カギ足チャートで読むトレンドと転換点:ノイズを削ぎ落とす価格アクション分析

テクニカル分析

チャートがごちゃごちゃしてよく分からない、と感じたことはありませんか。ローソク足にインジケーターを重ねていくと、肝心の「値動きの本質」が見えにくくなることがあります。そうしたノイズをできるだけ削ぎ落とし、価格の流れだけをシンプルに追いかけるための手法のひとつが「カギ足チャート」です。

カギ足はもともと日本で生まれた伝統的なチャート表現で、時間軸をほとんど無視し、「どれだけ価格が動いたか」にだけ注目します。そのため、レンジ相場ではほとんど形が変わらず、トレンドが出たときだけ滑らかに伸びていくという特徴があります。本記事では、カギ足の基本から具体的な売買ルール例まで、投資初心者でも実践に取り入れやすい形で詳しく解説します。

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カギ足チャートとは何か:時間ではなく値幅に注目するチャート

カギ足チャートは、ローソク足のように「一定時間ごと」に足を1本ずつ描くのではなく、「あらかじめ決めた値幅だけ動いたとき」にだけ次の線を描いていくチャートです。たとえば「100円動いたら線を伸ばす(または折り返す)」というルールを決めておくと、価格がだらだらと小さく動いているだけなら新しい線はほとんど描かれませんが、一方向に大きく動き出すと、線が一気に伸びてトレンドが視覚的に浮き上がります。

このように、時間の経過を無視して「値幅のみ」に注目することで、小さな上下動やノイズを自然にフィルタリングできるのがカギ足の最大の特徴です。トレンドフォロー型の投資家や、ラインブレイク型のシステムトレードとも相性が良いチャートと言えます。

カギ足チャートの描き方:3つのルールを理解する

カギ足チャートは一見難しそうに見えますが、描き方のルールは意外とシンプルです。ここでは実際に自分で手書きするとして、考え方を整理してみます。

1. 値幅(ボックスサイズ)を決める

まず「いくら動いたら線を伸ばすか」という値幅を決めます。株なら「株価×1%」、FXなら「10pips」や「20pips」といった形で、銘柄や通貨ペアのボラティリティに合わせて決めるのが一般的です。値幅を小さくすると細かい動きまで拾い、大きくすると大きなトレンドだけを捉えるイメージです。

2. 上昇と下降で縦線を描き分ける

価格が一定幅だけ上昇したら、縦線を上方向に伸ばします。さらに同じ方向へ値幅分だけ伸びるごとに、同じ方向に線を継ぎ足していきます。下降の場合も同様に、一定幅下がるごとに下向きの縦線を伸ばしていきます。横方向(右方向)は、線のつなぎ目として使うだけで、情報として重要なのは上下の変化です。

3. 一定以上逆行したら「折り返し(カギ)」が入る

上昇中のカギ足が一定幅以上下落すると、チャートは折り返して下方向のカギ足に転換します。このときに描かれる折れ曲がり部分が「カギ」のような形に見えることから、カギ足と呼ばれます。逆に、下降中のカギ足が一定幅以上上昇すると、上方向のカギ足に転換します。

この3つのルールだけで、時間ではなく「値動きの流れ」を追いかけるチャートが完成します。実際の描画は証券会社やチャートツールが自動でやってくれるので、投資家はルールと特徴を理解しておけば十分です。

ローソク足との違いとカギ足のメリット・デメリット

カギ足の良さを理解するには、普段使っているローソク足と比較するのが早いです。

ローソク足の特徴

  • 一定時間ごと(1分足、5分足、日足など)に必ず1本の足が描かれる
  • ヒゲや実体で、その時間内の高値・安値・始値・終値が分かる
  • ニュースの発表時間や市場のオープン・クローズなど「時間イベント」との相性が良い

カギ足の特徴

  • 一定の値幅だけ動いたときにだけ線が描かれる(時間は無視される)
  • 細かい上下動やノイズが削られ、トレンドだけが浮き上がる
  • サポート・レジスタンスのブレイクが視覚的に分かりやすい

カギ足のメリットは、「トレンドの流れを非常にシンプルに捉えられること」です。小さな押し目や戻りでいちいち色が変わるローソク足と比べて、カギ足は本格的な転換が起きるまで方向が変わりません。一方で、時間情報がないため、ニュースイベントとの紐付けや、日中足の細かなタイミング取りには向きません。トレード全体を設計するときは、ローソク足とカギ足を併用するのが現実的です。

カギ足で読み解くトレンドと転換点

カギ足チャートで投資家が最も重視するのは、「トレンドの方向」と「転換点」です。ローソク足では細かなノイズに翻弄されやすい場面でも、カギ足ならシンプルなパターンとして捉えられます。

1. 連続する同方向のカギはトレンドの継続

上向きのカギが何本も連続している局面では、市場参加者が上方向に力を入れていると判断できます。ローソク足では上下にヒゲをつけながら進む局面でも、カギ足では「まだ折り返すほどの逆行は起きていない」という形で表現されます。この状態では、むやみに逆張りするより、「押し目買い」や「ブレイクアウト」を狙う方が合理的です。

2. 折り返しの発生はトレンドの警戒サイン

上昇カギが続いたあとで、一定幅以上の下落が発生すると、カギ足は下方向へ折り返します。この折り返しは「トレンドの勢いが弱くなった、もしくは流れが変わったかもしれない」という重要なシグナルです。特に、直近の高値・安値を明確に切り下げる/切り上げる形で折り返した場合、トレンド転換の可能性が高まります。

3. 過去のカギとの水準比較でサポート・レジスタンスを見る

カギ足チャート上で、過去の折り返しポイントや何度も止められた水準は、そのままサポート・レジスタンスとして機能しやすくなります。たとえば、何度も上向きのカギが同じ価格帯で折り返していれば、そこは強いレジスタンスとして意識されます。価格がその水準を上抜けして新しい上向きカギを形成した場合、ブレイクアウトとして順張りで狙うことができます。

カギ足を使った具体的な売買ルール例

ここからは、実際のトレードに利用できるシンプルなルール例を紹介します。株式とFXの両方で応用可能な考え方です。

ルール例1:レジスタンスブレイク順張り戦略

  • ステップ1:カギ足チャートを表示し、直近数十本のカギの中で最も明確な「天井」となっているレジスタンス水準を探す。
  • ステップ2:そのレジスタンスを上方向のカギが明確にブレイクし、新しい上向きカギが形成されたら買いエントリーを検討する。
  • ステップ3:損切りは、直近の折り返し(下方向カギの起点)をわずかに下回る水準に置く。
  • ステップ4:利確は、次の大きなレジスタンス候補や、リスクリワード比が1:2以上になったところで部分利確を行う。

この戦略は、「レンジを抜けてトレンドが始まったタイミング」を狙う典型的な順張りの考え方です。ローソク足ではダマシが多く見える場面でも、カギ足に変えるとブレイクが絞り込みやすくなるのが利点です。

ルール例2:安値切り上げパターンを利用した押し目買い

  • ステップ1:上向きのカギが連続し、全体として「高値・安値を切り上げている」状態を確認する。
  • ステップ2:一度下方向へ折り返したあと、直前の安値より高い水準で再び上向きカギに転換したら押し目完了とみなす。
  • ステップ3:新しい上向きカギが確定した時点で買いエントリーを検討する。
  • ステップ4:損切りは、直前の安値(下向きカギの最安値)を少し下回る位置に置く。

このパターンは、トレンドフォローの基本である「安値切り上げ」を、カギ足というノイズの少ないチャートで確認する手法です。ローソク足ではヒゲのノイズに迷いやすい局面でも、カギ足なら視覚的に分かりやすくなります。

カギ足と他のインジケーターを組み合わせるアイデア

カギ足単体でも十分にトレンドを把握できますが、他のインジケーターと組み合わせることで、エントリーとエグジットの精度を高めることができます。

1. カギ足 × 移動平均線

カギ足チャート上に単純移動平均線(SMA)や指数平滑移動平均線(EMA)を重ね、価格が移動平均線の上にあるか下にあるかで「大きな流れ」を判定し、カギ足の方向と一致しているときだけエントリーする、といったフィルターが有効です。たとえば、移動平均線より上にあり、かつ上向きカギが続いている局面では買いに限定する、といった運用が考えられます。

2. カギ足 × ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドを組み合わせると、「トレンドが強く拡大している局面」と「ボラティリティが収縮している局面」が視覚的に分かりやすくなります。カギ足がレジスタンスを抜け、同時にボリンジャーバンドの上限を拡大しながらブレイクしている場合、トレンドが走りやすい環境と判断できます。

3. カギ足 × RSI・ストキャスティクス

RSIやストキャスティクスのようなオシレーターを併用することで、カギ足でトレンドを確認しつつ、オシレーターで「行き過ぎ」を測ることができます。たとえば、上向きカギが続いているがRSIが70を超えている場合、一度利確して様子を見るといった判断に活用できます。

リスク管理とダマシ回避のポイント

どんな優れたチャート手法にもダマシは存在します。カギ足も例外ではなく、特にボラティリティが急に高まった局面では、上向きと下向きの折り返しが頻発し、方向感を見失いやすくなります。ここでは、初心者が陥りがちなポイントとその対策を整理します。

1. 値幅設定が細かすぎないか見直す

値幅を小さくしすぎると、カギ足が頻繁に折り返し、結局ノイズが増えてしまいます。まずは、その銘柄や通貨ペアの平均的な一日の値幅の「10分の1〜20分の1」程度を目安に設定し、そこから調整していくとバランスが取りやすくなります。

2. 1つのカギだけで方向転換を決めない

最新の1本だけを見て「上向きになったから即買い」「下向きになったから即売り」と判断すると、どうしてもダマシをつかみやすくなります。直近数本のカギの並び(高値・安値の切り上げ/切り下げ)や、過去のレジスタンス・サポートとの位置関係も合わせて確認する習慣が重要です。

3. 損切り水準は必ず事前に決めておく

カギ足はトレンドフォローに向きますが、トレンドが思った方向に伸びなかったときの損切り基準も明確にしておく必要があります。典型的には、「直近の折り返しポイントを少し超えたら損切り」というルールを決めておき、エントリー前にロットサイズを調整しておくと、感情に振り回されにくくなります。

カギ足チャートを実際のトレードに取り入れる手順

最後に、投資初心者がカギ足を取り入れる際のステップを、実務的な流れに沿ってまとめます。

ステップ1:対応しているチャートツールを用意する

まず、自分が普段使っている証券会社やチャートツールでカギ足表示に対応しているか確認します。対応していない場合は、サブのチャートツールとして無料のプラットフォームを併用する方法もあります。大切なのは、本番のトレードで使う銘柄・通貨ペアが同じ条件で表示できることです。

ステップ2:値幅の候補をいくつか試す

いきなり「これが正解」と決めつけず、値幅を2〜3パターン用意して比較してみてください。たとえば、日経平均先物なら「50円」「100円」「200円」、ドル円なら「5pips」「10pips」「20pips」といった具合です。トレンドが出ているときに、どの設定が一番素直に流れを表現してくれるかを自分の目で確認することが重要です。

ステップ3:まずはデモや過去チャートで検証する

カギ足を初めて使う段階では、いきなり実弾でトレードするのではなく、過去チャートやデモ環境で「こういうときにエントリーしていたらどうなっていたか」を繰り返し検証します。特に、レジスタンスブレイクや安値切り上げパターンなど、自分が使いやすいパターンを1〜2個に絞り込み、そのパターンだけを重点的に練習すると効率的です。

ステップ4:小さなロットで実戦に移行する

検証で手応えが出てきたら、次は小さなロットで実戦に移行します。最初から大きなロットで挑むと、一時的な含み損で心理的に耐えられなくなり、ルールを守れなくなるリスクが高まります。あくまで「ルール通りに動かせるか」を確認するステージとして、小さな金額で試し、その過程で自分のメンタルの癖も把握していきましょう。

まとめ:カギ足は「値動きの骨格」を見せてくれるチャート

カギ足チャートは、時間軸を捨てて値幅だけに注目することで、価格の流れを非常にシンプルに可視化してくれる手法です。ローソク足や複数のインジケーターでごちゃごちゃしたチャートに悩んでいる投資家にとって、「値動きの骨格」だけを見る感覚を取り戻すきっかけになります。

もちろん、カギ足にもダマシは存在し、万能な聖杯ではありません。しかし、レジスタンスブレイクや安値切り上げ・高値切り下げといったシンプルなパターンに絞って使えば、トレンドフォロー型の戦略と相性の良い、実用的な武器になります。まずは、自分が普段取引している銘柄や通貨ペアのカギ足チャートを表示し、「ローソク足では見えなかった何か」が見えてこないか、じっくり観察するところから始めてみてください。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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