CCI(Commodity Channel Index)とは何か
CCI(Commodity Channel Index、コモディティ・チャネル・インデックス)は、価格が「平均からどれだけ離れているか」を数値で示すオシレーター系指標です。名前にコモディティと付きますが、株式、FX、暗号資産など、ほぼあらゆるマーケットで利用されています。
多くの初心者は「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」といった言葉で市場を理解しようとしますが、それを定量的に測ろうとしたものの一つがCCIです。トレンドフォローにも逆張りにも応用できる柔軟な指標でありながら、計算式自体はシンプルで、構造を理解すれば応用の幅が広がります。
CCIの計算ロジックを直感的に理解する
CCIは、以下の3ステップで計算されます。
① TP(典型価格)を計算する
まず、ある足の高値・安値・終値の平均を取った値を「典型価格(Typical Price)」と呼びます。
TP =(高値 + 安値 + 終値) ÷ 3
ローソク足1本の「真ん中あたりの価格」を代表値として使うイメージです。
② TPの移動平均を求める
次に、直近N期間(例えば20本)のTPの平均を取り、これを「TPの単純移動平均」として扱います。これがその期間における「平均的な価格水準」です。
③ TPが平均からどれだけ離れているかを標準化する
最後に、現在のTPがTP移動平均からどれだけ離れているかを、平均偏差(Mean Deviation)で割って標準化します。これに一定の定数0.015を掛けることで、多くの値が -100〜+100 の範囲に収まりやすくなるよう調整されています。
CCI =(TP − TPの移動平均) ÷(0.015 × 平均偏差)
直感的には、「今の価格が、最近の平均的な価格と比べてどれくらい極端なのか」をスコア化したものだと理解すれば十分です。
CCIチャートの基本的な読み方
多くのチャートツールでは、CCIは0ラインを中心に上下に振れるオシレーターとして表示されます。代表的な目安は以下です。
- +100以上:買われ過ぎゾーン
- -100以下:売られ過ぎゾーン
- 0付近:平均的な状態
ただし、これはあくまで「目安」です。単純に「+100を超えたから売る」「-100を割れたから買う」としてしまうと、強いトレンドに逆らってしまい、何度も逆張りで踏み上げられるリスクがあります。
株式でのCCI活用:トレンド+押し目・戻り目狙い
日本株の個別銘柄を例に考えます。例えば、日足で明確な上昇トレンドにあるグロース株を監視しているとしましょう。価格は20日移動平均線より上で推移し、出来高も増加傾向にある銘柄です。
このような銘柄にCCIを重ねてみると、上昇トレンドの中で短期の調整が入るタイミングでCCIが一時的に0やマイナス圏に沈み、その後再び+100に向かって戻っていく動きが見られることがあります。
一つの応用として、以下のようなイメージの戦略が考えられます。
- 上昇トレンド中(価格が主要移動平均線より上)であることを前提にする
- CCIが一時的に0〜−50程度まで下がる短期調整を待つ
- その後、CCIが再び0を上抜けて上向きになったタイミングを押し目買いの候補とする
このとき重要なのは、「CCI単体で逆張りをしない」ことです。あくまでトレンド方向(上昇トレンドなのか、下降トレンドなのか)を別の要素で確認したうえで、CCIは「調整の深さ」と「再度トレンド方向に戻り始めたサイン」を見る補助的なツールとして扱う方が安定しやすくなります。
FXでのCCI活用:レンジとブレイクを見分ける
FXの主要通貨ペア(例えばドル円)では、トレンドが続く局面と、レンジ相場が長く続く局面が交互に訪れます。CCIは、このレンジとトレンド初動の切り替わりを探る上で役立つことがあります。
ドル円の1時間足でCCI(期間20)を表示したとします。価格が一定のレンジに収まっているとき、CCIも -100〜+100 の範囲で行き来することが多く、極端な値が出にくくなります。やがて重要な経済指標発表やイベントをきっかけにレンジをブレイクすると、CCIが+150や−150といった極端な値を一気に付けることがあります。
この特性を利用して、以下のような考え方ができます。
- レンジ相場では、CCIが+100付近で売り、-100付近で買いという逆張り寄りの戦略が検討できる
- 一方で、レンジの上抜け・下抜けと同時にCCIが一気に±150以上に振れた場合、それを「トレンド転換の初動」とみなし、むしろブレイク方向への順張りを検討する
このように、FXでは時間軸やボラティリティが変わりやすいため、CCIの期間設定を固定せず、14〜50程度の範囲で通貨ペアや時間軸ごとに調整しながら使うと、相場のクセに合わせやすくなります。
暗号資産でのCCI活用:ボラティリティの大きさに注意
ビットコインやアルトコインなどの暗号資産市場は、株やFXに比べてボラティリティが大きく、CCIも非常に大きな値を取りやすいという特徴があります。例えば、ビットコインの日足CCIが+300、-300といった極端な水準に達することも珍しくありません。
このような市場では、株式やFXと同じ感覚で「+100を超えたら売られ過ぎ」といった判断をすると、早すぎる利確や度重なる逆張りの損切りに繋がるおそれがあります。そこで、暗号資産では閾値自体を相場に合わせて調整することが重要です。
- 例1:ビットコインの日足では「+200以上で買われ過ぎ」「-200以下で売られ過ぎ」と見る
- 例2:ボラティリティの低いステーブルコインペアでは、+100/−100の従来水準でも十分機能することがある
また、暗号資産では24時間取引でギャップが少ない分、「急騰・急落後にCCIが極端な値から0方向へ戻り始める動き」を、反発・反落のサインとして注目するトレーダーもいます。具体的には、CCIが−250から−150、−100と戻っていく過程で短期の戻りを狙うなど、段階的にポジションを調整するアプローチが考えられます。
期間設定とパラメーター調整の考え方
CCIの標準的な期間は14または20とされることが多いですが、一律に正解があるわけではありません。むしろ、対象市場・時間軸・トレードスタイルによってチューニングすることが前提と考えた方がよいです。
- 短期トレード(デイトレ・スキャルピング):7〜14期間の短め設定で、感度を高めて素早いシグナルを重視
- スイングトレード:20〜40期間程度で、ノイズを減らし、トレンドの押し目・戻りをじっくり捉える
- 長期トレンドフォロー:50〜100期間程度で、中長期トレンドの過熱感を確認する用途
パラメーター調整の基本は「チャートを過去に遡って眺め、CCIのシグナルが自分のトレードの考え方と整合的かどうかを確認する」ことです。バックテストや検証を通じて、「この銘柄、この時間軸では、CCIが−80から0を上抜けたタイミングが相性が良い」といった、自分なりのルール候補を見つけていきます。
ダマシを減らすためのフィルターの考え方
CCIを単独で使うと、特にレンジ相場やニュースで乱高下した局面でダマシが多くなります。これを軽減するため、以下のようなフィルターを組み合わせる方法が考えられます。
移動平均線との組み合わせ
トレンド方向を移動平均線で確認し、CCIはエントリータイミングの微調整に使う構成です。
- 価格が200日移動平均線より上にあるときは買い目線に限定
- CCIが一時的にマイナス圏に沈んだ後、再び0を上抜ける動きを押し目の候補とする
これにより、強い下落トレンドの中での安易な逆張り買いを避けやすくなります。
出来高・ボラティリティとの組み合わせ
CCIが極端な値を示しているにもかかわらず、出来高が極端に少ない場合、そのシグナルは信頼性が低い可能性があります。また、ATRなどのボラティリティ指標と組み合わせることで、「ボラティリティが急拡大したタイミングのCCI極端値」を、トレンド転換や一時的なオーバーシュートとして捉えることができます。
シンプルなCCI戦略の設計イメージ
初心者でもイメージしやすいよう、あくまで学習目的の例として、シンプルな戦略案を組み立ててみます。以下は株式のスイングトレードを想定した一例です。
- 対象:日足で上場企業の個別株
- トレンド判定:50日移動平均線が上向き、かつ株価が50日線より上にある銘柄をピックアップ
- CCI設定:期間20
エントリーの考え方は以下の通りです。
- CCIが0〜−80あたりまで下落する短期調整を待つ
- その後、CCIが−80から−40、0へと戻り、0ラインを上抜けたタイミングを買いの候補とする
- 利確はCCIが+100〜+150に達した付近、または直近高値付近を目安とする
- 損切りは、エントリー後にCCIが再び−100以下に沈み、かつ株価が50日線を明確に割り込んだ場合など、あらかじめルール化しておく
このようなシンプルなルールでも、過去チャートで検証すると「トレンドに沿った押し目を比較的うまく捉えられる局面」と「うまく機能しない局面」がはっきり分かれます。大切なのは、実際の資金を投入する前に十分な検証・シミュレーションを行い、自分が許容できるリスクと損益のバランスかどうかを確認することです。
CCIダイバージェンスにも注目する
より一歩踏み込んだ使い方として、CCIと価格のダイバージェンス(逆行)に注目する方法があります。例えば、価格が高値を更新しているのに、CCIの高値は徐々に切り下がっている場合、上昇トレンドの勢いが鈍っている可能性があります。
このような局面では、「すぐに売る」というよりも、「これまでより積極的に買い増ししない」「利確ポイントを意識しておく」といったリスク管理のシグナルとして扱うとよいでしょう。暗号資産などボラティリティの高い市場では、CCIダイバージェンスが現れた後に急落が起こるケースもあるため、ポジションサイズを調整する判断材料として活用する方法もあります。
CCIを長く使うための心構え
CCIは、構造がシンプルで応用範囲も広く、初心者から上級者まで使われている指標です。しかし、どんな指標にも「得意な相場」と「苦手な相場」があります。レンジが続くときに強く機能する設定もあれば、トレンド相場でこそ真価を発揮する組み合わせもあります。
重要なのは、「一つの設定・一つのルールで全ての相場に勝とうとしない」ことです。株、FX、暗号資産など、それぞれの市場の特性に合わせて、時間軸やパラメーターを調整し、バックテストや検証を重ねながら、自分なりの使い方を少しずつ作り上げていく姿勢が、最終的な成果に繋がりやすくなります。
CCIはあくまで「価格の偏り」を数値化した道具にすぎません。最終的な投資判断は、ご自身の資金状況やリスク許容度を踏まえて、総合的に行うことが大切です。


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