寄り付きは「その日の需給が一番露出する時間帯」です。ニュース・決算・指数要因・テーマ物色など、様々な理由で資金が一気に集まり、板が薄い銘柄では数十秒で値段が飛びます。ここで勝てる人と負ける人の差は、方向感の当て勘ではなく、買いが本物かどうかの検証手順を持っているかどうかです。
この記事では、寄り付き直後の最初の5分足で「出来高が直前5本平均の3倍超」かつ「歩み値で成行買いが連続」を確認してから入る、順張りスキャル戦略を、初心者でも再現できる形に落とし込みます。単なる“寄りで強いから買う”ではなく、条件・例外・損切り・利確・監視の型までを具体化します。
この戦略の狙い:寄り付きの“資金流入の初速”だけを抜く
この手法が狙うのは、寄り付きで生まれる短期のトレンド(初動)です。初動には次の特徴があります。
- 売り指値が薄い(上に抵抗が少ない)
- 成行買いが継続して、板を食い続ける
- 出来高が急増し、価格が「移動」する
一方で、寄り付きの上げはフェイクも多いです。寄り天、アルゴの釣り、見せ板、寄り後に機関の売りが出る、など。そこで出来高(量)と歩み値(質)の両方を条件に入れます。出来高だけだと、売買が激しいだけで方向がないケースを拾います。歩み値だけだと、薄板で一瞬の成行が連発しただけのケースを拾います。両方が揃うところに絞るのが肝です。
エントリー条件の設計:数値化できる“確認手順”にする
今回の核は2つです。
条件A:寄り付き直後の5分足出来高が「直前5本平均の3倍超」
直前5本平均は、寄り付き前には存在しないので、実務では次の2つのどちらかで扱います。
- (推奨)寄り付き後に「2本目〜3本目の5分足」で判定する:1本目(9:00-9:05)の出来高を、同日の2〜6本目(9:05-9:30の5本)平均と比較する。寄り付きの初速を見ながらも、極端な寄り付き偏りをならす。
- (簡便)直近数日間の同時刻(9:00-9:05)平均と比較:過去5営業日の9:00-9:05平均出来高の3倍超、などにする。寄り付き特性に合わせやすい。
初心者がいきなり実装しやすいのは後者です。チャートやスクリーナーが弱くても、前日までの統計が取りやすいからです。より精密にやるなら前者を採用し、寄り付き直後の銘柄特性(“寄り付きだけ出来る”銘柄)を弾きます。
条件B:歩み値で「成行買い」が連続(=板を食う継続性)
歩み値の読み方を誤ると、ここが一番ブレます。目視だけに頼ると再現性が落ちるので、以下の“定義”に落とします。
- 成行買い連続の定義:直近30秒〜60秒で「約定が売り気配側(上側)で成立」する回数が、買い気配側(下側)で成立する回数より明確に多い。目安は買い側:売り側=2:1以上。
- 連続性:単発の大口ではなく、同程度のロットが“繰り返し”出る(例:200株〜1000株が連続、または同じサイズの成行が連発)。
- 価格の移動:約定が積み上がるだけで価格が上がらない場合(上の売りが厚い)は見送る。最低でも直近の高値を更新していること。
要するに「買いが板を食って前進している」状態だけを拾います。出来高が多いのに前進しないのは、上で誰かが売っている(供給が強い)可能性が高いので避けます。
監視銘柄の選別:寄り付き前に9割決まる
寄り付きの勝負は、9:00になってから探すと遅れます。初心者ほど、寄り前の準備で勝率が変わります。選別の基準を固定します。
まず“触っていい銘柄”の条件
- 流動性:前日出来高が一定以上(例:50万株以上)。薄い銘柄は歩み値が騙しになりやすい。
- 値幅余地:ATR(平均値幅)や前日の値幅が小さすぎない。寄り付き5分で抜ける距離がない銘柄はスプレッド負けしやすい。
- 材料:決算、上方修正、提携、需給(自社株買い、指数採用など)、テーマ(半導体、AI、防衛等)など“理由”がある。理由がない急騰は寄り天が多い。
- 気配:寄り前の気配が前日終値から大きく乖離しすぎない(極端GUは寄り天率が上がる)。目安は+1%〜+7%程度からスタート。
地雷を避ける“見送り条件”
この戦略が苦手なパターンを事前に排除します。
- 寄り付きが特売り/特買いで長引く:寄ってからの5分足が“普通の5分足”にならず、指標が歪む。
- 板が極端に薄い・スプレッドが広い:成行が連続しても、単に薄板を踏んでいるだけで逆回転が速い。
- 上に明確なフシ(前日高値、節目、窓埋め)が直近にある:初動がそこで止まりやすい。抜けるには材料と出来高が必要。
実行ルール:エントリー、損切り、利確を“固定”する
寄り付き順張りで一番やってはいけないのは、入る根拠が定量なのに、出る根拠が感情になることです。ここを固定します。
エントリー:2段階で入る(確認→実行)
以下の順番にします。
- 9:00〜9:10のどこかで、出来高条件(3倍超)に近い“兆候”が出る
- 歩み値で成行買い優勢が60秒程度続く
- 直近高値(1分足またはティック)を更新した瞬間にエントリー
ポイントは「上に抜けた瞬間に叩く」ことです。確認しすぎてからだと、上昇1〜2%の“おいしい部分”が終わっています。逆に、歩み値の質を見ずに買うと、出来高だけの乱高下に巻き込まれます。
損切り:1回で切れる位置に置く
初心者が損切りを迷うと、寄り付きは簡単に-2%〜-5%が起きます。損切りは“価格”で固定します。
- 基本:エントリー直前の押し安値(直近1〜3分の安値)を明確に割れたら即カット。
- より機械化:エントリー足の安値割れ(1分足確定を待たず、割れた瞬間)。
- 例外:寄り付き特有のヒゲだけで一瞬割れる銘柄は、板が厚い大型のみ許容。小型は例外を作らない。
損切り幅の目安は、値嵩で0.3%〜0.8%、低位で1〜2ティック〜0.5%程度。これを超える損切りは“想定の外”です。想定の外になった時点で、戦略の前提(初動の強さ)が崩れています。
利確:2種類の出口を使い分ける
利確は「伸びたらもっと伸びる」を待つと、寄り天で全部吐き出します。以下の2種類を使い分けます。
- スキャル利確(基本):リスクリワード1:1〜1:1.5で確定。損切り0.5%なら利確0.5%〜0.75%。
- 伸ばす利確(条件付き):VWAPを上回り、出来高が維持され、押しが浅い(押してもすぐ買い戻される)場合のみ、分割利確で伸ばす。
おすすめは「半分をスキャルで確定、残りをトレーリング」です。残りは、直近押し安値更新で外す。こうすると、寄り天でも勝ちを残しやすいです。
具体例:良い形と悪い形を“文章で”再現する
ここからは、実際の値動きを想像できるように、よくある2パターンを文章で解剖します(チャートがなくても再現できるように書きます)。
良い形:買いが板を食って上に逃げる
9:00の寄り直後、寄り値から+0.3%程度で推移。1分足の陽線が2本連続し、出来高が普段の寄り付きより明確に多い。9:03あたりから歩み値が“上側約定”ばかりになり、200株〜500株の成行買いが連続。売り板は各価格で薄く、約定が進むたびに上の売りが消えていく。9:04に直近高値(寄り後の戻り高値)を更新した瞬間にエントリー。すぐに+0.4%まで伸び、1回だけ小さく押すが、押した瞬間に歩み値で成行買いが再開し、押し安値を割らずに再上昇。ここで半分利確、残りは押し安値割れで手仕舞い。結果、平均+0.6%程度を取れる。
この形の本質は、「押したのに売りが出ない」ことです。押しが浅い、押しで出来高が減る、押しで歩み値が買い優勢のまま、が揃うと、初動は継続しやすいです。
悪い形:出来高だけ多く、上に進まない(天井が近い)
寄り後すぐ+0.8%まで上げるが、同時に歩み値が上下に交互で、上側約定と下側約定が混在。出来高は確かに多いが、同じ価格帯で何度も約定しており、価格が前進していない。売り板が厚く、上で大口が待っているように見える。ここで“出来高が多いから”と買うと、上で吸収され、9:06〜9:08でスッと崩れて寄り値付近まで戻る。損切りが遅れると、そのまま-1%〜-2%まで引っ張られる。
この形は、「買いが消耗している」状態です。出来高は増えているのに、価格が動かない=誰かが上で供給している可能性が高い。順張りの天敵です。
精度を上げるフィルター:初心者が最初に足すべき3つ
最初から条件を盛りすぎると、検証も実行も破綻します。最初に足すなら次の3つに絞るのが現実的です。
フィルター1:VWAPの位置
寄り付きの初動が強い日は、価格がVWAPの上に乗りやすいです。よって、
- エントリー時点でVWAPを上回っている、またはVWAP付近を上抜ける瞬間
に限定すると、寄り天を減らせます。逆に、VWAPを下回ったままの上げは、戻り売りに捕まりやすいので難易度が上がります。
フィルター2:前日高値(または重要レジスタンス)までの距離
前日高値がすぐ上(例えば+0.3%の距離)にあると、そこで利確売りが出やすいです。初動が強くても止まる位置が近いなら、利幅が出ません。エントリー前に「上にどれだけ空間があるか」を必ず確認します。
フィルター3:指数と同方向か(地合いフィルター)
寄り付きは指数(特に日経先物)に引っ張られやすいです。個別の材料が弱い銘柄ほど、地合い逆風で失速します。地合いが弱い日にこの戦略をやるなら、材料が強い銘柄(決算・大型材料・テーマ主役)に限定します。
ポジションサイズ:勝率より“損失の上限”を固定する
初心者は「勝てそうだから多く買う」をやりがちですが、寄り付きは事故の確率が高い時間帯です。ここは、ロット決定を機械化します。
手順は単純です。
- 1回のトレードで許容する損失額を決める(例:1万円)
- 損切り幅(%またはティック)を決める(例:0.5%)
- ロット=許容損失額÷損切り幅で決める
例えば、株価1,000円、損切り0.5%=5円、許容損失1万円なら、2,000株で1万円です(5円×2,000株=1万円)。これ以上は買わない。これだけで、破滅的な負けを避けられます。
検証のやり方:過去チャートを“同じ手順”で見る
この戦略は、バックテストが難しいと感じる人が多いです。理由は、歩み値(ティック)まで含めるとデータが重いからです。そこで、初心者がやるべき検証は「完全自動」ではなく「手順統一の目視検証」です。
目視検証テンプレ(1銘柄3分で終わる)
- 寄り付き〜9:15の1分足を表示
- 出来高が急増した箇所に印を付ける(5分区切りでも可)
- その直前直後で、価格が前進しているか(高値更新の有無)を見る
- VWAPの上か下か、前日高値までの距離をメモ
- “入るならどこ”“切るならどこ”“取るならどこ”を仮決めして、結果を記録
これを20〜50事例やると、勝てる形と負ける形が見えてきます。初心者がいきなり自動化に行くと、条件がズレたままコード化して負けます。まず形を言語化し、条件に落としてから自動化が正攻法です。
よくある失敗と対策:この戦略で負ける人の共通点
失敗1:出来高だけで飛びつく
出来高が多い=買いが強い、ではありません。売りが多くても出来高は増えます。必ず「歩み値で板を食って前進しているか」をセットで確認してください。
失敗2:上のフシに突っ込む
前日高値、窓埋め、ラウンドナンバー、上場来高値など、節目の直下で買うと、利確に吸われます。節目までの距離が近いなら、抜けを待つか、利確目標を短くする。
失敗3:損切りが遅い(またはしない)
寄り付きの順張りは、当たれば速いが、外れたらもっと速い。損切りは“割れた瞬間”。悩んだ時点で遅いです。
失敗4:取引回数を増やしすぎる
寄り付きは誘惑が多い時間帯です。条件に合わない銘柄まで触ると、勝ち分が手数料とスリッページで消えます。「条件を満たすまで何もしない」が正解です。
運用のコツ:毎日やるなら“型”を固定して疲労を減らす
この戦略を武器にするには、日々のオペレーションを決めてしまうのが一番です。
- 前日夜:材料・決算・テーマで10〜30銘柄をリスト化
- 当日8:50:気配で5〜10銘柄に絞る(GU/GD、板、スプレッド)
- 9:00〜9:15:条件一致を待つ。入るのは最大2回まで、など上限を決める
- 9:15以降:無理に続けない。寄り付き専業なら撤収するのも戦略
寄り付きは集中力が命です。だらだら触るほど事故率が上がります。“勝てる時間帯だけ抜く”発想に切り替えると、トータルの成績が安定します。
まとめ:勝ち筋は「出来高×歩み値×出口の固定」
この順張りスキャルは、寄り付きの初動という一番分かりやすい需給を、手順化して取る戦略です。ポイントは3つだけです。
- 出来高の急増(3倍超)で“資金流入”を確認
- 歩み値で成行買いの連続=“板を食う継続性”を確認
- 損切り・利確を価格で固定して、寄り天と事故を制御
最初は、条件を絞って回数を減らし、勝てる形だけを身体に覚えさせてください。慣れてきたらVWAP、前日高値、地合いフィルターを足す。これで、寄り付きの無駄打ちが減り、期待値が上がります。


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