ROE改善を“本物の株価上昇”につなげる銘柄選別術

株式投資

株式投資で「儲かる確率」を上げたいなら、まず見るべきは“企業が資本をどう使って利益を作っているか”です。売上が伸びている、話題になっている、テーマに乗っている──そういう材料は短期では効きますが、結局は利益と資本政策が株価の土台になります。

その土台を一枚で要約する指標がROE(自己資本利益率)です。ROEが上がると「資本効率が改善した」と評価されやすく、株価の評価(PERやPBR)が見直されるきっかけになります。一方で、ROEは“作れてしまう”指標でもあり、見せかけの改善に騙されると痛い目を見ます。

この記事は、ROEを「上がった・下がった」で終わらせません。ROE改善の中身を分解し、どの改善が株価に効きやすいか、そして初心者でも再現できる銘柄選別プロセスを、具体例付きで徹底解説します。

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  1. ROEとは何か:数字の意味を一言で言うと
  2. ROEは「3つのエンジン」で動く:デュポン分解の実戦版
  3. ROE改善が株価に効く“メカニズム”:PBRとの関係
  4. “見せかけROE”を排除する:5つの地雷パターン
  5. 地雷1:純利益が一時的(特別利益・為替差益・資産売却)
  6. 地雷2:自己資本が減っただけ(損失計上・減損・自己株買いの副作用)
  7. 地雷3:借入増でレバレッジを上げただけ(財務の脆弱化)
  8. 地雷4:高ROEだが成長投資が痩せている(“刈り取り”だけ)
  9. 地雷5:ROEは上がったのに株価が動かない(市場が信用していない)
  10. ROE改善の“本命”パターン:株価に効きやすい4タイプ
  11. タイプA:価格決定力で利益率が上がる(インフレ局面に強い)
  12. タイプB:固定費レバレッジが効き始める(成長局面の加速)
  13. タイプC:資産を軽くして回転率を上げる(“稼ぐための資産”に集中)
  14. タイプD:資本政策が透明で、還元と投資のバランスが良い(市場の信頼を得る)
  15. 具体例で理解する:3社の“架空ケース”で見る銘柄の当たり外れ
  16. ケース1:A社(本命)— 値上げ成功+在庫圧縮でROEが上がる
  17. ケース2:B社(要注意)— 大型自社株買いでROEは上がるが、利益が伸びない
  18. ケース3:C社(危険)— 借入でレバレッジを上げてROEを作る
  19. 初心者でもできる「ROE改善銘柄」スクリーニング手順
  20. 手順1:まずは「ROEの改善トレンド」を見つける
  21. 手順2:ROEをデュポン分解し、「何が動いたか」を確認する
  22. 手順3:ROICと営業キャッシュフローで「本業の強さ」を二重チェック
  23. 手順4:資本政策の「一貫性」を見る(株主還元だけで判断しない)
  24. 手順5:最後に「株価がまだ織り込んでいないか」を確認する
  25. 「ROE改善余地」を見積もる:伸びしろの作り方
  26. 見積もり1:利益率の伸びしろ(価格転嫁・ミックス改善)
  27. 見積もり2:回転率の伸びしろ(在庫と設備稼働)
  28. 見積もり3:資本政策の伸びしろ(余剰資本と還元枠)
  29. よくある質問:ROEだけ見て買ってはいけないの?
  30. まとめ:ROE改善で狙うべきは「中身が伴う再評価」

ROEとは何か:数字の意味を一言で言うと

ROEは、ざっくり言えば「株主が出したお金(自己資本)を、会社がどれだけ効率よく利益に変えたか」です。計算式はシンプルで、

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本

です。例えば、自己資本が1,000億円で当期純利益が100億円ならROEは10%です。

投資家がROEを重視する理由は2つあります。

1つ目は、ROEが高い企業は、同じ資本でより多くの利益を生むため、成長投資・配当・自社株買いの原資を作りやすいこと。2つ目は、ROE改善が続くと市場が「この会社は資本の使い方が上手い」と認識し、株価の評価倍率(PER・PBR)が上がりやすいことです。

ただし、ROEは万能ではありません。自己資本が小さく見える(=分母が小さい)とROEは高く出ます。極端な話、借金を増やして自己資本比率を下げれば、ROEは上がります。だからこそ、ROEは分解して中身を見る必要があります。

ROEは「3つのエンジン」で動く:デュポン分解の実戦版

ROEを理解する最短ルートは、デュポン分解(DuPont Analysis)です。式はこうです。

ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

それぞれを日本語にすると、

①利益率(どれだけ儲かる体質か)
②回転率(資産をどれだけ回して売上を作るか)
③レバレッジ(自己資本に対して資産をどれだけ持つか=借金の使い方)

の3つです。ROEが改善した企業は、必ずこの3つのどれか(または複数)が動いています。つまり、ROE改善を見たら次の質問をします。

「このROE改善は、利益率の改善か? 回転率の改善か? それとも借金で作った改善か?」

株価に効きやすいのは、一般に利益率と回転率の改善です。レバレッジで作ったROE改善は、金利上昇局面や景気後退で逆回転しやすく、評価が続きません。

ROE改善が株価に効く“メカニズム”:PBRとの関係

日本株で特に重要なのは、ROEとPBR(株価純資産倍率)の関係です。ざっくり言えば、市場は「この会社のROEが高いならPBRが高くても良い」と判断しやすい。

直感的に言うと、同じ1,000円の純資産でも、ROE5%で50円しか稼げない会社と、ROE15%で150円稼ぐ会社では価値が違います。後者の方が「資本を増やすスピード」が速く、配当や成長投資の余地も大きいからです。

そのため、ROE改善が“本物”と認識されると、

①利益増(EPS増)②評価倍率の見直し(PBR・PERの上昇)

の両方が起きて、株価上昇が加速することがあります。逆に、ROE改善が見せかけだと、評価倍率は上がらず、いずれ失速します。

“見せかけROE”を排除する:5つの地雷パターン

ここからが実務(という言い方は避けますが、実際の手順として)重要です。ROE改善には地雷があり、初心者が引っかかりやすいパターンがあります。次の5つは要注意です。

地雷1:純利益が一時的(特別利益・為替差益・資産売却)

当期純利益は、通常の営業活動(本業)だけでなく、資産売却益や持分法利益、為替差益などでも増えます。例えば「遊休不動産を売って利益が出た」「政策保有株を売って利益が出た」など。これでROEが跳ねても、次期は続きません。

チェック方法:決算短信の「特別利益・特別損失」「営業利益」と「当期純利益」の乖離を見る。さらに、キャッシュフロー計算書で「固定資産売却による収入」などが大きいか確認します。

地雷2:自己資本が減っただけ(損失計上・減損・自己株買いの副作用)

ROEは分母(自己資本)が小さくなると上がります。例えば減損で純資産が減ったり、過去の損失で自己資本が薄くなったりすると、利益が少し戻っただけでROEが高く見えます。

自社株買いも自己資本を減らすのでROEを押し上げます。自社株買いは基本的に株主還元としてプラスですが、本業が弱いのに自社株買いでROEだけ作っているケースは危険です。

チェック方法:ROEだけでなく、ROIC(投下資本利益率)や営業利益率、営業キャッシュフローの増加とセットで見ます。

地雷3:借入増でレバレッジを上げただけ(財務の脆弱化)

借金を増やすと自己資本比率が下がり、財務レバレッジが上がります。これでROEは上がります。しかし金利上昇局面では支払利息が増え、景気が悪化すると資金繰りが厳しくなります。

チェック方法:有利子負債の増加率、ネットデット(有利子負債-現金等)、インタレスト・カバレッジ(営業利益÷支払利息)、流動比率を確認します。

地雷4:高ROEだが成長投資が痩せている(“刈り取り”だけ)

コストカットや人員削減で利益率が上がり、ROEが改善することがあります。短期的には株価が上がりますが、研究開発費や設備投資が削られすぎると将来の成長が枯れます。

チェック方法:売上成長率、研究開発費比率、設備投資(CAPEX)と減価償却費の関係を見ます。CAPEXが減価償却費を下回り続ける企業は、資産の更新が遅れている可能性があります。

地雷5:ROEは上がったのに株価が動かない(市場が信用していない)

ROE改善が本物なら、通常は市場の評価倍率に何らかの変化が出ます。ところが、ROEが改善してもPBRが上がらない企業があります。これは「改善が一過性」「将来が見えない」「資本政策が不透明」などで、市場が信用していないサインです。

チェック方法:PBRの変化、IR資料の資本政策、株主還元方針(配当性向・DOEなど)、中期経営計画のKPIにROE/ROICが入っているかを見る。

ROE改善の“本命”パターン:株価に効きやすい4タイプ

では、どんなROE改善が株価上昇につながりやすいのか。実戦で効くのは、次の4タイプです。

タイプA:価格決定力で利益率が上がる(インフレ局面に強い)

原材料や人件費が上がる局面で、値上げしても顧客が離れない企業は利益率が上がりやすい。これは“筋の良いROE改善”です。例えばBtoBで代替が難しい部品メーカー、ソフトウェアのサブスク、ブランド力の強い消費財などです。

見抜き方:売上総利益率(粗利率)の上昇が継続しているか、値上げ後も数量が大きく落ちていないか、主要顧客の分散度、契約更新率(開示される場合)などを確認します。

タイプB:固定費レバレッジが効き始める(成長局面の加速)

売上が一定水準を超えると、固定費が相対的に軽くなり、営業利益率が跳ねる局面があります。例えばSaaSやプラットフォーム、物流網を持つ企業など。これも持続性が高い改善になりやすい。

見抜き方:売上成長率と営業利益率の同時改善、販管費率の低下、顧客獲得コスト(CAC)とLTVの改善(開示される場合)などを見ます。

タイプC:資産を軽くして回転率を上げる(“稼ぐための資産”に集中)

総資産回転率の改善は見落とされがちですが、非常に強力です。例えば、遊休資産の売却、在庫の圧縮、売掛金回収の改善、工場の稼働率向上などで、同じ資産でより多く売れる状態になると、ROEは自然に上がります。

見抜き方:棚卸資産回転日数、売上債権回転日数、総資産回転率のトレンドを追います。さらに、売却した資産が「稼ぐ資産」か「遊休資産」かを見極めます。

タイプD:資本政策が透明で、還元と投資のバランスが良い(市場の信頼を得る)

ROEを“継続的に改善する会社”は、資本政策が説明可能です。例えば「成長投資に〇〇億、残りはDOE〇%で還元」「ROICが資本コストを上回る領域に投資」「余剰資本は自社株買いで圧縮」など、言語化できています。

見抜き方:中計でROE/ROIC/資本コスト(WACC)に言及があるか、配当方針が一貫しているか、ROE改善の要因をIRが定量で説明しているか。

具体例で理解する:3社の“架空ケース”で見る銘柄の当たり外れ

ここでは、実際の銘柄名は出さず、構造を理解するために架空の3社で考えます。数字の意味が掴めれば、どの企業にも応用できます。

ケース1:A社(本命)— 値上げ成功+在庫圧縮でROEが上がる

A社はニッチ部品メーカー。3年前はROE6%。価格交渉力が弱く、原材料高で利益率が圧迫されていました。しかし、製品の代替が難しいことを武器に値上げを通し、粗利率が3年で5pt改善。さらに在庫管理を見直し、棚卸資産回転日数が20日短縮。結果、ROEは6%→12%に上昇しました。

このケースは利益率×回転率でROEが改善しているため、金利や景気に左右されにくい。市場が評価しやすい改善です。株価では、利益増に加えてPBRの見直しが入りやすい。

ケース2:B社(要注意)— 大型自社株買いでROEは上がるが、利益が伸びない

B社は成熟産業。利益は横ばいで、成長投資のテーマも薄い。経営陣は「PBR1倍割れ対策」で大型の自社株買いを実施し、自己資本を圧縮。ROEは8%→11%に上がりました。

自社株買い自体は株主にとって悪くありません。しかし、利益成長が無いのにROEだけ上げても、評価倍率は上がりにくい。しかも景気後退で利益が落ちたらROEはすぐ崩れます。B社は「還元はするが将来像が弱い」ため、上値は限定的になりやすい。

ケース3:C社(危険)— 借入でレバレッジを上げてROEを作る

C社は不動産関連。金利が低い時期に借入を増やし、資産を積み上げて利益を増やしました。ROEは7%→13%に上昇。しかし内訳を見ると、利益率は変わらず、回転率も改善していない。財務レバレッジが上がっただけです。

金利が上がると支払利息が増え、資金繰りも悪化します。市場はこのタイプのROE改善を“評価しない”か、むしろ警戒します。短期的に上がっても、下落局面で脆い。

初心者でもできる「ROE改善銘柄」スクリーニング手順

ここからは具体的な手順です。専門ツールがなくても、証券会社のスクリーナーや決算資料だけで実行できます。

手順1:まずは「ROEの改善トレンド」を見つける

単年度のROEはノイズが多いので、最低でも3年、できれば5年で見ます。目安としては、

・3年でROEが+3pt以上改善
・かつ直近ROEが8~15%程度

あたりが現実的な“候補”になりやすいです。ROEが極端に高すぎる(20%超)場合は、特殊要因やレバレッジ過多の可能性も疑います。

手順2:ROEをデュポン分解し、「何が動いたか」を確認する

利益率(純利益率)、回転率(総資産回転率)、レバレッジ(総資産÷自己資本)を並べ、どこが改善したかを見る。これだけで当たり外れが相当減ります。

合格ラインの例:
・利益率が改善している、または高水準で維持
・回転率が改善している、または業界平均以上
・レバレッジは横ばい~小幅(過度に上げていない)

手順3:ROICと営業キャッシュフローで「本業の強さ」を二重チェック

ROEは会計上の利益でブレます。そこで、可能ならROIC、最低でも営業利益率と営業キャッシュフローを確認します。

ポイント:
・営業キャッシュフローが安定して黒字で増えているか
・営業利益率が改善しているか(本業が強いか)
・ROICが資本コストを上回っているか(開示があれば最強)

手順4:資本政策の「一貫性」を見る(株主還元だけで判断しない)

還元が強い会社が必ずしも良いわけではありません。重要なのは、還元と成長投資のバランス、そして方針がブレないことです。

例えば、

・配当方針がDOE(株主資本配当率)や累進配当などで明確
・自社株買いが“余剰資本の調整”として位置づけられている
・成長投資の領域と期待リターンが説明されている

この3点が揃う企業は、市場の信頼を得やすいです。

手順5:最後に「株価がまだ織り込んでいないか」を確認する

ROE改善が良くても、すでに株価が過剰に織り込んでいれば期待リターンは下がります。初心者がやりがちなミスは、ROE改善の“完成後”に飛びつくことです。

チェック観点:
・PBRがすでに急上昇していないか(リレーティング済み)
・PERが同業比で高すぎないか(期待先行)
・今後の改善余地(利益率、回転率、還元余地)が残っているか

「ROE改善余地」を見積もる:伸びしろの作り方

投資で勝ちやすいのは、「今のROEが高い企業」よりも、ROEが上がっていく途中の企業です。では、伸びしろはどう見積もるか。初心者向けに、実用的な見積もり方法を3つ紹介します。

見積もり1:利益率の伸びしろ(価格転嫁・ミックス改善)

利益率の改善余地は、価格転嫁と製品ミックスで生まれます。決算説明資料で「値上げの進捗」「高付加価値製品の比率」を追い、粗利率が改善トレンドなら期待できます。

見積もり2:回転率の伸びしろ(在庫と設備稼働)

在庫が重い企業は、改善だけでキャッシュが増えます。在庫圧縮は利益を直接増やさなくても、資産回転率を上げ、ROEを押し上げます。製造業なら稼働率改善も同様です。

見積もり3:資本政策の伸びしろ(余剰資本と還元枠)

現金が積み上がりすぎている企業は、還元余地があります。現預金が営業利益の何年分か、ネットキャッシュか、政策保有株の売却余地があるか。これらがROE改善のトリガーになり得ます。

よくある質問:ROEだけ見て買ってはいけないの?

結論から言うと、ROE“だけ”は危険です。ただし、ROEは「入口のフィルター」としては非常に優秀です。ROE改善を起点に、利益率・回転率・財務・資本政策・将来投資の整合性を見れば、初心者でも“勝ちやすい候補”を絞れます。

逆に、ROEを見ないと、資本効率の悪い企業に長く付き合ってしまいがちです。日本株では特に、資本効率改善がテーマとして継続しているため、ROE改善の読み解きは武器になります。

まとめ:ROE改善で狙うべきは「中身が伴う再評価」

ROE改善は、株価上昇の材料として強力です。ただし、見せかけも混ざります。大事なのは、

・利益率と回転率が改善しているか
・レバレッジ頼みではないか
・本業のキャッシュが増えているか
・資本政策が透明で一貫しているか
・株価がまだ織り込んでいないか

この5点をセットで見ることです。

最後に、今日からできる最短アクションを一つだけ挙げます。あなたが普段見ている銘柄を3つ選び、過去3年のROEと営業利益率を並べてください。そして「何が変わったのか」を言語化してみてください。これができるようになると、ニュースやSNSよりも、決算が味方になります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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