デイトレで一番やりやすいのは「みんなが見ている基準線」を軸に、優勢側にだけ乗ることです。5分足のVWAPは、その基準線として実務的に強い。理由は単純で、VWAPは“その日の約定が積み上がった平均コスト”なので、強い参加者ほどここを意識してポジションの平均単価を管理しやすいからです。
ただし、VWAPをただ線として眺めても勝率は上がりません。重要なのは「VWAPの周りで、どちらが主導権を握っているか」を判定し、優勢側にのみ同調することです。本稿では、5分足でのVWAP攻防を“観察→判定→仕掛け→撤退”の手順に落とし込み、初心者でも再現できる形で解説します。
- VWAPとは何か:移動平均と違う「参加者の平均コスト」
- なぜ「5分足VWAP」なのか:意思決定の粒度がちょうどいい
- 攻防の本質:VWAPは「線」ではなく「面(ゾーン)」で考える
- 主導権判定のコア:5分足で見る「4つのチェック項目」
- 具体的な戦略設計:VWAPを軸に「順張り」と「戻り」を分ける
- “VWAPを割った・上回った”だけで売買しない:ダマシ回避の実装
- 板・歩み値と組み合わせる:VWAP攻防の“質”を上げる観察ポイント
- 具体例で理解する:3つの典型パターン
- エントリーと同じくらい重要な「撤退設計」:初心者が崩れるポイント
- 銘柄選び:VWAPが機能しやすい銘柄の条件
- よくある失敗と、改善の具体策
- 練習方法:検証で「自分の勝ちパターン」を作る
- 最終チェックリスト:エントリー前に5秒で確認する項目
- まとめ:VWAP攻防は「主導権の可視化」であり、売買の迷いを減らす
VWAPとは何か:移動平均と違う「参加者の平均コスト」
VWAP(Volume Weighted Average Price)は、出来高で加重した平均価格です。一般的な移動平均は「時間」で平均しますが、VWAPは「出来高(約定量)」を重く扱います。つまり、たくさん取引された価格帯ほど重要になります。
デイトレでは、当日の大口・機関・短期勢が、どの価格でどれだけ約定したかが重要です。VWAPはその“当日の平均単価”を示すので、以下のように使われがちです。
- 買い方:価格がVWAPより上なら「含み益ゾーン」、下なら「含み損ゾーン」
- 売り方:価格がVWAPより下なら「含み益ゾーン」、上なら「含み損ゾーン」
この心理は単純ですが強力です。含み益側は保持しやすく、含み損側は戻りで逃げたくなる。だからVWAP付近は「戻り売り」「押し目買い」が衝突する戦場になります。
なぜ「5分足VWAP」なのか:意思決定の粒度がちょうどいい
1分足はノイズが多く、15分足以上は初動が遅れがちです。5分足は、デイトレで最も多い意思決定(寄付きの方向、押し目、戻り、ブレイク)に対して、情報量とノイズのバランスが良い。
特に日本株の現物・信用のデイトレでは、寄付き〜前場中盤のボラが大きく、後場は薄くなりやすい。5分足VWAPなら、寄付きの荒い値動きの後に「主導権がどちらへ移ったか」を早めに判定できます。
攻防の本質:VWAPは「線」ではなく「面(ゾーン)」で考える
初心者がやりがちなミスは、VWAPに触れた瞬間に反発を期待して逆張りすることです。VWAPは“平均コスト”なので、実際の売買はその周辺に厚く分布します。よって、VWAPは1本の線というより「±0.1〜0.3%程度のゾーン」として扱う方が現実的です(値がさ株やボラが高い銘柄は幅を広げる)。
このゾーンで見るべきは、次の3点です。
- VWAPの傾き:当日の平均コストが上がっているのか下がっているのか
- VWAPとの乖離:乖離が拡大しているのか縮小しているのか
- ゾーンでの出来高と約定の質:薄い反発か、厚い実需か
主導権判定のコア:5分足で見る「4つのチェック項目」
ここからが実戦です。VWAP攻防を主導権(買い方/売り方)として判定するために、5分足の1本ごとに次を確認します。慣れるまで、紙にチェックを付けるくらいがちょうどいいです。
1)VWAPの傾き(Slope)
VWAPが上向きなら買い方が平均単価を押し上げている状態です。下向きなら売り方が押し下げています。ポイントは「角度」より「継続」です。例えば5分足で3本連続でVWAPが切り上がっているなら、買い方が優勢とみなします。
2)VWAPを跨ぐときの足の形(Cross Quality)
VWAPを跨ぐ瞬間は罠が多い。そこで、跨ぎ方の質を見ます。
- 強い上抜け:VWAP上で引け、実体が大きい、上ヒゲが短い
- 弱い上抜け:VWAPは上抜けたが上ヒゲが長く、終値がVWAP近辺
- 強い下抜け:VWAP下で引け、実体が大きい、下ヒゲが短い
- 弱い下抜け:VWAPは下抜けたが下ヒゲが長く、終値がVWAP近辺
“弱い跨ぎ”は、次の足で否定されやすい。初心者はここで飛びついて損切りになるので、跨いだ次の足まで待つのが基本です。
3)VWAPゾーンでの出来高(Volume at the Battlefield)
VWAP付近で出来高が増えるのは普通です。重要なのは、出来高が増えた結果、どちらへ抜けたかです。例えばVWAP付近で大きな出来高が出たのに上に抜けきれず、次の足でVWAPを割るなら「買いの失敗」で売りが優勢になりやすい。
逆に、VWAP付近で出来高が出て一度押されても、割らずに横ばいで粘ってから上抜けるなら、買い方が吸収している可能性が高い。板や歩み値で「ぶつけ売りを買っている」痕跡があれば、さらに信頼度が上がります。
4)VWAPからの乖離と戻りの速さ(Mean Reversion Speed)
乖離が大きいほど「平均回帰」的にVWAPへ戻りやすい、という一般論はあります。しかしデイトレで重要なのは、戻るかどうかではなく、戻る“速度”です。強いトレンドでは、乖離しても戻りが遅い(戻りきらない)ことが多い。
具体的には、上昇局面でVWAPから+0.8%まで乖離してから、押しても+0.3%程度で止まり再上昇するなら買い方優勢。逆に+0.8%から一気にVWAPまで戻ってしまうなら、買い方の優位性が弱い可能性があります。
具体的な戦略設計:VWAPを軸に「順張り」と「戻り」を分ける
VWAP攻防の使いどころは大きく2つです。順張りの“押し目”として使うか、逆張りの“戻り売り/押し目買い”として使うか。初心者はまず順張り側を主戦場にする方が勝率が上がりやすいです。
戦略A:上向きVWAPでの押し目買い(優勢側にだけ乗る)
前提:VWAPが上向き、価格がVWAPの上で推移している。
狙い:押し目でVWAPゾーンに近づいたときに、買い方の防衛(反発)を確認して入る。
手順:
(1)5分足でVWAPが3本以上切り上がっていることを確認。
(2)価格がVWAPゾーンへ下げてくるのを待つ(焦って追いかけない)。
(3)ゾーンで下げ止まりのサインを見る:例えば下ヒゲ、陰線の縮小、出来高の増加とともに下げ止まる等。
(4)エントリーは「反発を確認してから」。具体的には、VWAPゾーンで下げ止まった次の足が陽線で、終値がVWAPより明確に上なら買う。
損切り:ルールは単純に「VWAPを明確に割って5分足が確定したら撤退」。細かくするなら、割った足の安値を逆指値にする。
利確:直近高値、またはVWAPからの乖離が+1.0%を超えて勢いが鈍る地点。利確を“欲張らない”ことが、VWAP戦略の収益率を安定させます。
戦略B:下向きVWAPでの戻り売り(逆方向の押し目を狙う)
前提:VWAPが下向き、価格がVWAPの下で推移している。
狙い:戻りでVWAPゾーンへ上げたときに、売り方の防衛(押し返し)を確認して売る。
買いの場合と完全に対称です。重要なのは、VWAPゾーンでの“弱い上抜け”に飛びつかないこと。上ヒゲが長い、出来高は増えたのに上に抜けない、歩み値が売りに偏る、板で上に厚い売り板が出てくる、といった「押し返し」を確認してから入ります。
“VWAPを割った・上回った”だけで売買しない:ダマシ回避の実装
VWAPのダマシで典型的なのは、寄付き直後の乱高下と、昼休み明けの薄い板での一瞬の跨ぎです。そこで、ダマシ回避のために以下のフィルターを入れます。
フィルター1:跨ぎは「足確定」まで待つ
5分足が確定する前の跨ぎは、板の薄い瞬間に簡単に起こります。エントリーは必ず足確定後。これだけで無駄な損切りが大きく減ります。
フィルター2:出来高が通常の1.5倍以上あるか
VWAP付近の攻防は“量”が伴わないと意味が薄い。直近(例えば過去12本=1時間)の平均出来高に対して、VWAPゾーンでの足の出来高が1.5倍以上あるかを目安にします。薄い出来高で跨いでも、すぐ戻されることが多い。
フィルター3:VWAPの傾きがフラットなら「レンジモード」に切り替える
VWAPが横ばいのときは、主導権が拮抗しているか、あるいは大口が様子見の状態です。この局面でトレンドを当てにいくと負けやすい。こういう日は、VWAPゾーンの上下で「短い利幅」を狙うレンジ戦略に切り替えるか、そもそも見送る判断が合理的です。
板・歩み値と組み合わせる:VWAP攻防の“質”を上げる観察ポイント
チャートだけでもVWAPは使えますが、板と歩み値を見られるなら優位性が上がります。理由は、VWAPゾーンで「誰が本気でぶつけているか」が見えるからです。
板の見方:厚みの位置が「防衛ライン」になる
上向きVWAPの押し目局面で、VWAPの少し下に厚い買い板が継続して出ているなら、買い方が守りやすい。一方で、買い板が薄く、VWAP直下に厚い売り板が積まれるなら、割れやすい。大事なのは“出た瞬間”ではなく“維持されているか”。頻繁に消える厚板は誘導の可能性もあるので過信しません。
歩み値の見方:大きな約定が「方向」を決める
VWAPゾーンで、売りの大きな約定が連発しているのに価格が下がらないなら、裏で買いが吸収している可能性があります。これが見えたら、押し目買い戦略Aの信頼度は上がります。逆に、買いの大きな約定が出た直後に上ヒゲを作って失速するなら、上でぶつけられている可能性が高い。
具体例で理解する:3つの典型パターン
ここでは架空の数値で、5分足VWAP攻防の典型を3つ示します。数字のイメージが持てると、相場の“手触り”が出てきます。
パターン1:寄付き後の上昇→VWAP押し目→再上昇(理想形)
9:00寄付き後に急騰し、9:20時点で価格は1,000円、VWAPは980円。VWAPは上向き。ここから利確で980〜990円まで押すが、VWAPゾーン(975〜985円)で下ヒゲを連発し、出来高が増えつつ割らない。9:35の足が陽線で終値990円、VWAPは983円に上昇。ここで買い。損切りはVWAP割れ(例えば980円割れ確定)。利確は直近高値1,005円付近、もしくは乖離+1%(約993円以上)で伸びが鈍れば分割利確。
この形の美味しさは、損切り幅が小さく、伸びたときのリスクリワードが良いことです。
パターン2:VWAP跨ぎのダマシ→反対方向へ加速(罠の王道)
価格がVWAPの下で推移していたが、10:10の足で一瞬上抜け。確定前に飛びついた買いが増える。しかし確定すると上ヒゲが長く、終値はVWAP付近。次の足でVWAPを割り、出来高が増えて下方向へ加速。これは“買いの捕獲”が起きた形です。
回避策はシンプルで、確定足の形が弱い跨ぎなら見送る。さらに、跨ぎ局面で出来高が増えたのに抜けない場合は、むしろ反対方向(戻り売り)を警戒します。
パターン3:VWAP横ばいのレンジ(手を出しすぎると負ける日)
VWAPがほぼ水平で、価格が上下に跨ぎ続ける。こういう日は「トレンドのフリ」をしているだけで、どちらかが明確に優勢ではありません。初心者がここで順張りを繰り返すと、細かい損切りが積み上がります。
対処は2択です。
- VWAPゾーン上下の反発を短く取る(利幅を小さく、回数も絞る)
- そもそもやらない(最も簡単で、成績が安定する)
エントリーと同じくらい重要な「撤退設計」:初心者が崩れるポイント
VWAP戦略の価値は、撤退が明確なことにあります。にもかかわらず、初心者は次で崩れます。
- VWAPを割ったのに「戻るはず」で持ち続ける
- 利確を伸ばそうとして、VWAPまで戻される
- 同じ日に逆方向へ何度も挑戦して、感情で取引する
対策はルール化です。
撤退ルールの雛形(そのまま使える)
損切り:エントリー方向と逆にVWAPを明確に割って5分足が確定したら撤退(例:上向きVWAPで買ったのにVWAP下で確定)。
時間損:エントリー後、5分足3本(15分)経っても含み益が伸びないなら半分利確/撤退。VWAP戦略は“主導権”に乗る戦略なので、伸びないのは前提が崩れているサインです。
利確:(1)直近高安、(2)乖離+1.0%(銘柄に合わせて調整)、(3)上ヒゲ連発で勢い鈍化、のいずれかで分割利確。
銘柄選び:VWAPが機能しやすい銘柄の条件
同じVWAPでも、銘柄によって効き方が違います。初心者は“VWAPが機能しやすい土俵”を選ぶのが近道です。
- 出来高が十分:板が薄い銘柄はVWAP跨ぎが頻発し、ダマシが増える
- テーマ性・材料が明確:短期資金が集まり、VWAPを軸にした攻防が起きやすい
- 値幅が取れる:1日の値幅が小さいと、手数料・スプレッド負けしやすい
- 寄付き直後に方向が出やすい:指数連動が強すぎる銘柄は、指数に引きずられてVWAPが崩れやすい
よくある失敗と、改善の具体策
失敗1:VWAPに触れたら反射的に逆張り
改善:VWAPはゾーン。反発の“確認”を必須にする。少なくとも次の5分足が方向を示してから。
失敗2:VWAPの傾きを無視して売買
改善:まず傾きで“今日のゲームの向き”を決める。上向きなら買い中心、下向きなら売り中心。フラットならレンジか見送り。
失敗3:利確が遅く、結局VWAPまで戻される
改善:乖離が拡大したら「利確モード」に切り替える。VWAPは平均なので、乖離は縮みやすい。伸ばすなら、押し目を作って再びVWAPが追いつく形を待つ。
失敗4:負けた直後に反対方向へ連打する
改善:1回損切りしたら、最低でも次の15分は様子見。VWAP攻防は“転換の瞬間”で負けると感情が乗りやすいので、機械的にクールダウンする。
練習方法:検証で「自分の勝ちパターン」を作る
VWAPは汎用的ですが、勝ちやすいパターンは人によって違います。そこで、次の手順で練習すると上達が速いです。
(1)過去チャートを20日分用意し、寄付きから引けまでの5分足を再生する(リプレイ機能があるツールが便利)。
(2)“VWAPに触れた瞬間”ではなく、“VWAPゾーンでの攻防が決着した瞬間”に印を付ける。
(3)その後に値幅が伸びた回数、伸びなかった回数を数え、条件を追加する(出来高1.5倍、上ヒゲの長さ、VWAP傾き本数など)。
(4)条件を増やしすぎない。最終的には3〜5個の条件で運用できる形に落とす。
最終チェックリスト:エントリー前に5秒で確認する項目
- VWAPの傾きは上向き/下向き/フラットのどれか
- 価格はVWAPの上/下のどちらで推移しているか
- VWAPゾーンで出来高が増えたか(薄いなら見送る)
- 跨ぎは足確定で判断したか
- 損切り位置(VWAP割れ確定など)を言語化できるか
この5点を満たしていない取引は、見送りが合理的です。デイトレは“やる回数”ではなく“やらない判断”で成績が決まります。
まとめ:VWAP攻防は「主導権の可視化」であり、売買の迷いを減らす
VWAPは単なるテクニカル指標ではなく、当日の参加者の平均コスト=主戦場を示す指標です。5分足に落とすと、ノイズを減らしつつ意思決定を早められます。大事なのは、VWAPを跨いだかどうかではなく、VWAPゾーンで“どちらが吸収して優勢になったか”を判定すること。その判定を、傾き・跨ぎの質・出来高・乖離の戻り速度という4点で機械化すれば、初心者でも再現性が出ます。
最初は「上向きVWAPの押し目買い」だけに絞り、負け方(損切り)を一定にする。そこから板・歩み値を補助的に使い、攻防の質を上げる。これが、VWAPを“勝てる道具”に変える最短ルートです。


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