出来高を武器にする:VWAP・アンカードVWAP・CVD・OBV・出来高プロファイルで読み解く暗号資産トレード

テクニカル分析

価格だけを見ていても、相場の「本音」は見えません。出来高(ボリューム)は、どの価格帯でどれだけの取引が積み上がったかを示し、機関・大口・個人の力関係を可視化します。本稿では、暗号資産(ビットコイン/イーサリアム/主要アルト)で実務的に使える出来高分析を、VWAP・アンカードVWAP・CVD・OBV・出来高プロファイルの5本柱で体系化し、初心者でも再現しやすい「具体的手順」と「売買プラン」を提示します。

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出来高の基礎:なぜ“量”が価格の嘘を暴くのか

価格は一瞬で作れますが、出来高は積み上げ型です。薄い板での急騰は簡単に剥がれますが、厚い出来高帯を伴う上昇は押し目で買い支えが入りやすい。逆に、出来高の裏付けが乏しい上昇は、ニュースやSNSの熱気が冷めると失速しがちです。まずは以下の前提を押さえてください。

  • 現物 vs 先物:先物はレバレッジと清算(清算売買)が出来高を増幅します。現物の出来高が伸びているかも合わせて確認すると、上昇の「地合いの良さ」を測れます。
  • 集約の罠:出来高は取引所ごとに異なります。総合チャート(アグリゲート)主要所の個別を両睨みすることでノイズを低減できます。
  • フェイク・ボリューム:一部の板寄せ・ボットにより瞬間的に出来高が膨らむケースがあります。値動き・スプレッド・建玉の変化と併せて整合性をチェックします。

ツールの準備(無料でOK)

TradingView等のチャートで以下をセットします。

  1. 日足・4時間足・1時間足にVWAP(セッションVWAP、標準偏差バンド付き推奨)。
  2. イベント起点にアンカードVWAP(AVWAP)(半減期、重要アップグレード、上場日、直近のスイング高安など)。
  3. OBV(On Balance Volume)
  4. CVD(Cumulative Volume Delta):買い成約量−売り成約量の累積(対応インジケータを利用)。
  5. 出来高プロファイル(VPVR/VPSV)POC・VAH・VALと高出来高帯(HVN)/低出来高帯(LVN)。

出来高系はタイムフレーム間の整合が重要です。上位足(4時間・日足)で方向、下位足(15分・5分)でタイミングを取ります。

VWAP:プロの平均取得コストを可視化

VWAP(出来高加重平均価格)は「出来高で重み付けした平均約定価格」です。価格がVWAPのにあれば買い手優位、なら売り手優位と解釈し、VWAP±σ(標準偏差バンド)を併用して逆張り・押し目を狙います。

基本戦略(セッションVWAP):

  • トレンド相場:VWAP上で推移→VWAPまでの押しで買い。利確は+1σ、深押しは-1σ割れで撤退
  • レンジ相場:VWAPを中心に上下反復→±1σ付近の反転を短期逆張り。

アンカードVWAP(AVWAP):イベント基点の“真のコスト”

半減期・大型アップグレード・主要取引所上場・ニュース急騰などイベントのローソク足にアンカーを打つと、その後の参加者の平均取得コストがわかります。AVWAP上で支えられ続ける限り、強気トレンドは継続しやすい。

具体的売買プラン:上位足(4時間)でイベントAVWAP上→下位足(15分)でAVWAPへの戻りを待ちエントリー。直近のLVN下抜けで損切り、VAHや+1σで分割利確。

OBV:価格より早く曲がる“累積出来高の傾き”

OBVは上昇日の出来高を加算、下落日の出来高を減算して累積する指標。価格は横ばいでもOBVが上向きなら資金が静かに流入、逆に価格が高値更新でもOBVが切り下がるなら上昇の息切れを示唆します。

使い所:トレンド初動のダイバージェンス検出。OBVが高値更新→価格が追随して高値更新、の順番を狙う。

CVD:買いと売りの実弾フロー

CVD(Cumulative Volume Delta)成行買い−成行売りの累積。先物主導の急伸時にCVDが増えない(あるいは低下)なら、ショートの踏み上げや薄い板の釣り上げの可能性。現物と先物のCVDの差異を見ると、本物の需要か判別しやすくなります。

  • 価格↑・CVD↑:健全な上げ。
  • 価格↑・CVD↓:弱い上げ(警戒)。
  • 価格↓・CVD↓:健全な下げ。
  • 価格↓・CVD↑:下押し後の買い集め(反発準備)。

出来高プロファイル:価格帯ごとの“厚み”を読む

VPVR/VPSV価格帯別出来高を可視化します。最も取引が集中した価格がPOC(Point of Control)、その上下の価値範囲がVAH/VAL。厚い帯(HVN)は滞留・往来、薄い帯(LVN)は一気に抜けやすい通り道です。

戦術:POCの上で推移→押し目買い優位。LVNを上抜けた直後は順張りで伸びを取りに行く。戻り売りならVAH付近の失速を狙う。

5指標の組み合わせ:勝ちやすい“絞り込み条件”

  • 方向:4時間足で価格がセッションVWAP・イベントAVWAPの両方より上
  • 需給:CVDが上向き、OBVも切り上がり。
  • 位置:POC上・LVNを上抜け済み。
  • タイミング:15分足でVWAP押し、出来高萎み→反発で成行、または指値でAVWAP±小幅に置く。

4つ以上が合致したときのみエントリーし、条件が崩れたら撤退。“待つ”ことが勝率を上げます。

売買ルール(例):VWAP押し目×AVWAP支え

  1. 4時間足:価格がイベントAVWAPとセッションVWAPの両方より上
  2. VPVR:直上のLVN上抜け済み、POCより上で推移
  3. CVD・OBV:共に上向き、直近高値に対しダイバージェンスなし
  4. 15分足:VWAPまでの押しを待つ。押しで出来高が萎み→反発足で参入
  5. 損切り:エントリー安値−ATR(14)×1.2 もしくはAVWAP明確割れ
  6. 利確:+1σ到達で半分、VAHや直近のHVN上限で残りトレーリングは直近スイング安値下。

逆張りの注意:出来高の「萎み」を待つ

下げ止まりは出来高のピーク→萎み→陽線の順で出やすい。ピーク直後に飛び込むと投げの余韻で踏まれがち。出来高が縮んでから確認買い。CVDが反転しないなら見送る勇気を。

具体シナリオ(仮想)

BTCUSDT、4時間足。半減期足にAVWAPを設定。価格はAVWAPとセッションVWAPの上で推移、直上のLVNをブレイク。CVD・OBVとも切り上がり。15分足に落とすとVWAPまで押して出来高が萎み、反発陽線。ここでロング。損切りはAVWAP明確割れ、利確は+1σとVAHで分割。以降はスイング安値下にトレーリング。

チェックリスト(エントリー直前)

  • 上位足でVWAP・AVWAP上
  • CVD・OBVは上向き?ダイバージェンスは?
  • VPVRでPOC上・LVN上抜け済み?
  • 下位足でVWAP押し→出来高萎み→反発を確認?
  • 損切り幅≦想定利幅/2?R≥2を確保?

よくある失敗と回避策

  • VWAPだけで判断:CVD/OBV/VPVRで裏取り。
  • LVN直下で逆張り:抜けやすいので待つ。ブレイク後の押しで。
  • 出来高ピークに飛び乗り:萎み→反発まで待つ。
  • 損切りを置かない:→ATR基準かAVWAP割れで機械的に撤退。

ミニ検証のやり方(手動)

  1. チャートをリプレイモードにし、イベントAVWAPを起点設定。
  2. VWAP押し→反発陽線で仮想エントリー。
  3. CVD・OBVの傾き、VPVRの位置関係を記録。
  4. +1σ・VAH到達で分割利確、AVWAP割れで損切り。
  5. 20〜30トレード分の勝率・PF・平均Rを集計。

資金・リスク管理(簡潔フレーム)

  • 1トレードのリスク:口座残高の0.5〜1.0%に固定。
  • 損切り距離ATR(14)×1.2を目安。
  • 最大同時ポジション:相関を考慮し2銘柄まで。
  • 連敗ストップ:3連敗でその日の新規停止

実装のコツ:再現性を担保する

  • 時間軸の固定(4Hで方向、15mでタイミング)。
  • 指標の閾値を明文化(例:AVWAP割れ=撤退)。
  • 分割利確の比率を固定(50%→25%→残りトレール)。
  • 記録テンプレートで同じ書式を徹底。

トレード記録テンプレート

銘柄/日時/方向(L/S)/上位足(VWAP/AVWAP位置)/CVD・OBV傾き/VPVR位置(POC/VAH/VAL/HVN/LVN)/エントリー根拠(15mのVWAP押し・出来高萎み・反発陽線)/損切り根拠(AVWAP割れ or ATR)/利確ポイント(+1σ, VAH, トレール)/結果(R, PFへの寄与)/改善メモ。

まとめ:30分で整う“出来高ドリブン”環境

  1. チャートにVWAPとイベントAVWAP、OBV、CVD、VPVRをセット。
  2. 4Hで方向、15mでVWAP押し+出来高萎み+反発陽線。
  3. AVWAP割れで損切り、+1σ/VAHで分割利確、残りはトレール。
  4. 日次で記録→週次振り返りで勝ちパターンを濃くする。

出来高は「資金の足跡」です。価格の物語に、量の裏付けを加えれば、無駄なエントリーが減り、チャンスだけを拾えるようになります。

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