースが多いです。金利・返済スケジュール・DSCR(返済余力)が収益の安全度を左右します。表面利回りが高くても、借入条件が厳しいと分配(配当)は出ません。

EPC(開発・建設)で稼ぐ会社:利益は「パイプラインの質」と「契約形態」で決まる

EPCは売上が伸びても、利益が残らないことがある

EPCは再エネ設備の設計・調達・建設を請け負います。市場が拡大すると受注は増えますが、株の儲けどころは単純ではありません。理由は、EPCが原価変動リスクを抱えやすいからです。

典型的な落とし穴は次の通りです。

  • 資材価格の上昇:パネル、架台、ケーブル、変電設備、物流費が上がる
  • 工期遅延:人手不足や許認可遅延で遅れ、違約金や追加コストが出る
  • 固定価格一括請負:契約で値上げ転嫁できず、粗利が消える

逆に、EPCで強い会社は、開発(用地・許認可)から握って売るか、価格転嫁できる契約を取っています。

“良いEPC”を見分けるチェックポイント

決算資料で具体的に見るポイントを整理します。

① 受注残(バックログ)の中身
受注残が多くても、採算の悪い案件だと罠です。可能なら、案件の種類(太陽光/風力/系統/蓄電池)と、利益率の開示(粗利レンジ)を確認します。

② 開発権益(パイプライン)
「建てるだけ」より、「開発して売る」方が利益率が高いことが多いです。用地、系統接続、環境アセスなど、時間がかかる工程を先に押さえられる会社は、希少性が出ます。

③ 施工体制
外注比率が高いと、好況期にコストが膨らみます。自社で工事管理ができ、標準化された設計で回せる会社ほど、景気の波に強い。

O&M(運用・保守)で稼ぐ会社:地味だが「利益の質」が高い

再エネ投資で見落とされがちなのがO&Mです。発電所は建てた瞬間がピークではなく、20年・30年と運用されます。その間、点検・修理・監視・部品交換が必ず発生します。

O&Mの魅力は、ストック型で積み上がることです。発電所の数が増えるほど、契約が積み上がり、景気後退でも比較的落ちにくい。

O&M企業の“稼ぐ力”は稼働率と単価で決まる

O&Mでは次を見ます。

  • 管理容量(MW):保守対象の発電所規模が増えているか
  • 契約単価:監視のみ/点検込み/包括契約など、サービスの厚み
  • ダウンタイム短縮:故障時に復旧が早いほど、顧客の評価が上がり更新率が上がる

初心者の盲点は、O&Mは「利益率が高い=安全」ではない点です。人手不足で現場要員が確保できないと、受注があっても回りません。人材採用と教育に投資しているかが重要です。

PPA・電力小売の収益構造:本質は「調達」と「解約率」

PPAは“長期契約”だが、契約条件で天国と地獄が分かれる

PPA(Power Purchase Agreement)は、需要家(工場・オフィスなど)と長期で電力を売買する契約です。発電側から見ると「売り先が固定」になり、金融機関の評価も上がりやすい。

ただし、PPAには2種類あります。

オンサイトPPA:需要家の敷地内に設備を置き、そこで発電して供給。送電網を使わない分、系統リスクが小さい。
オフサイトPPA:離れた発電所から供給。系統・市場・インバランスの要素が増える。

株で見るなら、PPAの“良し悪し”は、次の2つで決まります。

  • 価格条項:電力市場価格やインフレに連動して改定できるか
  • 信用リスク:相手先が倒産・縮小したときの補償があるか

電力小売は「顧客獲得」と「調達の差益」のゲーム

電力小売は、単純に言えば「仕入れて売る」ビジネスです。再エネ比率を売りにする会社も多いですが、利益は、顧客獲得コスト(広告・紹介料)解約率で大きく変わります。

価格競争が激しい局面では、売上は伸びても利益が残りません。初心者は「契約数が増えている」だけで飛びつきがちですが、実務上は次を見ます。

① 解約率(チャーン):顧客が安い会社に移れば利益が消える。
② 仕入れの仕組み:市場連動の比率が高いと、調達コストが跳ねて赤字化しやすい。
③ インバランス管理:需給予測と調整力の確保が弱いと、見えないコストが積み上がる。

周辺領域の本命:蓄電池は“次の収益源”だが、過度な期待は禁物

再エネの最大の弱点は「発電が天候依存」という点です。そこで注目されるのが蓄電池です。蓄電池は、昼に余った電気を貯めて夜に売るだけでなく、調整力(周波数調整など)容量(将来の需給ひっ迫に備える価値)でも収益機会があります。

ただし、ここはまだ制度・市場設計が動いており、収益が読みづらい領域です。投資判断では、「実運用で稼いだ実績」があるかを重視します。計画段階のIRRは、前提が少し変わるだけで簡単に崩れます。

具体例で理解する:再エネ株の“儲かる構造”3パターン

例1:発電オーナー(インフラ型)—「契約で守って、増設で伸ばす」

このタイプは、売電契約でキャッシュフローを安定させ、借入を使って設備を増やし、規模のメリットでO&Mコストを下げます。

投資家の視点では、次の「2段階」を分けて考えると失敗が減ります。

第一段階:守り(安定性)
固定契約比率、出力抑制の少ない地域、保険・保守体制、金利の固定化などで下振れを抑える。

第二段階:攻め(成長)
新規案件の開発力、取得単価(MWあたりの投資額)、資金調達力で伸ばす。

「守り」が弱いのに「攻め」だけ語る会社は危険です。発電は、一度つまずくと復活に時間がかかります。

例2:EPC・開発会社(成長型)—「権益を握って高粗利で回す」

このタイプは、案件の“入口”を押さえます。用地、系統接続、許認可、環境アセスなど、時間がかかる工程を先行投資して、完成後に売却したり、建設まで持ち込んで利益を取ります。

初心者向けの着眼点は、

「売上より、案件の“確度”と“利益率”」です。
パイプラインが大きく見えても、許認可が不透明なら実現しません。逆に、規模が小さくても確度が高く、標準化された設計で回せる会社は強い。

例3:PPA+蓄電池(複合型)—「需要家を押さえ、最適化で差益を取る」

このタイプは、長期契約で需要家を押さえ、発電・蓄電池・市場取引を組み合わせて最適化し、差益を取ります。ソフトウェアや運用ノウハウが利益源になるため、成功すれば強い参入障壁になります。

ただし、難易度は高い。投資家としては、

  • 実績(稼働済み容量、稼働期間、獲得差益)
  • 損失局面の耐性(価格急変時の損失限定)
  • 人材(トレーダー、データ、需給管理)

を確認し、「絵に描いた計画」か「実戦で回っている」かを切り分けます。

再エネ株で“よくある失敗”と回避策

失敗1:テーマだけで買い、収益ドライバーを見ない

「再エネは国策」「ESG資金が入る」だけで買うと、利益がどこから出るかを見落とします。回避策は、まず会社を5分類(発電/EPC/O&M/PPA小売/周辺)に分け、支配変数を把握することです。

失敗2:利回りだけを見て、金利と借入を軽視する

発電オーナーはレバレッジが効く一方、金利上昇で価値が落ちます。回避策は、借入の固定化比率返済スケジュールを見て、短期で金利が上がっても破綻しない設計かを確認することです。

失敗3:出力抑制を甘く見て、稼働率が崩れる

出力抑制は、発電所の場所で決まる要素が大きい。回避策は、地域の需給・系統事情を確認し、会社が地域分散しているか、抑制リスクをどう織り込んでいるかをチェックします。

失敗4:設備の劣化・保険・火災リスクを軽視する

太陽光はパネル劣化、風力は部品交換など、長期運用でコストが出ます。さらに火災・自然災害のリスクもあります。回避策は、O&M体制、保険条件、故障時の補償・復旧計画を開示している会社を優先することです。

初心者でもできる「再エネ株の銘柄選別」7ステップ

最後に、実際の手順を、なるべく迷わない形に落とします。

ステップ1:会社を5分類し、収益ドライバーを特定する

まず、発電/EPC/O&M/PPA小売/周辺のどこで稼ぐ会社かを1つに決めます。複合型でも、主戦場はどこかを決めます。

ステップ2:契約の“固定度”を確認する

発電なら固定売電比率、PPAなら価格改定条項、小売なら調達の固定度。固定が強いほど守りが強いが、上振れは小さい。自分の目的(安定 vs 成長)に合わせます。

ステップ3:感応度(何に弱いか)を数字で把握する

卸電力価格が10%下がると利益は何%減るか。金利が1%上がると利払いはどれだけ増えるか。材料費が5%上がると粗利は何%減るか。決算資料の前提から、ざっくりでいいので感応度を作ります。

ステップ4:キャッシュフローで“本当に稼いでいるか”を見る

会計上の利益より、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、フリーキャッシュフローを見ます。発電は減価償却が大きいので、利益が小さくてもキャッシュが出ることがあります。逆にEPCは売上が立っても回収が遅いと資金繰りが苦しくなります。

ステップ5:設備産業としてのリスク(保険・故障・災害)を確認する

再エネは「設備が止まる」と一気に収益が崩れます。保険が薄い会社、故障対応が外注任せの会社は避けるのが無難です。

ステップ6:バリュエーションは“同業比較”でズレを見つける

発電はEV/EBITDAやNAV、EPCは受注残と粗利率、O&Mは管理容量と利益率、PPA小売は顧客当たり利益と解約率など、業態に合う物差しで比べます。PERだけで判断すると、簡単に誤ります。

ステップ7:買うタイミングは「金利」「政策」「電力価格」の組み合わせで考える

発電オーナーは金利低下が追い風になりやすい。EPCは設備投資サイクルと資材価格の落ち着きが重要。小売は調達価格が落ち着き、価格転嫁が進んだ局面が狙い目です。テーマの熱量より、利益が改善する条件が揃っているかで判断します。

まとめ:再エネ株は「どこで儲けるか」を当てた人が勝つ

再生可能エネルギーは長期トレンドですが、株で勝つには「拡大する市場」と「利益を取れる会社」は別物だと理解する必要があります。

発電は契約と金利、EPCは契約と原価、O&Mは人材と稼働率、PPA小売は調達と解約率、周辺は実績。この整理ができれば、ニュースに振り回されず、銘柄選別の精度が上がります。

最後にもう一度。再エネ株は“理念”ではなく、“キャッシュフローの設計”で見る。これが最短で勝率を上げるコツです。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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