逆三尊予兆足で底打ちを先読みする実践ガイド

テクニカル分析
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逆三尊予兆足とは何か

逆三尊予兆足とは、チャート上で逆三尊(逆ヘッドアンドショルダー)パターンが完成する前段階に表れやすいローソク足の組み合わせを指す呼び方です。まだ明確な「逆三尊」の形にはなっていないものの、ローソク足の安値の切り上がり方や下ヒゲの出方に注目することで、相場の底打ちとトレンド転換の可能性を早めに察知しようとする考え方です。

通常の逆三尊は、左肩・ヘッド(中央の安値)・右肩の3つの谷を持ち、ネックラインを明確に上抜けしたところが買いサインとされます。一方で逆三尊予兆足は、まだ谷の形がはっきり出ていない段階で、ローソク足の挙動から「売り圧力が限界に近づいている」「下落トレンドが弱まりつつある」という手掛かりを読み取るアプローチです。

このような「予兆」の段階で相場の変化を読み取ることができれば、完成したパターンを待つトレーダーよりも有利な価格帯で仕込みを始めることができる可能性が高まります。ただし、その分だけダマシも増えるため、リスク管理と組み合わせた運用が必須になります。

典型的な逆三尊予兆足の形状と見つけ方

逆三尊予兆足を実務的に探すには、抽象的なイメージではなく、チャート上で確認できる具体的な条件に落とし込むことが重要です。ここでは、日足チャートを前提にした代表的なパターンの流れを整理します。

ステップ1:強い下落トレンドの終盤を探す

まず前提として、逆三尊も逆三尊予兆足も下落トレンドの後に出る「底打ち」サインです。すでに長期間レンジが続いている局面ではなく、移動平均線が下向きで、安値・高値ともに切り下がっているような下落局面の終盤を探します。

例として、ある株式が2,000円から1,100円まで数カ月かけて下落してきたとします。この過程で日足の高値と安値が明確に切り下がっており、25日移動平均線も下向きになっているような場面です。このような局面の「売り疲れ」が蓄積してくる終盤に、逆三尊予兆足の候補が現れやすくなります。

ステップ2:一番底候補となる「ヘッドの予兆」

次に注目するのは、それまでの安値を明確に更新する強い下落です。たとえば、直近安値が1,150円だった銘柄が、一時的に1,050円まで急落するような場面です。このときのローソク足に、以下のような特徴が出るとヘッド候補として意識しやすくなります。

  • 長い下ヒゲを持つ大陰線またはコマ足
  • 出来高が急増している(投げ売りと逆張り買いが交錯)
  • 翌日以降に、この安値を明確には更新できない

特に「長い下ヒゲ+出来高増」の組み合わせは、短期的なパニック売りと、それを拾う逆張り勢の存在を同時に示します。この一連の動きが、逆三尊全体で見た場合の「ヘッド」に相当することが多く、その前後のローソク足群を逆三尊予兆足の第一候補として監視します。

ステップ3:安値を更新しきれない「右肩候補ゾーン」

ヘッド候補の急落から一旦リバウンドした後、再び相場が弱含むことがあります。このとき、ヘッドの安値を明確に割り込めずに切り上がる形になりやすければ、逆三尊予兆の信頼度が高まります。

具体的には、

  • ヘッドでつけた1,050円に対し、再下落しても1,070~1,090円あたりで下げ止まる
  • 二度目の下落では、長い下ヒゲの陽線やトンボ・カラカサのような形が増える
  • 売り圧力はあるものの「一撃で安値更新」するような勢いはなくなっている

このゾーンで出てくるローソク足の組み合わせ——たとえばたくり線・トンボ・カラカサ・小陽線の連続などが、逆三尊予兆足として機能しやすくなります。

ステップ4:ネックライン候補の意識

ヘッド候補の急落からの戻り高値と、右肩候補ゾーンからの戻り高値が、おおよそ同じ水準に揃ってくると、ネックライン候補が見えてきます。逆三尊予兆足の段階ではまだ「ちょっとしたダブルボトム」にしか見えないかもしれませんが、この時点で

  • 安値が切り上がってきている
  • 出来高が底打ちから徐々に増加傾向
  • 下ヒゲの長いローソク足が増えている

といった条件が揃い始めると、本格的なトレンド転換準備段階と解釈できます。

相場心理から読み解く逆三尊予兆足

チャートパターンは、すべて売り手と買い手の心理の積み重ねです。逆三尊予兆足を深く理解するには、チャートの形を覚えるだけでなく、各フェーズで誰が何を考えてポジションを取っているのかをイメージすることが有効です。

ヘッド形成時:投げ売りと「勇気ある逆張り」

強い下落の末に出現するヘッド候補のローソク足は、多くの場合投げ売りの最終局面です。含み損に耐えきれなくなった個人投資家が成行で手仕舞いし、アルゴリズム取引もトレンドフォローで売りを重ねます。そのため一時的に価格がオーバーシュートし、長い下ヒゲを伴う形になることがよくあります。

同時に、この水準を「割安」と見た逆張りの短期筋や中長期投資家が、少しずつ買いを入れ始めます。結果として、終値ベースでは安値から大きく戻し、下ヒゲの長いローソク足としてチャートに記録されます。

右肩候補ゾーン:売り方の勢いが衰える段階

ヘッド候補の急落から反発した後、再度下落するとき、売り方は「もう一段安」を期待してショートを積み増します。しかし、すでに投げ売りは一巡しているため、ヘッドほどの強い下落パワーは出ません。その結果、二度目の下落では安値更新に失敗し、短い実体+長い下ヒゲのローソク足が増えます。

このタイミングで、ヘッド付近から静かに買い下がっていた勢力は、右肩候補ゾーンでも追加の買い増しを行います。こうして「売り方の勢いが衰え、買い方の我慢が勝ち始める」フェーズが、逆三尊予兆足として目に見える形になります。

ネックラインブレイク前:ポジション調整と買い遅れ組の焦り

安値が切り上がり始めると、ショート勢は徐々に警戒を強めます。一方で、下落トレンドを見ていただけの投資家は、「そろそろ底かもしれない」と感じながらも、まだ積極的に買いには踏み切れていないことが多いです。

この段階では、

  • ショートカバーによる買い戻し
  • 逆張り派の新規買い
  • ネックラインを意識した待機組

が入り混じり、やや荒い値動きの中で安値切り上がりが継続します。ここまでのローソク足群こそが、実務上もっとも重要な逆三尊予兆足のゾーンです。

具体例:FXドル円チャートでの逆三尊予兆足イメージ

ここでは架空のケースとして、FXドル円の日足チャートを例に、逆三尊予兆足がどのように現れるかをイメージしてみます。

前提として、ドル円が半年かけて150円から138円まで下落してきた局面を考えます。

  • ステップ1:148円付近からの下落が続き、138.50円で一度大きな下ヒゲの長い陰線が出現(出来高急増)。これがヘッド候補。
  • ステップ2:その後142円まで反発するが、上値は重く再び下落。ところが今度の安値は139.20円付近で止まり、138.50円の安値は更新できない。
  • ステップ3:139円台では、トンボやカラカサに近い下ヒゲの長いローソク足、小陽線の連続が見られ、日足RSIも30付近からじわじわと上昇。
  • ステップ4:140.50円~141円付近に、ヘッド後の戻り高値と右肩候補後の戻り高値が集まり、ネックライン候補が意識され始める。

この一連の流れで、特に138.50円 → 139.20円と安値が切り上がった部分でのローソク足群が、逆三尊予兆足として注目すべきゾーンです。ここで分割で押し目買いを始め、明確なネックラインブレイクで追加エントリーとする戦略が考えられます。

エントリー・損切り・利確の戦略設計

逆三尊予兆足を使う最大のメリットは、完成を待つよりも有利な価格帯で仕込める可能性がある点です。一方で「まだ完成していない」ため、シナリオが外れたときの損切り基準を明確にしておく必要があります。

エントリー戦略の一例

以下は、先ほどのドル円の例をもとにした戦略イメージです。

  • 第一エントリー:右肩候補ゾーンで、ヘッド安値(138.50円)を明確に割り込まず反発したことを確認してから、139円台前半で少量の買い。
  • 第二エントリー:140.50~141円のネックライン候補を終値ベースで明確に上抜けたタイミングで、追加の買い。
  • 以後:押し目を形成すれば、140円割れを目安に買い増しを検討。

このように、逆三尊予兆足だけに依存するのではなく、分割エントリーで価格帯を分散させると、想定シナリオと反した場合のダメージを抑えやすくなります。

損切りラインの考え方

もっともシンプルな損切り基準は、ヘッド安値の明確な割れです。先ほどの例であれば、138.50円を日足で大きく割り込んだ場合、逆三尊シナリオそのものが否定されると考え、機械的に損切りするルールを決めておきます。

より保守的に運用するなら、右肩候補ゾーンの安値を基準とし、そこを割り込んだ時点でポジションの一部を整理し、ヘッド安値割れで残りを手仕舞うといった二段階損切りも合理的です。

利確目標の設定

逆三尊の教科書的な利確目標は、ネックラインからヘッドまでの値幅を上方に projection する方法です。逆三尊予兆足を使う場合も、この考え方はそのまま応用できます。

たとえば、

  • ネックライン候補:140.50円
  • ヘッド安値:138.50円(値幅2円)

であれば、ネックラインブレイク後の目標値は、おおよそ142.50円前後が一つの目安になります。もっとも、実際には相場環境・上位時間足のレジスタンス・ファンダメンタルズも考慮し、分割利確で柔軟に対応するのが現実的です。

他のインジケーターとの併用で精度を高める

逆三尊予兆足はローソク足の形状に着目する手法ですが、単体での判断はどうしても主観が入りやすくなります。そこで、オシレーター系指標や出来高を組み合わせて、客観的な裏付けを取ることが有効です。

RSIダイバージェンスとの組み合わせ

典型的なケースとして、価格は

  • ヘッド安値:138.50円
  • 右肩候補安値:139.20円

と切り上がる一方で、RSIはヘッド安値で極端な売られ過ぎゾーンから上昇し始めていることがあります。このように、価格の安値切り上がりとRSIのボトム形成が重なると、逆三尊予兆足の信頼度が増します。

MACDのクロスでトレンド転換を補強

MACDもまた、トレンド転換の補助指標として有用です。ヘッド形成後の戻りで、MACDラインとシグナルラインがゴールデンクロスし、その後の押し目で再びゼロライン付近まで近づくものの、デッドクロスせずに再度上向きに反発するような形が理想です。

このような動きは、下落トレンドから上昇トレンドへの移行期に見られやすく、逆三尊予兆足の存在を技術的に裏付ける材料となります。

ダマシと失敗パターンをどう見分けるか

どれだけ注意深く見ても、逆三尊予兆足がそのまま本格的なトレンド転換につながらないケースは多く存在します。重要なのは、失敗パターンの特徴を知り、それが出たら無理に粘らず撤退するルールをあらかじめ決めておくことです。

よくある失敗パターンの特徴

  • ヘッド安値を一度は守るものの、その後の下落であっさり更新してしまう
  • 右肩候補ゾーンでの反発が弱く、小陽線が数本出た後にまとめて大陰線で否定される
  • ネックライン候補に到達する前に、戻りが失速して再び安値圏に沈む
  • 出来高がまったく増えず、反発局面に勢いが見られない

こうした動きが出た時点で、逆三尊シナリオはいったん白紙とし、ポジションサイズを落とすか、あるいは完全に撤退することを優先します。

チェックリストで機械的に判断する

主観を抑えるために、逆三尊予兆足の有無を次のようなチェックリストに落とし込む方法も有効です。

  • チェック1:直近数カ月のトレンドが明確な下落基調であるか
  • チェック2:ヘッド候補の急落で長い下ヒゲ・出来高増が確認できるか
  • チェック3:二度目の下落でヘッド安値を更新せず、安値が切り上がっているか
  • チェック4:右肩候補ゾーンでトンボ・カラカサ・小陽線などの反発サインが出ているか
  • チェック5:RSIやMACDなどのオシレーターが売られ過ぎゾーンからの反転を示しているか
  • チェック6:ネックライン候補となる戻り高値が2点以上で意識されているか

このうち、最低でも4~5項目が満たされた場合のみ逆三尊予兆足として扱う、といったルールを自分なりに設定しておくと、パターン認識のブレを抑えられます。

自分の銘柄・時間軸に合わせて検証する方法

どんなに魅力的なパターンでも、自分が取引する銘柄・時間軸で通用するかどうかを検証しなければ、本当の意味での武器にはなりません。逆三尊予兆足も例外ではなく、バックテストやリプレイ機能を使って検証することが重要です。

チャートリプレイを使った主観的検証

TradingViewなどのチャートツールには、過去チャートを一歩ずつ進めながら、自分がどこでエントリー・エグジットするかをシミュレーションできる機能があります。これを使って、

  • 強い下落トレンド後の安値圏だけを重点的に観察する
  • 逆三尊予兆足らしきパターンを見つけたら、その場で仮想エントリーを記録する
  • 数十ケース分の成否を集計し、勝率・平均損益・ドローダウンなどをざっくり把握する

といった作業を行うことで、逆三尊予兆足が自分の得意パターンになり得るかどうかが見えてきます。

エクセルやスプレッドシートで簡易データ化

より踏み込んだ検証として、逆三尊予兆足が出たと思われるポイントごとに、

  • 発生日・銘柄・時間軸
  • ヘッド安値と右肩候補安値
  • ネックライン候補価格
  • エントリー価格・損切り価格・利確価格
  • 結果(勝ち・負け・トントン)

などを表にまとめていく方法があります。数十~百件程度のサンプルが集まれば、

  • どの時間軸で最も機能しやすいか
  • どの銘柄・市場で勝率が高いか
  • どのような損切り幅・利確幅の組み合わせが最適か

といった傾向が徐々に見えてきます。

まとめ:逆三尊予兆足を実践に落とし込むポイント

逆三尊予兆足は、完成した逆三尊を待つより早くトレンド転換を察知するための、やや応用的なローソク足パターンです。完全な形を待たずにリスクを取る分、リスクリワードとダマシ対策をセットで考えることが欠かせません。

本記事で解説したポイントを整理すると、次のようになります。

  • 逆三尊予兆足は、下落トレンドの終盤に現れるローソク足群であり、ヘッド候補の急落と右肩候補ゾーンの安値切り上がりに注目する。
  • 長い下ヒゲ・出来高増・トンボやカラカサ、小陽線の連続などが、売り疲れと買い勢力の台頭を示すサインとなりやすい。
  • ネックライン候補が見え始めた段階で分割エントリーを検討し、ヘッド安値割れなど明確な否定シグナルで損切りする。
  • RSIやMACDなどのオシレーターと組み合わせることで、主観的なパターン認識を客観的に補強できる。
  • 失敗パターンの特徴をあらかじめ把握し、チェックリストに基づいて機械的に撤退判断を行う。
  • 過去チャートのリプレイや簡易データ分析で、自分の銘柄・時間軸との相性を検証することで、実践的なエッジを磨ける。

逆三尊予兆足は、単なる「形」ではなく、売り方と買い方の攻防がチャート上に刻まれた痕跡です。その意味を丁寧に読み解き、自分なりのルールと検証に落とし込めば、相場の転換点を狙う心強い武器になってくれます。

大切なのは、どんな優れたパターンでも、常に損切りと資金管理をセットで考え、小さな損失で撤退できる態勢を維持することです。そのうえで逆三尊予兆足を繰り返し観察し、自分のトレードスタイルに合う形へと磨き込んでいくことが、長期的な成果につながります。

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