- なぜ「ストップ安の翌日(当日)の寄り付き」が狙われるのか
- まず押さえるべき前提:ストップ安は“安全な底”ではない
- 「悪材料を飲み込んだ」とは何か:3つの具体条件
- 寄り付き前にやるべき「材料の切り分け」:勝率を左右する30分
- 東京市場特有の「寄り付きのクセ」:特別気配と板寄せを理解する
- 実戦で使う「寄り付き初動の判定フレーム」:5項目スコアリング
- 具体例1:下方修正でストップ安→翌朝の寄り付きで買いが吸収されるケース
- 具体例2:粉飾疑惑でストップ安→寄り付きは反発するが戻り売りで潰れるケース
- エントリーの鉄則:寄った瞬間に買わない。3つの“待ち”を徹底する
- 利確と損切り:ストップ安リバは「薄利・高速」が基本
- リスク管理:初心者がやるべきは「サイズを小さく、回数を絞る」
- 「買ってはいけない寄り付き」の見分け方:危険サイン7つ
- 上級者の視点:リバ狙いは「需給の相手」を読むゲーム
- 検証のやり方:自分の市場で“再現性”を作る
- まとめ:ストップ安寄り付きは“底当て”ではなく“需給吸収の確認”
なぜ「ストップ安の翌日(当日)の寄り付き」が狙われるのか
ストップ安は、単なる「安い価格」ではなく、需給と心理が極端に偏った局面です。悪材料が出た直後は、情報の消化が追いつかず、投げ売りが連鎖し、板が薄くなり、買い手が消えます。その結果、価格は下限値幅に張り付く(張り付かされる)形になりやすい。ここで重要なのは、ストップ安という現象が「売りたい人が多い」ことを示す一方で、売りたい人が一巡した瞬間に、反対側(買い)の値動きが最も鋭くなる土台にもなる点です。
寄り付きは、売り注文・買い注文が一度にぶつかる「値決め(板寄せ)」の瞬間です。ここで需給の歪みが一気に解消されると、数分で数%〜二桁%のリバウンドが発生することがあります。つまり、ストップ安銘柄の寄り付きは「悪材料の織り込みが進んだか」「まだ投げが残っているか」を最短で判定できる検査場です。
まず押さえるべき前提:ストップ安は“安全な底”ではない
初心者が最初に誤解しやすいのが、「ストップ安=底=安いから買い」という短絡です。ストップ安は下限に到達しただけで、価値評価の底とは無関係です。翌日にさらに下限が切り下がり、連続ストップ安になることも珍しくありません。特に以下のケースは、寄り付きリバウンド狙いに不向きです。
①粉飾・不正会計・上場廃止リスク、②資金繰り悪化(債務超過・継続企業の疑義)、③大型増資や希薄化が確定的、④主要取引停止や行政処分、⑤海外子会社や訴訟など影響範囲が不透明、⑥信用取引規制の強化(増担・日々公表)で需給がさらに悪化、などです。
寄り付きリバウンドは「一瞬の需給の偏り」を取りに行く戦術です。材料の本質が致命的で、数日〜数週間で評価が下方修正され続ける銘柄は、反発しても戻り売りの供給が尽きにくく、勝ち筋が薄くなります。
「悪材料を飲み込んだ」とは何か:3つの具体条件
“織り込み”を感覚で語ると事故ります。寄り付きで「悪材料を飲み込んだ」と判定するには、少なくとも次の3条件をセットで見ます。
条件A:売り圧のピークアウト(売りたい人が一巡)。具体的には、前日ストップ安で張り付いた後、引け間際に買い戻しが少し入る、または張り付き時間が短い(途中で何度も剥がれる)など、売りの独占が緩む兆候があること。
条件B:寄り前の需給バランス改善。気配値の切り上がり、売り気配の数量の減少、買い気配の段階的な増加。特に「買い気配が増える」のではなく「売り気配が減る」ほうが信頼度が高いことが多いです。投げが減るからです。
条件C:寄り付き直後の出来高が“吸収”の形。寄った瞬間に出来高が跳ねた後、価格が崩れない(下ヒゲ、あるいは同値圏での滞留)。出来高が出たのに安値更新しないのは、売りを誰かが吸っているサインになりえます。
寄り付き前にやるべき「材料の切り分け」:勝率を左右する30分
寄り付きリバウンドは板と出来高だけでなく、材料の種類で期待値が変わります。寄り前に最低限、次の切り分けをします。
(1)ショックだが一過性の材料:下方修正、減配、ガイダンス未達、特損計上、事故・トラブルなど。翌日の情報追加で悪化しにくい場合は、短期の需給反発が起きやすい。
(2)構造的に悪い材料:不正、資金繰り、主要顧客喪失、規制強化、ビジネスモデル毀損など。反発しても「逃げ場」になりやすく、寄り付きから上に行っても戻り売りが強い。
(3)情報が未確定で不透明:噂、調査中、訴訟の結末不明など。不透明は最悪です。市場は不確実性に最も嫌気を示し、追加ニュースで二段安しやすい。
初心者は(1)だけを狙うのが現実的です。(2)(3)は、板が良さそうに見えても“たまたま”の反発で終わる確率が上がります。
東京市場特有の「寄り付きのクセ」:特別気配と板寄せを理解する
日本株の寄り付きは、連続約定ではなく、板寄せで一発で決まります。さらに、需給が極端に偏ると「特別気配」が出て、寄り付きが遅れます。ストップ安銘柄はこの特別気配が出やすく、寄り付きが9:00ぴったりにならないことが頻発します。
この遅延はチャンスでもあり罠でもあります。チャンスは、気配の変化を観察する時間が増える点。罠は、寄りまでの間に“買いが増えているように見せて”急に引っ込める動きが混ざる点です。寄り前の板は、必ずしも確定注文だけで構成されません。直前での注文変更や取り消しが多い銘柄ほど、寄り付き直後のボラが荒くなります。
実戦で使う「寄り付き初動の判定フレーム」:5項目スコアリング
ここからは、寄り付きリバウンドを“手順化”します。感情で飛びつかないために、寄り付き前後を5項目で点検し、合計点が一定以上ならエントリー、未満なら見送る、という運用が有効です。
①気配値の位置(0〜2点):ストップ安付近に張り付いたまま=0点。下限から明確に切り上がり、さらに上で落ち着く=2点。中間=1点。
②売り気配数量の減少(0〜2点):寄りが近づくほど売りが増える=0点。減る=2点。横ばい=1点。
③寄り直後の出来高と値動き(0〜2点):寄った瞬間に安値更新=0点。出来高が出ているのに安値更新しない=2点。やや不安定=1点。
④板の厚みと歩み値(0〜2点):下に薄く、上に厚い=0点(戻り売りが重い)。下が厚く上が軽い=2点(下値支持が強い)。同程度=1点。
⑤指数・セクター地合い(0〜2点):全面安でリスクオフ=0点。中立=1点。相場全体が強い=2点。
合計8点以上で“参加候補”、6〜7点は小さく試す、5点以下は触らない。これだけでも、無駄な突撃がかなり減ります。
具体例1:下方修正でストップ安→翌朝の寄り付きで買いが吸収されるケース
仮にA社が決算で下方修正を出し、前日ストップ安。PTSでは安値を更新したものの、引けにかけて張り付きが一度剥がれ、出来高が増えて引けたとします。翌朝、売り気配は多いが、特別気配の更新で売り数量が段階的に減り、気配値が下限よりも上で止まり始めた。ここで重要なのは「寄る前に売りが減る」ことです。投げが止まっている可能性が高まります。
寄り付き直後、最初の1〜3分で大きな出来高が出るが、安値更新しない。むしろ寄り値を割ってもすぐ戻る。歩み値を見ると、同じ価格帯で大口の成行買いが断続的に入っている。こういう時は、買い側が売りを吸って“在庫”にしている可能性があります。
エントリーは「寄り値を回復して定着」または「VWAPを上抜けて初押し」など、形を待つのが安全です。寄った瞬間の飛びつきは、反発が弱いときに即死します。
具体例2:粉飾疑惑でストップ安→寄り付きは反発するが戻り売りで潰れるケース
同じストップ安でも、粉飾や不正疑惑は別物です。B社が不正疑惑でストップ安になり、翌朝は気配が切り上がった。ここで初心者が勘違いしやすいのは、「気配が上=買いが強い」と判断することです。実際は、空売り勢の買い戻しや短期資金のリバ狙いで一瞬だけ上がることがあります。
寄った直後の出来高が大きいのに、上値が全く伸びない。上に厚い板が何段も並び、歩み値は小口が散発で、まとまった買いが見えない。こういう時は“逃げ場”になっている可能性が高い。エントリーするなら、むしろ「寄り付きから数分後の失速」を確認して見送るのが正解です。短期で逆張りしても、追加ニュース一発で二段安を食らいます。
エントリーの鉄則:寄った瞬間に買わない。3つの“待ち”を徹底する
寄り付きリバウンドは速いですが、寄った瞬間は情報が最も少ない。次の3つを待つだけで、勝率が上がります。
待ち①:最初の5分足が確定するまで。1分足はノイズが多い。5分足で下ヒゲや陽線が出ると、吸収の確度が上がります。
待ち②:寄り値回復 or VWAP回復。寄り値を一度割っても戻せるか。VWAPを超えて維持できるか。短期資金はこのラインを基準に動きます。
待ち③:歩み値の“塊”の方向。大きな約定が上方向に積み上がるか、それとも下方向に叩かれるか。塊が買い側に偏るなら、追随の根拠になります。
利確と損切り:ストップ安リバは「薄利・高速」が基本
この手法の最大の失敗は、「リバウンドだから大きく取れる」と欲張ることです。実際は、反発は鋭いが短命になりやすく、上は戻り売りの供給が厚い。だから設計思想は“短期で抜く”です。
利確の考え方:前日終値、当日VWAP、直近のギャップ窓上限、5分足の戻り高値、これらが自然な利確ポイントになります。全利確ではなく、半分利確→残りはトレーリング(直近安値割れで手仕舞い)も有効です。
損切りの考え方:寄り値割れ、直近の押し安値割れ、VWAP再割れ、いずれかを明確に決めます。特に寄り付き直後は値が飛ぶので、損切りは“価格”だけでなく“時間”も使います。たとえば「エントリー後3分で伸びないなら撤退」という時間損切りは、ストップ安リバでは非常に効きます。
リスク管理:初心者がやるべきは「サイズを小さく、回数を絞る」
ストップ安銘柄はボラが大きく、スプレッドも広がりやすい。初心者がフルサイズで挑むと、1回のミスで資金が削れます。ここは割り切りが必要です。
①通常の半分以下のロット、②同時保有は1銘柄まで、③エントリーは最大2回(やり直し禁止)、④指値中心で成行を乱発しない、⑤板が薄い銘柄は回避。この5つを守るだけで生存確率が上がります。
「買ってはいけない寄り付き」の見分け方:危険サイン7つ
寄り付きリバウンドが機能しない典型パターンを具体化します。以下が2つ以上当てはまるなら、見送るのが合理的です。
(1)寄り前に売り気配数量が増え続ける(投げが増える)
(2)寄り直後に安値更新し続け、反発が弱い
(3)上の板が極端に厚く、買いが一段ごとに潰される
(4)歩み値の大きな約定が“下方向”に連続する
(5)指数・先物が急落しており、地合いが悪い
(6)追加悪材料の可能性が高い(記者会見、調査結果待ちなど)
(7)前日から信用規制が強化され、需給がさらに悪化している
上級者の視点:リバ狙いは「需給の相手」を読むゲーム
ストップ安リバは、チャートの形ではなく「誰が売って誰が買っているか」を読むゲームです。売り手が個人の投げ・追証なら、尽きる瞬間がある。売り手が機関の処分・インデックス除外・ファンドの解約なら、売りが長引く。買い手が短期のリバ狙いなら、上で即逃げる。買い手が本尊(長期の買い集め)なら、下で吸収して押し目も買う。板と歩み値は、その“役者”の痕跡が残る場所です。
検証のやり方:自分の市場で“再現性”を作る
この手法は銘柄・地合い・材料で期待値が変わるため、検証なしでやるとギャンブルになります。検証は難しくありません。過去のストップ安銘柄を20〜50件拾い、翌日の寄り付きから30分の値動きを観察し、どの条件で反発し、どの条件で沈んだかをメモします。
具体的には、前日の張り付き時間、翌日の寄り時刻(特別気配の有無)、寄り直後5分の出来高、VWAP回復の有無、最初の押し目の深さ、反発が続いた時間、最大上昇率、最大下落率。この8点を記録すると、自分の得意パターンが見えてきます。初心者は「勝てる型」を先に限定し、それ以外は捨てるほうが結果が安定します。
まとめ:ストップ安寄り付きは“底当て”ではなく“需給吸収の確認”
ストップ安銘柄の寄り付きで狙うべきは、安いから買うことではありません。売りが一巡し、買いが売りを吸収し始めたという“変化”を取ります。そのために、材料の切り分け、気配と売り数量の推移、寄り直後の出来高と安値更新の有無、板の厚みと歩み値の塊、そして地合いの5点をセットで判定します。
最後に強調します。これは最短で勝ちやすい反面、最短で大損しやすい戦術でもあります。だからこそ、サイズを小さく、待ちを徹底し、損切りを機械的に実行してください。ストップ安の“熱”に飲まれず、手順で殴る。これが、このテーマで最も再現性の高い勝ち方です。


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