相場で一番取りやすい値幅は「動き出した直後」です。理由は単純で、値動きが小さい静かな時間帯(収縮局面)から、参加者が増えて急に値幅が出る時間帯(拡大局面)へ切り替わる瞬間は、需給の傾きがはっきりするからです。本記事では、その切り替えを視覚化しやすいボリンジャーバンド(BB)を使い、「バンドが拡大し始めた最初の一本(=1本目)」だけを狙う短期戦略を、株の5分足を中心に具体例ベースで解説します。
- ボリンジャーバンドの基本:なぜ「拡大」が重要なのか
- 本記事の定義:「拡大1本目」とは何か
- なぜ「1本目」だけに限定すると勝率が上がりやすいのか
- 前提:銘柄選定(どの銘柄で効くのか)
- 時間帯の考え方:いつ起きやすいか
- ルール設計:エントリー、損切り、利確を数値化する
- 具体例:日本株5分足での想定シナリオ
- 失敗パターンを先に潰す:必須フィルター3つ
- リスク管理:初心者が破綻しないための「上限設定」
- 検証方法:あなたの環境で再現する手順
- 応用:FX・暗号資産で使う場合の注意点
- ありがちな勘違い:BBは「逆張りツール」ではない
- まとめ:この戦略で狙うのは“初動の一撃”だけ
- 板・歩み値で「本物の拡大1本目」を見抜く補助線
- 約定面の設計:初心者は「滑り」を前提にする
- ポジションサイズの具体例:数字で事故を防ぐ
- チェックリスト:エントリー前に10秒で確認する
- よくある落とし穴:勝ちパターンだけを覚えると崩れる
ボリンジャーバンドの基本:なぜ「拡大」が重要なのか
ボリンジャーバンドは、移動平均線(通常20本)と、その上下に標準偏差(通常±2σ)を乗せた帯です。価格が平均からどれだけ散らばっているか(=ボラティリティ)を帯の幅で表現します。
重要なのは「価格がバンドに触れた」こと自体ではなく、バンド幅が広がり始めた瞬間です。バンド幅が広がる=標準偏差が増える=直近の値動きが大きくなる、つまり市場参加者が増えて需給が片側に傾き始めたサインになりやすいからです。
本記事の定義:「拡大1本目」とは何か
ここで言う「拡大1本目」は、次の2条件を満たす最初の足を指します(5分足想定)。
条件A:収縮の後に拡大へ転じる
直近N本(例:12本=1時間)のバンド幅(上バンド-下バンド)が低下〜横ばいだったところから、当該足で明確に上向きに転じる。
条件B:方向が出ている
その足で終値が移動平均(ミドルバンド)から離れる方向に伸び、かつ上(または下)バンド側へ寄る(上昇なら上バンドへ、下落なら下バンドへ)。
要するに「静→動」への切替と「方向性」が同時に出た一本だけを取ります。2本目以降は、プロでも取りこぼしやダマシが増えやすいので、ルール上は“捨てる”前提にしておくのが戦略として強いです。
なぜ「1本目」だけに限定すると勝率が上がりやすいのか
拡大局面は魅力的ですが、長く追うほど不確実性が増えます。1本目は、ニュース・板・指数の流れなど外部要因が一気に価格へ反映される最初のタイミングで、逆方向の建玉が踏まれやすい(ショートカバーやロングの投げ)ため、短時間での推進力が得られやすい。
一方、2本目以降は「飛び乗り勢」が増え、利確も増え、アルゴの反転も入りやすく、上にも下にも振らされます。だから、設計思想としては「初動だけ抜いて、あとは捨てる」が合理的です。
前提:銘柄選定(どの銘柄で効くのか)
この戦略は、出来高が細い銘柄より、板と約定が厚く、スプレッドが狭い銘柄で再現性が上がります。初心者が扱うなら、まずは次のどれかに限定してください。
例)日経平均採用の大型株、TOPIXコア30/ラージ70、売買代金上位、またはその日の材料で出来高が明確に増えている銘柄。
避けるべきは、極端に板が薄い小型株・連続S高/S安で値幅制限が支配する局面・スプレッドが常に2〜3ティック以上開く銘柄です。BBの形よりも、約定構造が勝敗を決めるからです。
時間帯の考え方:いつ起きやすいか
拡大1本目は「変化」が起点なので、参加者が増減するタイミングで起きやすいです。日本株なら次が典型です。
寄り付き直後(9:00〜9:30)
情報が一気に価格へ織り込まれる。ダマシも増えるので後述のフィルターが重要。
後場寄り(12:30〜13:00)
昼休みで収縮しやすく、再開で拡大しやすい。特にPTSで材料が出た銘柄は「再開の1本目」が作られやすい。
引け前(14:30〜15:00)
指数・リバランス・引けの需給で一気に傾く。逆に急反転もしやすいので利確を早くする。
ルール設計:エントリー、損切り、利確を数値化する
感覚でやると「拡大が始まった気がする」で入って負けます。ここでは、初心者でも実装できるように、条件をできるだけ数値に落とします。
1) 収縮判定(仕込み条件)
バンド幅BW=(上バンド-下バンド)を使います。直近12本のBWの平均が、さらにその前12本のBW平均より小さい(=収縮傾向)ことを確認します。感覚的には「帯が細い時間が続いている」状態です。
2) 拡大1本目の判定(トリガー)
当該足でBWが前足比で増加し、かつ増加率が一定以上(例:+8%)を満たす。さらに終値がミドルバンドから離れる方向にあり、上昇なら終値がミドルバンドより上、下落なら下。
3) エントリー方法(成行か指値か)
初心者は「確定足で入る」ほうが事故が減ります。具体的には、5分足が確定した時点で次足の開始直後に成行(または1ティック不利な指値)で入ります。未確定で飛び乗ると、確定で長いヒゲになって“1本目”ではなくなるパターンが多い。
4) 損切り位置(最初から決める)
損切りは、当該トリガー足の安値(上昇狙いの場合)または高値(下落狙いの場合)に置きます。理由は明確で、拡大1本目が本物なら、その足のレンジを早々に否定して逆に抜ける動きは起きにくいからです。
値幅が大きすぎて損切りが遠い場合は、そのトレードは見送ります。損切りを縮めるための後付けは、長期的に破綻しやすいです。
5) 利確ルール(「取り切らない」を徹底)
利確は2段階にすると初心者でもメンタルが安定します。
第一利確:リスクリワード(RR)1:1(損切り幅と同じ値幅が伸びたら半分利確)。
第二利確:次の足でバンド幅の伸びが止まる(BWが前足比で増えない)か、長い逆ヒゲが出たら残りを手仕舞い。
「拡大の初動だけ」という思想に合わせ、伸びたら欲張らずに降りる設計です。
具体例:日本株5分足での想定シナリオ
ここでは、個別銘柄名を固定せず、よくある板と値動きの構造で説明します。あなたが監視している大型株(例:半導体、銀行、商社など)にそのまま当てはめられます。
ケース1:後場寄りの収縮→拡大(順張りロング)
昼休みに値が動かず、BBが細くなる。12:30の再開直後、指数が上に走り、当該銘柄もミドルバンドを上抜けて上バンド側へ寄りながら確定。BWが前足比+12%で拡大。これが「拡大1本目」です。
次足の開始で成行買い。損切りは拡大1本目の安値。値がRR1:1到達で半分利確し、残りはBWの伸びが鈍った(次足でBW増加が止まった)タイミングで手仕舞い。ここで重要なのは、上バンドに張り付く“バンドウォーク”を狙って引っ張らないことです。バンドウォークは美味しい反面、初心者ほど天井で掴みやすい領域です。
ケース2:寄り付き直後の拡大は「ダマシ」が多い(フィルター活用)
寄り直後は板の更新が荒く、最初の5分でBWが急拡大することが多い。しかし、これはトレンドの開始ではなく、寄り付きの価格決定プロセスの“ノイズ”の場合があります。
このケースでは、拡大1本目の判定に加えて、出来高フィルターを入れます。具体的には、拡大1本目の出来高が直前5本平均の1.5倍以上であること。出来高が伴わない拡大は、板が薄いだけの値飛びで、戻されやすいです。
ケース3:下落方向の拡大1本目(ショート)
収縮後にミドルバンドを下抜け、下バンド側に寄る形で確定。BWが増加し、終値がミドルバンドより下。次足で成行売り。損切りは拡大1本目の高値。利確はRR1:1で半分、残りは下ヒゲが目立ち始めたら即撤退。下落は反発が速いので、特に残り玉を粘らないのがポイントです。
失敗パターンを先に潰す:必須フィルター3つ
フィルター1:ミドルバンドの向き(トレンドの下地)
ミドルバンド(20MA)が完全に横ばいのときは、拡大が一瞬で終わることが多いです。初心者は「ミドルバンドがわずかでも上向き(ロング)/下向き(ショート)」を条件に入れると、逆行が減ります。横ばいでやるなら、利確をさらに早くする必要があります。
フィルター2:上位足の位置(5分足だけで戦わない)
5分足の拡大1本目が出ても、15分足や60分足で大きな抵抗帯の直下なら、伸びずに反落します。初心者は、少なくとも60分足で直近高値(ロング)/直近安値(ショート)をチェックし、そこまでの距離が近すぎるなら見送るのが安全です。
フィルター3:指数・同業セクターとの整合性
個別が単独で拡大するより、指数やセクターが同方向に動いているほうが成功率が上がります。特に大型株は指数寄与で動くことが多いので、「日経先物・TOPIX先物が同方向か」を確認するだけで無駄なエントリーが減ります。
リスク管理:初心者が破綻しないための「上限設定」
短期戦略は、勝てるときも負けるときも回転が速い。だからこそ、ルールより先に「破綻しない枠」を決めます。
1日の最大損失(デイリードローダウン)
例えば口座の1%を上限にする。これに達したら、その日は終了。拡大1本目は頻出なので、取り返そうとして回数を増やすほど事故が増えます。
1回あたりの許容損失
1回の損切り幅×ロットで、口座の0.2%など小さく固定します。損切りが遠い足は見送る前提なので、ロット調整で無理に入らない。
同時に持つポジション数
初心者は同時に1つだけ。2つ以上を持つと管理が雑になり、拡大1本目の「早く降りる」という思想が崩れます。
検証方法:あなたの環境で再現する手順
この戦略は、感覚ではなく検証で磨くべきです。難しい統計を使わず、TradingViewや証券会社のチャートでも回せる手順にします。
ステップ1:候補日を決める
出来高が増えた日(決算、指数急変、材料)に絞る。静かな日に同じことをしても、拡大が続かないため再現性が下がります。
ステップ2:収縮→拡大の場面だけをスクショで集める
過去チャートで、BBが細くなってから広がり始めた最初の足を20件集めます。この段階では勝ち負けを見ない。まず「あなたが定義した拡大1本目」が一貫しているかを確認するためです。
ステップ3:同じ損切り・利確で機械的に当てはめる
拡大1本目確定→次足エントリー→拡大1本目の逆端で損切り→RR1:1で半分利確→BWの伸び停止で残り決済。これを20件で実行し、勝率よりも「平均損益」と「最大連敗」を見ます。
ステップ4:フィルターを1つだけ足して比較
出来高フィルター、ミドルバンドの向き、指数整合のどれか1つだけ追加して再検証。複数を一気に入れると、何が効いたのか分からなくなります。
応用:FX・暗号資産で使う場合の注意点
FXや暗号資産でもBBは使えますが、構造が違います。
FXはロンドン開始・NY開始など「参加者が増える時間」がはっきりしており、拡大1本目が機能しやすい。ただし指標時はスリッページが大きく、確定足エントリーでも滑るのでロットを落とすべきです。
暗号資産は24時間で、出来高が急に薄くなる時間があり、バンド拡大が“板の薄さ”で発生することがあります。出来高フィルターと、取引所ごとの流動性(スプレッド、板の厚み)をより厳格に見る必要があります。
ありがちな勘違い:BBは「逆張りツール」ではない
ボリンジャーバンドは「上バンドに触れたら売り、下バンドに触れたら買い」という使い方が広まっていますが、短期で安定させるには危険です。特に拡大局面では、バンドに触れた方向へさらに伸びることが多い。だから本記事のように「拡大1本目は順張りで抜く」という設計が噛み合います。
まとめ:この戦略で狙うのは“初動の一撃”だけ
・収縮→拡大へ切り替わる瞬間をBB幅で判定する
・拡大1本目確定後に入る(未確定で飛び乗らない)
・損切りは拡大1本目の逆端、利確はRR1:1とBW伸び停止で機械的に降りる
・出来高、ミドルバンドの向き、指数整合のフィルターでダマシを減らす
・回数が増えやすい戦略ほど、1日の損失上限で“退場”を防ぐ
この型をまずは1銘柄・1時間帯で繰り返し、スクショ検証で自分の目を揃えてください。勝てる・負ける以前に、同じ場面を同じように捉えられるようになると、短期売買の成績は安定し始めます。
板・歩み値で「本物の拡大1本目」を見抜く補助線
BBは価格の統計処理なので、板や約定の情報が抜けています。そこで、エントリー直前に“最低限”だけ板・歩み値を見ます。見る項目を増やすと迷うので、次の2つに絞ってください。
1) スプレッドと気配更新のリズム
拡大1本目が本物のときは、気配が一方向に素早く更新され、スプレッドが広がりにくい傾向があります(厚い注文が吸収するため)。逆に、スプレッドが急に広がり、約定が飛び飛びになる場合は、流動性の欠如が作った“見かけの拡大”の可能性が高い。初心者は「スプレッドが普段より1ティック以上広がったら見送る」くらい単純な基準で十分です。
2) 歩み値の約定サイズの偏り
上昇の拡大1本目なら、買い成行(または成行同等のぶつけ)が連続し、同一サイズが一定間隔で繰り返されることがあります。これはアルゴの分割執行(アイスバーグ的な出し方)で、短時間の推進力になりやすい。一方で、上値で急に大きな売り約定が入り、直後に価格が止まるなら、上には重い供給が待っているサインです。そういう足は、BBが拡大していても“1本目で終わる”ことが多いので、RR1:1到達前でも撤退を優先します。
約定面の設計:初心者は「滑り」を前提にする
短期では、理論上のエントリー価格と実際の約定価格がズレます(スリッページ)。ここを軽視すると、ルール上は勝ちでも口座では負けになります。
成行の使い所
「拡大1本目確定→次足の頭」では、成行は有効です。ただし、出来高が急増している銘柄ほど滑ります。そこで、成行の代わりに“1ティック不利指値”(買いなら売り気配+1ティック、売りなら買い気配-1ティック)を置くと、約定率を落とさずに想定外の滑りを抑えられます。これは初心者にとって、再現性を高める小技です。
注文を分ける(半分エントリー)
さらに安全にするなら、最初から全力で入らず、半分だけ入って、次足でBWがさらに増える(=拡大が続く)ことを確認して残りを追加します。これにより、ダマシのときの損失を小さくできる反面、伸びたときの利益も減ります。初心者の段階では、利益より破綻回避が優先なので、分割エントリーは相性が良いです。
ポジションサイズの具体例:数字で事故を防ぐ
「損切りを決める」だけでは不十分で、損切り幅に応じてロットを変えないと、同じ戦略でも日によってリスクがバラつきます。ここでは、初心者が計算できる形に落とします。
例:口座100万円、1回の許容損失0.2%(=2,000円)。拡大1本目のレンジが20円の銘柄で、損切りをその逆端に置く場合、1株あたりの最大損失は20円。よって、2,000円 ÷ 20円 = 100株が上限です。レンジが40円なら50株、10円なら200株。これだけで、負けの破壊力が均一になります。
同様にFXなら、損切り幅(pips)と1pipsあたりの価値から逆算します。暗号資産はボラが大きいので、同じ比率でもロットがかなり小さくなりますが、それが正常です。
チェックリスト:エントリー前に10秒で確認する
最後に、迷いを減らすためのチェックを文章で固定します。以下を読んで「YES」が揃ったら入る、揃わなければ見送る、で運用してください。
(1)直近1時間、BB幅が細くなるか横ばいだったか。
(2)当該足でBB幅が前足比で明確に増え、増加率がルール(例:+8%)を満たすか。
(3)終値がミドルバンドから離れる方向で確定し、バンド側に寄っているか。
(4)出来高が直前平均より増えているか(最低でも1.5倍など)。
(5)上位足の抵抗帯が近すぎないか(60分足で確認)。
(6)指数・セクターが同方向か。
(7)スプレッドが普段より広がっていないか。
(8)損切り幅が許容範囲内か(遠すぎるなら見送り)。
このチェックを毎回通すと、「たまたま伸びた一回」で自信過剰になり、次で大きく負ける典型パターンを避けられます。短期は“良い負け方”を積み上げるゲームです。
よくある落とし穴:勝ちパターンだけを覚えると崩れる
拡大1本目は派手に伸びる場面が記憶に残りやすく、初心者ほど「次も同じだけ伸びる」と期待します。しかし現実には、伸びるのは全体の一部で、多くはRR1:1程度で終わります。ここで利確を遅らせると、勝てる局面まで引き分けや負けに変わります。
だから、ルールとして“取り切らない”を先に決め、淡々と実行する。これが、BBを短期で使うときの最重要ポイントです。


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