出来高で勝つ暗号資産トレード――RVOL・VWAP・スパイク検出でフェイクを見抜く実践フレーム

テクニカル分析

価格は意見、出来高は行動です。暗号資産市場では、小さな資金で価格を動かす「薄い板」と、
巨大な成行で一気に掃除される「流動性の穴」が共存します。値幅だけを追うとフェイクブレイクに巻き込まれますが、出来高を重ねると「どの動きに本物の参加者が付いてきているか」が見えます。本稿は、出来高を基軸にエントリーと手仕舞いを定量化するための実務フレームを提示します。

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出来高とは何か――「どれだけ取引されたか」の質を見る

出来高(ボリューム)は、一定期間に成立した取引量です。ローソク足1本あたりの出来高、
取引所全体の出来高、先物と現物の出来高差など、切り口は複数あります。注意すべきは、
「ただ多い/少ない」ではなく、平時と比べてどれだけ異常か(相対性)と、どちらの方向に優位が出たか(インパクト)です。
出来高は価格の遅行指標と言われがちですが、薄い板ではむしろ先行の性質を持ちます。
止まるはずの価格帯で止まらないとき、背後では出来高の偏りが必ず起きています。

なぜ出来高が効くのか――マイクロストラクチャの視点

大口の参加者は目立たずに約定させるため、板の流動性のポケットを探します。
アルゴはVWAP/TWAPで分割し、流動性の湧く時間帯(ロンドン入り/NYオープン)に寄せます。
このとき、相対出来高(平常比で何倍か)が跳ね、かつ押し戻されにくい推進が発生します。
出来高の「質」を読むとは、いつ・どの価格帯で・どの程度の相対量が流れたかを観察することです。

3つの基軸指標:RVOL・VWAP・OBV

相対出来高(RVOL)

定義:RVOL = 当日の各バー出来高 / 過去N日同時刻の平均出来高
Nは20〜30が実務的。1.5倍以上で「注目」、2.0倍以上で「イベント級」。
RVOLは時間帯バイアスを消し、平常時との異常度を測るのに最適です。

VWAP(出来高加重平均価格)

定義:VWAP = Σ(価格×出来高) / Σ出来高。機関は執行品質をVWAP乖離で評価します。
価格がVWAPを上抜け、RVOL>1.5で定着するなら、受給が強く買いが主体となっている可能性が高い。
逆にVWAPを下抜けたまま戻せないときは売り圧の持続を示唆します。

OBV(On-Balance Volume)

定義:終値が上昇のバーで出来高を加算、下落で減算、変化なしで据え置き。
価格がレンジでもOBVが上向けば、静かな集めが進むサイン。ダイバージェンスの検出に有効です。

実践1:時間帯×RVOLで「本物の動き」を抽出する

暗号資産は24時間市場ですが、出来高は均一ではありません。概ね、東京(08:00–12:00 JST)、
ロンドン(16:00–20:00 JST)、NY(22:30–02:00 JST)に山ができます。
同一銘柄でも時間帯で平常比が大きく異なるため、絶対出来高ではなくRVOLを使います。

手順
1) 5分または15分足でRVOLを計算。2) RVOL>=1.5のバーだけを抽出。
3) 直近高安のブレイクと組み合わせ、ブレイクの直後2〜4本が連続してRVOL>=1.2なら継続性あり。
4) 連続性が途切れた時点で半分利確、VWAP割れで残りを手仕舞い。

狙い所:ロンドン入り直後とNY現物株オープン前後は、アルゴの執行が重なりやすい。
逆に東京午前の薄い時間はフェイクが多いので、RVOLフィルターで選別します。

実践2:VWAPと「押し目三段」で均値回帰を取る

トレンド相場でも価格はVWAPへ回帰します。VWAPからの乖離率を見て、
RVOLが落ちるタイミングで押し目や戻り目を狙います。

設計
(1) 上昇局面での押し目:価格がVWAPから-0.5%〜-1.2%の範囲に落ち、RVOLが1.0付近まで低下。
足の安値を割らない小さな陽線が出たら成り買い/逆指値買い。
損切りは押し目起点の下1ATR。利確は直近高値手前とVWAP+0.5%の二段。

(2) 下降局面の戻り目:価格がVWAPから+0.5%〜+1.0%へ乖離、RVOLが低下。
小陰線で戻り止まりを確認し、逆指値売り。VWAP再タッチまたは乖離縮小で決済。

実践3:出来高スパイク検出でフェイクブレイクを避ける

フェイクの多くは「最初の太い棒」で終わります。本物はその後も中程度の棒が連続します。
統計的には、直近50本の出来高の95パーセンタイルを超える「スパイク1本」の後、
次の3本の合計出来高が直近10本平均の3倍未満なら「フェイク疑い」。この条件では、
ブレイクに追随しない、あるいは即時の微益撤退に切り替えます。

実装のヒント:移動平均ではなくパーセンタイルを使うと、歪みの大きい分布に頑健です。
5分足/15分足の両方でスパイク判定が一致したときだけエントリーするマルチタイムフレーム一致で精度を上げます。

実践4:OBVダイバージェンスで「静かな集め」を拾う

価格は水平、OBVだけ上向き――この乖離は静かな集めの典型です。
レンジ上限を1回で抜けないときでも、OBVが高値を更新し続けるなら、2回目のトライで抜けやすい。
このときRVOLが1.2以上へ上がるのを待ってブレイクに同乗し、失敗時はレンジ内復帰で撤退。

銘柄別の出来高特性:BTC・ETH・アルト

BTCは板が厚いぶん、RVOLの閾値をやや高く(1.7)設定しないとノイズを拾います。
ETHはイベント(メジャーアップグレード、先物SQ)で出来高の偏りが顕著。
主要アルトは出来高の「息切れ」が早いので、継続判定の窓を短く(2本連続で十分)します。
時価総額が低い銘柄はスリッページのコストが成果を食うため、最初はBTC/ETHで型を身につけるのが得策です。

取引所と板厚:手数料・スプレッド・約定品質

出来高戦略は細かい出入りが多く、総コストの最小化が勝ち負けを分けます。
手数料(メイカー/テイカー)、実効スプレッド、約定遅延、注文のすべり(スリッページ)を合算して
1トレードの損益期待値に反映させます。出来高が薄い時間帯に成行を多用すると、
統計上のエッジが手数料で消えます。RVOLフィルターは、コスト対効果の取れる時間帯だけ動くための「門」です。

リスク管理:ポジションサイズと撤退動線

出来高が高いからといってフルレバは禁物です。ポジションサイズは、
(損切り幅×想定スリッページ×為替影響)で許容損失におさめます。
実務では、半分利確→VWAP割れ(または直近小安値割れ)で残り決済の二段撤退が効きます。
出来高が急減したら、たとえ未達の利確目標があっても時間損切りを入れるべきです。

バックテスト雛形:最小限の検証で武器にする

最低限チェックすべきは、(1) エントリー条件の再現性(RVOL閾値、VWAP乖離、スパイク判定)
(2) 平均RR(リワード/リスク比)と勝率 (3) コスト込みの損益曲線の一貫性 (4) 相場局面別(トレンド/レンジ)の分布。
TradingViewならPine Scriptのta.vwapと過去バーの出来高平均で簡易に再現できます。
表計算でも、時刻別の出来高平均を作り、当日のバー出来高で割ればRVOLは求まります。

よくある失敗と対策

絶対出来高だけを見る:時間帯の影響を無視し誤判定。→必ずRVOL化する。
スパイク1本で飛び乗る:継続性のチェックなし。→次の3本合計の閾値でフィルター。
VWAPを無視:執行の重心を見落とし逆張りが刺さる。→乖離率とRVOLを同時監視。
薄い銘柄で過剰執行:スリッページ負担でエッジ蒸発。→BTC/ETH中心、または板厚の時間帯に限定。
損切りの遅延:出来高減少=支援者不在。→時間損切りのルール化。

チェックリスト――エントリー前の5項目

1) 今日の時間帯別RVOLマップは? 2) ブレイク直後の連続RVOL>1.2は出ているか?
3) 価格はVWAPのどちら側で、乖離率は? 4) スパイク後の3本合計出来高は閾値を超えているか?
5) 手数料・スプレッド込みで期待値がプラスか?

ミニ戦略サマリー(雛形)

RVOL継続ブレイク:RVOL>=1.5のブレイク、2〜4本連続でRVOL>=1.2。押し目はVWAP-0.5%。
半分利確→VWAP割れ撤退。
VWAP均値回帰:乖離±0.5%〜1.2%で逆張り、RVOL低下でエントリー、RVOL再上昇で伸ばす。
スパイク否定の即時撤退:スパイク後3本合計が直近10本平均×3未満なら微益/微損で撤退。

まとめ――「平常比」を武器にする

出来高は単体で魔法の指標ではありません。しかしRVOLで平常比を捉え、VWAPで執行の重心を測り、
スパイクの継続性でフェイクを除外すれば、薄い板のノイズは大きく減ります。
まずはBTC/ETHで型を作り、時間帯と銘柄特性に合わせて閾値を微調整してください。
指標はシンプルに、執行は機械的に――それが出来高戦略の勝ち筋です。

FAQ:実務での細かな疑問

RVOLのNは20と30のどちらが良い?

短期なら20で機動力、ブレが気になるなら30で安定を取りましょう。検証では銘柄別に最適値が異なりますが、
±5の範囲で感度は大きく変わりません。まずは20で開始し、過剰なシグナルが出るなら30に引き上げるのが妥当です。

出来高データの信頼性は?

取引所間で出来高の定義や集計タイミングが異なります。ひとつの取引所(例:メインで執行する所)に固定して観測し、
総合指標はあくまで補助に。先物主導の動きが強い時間帯は、現物だけでなく無期限先物の出来高も併読します。

どの足が最適?

ブレイクの継続判定は5分足、ノイズ除去は15分足。両方一致を要求することでダマシを削れます。
1分足はスリッページの影響が相対的に大きく、初心者は非推奨です。

イベント日はどうする?

マクロ指標やFOMCなどのイベントで出来高は極端化します。RVOL閾値を0.3〜0.5引き上げ、初動は見送る。
二波目のRVOL再上昇とVWAP再獲得を待つのが安全です。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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