PER・PBR・ROE・EPSを束ねて見抜く「質の良い割安株」スクリーニング完全ガイド

株式投資

「安いだけ」の株では長く勝ち続けられません。この記事では、PER・PBR・ROE・EPS成長を統合した独自の指標「QVE(Quality Value Efficiency)スコア」を設計し、誰でもExcel/スプレッドシートで再現できる具体的なスクリーニング手順を詳しく解説します。シンプルな数式・明確なルール・小さい資金でも運用しやすい再現性に重点を置きます。

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単一指標では勝ちにくい理由

PERが低い銘柄は一見割安に見えますが、業績悪化で利益が縮小している、資本効率が低いといった構造的な問題を抱えていることが少なくありません。PBRだけを見ても同様で、低PBR=復活期待が当たるケースもあれば、資産が活かせないまま価値が毀損していくケースもあります。単一の指標に依存すると、バリュー・トラップ(割安のワナ)に引っかかりやすいのです。

そこで、価値(Value)×質(Quality)×収益の持続性(Efficiency)を同時に見る発想に切り替えます。具体的には、PERの低さ/PBRの低さ/ROEの高さ/EPS成長の安定性を、同一スケールに正規化したうえで合成します。

QVEスコアの設計思想

QVEは以下の4要素で構成します。いずれも銘柄間で比較できるようスコア化します。

  1. Value1:PERの逆数(= E/P)。利益1円あたり株価がどれだけ安いか。低PERほど高スコア。
  2. Value2:PBRの逆数(= B/P)。純資産1円あたり株価がどれだけ安いか。低PBRほど高スコア。
  3. Quality:ROE。自己資本をどれだけ効率よく増やせているか。高ROEほど高スコア。
  4. Efficiency:EPS成長の持続性。過去3〜5年のEPS成長率の中央値や回帰トレンド、標準偏差の小ささで評価。

4要素の分位(percentile)またはZスコアで正規化し、重み付けします。基本の推奨初期重みは、PER 30%、PBR 20%、ROE 30%、EPS成長20%です。景気局面や投資家の嗜好に応じて微調整してください。

スコア計算:Excel/スプレッドシート実装

列構成の例(A行はヘッダー):

  • A: Ticker(証券コード)
  • B: 株価
  • C: EPS(直近12ヶ月)
  • D: BPS(1株あたり純資産)
  • E: ROE(%)
  • F:J 過去5年のEPS(年次)

補助列を用意して以下を計算します。

  1. E/P(=1/PER)=IFERROR(C2/B2,0)
  2. B/P(=1/PBR)=IFERROR(D2/B2,0)
  3. EPS成長率(年次)=(F3-F2)/ABS(F2) を横に。中央値は =MEDIAN(G2:K2)
  4. EPS成長の安定性:標準偏差 =STDEV.P(G2:K2)。安定性スコアは =IFERROR(MEDIAN(G2:K2)/(1+STDEV.P(G2:K2)),0)

次に分位スコアを作成します。例としてE/P(列L)の分位は、全銘柄範囲$L$2:$L$Nに対して:

=PERCENTRANK.INC($L$2:$L$N, L2)

同様にB/P(列M)、ROE(列E)、安定性スコア(列N)も分位化し、0〜1のスケールにします。最後に合成:

=0.30*分位(E/P) + 0.20*分位(B/P) + 0.30*分位(ROE) + 0.20*分位(安定性)

この合計をQVEと定義し、上位20〜40銘柄を候補にします。

売買ルール(シンプル&再現性重視)

ユニバースとリバランス

売買対象は出来高・時価総額が一定以上の銘柄に限定します(例:上場1年超・平均売買代金1億円以上など)。月1回、毎月第1営業日にQVEを再計算し、上位銘柄を等金額で組み入れます。

除外・入替ルール

  • QVEが上位閾値(例:全体上位25%)から外れたら次回リバランスで売却。
  • 決算で赤字転落し、E/Pがゼロ(定義不可)になった銘柄は即除外。
  • コーポレートアクション(上場廃止・吸収合併)時は機械的に売却。

リスク管理

  • 1銘柄の上限比率:5%(等金額組入れで自然に分散)。
  • 想定ドローダウンに備え、ポートフォリオの2〜3割は現金または指数ETFでクッション。
  • 急落時は「落ちるナイフ」を拾わない:終値が20日移動平均を10%以上下回るなどの簡易フィルターを追加可能。

ケーススタディ(架空データ)

仮にA社・B社・C社の3銘柄があり、以下のとおりとします。

銘柄 PER PBR ROE EPS成長(中央値)
A社 8倍 0.9倍 14% +9%
B社 12倍 0.7倍 8% +3%
C社 6倍 1.4倍 18% +5%

単純にPERだけならC社が最有力ですが、PBRの高さは資産面の割安感が薄いことを示します。QVEはE/P・B/P・ROE・成長の安定性を合成するため、A社>C社>B社の順になる可能性があります。A社はPBRも1倍割れで、ROEとEPS成長が「ほどよく」良い――つまり質と価格のバランスが優れています。

ありがちな落とし穴と処方箋

  • 景気循環の罠:資源・半導体などサイクル色が強い業種は、ピーク付近でPERが低く見えることがあります。直近3〜5年だけでなく、10年平均の利益推移もざっくり把握しましょう。
  • 会計の歪み:特損・減損の一時要因でEPSが荒れやすい企業は、営業CFFCFの安定性も補助指標に。
  • 負債過多:低PBRでも有利子負債が重いと金利上昇局面で収益が圧迫されます。Net D/E利払い負担をチェック。
  • ガバナンス:ROEが高くても自社株買い・配当政策の一過性で吊り上がっている場合があります。継続性を重視。

ポートフォリオ構築の工夫

等金額で十分ですが、リスクを平準化したい場合は逆ボラ重み(ボラティリティが低い銘柄の比率を高める)を使います。Excelなら、各銘柄の過去60日の日次リターン標準偏差をσとし、重み = (1/σ) / Σ(1/σ)で計算できます。

運用フローとチェックリスト

  1. ユニバース確定(流動性・上場年数フィルター)。
  2. データ取得(株価・EPS・BPS・ROE・過去EPS)。
  3. 補助指標計算(E/P、B/P、成長の安定性)。
  4. 分位化→QVE算出→上位抽出。
  5. 等金額または逆ボラ重みで組入れ。
  6. 月次で入替・例外ルールの適用。
  7. パフォーマンスとドローダウンをモニタリング。

よくある拡張(上級オプション)

  • 配当利回りの追加Qualityの一部として、過去3年平均配当利回りや増配履歴を加点。
  • 営業CF・FCFの安定性:EPSよりキャッシュフローで見ると、会計上のブレに強くなります。
  • セクター・ニュートラル:業種偏りを回避するため、各セクター内でQVE順位を取り、均等配分。

モニタリング設計(Excel例)

日次の損益・評価額・含み損益率・現金比率を管理するトラッカーを作ります。パフォーマンス曲線(累積リターン)は、基準日を1.0として累積=前日累積×(1+日次リターン)で更新します。指数ベンチマーク(TOPIXやS&P500)と並走させ、超過リターンの有無を可視化します。

まとめ

PERやPBRを「単体」で見ると見落としが生じます。価値×質×持続性を一つの指標(QVE)に束ねることで、バリューの罠を避けつつ、無理のない分散が可能になります。月次の定時リバランスと機械的なルール運用に徹し、感情を排して淡々と継続することが、再現性のある成果につながります。

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