- 結論:雇用統計は「翌朝の日本株」を決めるのではなく、寄り付き前の需給と価格帯を“再配置”する
- まず押さえる前提:日本株の寄り付きは“先物→現物”の順で決まる
- 雇用統計で動く3つのチャンネル:金利・ドル円・米株(この順に見れば迷いが減る)
- 観測の中心は日経先物:ナイトの「3点セット」で翌朝の寄り付き像が決まる
- 翌朝の寄り付きは3パターンに落とせる:初心者は“予想”ではなく“分類”をする
- チェックリスト:翌朝の寄り付き予測を「数字」に落とす5項目
- 翌朝の実戦手順:寄り付き前から30分までの「やること」を固定する
- オリジナリティ:雇用統計は「指数」より「寄与度の高い数社」で“寄りの質”が変わる
- 具体的なシナリオ例:数字は仮定、手順は再現できる形で
- 初心者がやりがちな失敗と、避けるためのルール
- 検証のやり方:雇用統計翌朝だけを切り出して“自分の型”を作る
- まとめ:雇用統計は“翌朝の地図”を作るイベント。地図ができれば初心者でも戦える
結論:雇用統計は「翌朝の日本株」を決めるのではなく、寄り付き前の需給と価格帯を“再配置”する
米国の雇用統計(Employment Situation)は、発表直後に米株・米金利・ドル円が同時に動きやすく、結果として日経平均先物(ナイト・CME・SGXなど)が大きく変動します。ただし、重要なのは「当たった/外れた」のニュース解釈ではありません。初心者が再現性を作るなら、雇用統計を翌朝の寄り付きの“候補シナリオ”を3本に絞るイベントとして扱い、先物の価格帯・出来高・時間帯ごとの反応から、寄り付き直後の“起こりやすい形”を事前に決めておくのが最短です。
この記事では、雇用統計の結果そのものよりも「発表直後〜ナイト終盤〜寄り前」の値動きを、翌朝の現物トレード(寄り付き〜30分)に落とし込む具体的手順を、実務ではなく運用できるレベルまで分解して解説します。
まず押さえる前提:日本株の寄り付きは“先物→現物”の順で決まる
初心者がつまずくのは「ニュースで株が上がる/下がる」と考えてしまう点です。実際は、寄り付きの価格形成は、次の順番で伝播します。
① 米指標(雇用統計)→ ② 米金利・ドル円・米株指数→ ③ 日経先物(ナイト)→ ④ 朝の気配(板)→ ⑤ 寄り付き価格
つまり、翌朝の寄り付き予測の主役は日経先物のナイトの“終値と高安、そして戻り方”です。雇用統計は引き金に過ぎず、同じ「良い数字」でも、市場の織り込みやポジション状況で反応が逆になることがあります。だからこそ、ニュースの解釈を頑張るより、先物の反応を観測して機械的にシナリオ化したほうが勝ちやすい、という話になります。
雇用統計で動く3つのチャンネル:金利・ドル円・米株(この順に見れば迷いが減る)
雇用統計後の値動きは、概ね次の3つの“伝送路”で日本株に効きます。初心者は全部追うと情報過多で崩れるので、見る順番を固定してください。
1)米金利(米国債利回り):最初に動き、あとから株が追随しやすい
雇用統計の数字は「インフレ圧力」「利下げ/利上げの見通し」を通じて米金利に反映されやすいです。米金利が上がると一般にグロース(高PER)に逆風、下がると追い風になりやすい。日本でもグロース指数や半導体関連に波及しやすいので、翌朝のセクターの“濃淡”を決める材料になります。
2)ドル円:日本株の寄り付きに直結しやすい
ドル円は輸出主力(自動車、電機)に対して分かりやすい感応度があります。雇用統計で米金利が動くと、ドル円も一緒に振れやすい。初心者の実務的な見方はシンプルで、「ドル円が発表前の水準より明確に円安方向で維持されているか」だけをまず見ます。瞬間的なヒゲより、ナイト終盤(日本時間の深夜〜早朝)での“定着”が重要です。
3)米株指数(S&P500 / NASDAQ):先物の方向性の“最終確認”
米株は雇用統計だけでなく同日に他の材料(要人発言、企業決算、地政学)も乗るのでノイズが増えます。初心者は最後に見て、日経先物と方向が揃っているかの確認に使うとよいです。たとえば「米株上なのに日経先物だけ弱い」なら、日本固有の材料(円高、指数イベント、特定大型株の悪材料)を疑う、という具合です。
観測の中心は日経先物:ナイトの「3点セット」で翌朝の寄り付き像が決まる
雇用統計後の翌朝を読むなら、日経先物のナイト(時間外)で次の3点を必ずメモします。これだけで寄りの精度が上がります。
(A)ナイト終値(または朝方の価格):現物寄り付きの“基準点”
(B)ナイト高値・安値:寄り付き後に狙われる“反転点候補”
(C)高値・安値からの戻り方:寄り後の「窓埋め」「押し目」「戻り売り」の確率を決める
なぜ「戻り方」が重要なのか
例えば雇用統計直後に先物が急騰しても、高値を付けた後に半値以上押してナイトを終えるなら、「高値の買いは掴まっている」状態です。翌朝は寄りから上がっても売りが出やすく、窓埋め(ギャップを縮める)が起きやすい。一方、急騰後に押さず高値圏で張り付くなら、翌朝は寄り直後から買いが続きやすい。これはニュースの良し悪しより、ポジションの偏りを反映した価格行動です。
翌朝の寄り付きは3パターンに落とせる:初心者は“予想”ではなく“分類”をする
雇用統計翌朝の日本株(現物)は、寄り付きの形が大きく3つに分類できます。やるべきことは「どれが来るか当てる」ではなく、3つそれぞれの売買手順を先に決めることです。
パターン1:ギャップアップ(上窓)で始まり、寄り後に一度押す(窓埋め寄り)
典型例は「ナイトで急騰→高値から押して引け」または「朝方にドル円が巻き戻し(円高方向)」が入るケースです。寄り直後の買いが一巡すると、前日終値やナイトの押し目ラインまで押しやすい。
売買計画の具体例(指数ETF/大型株)
・寄り付き直後は飛び乗らない。最初の5〜10分で高値を更新できないなら、まず押しを待つ。
・押し目候補は「前日終値」「ナイト終値」「ナイトの上昇の38.2%〜50%押し」など、事前に線を2本だけ引く。
・押して反発するなら、出来高が減ってから再増加するポイント(5分足で出来高が戻る)を確認してエントリーする。反発の勢いが弱いなら見送る。
この形は“上がるニュース”でもよく起きます。理由はシンプルで、寄りで利確したい勢力が必ずいるからです。初心者は「上窓=買い」と反射しがちですが、寄り付きは最もスプレッドが広がりやすく、逆行すると心理が崩れます。押しを待つだけで無駄な損失が激減します。
パターン2:ギャップアップ(上窓)だが、寄り後に押さず“高値更新”が続く(トレンド型)
「ナイト高値圏で張り付き」「ドル円も円安で維持」「米株も強い」の三拍子が揃うと、寄り付き後は押しが浅く、押し目待ちが置いていかれる形になります。
売買計画の具体例
・寄り付き後に一度だけ押した“浅い押し”(例:前日終値から大きく上で止まる)を狙う。押しが深いならパターン1に切り替える。
・押し目の判断は「1分足VWAP」か「5分足VWAP」のどちらか一つに固定する。上で推移しているなら順張り優位、下に潜るならいったん撤退。
・利確は“目標値”より、VWAP割れ+出来高減速のような撤退ルールで行う。雇用統計翌日はボラが高く、欲張ると逆回転が速い。
パターン3:ギャップダウン(下窓)で始まり、寄り後に戻す(自律反発型)
雇用統計が弱く市場がリスクオフ、または金利急騰でグロースが崩れた場合に起きやすいです。ただし、下窓でも寄り後に戻すケースは多い。理由は、ナイトで売り込まれた分、寄りでショートの買い戻しが入りやすいからです。
売買計画の具体例
・寄り直後の下落が加速している間は触らない。最初の5〜15分で安値更新の勢いが止まるかを見る。
・戻りの目安は「ナイト終値」「前日安値」「寄り直後の急落の半値戻し」。ここで売りが強いなら戻り売り優位に切り替える。
・自律反発を狙うなら、“売りが尽きたサイン”が必要。具体的には、下げているのに出来高が減る/歩み値の成行売りが細る/板の厚みが回復する、など。
チェックリスト:翌朝の寄り付き予測を「数字」に落とす5項目
初心者でも再現できるよう、雇用統計発表後に次の5項目をメモしてください。これを毎回残すだけで、経験が資産になります。
① 先物のギャップ量(ナイト終値−前日現物終値)
大きいほど寄り直後の利確・逆行が増え、窓埋めが起きやすい。小さいならトレンド継続が出やすい。ギャップ量が大きい日は“寄りで決め打ちしない”のが基本戦略になります。
② ナイト高安のどちら側で終えたか
高値寄りで終えていれば強気優位、安値寄りで終えていれば弱気優位。ただし雇用統計直後のヒゲに惑わされないこと。重要なのは終盤の“定着”です。
③ ドル円の発表前比(方向と維持)
輸出株の寄り付きに直結します。特に日経は指数寄与の大きい輸出主力が多く、ドル円が逆回転すると先物も引っ張られやすい。発表直後の一瞬ではなく、朝方までの方向を見ます。
④ 米金利の方向(特に2年・10年の変化)
金利が上がって株も上がる日がある一方、金利上昇でグロースが崩れる日もある。日本株の寄りは、金利とドル円の組み合わせで“濃淡”が決まりやすいので、必ずセットで確認します。
⑤ 米株指数と日経先物の方向一致
一致していれば素直にシナリオ化できる。ズレていれば、日本固有材料や指数イベントの可能性を疑い、寄り直後は控えめに入る。
翌朝の実戦手順:寄り付き前から30分までの「やること」を固定する
勝てる人は、相場がどう動いても“手順”が一定です。雇用統計翌朝にやることを、時間で区切って固定します。
(1)寄り付き前:価格帯を3本の線で縛る
チャートに線を引きすぎると迷います。最低限は次の3本です。
・前日終値
・ナイト終値(または朝方の先物価格)
・ナイト高値 or ナイト安値(当日の方向に近いほう)
これで「寄りがどの帯域で始まり、どこまで動けば“例外”なのか」が決まります。
(2)寄り付き直後:最初の5分は“判断”だけに使う
雇用統計翌日は特にスプレッドが広がり、約定も荒れます。最初の5分で確認するのは次の2点だけです。
・高値(安値)更新が続くか、止まるか
・出来高が増え続けるか、一巡するか
この2点で、先ほどの3パターンのどれに近いかがほぼ決まります。
(3)10〜30分:VWAPを“唯一の基準”にする
初心者が負ける最大要因は、基準が増えることです。雇用統計翌日は情報が多すぎるので、価格の基準はVWAPに寄せるのが有効です。
・VWAPの上で推移:買い優位、押し目買い候補
・VWAPの下で推移:売り優位、戻り売り候補
・VWAPを跨いで往復:方向感なし、無理に触らない
この“3つの状態”に分類し、状態が変わったら撤退する。これが初心者でも損失を小さくしやすい運用です。
オリジナリティ:雇用統計は「指数」より「寄与度の高い数社」で“寄りの質”が変わる
ここからが一段踏み込んだ話です。日経平均は少数の大型株の寄与度が高く、先物が強くても、寄与度の高い銘柄が寄りで売られると、指数の動きが歪みます。つまり、雇用統計翌朝は「指数だけ見ていると違和感が出る」ことがある。
初心者ができる対策は簡単で、寄与度の高い代表銘柄(例:指数寄与の大きい大型株群)を3銘柄だけチェックして、「指数の強さが本物か」を確認します。具体的には、
・先物が上なのに、代表3銘柄が寄りから弱い → 指数は上でも個別は難しい可能性が高い(寄り天警戒)
・先物が上で、代表3銘柄も素直に強い → トレンド型(パターン2)になりやすい
この観点を入れると、「指数が強いのに持ち株が伸びない」というストレスが減ります。
具体的なシナリオ例:数字は仮定、手順は再現できる形で
ここでは例として、前日の日経平均終値が39,000、雇用統計後のナイト終値が39,600(+600)、ナイト高値39,800、安値39,300と仮定します。
ケースA:ナイト終盤で39,600に“定着”し、ドル円も円安維持
この場合、翌朝はパターン2(トレンド型)寄り。寄り付きで39,650〜39,700近辺で始まったとして、最初の押しが39,550付近で止まり、VWAPの上を維持するなら押し目買いの検討余地が出ます。逆に、寄り直後に39,550を割って戻りが弱いなら、パターン1(窓埋め寄り)に切り替え、ナイト終値39,600への回帰を待つ(あるいは触らない)という具合です。
ケースB:雇用統計直後に39,800まで急騰したが、朝方に39,400まで押して終了
この場合、寄りは上窓でも“捕まった買い”が多い可能性が高く、パターン1(窓埋め寄り)を優先します。寄り直後の高値更新が止まれば、前日終値39,000方向への窓埋めというより、まずは39,400〜39,600の帯域での押しを想定し、反発の質(出来高の戻り、VWAP回復)を見てから入ります。
初心者がやりがちな失敗と、避けるためのルール
失敗1:雇用統計の結果(良い/悪い)で即断する
市場はすでに織り込んでいることが多く、「良い数字でも下がる」「悪い数字でも上がる」が普通に起きます。対策は、結果ではなく先物の終盤の価格帯だけで判断することです。
失敗2:寄り付きで成行を入れてしまう
雇用統計翌日は特に滑りやすく、想定より不利な価格で約定しやすい。対策は、寄り直後は“観測だけ”にして、押し目や戻りが明確になってから入ることです。
失敗3:損切りが遅れ、ボラに飲まれる
雇用統計翌日はボラが高いので、含み損が増えるスピードも速い。対策は、損切りを“金額”ではなく状態変化(VWAP割れ、直近安値割れ、出来高の急減など)で決めることです。
検証のやり方:雇用統計翌朝だけを切り出して“自分の型”を作る
再現性を作るなら、雇用統計の翌朝(寄り〜30分)だけを対象に、簡単な記録を残します。難しい統計は不要です。
・ナイトギャップ量
・ナイト終値が高安どちら寄りか
・ドル円の発表前比(円安/円高)
・翌朝の寄り付きパターン(1/2/3)
・自分が取った行動(入った/見送った)と結果
これを10回分集めるだけで、自分が得意なパターン(例えば窓埋め寄りだけ)に集中でき、無駄なトレードが減ります。
まとめ:雇用統計は“翌朝の地図”を作るイベント。地図ができれば初心者でも戦える
雇用統計翌朝の日本株は、情報量と値動きが大きく、初心者ほど振り回されます。しかし、見方を「ニュース」から「先物の価格帯と戻り方」に切り替え、寄り付きの形を3パターンに分類して手順化すれば、無理なく戦略になります。
最重要ポイントは3つです。
・雇用統計そのものではなく、日経先物ナイトの終盤の価格帯を基準にする
・寄り付きは3パターンに分類し、それぞれの手順を先に決める
・判断基準を増やさず、VWAPなど1つに固定して撤退ルールを守る
この型ができると、雇用統計だけでなくCPIやFOMCなど他のイベントにも横展開できます。まずは次の雇用統計で、5項目のメモから始めてください。


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