CCI(Commodity Channel Index)は、相場の「行き過ぎ」を数値化して教えてくれるオシレーター系指標です。名前に「コモディティ」と付きますが、実際には株式、FX、暗号資産など、ほぼすべてのチャートでそのまま利用できます。
本記事では、CCIの計算式の中身をざっくり理解しつつ、具体的な売買タイミングの考え方、株・FX・暗号資産それぞれでの活用例、そしてよくある失敗パターンまで、実務的な視点で解説します。
CCIとは何か:相場の「平常運転」からのズレを測る指標
まずはCCIのイメージを押さえます。CCIは「現在の価格が、過去一定期間の平均価格からどれくらい乖離しているか」を指数化した指標です。典型的には、+100以上で「買われ過ぎ」、-100以下で「売られ過ぎ」と解釈します。
シンプルに言うと、CCIが高いときは「最近の値動きにしてはかなり強い上振れ」、CCIが低いときは「最近の値動きにしてはかなり強い下振れ」が起きているということです。
ざっくりした計算イメージ
正確な計算式はやや複雑ですが、イメージとしては以下の流れです。
- 各足の「典型価格」(高値+安値+終値)÷3を計算する
- 一定期間(例:20期間)の典型価格の平均を取る
- 現在の典型価格が、この平均からどれだけ離れているかを見る
- その乖離を平均偏差で割って標準化した値がCCI
つまりCCIは、「いまの価格水準は、直近の平均から見てどれくらい異常値なのか」を相対的なスケールで示していると言えます。
代表的なパラメータ設定と時間軸ごとの特徴
CCIの期間設定は、戦略や時間軸によって変わります。よく使われる例を挙げます。
- 短期トレード:14期間、20期間
- スイングトレード:20〜50期間
- 長期トレンド把握:100期間以上
短期ほどCCIの動きは激しくなり、シグナルも多くなります。逆に長期設定ではシグナル回数は減る代わりに、「本当に大きな行き過ぎだけ」を拾うようになります。自分が見ている時間軸(5分足、1時間足、日足など)と、どれくらいの頻度でトレードしたいのかを合わせて設定することが重要です。
基本的なトレード発想:逆張りと順張りの二つの使い方
CCIは「逆張り」にも「順張り」にも使えます。どちらを選ぶかで売買ルールは大きく変わります。
1. 逆張りアプローチ:極端な行き過ぎからの戻りを狙う
もっとも分かりやすいのは逆張りです。典型的なルールは以下のような形です。
- CCIが-100を下回る(売られ過ぎ)
- その後、CCIが-100を下から上に抜けるタイミングで買い
- CCIが+100に接近、または再び0ラインを割り込んだら利益確定
この発想は「行き過ぎた下落はいずれ平均に戻るだろう」という平均回帰の考え方です。レンジ相場やそこそこボラティリティのある横ばい相場で特に機能しやすい一方、トレンドが強く出ている局面では「逆張りが踏み上げられ続ける」リスクがあります。
2. 順張りアプローチ:勢いの加速に乗る
CCIはトレンドフォローにも使えます。例えば以下のようなルールが考えられます。
- CCIが+100を上抜けたら「強い上昇トレンドが始まった」とみなして買い
- CCIが0ラインを下抜けるまで保有し続ける
- 売りトレンドの場合は逆向きに考える
この場合、+100以上を「買われ過ぎ」とみなして即座に逆張りするのではなく、「強いトレンドの証拠」と解釈してトレンド方向に乗るという考え方です。トレンド相場での取りこぼしを減らしたい場合に有効です。
株式市場でのCCI活用例:個別株スイングトレード
ここからは具体的な活用例を見ていきます。まずは日足ベースの日本株スイングトレードを想定した例です。
例:出来高の多い主力株を対象にした逆張り戦略
条件として、TOPIXや日経平均の構成銘柄など、出来高がある程度安定している銘柄に絞ります。日足CCI(期間20)を使い、以下のようなルールを考えます。
- 日足CCIが-150以下に沈む(かなり強い売られ過ぎ)
- 翌日、価格が前日安値を更新せず、かつCCIが-150から上向きに反転し始めたら「打診買い」
- CCIが0ラインを超えたら半分を利益確定し、残りは+100接近まで保有
ここでは「単に-100を少し割った程度」ではなく、「-150以下」と条件をきつくすることで、シグナル回数を減らしつつ、より強い行き過ぎだけを狙う設計にしています。
例:トレンドフォロー型のエントリー絞り込み
逆に、トレンド系指標(移動平均線やADXなど)で上昇トレンドと判定された銘柄だけを対象にし、その中でCCIが一時的に-100近辺まで下がったところを押し目として拾う、という使い方もあります。
この場合のルール例は以下の通りです。
- 日足で25日移動平均線が上向きかつ終値が25日線より上にある銘柄のみスクリーニング
- CCI(期間20)が-100近辺まで下がったタイミングを「押し目候補」とみなす
- 翌日、終値が前日高値を超えたら買いエントリー
トレンドフォローと逆張りの「いいとこ取り」を狙った設計で、「上昇トレンドの中の一時的な売られ過ぎ」をCCIで定量化するイメージです。
FXでのCCI活用例:レンジ相場での短期逆張り
FXでは、特にアジア時間のレンジが続きやすい通貨ペアでCCIが機能しやすい場面があります。ここでは1時間足を使った短期逆張り例を見てみます。
例:ドル円1時間足のレンジ逆張り
想定ルールは以下の通りです。
- 1時間足でCCI(期間20)を表示
- アジア時間帯で高値・安値が比較的狭いレンジに収まっている日を対象にする
- CCIが+150以上で「買われ過ぎ」、-150以下で「売られ過ぎ」とみなす
- +150以上から下向き反転したタイミングで売り、-150以下から上向き反転したタイミングで買い
- 利確目安は直近のレンジ中央付近、またはCCIが0ラインを超えたところ
重要なのは、「トレンドが強く出ていない日だけに絞る」ことです。例えば、欧州時間やニューヨーク時間で重要指標が予定されている日は、レンジブレイクが起きやすく、逆張りが機能しづらくなります。カレンダーやニュースを確認し、あくまで「流れが落ち着いている時間帯」に限定して使うのが現実的です。
暗号資産でのCCI活用例:ボラティリティを味方につける
暗号資産は値動きが激しく、CCIの「行き過ぎ」シグナルが頻繁に点灯します。そのまま逆張りすると連続して損切りになりやすいので、フィルターを工夫することが重要です。
例:4時間足CCIと出来高フィルターの組み合わせ
ビットコインや主要アルトコインの4時間足を対象に、以下のようなルールを考えます。
- 4時間足CCI(期間30)を使用し、+200以上・-200以下を極端な行き過ぎとみなす
- 買いの条件:CCIが-200以下から反転し、かつ反転した足で出来高が直近20本平均以上
- 売りの条件:CCIが+200以上から反転し、かつ反転した足で出来高が直近20本平均以上
- 利確は、CCIが0ラインに到達した時点で半分、残りはトレーリングストップなどで管理
ここでのポイントは、「極端な行き過ぎ」かつ「出来高が伴った反転」に限定している点です。ボラティリティが高い市場では、通常の+100/-100ではシグナルが多すぎるため、閾値を広げてノイズを減らす工夫が有効です。
CCIと他の指標を組み合わせる考え方
CCI単体でもトレードは可能ですが、他の指標と組み合わせることでダマシを減らせます。代表的な組み合わせ方をいくつか紹介します。
1. 移動平均線との組み合わせ
トレンド判定は移動平均線、押し目・戻りのタイミングはCCIという役割分担です。
- 日足25日移動平均線が上向き&終値が25日線より上:上昇トレンド
- この状態でCCIが-100近辺まで下がった局面を押し目候補とする
- ローソク足が陽線に転じたタイミングなど、価格アクションも合わせてエントリー
これにより、「トレンド方向」と「エントリータイミング」を分けて考えられるため、感情に左右されにくいルールになります。
2. ADX・DMIとの組み合わせ
ADXやDMIはトレンドの強さを測る指標です。トレンドが強いときは逆張りを控え、弱いときだけCCI逆張りを使うといったフィルタリングが可能です。
- ADXが25未満:トレンドが弱い(レンジ傾向)
- このときのみCCIの逆張りシグナル(±100〜150)を有効とする
- ADXが25以上:トレンドが強いので、CCIは順張り方向のエントリーのみに使う
このように、相場の状態を分類したうえでCCIの役割を決めると、指標の使い分けが明確になりやすくなります。
よくある失敗パターンとリスク管理のポイント
CCIを使ううえで、初心者が陥りやすいポイントを整理します。
1. 「売られ過ぎ=すぐ反発」と決めつける
CCIが-100以下、-150以下になっても、そのまま下落が続くことは珍しくありません。特に悪材料が出た直後の株や、トレンドが強く出ている暗号資産では、「売られ過ぎ」状態が何本も続くことがあります。
対策としては、
- 反転のパターン(陽線包み足・ピンバーなど)を待つ
- 分割エントリーでポジションサイズをコントロールする
- そもそもトレンドが強すぎる場面では逆張りを見送る
などを組み合わせることが有効です。
2. 損切りラインを決めないままエントリーする
どれだけ精度の高いルールを作っても、100%の勝率はありえません。CCIの行き過ぎシグナルに基づく逆張りは、特に損切りルールを明確に決めておかないと、含み損を抱えたまま動けなくなるリスクがあります。
例えば、
- 直近安値(または高値)を明確に割り込んだら損切り
- エントリー価格から2〜3ATR分逆行したら損切り
といった数値的なルールを決めておくと、感情に流されにくくなります。
3. 時間軸を混在させて混乱する
1時間足でシグナルを見ているのに、5分足の動きで一喜一憂してしまう、というのはよくあるパターンです。CCIをどの時間軸で使うのかを決めたら、基本的にはその足が確定するまで待つことが重要です。
短期足のノイズを見過ぎると、シグナルの信頼性がどんどん下がり、「ルールではなく感覚で動く」状態に陥りやすくなります。
自分のスタイルに合わせてCCIを調整する方法
最後に、CCIを自分のトレードスタイルに合わせるための調整ポイントをまとめます。
- 期間設定:短くすると敏感だがノイズも増える。まずは20〜30から試し、バックテストで検証しながら調整する
- 閾値(±100、±150、±200など):ボラティリティに応じて変える。ボラが高い暗号資産は閾値を広く取るとノイズが減る
- フィルター:トレンド系指標(移動平均線、ADXなど)や出来高を組み合わせ、使う場面を限定する
- 時間軸:自分が無理なく監視できる時間軸を選び、その足が確定してから判断する
重要なのは、「まずはシンプルなルールを作り、小さなロットで試しながら、少しずつ自分に合うようにチューニングしていく」ことです。一度で完璧なルールを作ろうとするよりも、経験を重ねながら改善していく方が、結果的に長く続けられるトレードスタイルになりやすいです。
CCIは、「いまの価格が過去の平均から見てどれくらい行き過ぎているのか」を教えてくれる心強いツールです。株、FX、暗号資産のどの市場でも応用可能なので、自分の取引している銘柄や通貨ペアのチャートに表示させ、過去チャートをじっくり観察しながら、自分なりのパターンを見つけていくことをおすすめします。


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