移動平均線乖離率で読む「行き過ぎ」と反転:修正安・修正高を獲る逆張り設計

テクニカル分析

移動平均線からの乖離率(かいりりつ)は、価格が「平均」からどれだけ離れたかを%で示すシンプルな指標です。にもかかわらず、使い方を間違えると“落ちるナイフ”を掴み、正しく設計すれば「修正安」や「修正高」を高確度で拾えます。本記事では、乖離率を“逆張りのトリガー”として使うのではなく、相場の状態(トレンド・ボラ・需給)を判定し、エントリー条件を段階化する実装手順として落とし込みます。銘柄や時間軸が変わっても再現できるよう、数値の決め方・フィルター・損切り・利確まで一連で解説します。

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乖離率とは何か:式と「平均回帰」の正体

乖離率は次の式で定義します。

乖離率(%)=(現在価格 − 移動平均)÷ 移動平均 × 100

例えば、5日移動平均が10,000円で、現在価格が10,500円なら乖離率は+5%。価格が9,300円なら−7%です。ここで重要なのは、乖離率は「行き過ぎの度合い」を示すだけで、反転の確定を示すわけではない点です。平均回帰(mean reversion)は“必ず戻る”ではありません。市場は(1)トレンドが継続する局面と、(2)行き過ぎが戻る局面が混在します。乖離率はその境界を見つけるための材料であり、単独で売買すると痛い目を見ます。

なぜ乖離率が効くのか:行動ファイナンスと需給の噛み合い

乖離率が有効になりやすいのは、価格が平均から離れるほど、短期勢がポジションを積み上げ、同時に逆方向の参加者(利確・損切り・裁定・ヘッジ)が増えるからです。具体的には次のメカニズムが重なります。

第一に、短期トレンドフォロワーは上昇局面で買いを追加し、下落局面で売りを追加します。乖離が拡大するほど、含み益が増え利確が出やすくなり、逆に含み損勢は投げやすくなります。第二に、機械的なリバランスや、ボラティリティ上昇に伴うリスクパリティの縮小など、価格とは独立に発生する売買が重なり、行き過ぎが加速する一方、どこかで反作用が働きやすくなります。第三に、板・歩み値レベルでは、急な乖離拡大時にスプレッドが広がり、成行の滑りが増え、短期勢が一斉に“逃げたくなる”ため、戻りが速くなりやすいです。

まず決めるべき「移動平均の期間」:5・20・60は万能ではない

初心者が最初に躓くのは、移動平均の期間を固定してしまうことです。5日・25日・75日などはよく見ますが、狙うのが「修正安(短期の下げ過ぎ)」なのか「中期の過熱調整」なのかで期間は変わります。ここでは実用上の指針を提示します。

デイトレ/スキャル:VWAPまたは20〜60本のEMA(例:5分足なら20EMA=約100分の平均)。日中の“平均コスト”に近いものを使うと戻りの目安が明確になります。
数日〜2週間:5日〜10日SMA/EMA。短期の過熱・投げを拾う用途。
数週間〜2か月:20日〜25日SMA。中期の調整を拾う用途。
中長期:60日・120日など。ここは逆張りというより「過熱の警戒」や「押し目の深さ判定」に向きます。

“どれが正解”ではなく、あなたの利確目標(どこまで戻れば十分か)に合わせて平均を選ぶのがポイントです。例えば、日足で25日線まで戻れば利確したいのに、5日線乖離を見ても意味が薄い、というズレが起きます。

乖離率の「閾値」を固定しない:銘柄ごとに“普段の揺れ幅”が違う

乖離率逆張りで最も多い失敗は「−5%なら買い、+5%なら売り」など閾値を固定することです。同じ−5%でも、低ボラ銘柄なら異常、ハイボラ銘柄なら日常です。ここで実践的なのが、乖離率を“その銘柄の通常レンジ”に対して正規化する考え方です。

手順はシンプルです。①対象期間(例:直近120本の日足)の乖離率を計算。②その乖離率の分布(平均と標準偏差)を見る。③「平均±2σ」や「上位/下位5%」のような統計的閾値で“異常”を定義します。これにより、値幅が大きい銘柄でも小さい銘柄でも、同じロジックで扱えます。

初心者向けにもう一段噛み砕くと、「過去半年で、乖離率が−8%以下になったのは何回か? その後どうなったか?」を確認するだけでも効果があります。回数が極端に少ないなら、その乖離は“異常”であり、戻りが出やすい可能性が高まります。一方で、頻発するなら、それはただのノイズで、逆張りの優位性は薄くなります。

トレンド局面を見分ける:乖離率は“順張り相場”で逆張りすると負ける

乖離率が拡大したからといって、トレンドが終わるとは限りません。むしろ強いトレンドほど乖離が拡大しやすいです。したがって、乖離率逆張りでは最初に「この相場は平均回帰モードか、トレンド継続モードか」を判定します。ここを外すと、損切りが連発します。

実装しやすい判定法を3つ紹介します。

(A)上位足の傾きフィルター:日足で逆張りするなら、週足の20週線の傾き、または週足の終値が20週線の上/下を確認します。上位足が強い上昇トレンドなら、下方向乖離の逆張り(買い)は有利になりやすく、上方向乖離の逆張り(売り)は危険です。
(B)高値・安値の更新構造:直近N本で高値更新が続く(安値を切り上げる)ならトレンド寄り。レンジで高値・安値が更新されないなら平均回帰寄り。
(C)ボラ拡大の質:ボラが拡大しても、出来高が伴い一方向に伸びるならトレンド。出来高は増えるが上下に振れ、ヒゲが増えるなら“行き過ぎ→巻き戻し”が起こりやすい。

これらは難しそうに見えますが、要は「逆張りしていい局面だけを選ぶ」ためのゲートです。ゲートを通った後に、乖離率の数字が初めて武器になります。

エントリーを二段階にする:『行き過ぎ』と『反転確認』を分離する

乖離率逆張りを安定させるコツは、エントリー条件を(1)行き過ぎ判定(2)反転確認に分けることです。行き過ぎだけで入ると、底がどこか分からず連敗します。反転確認だけだと、良いところを逃す。二つを分離して、ロット配分でバランスを取ります。

具体的には次のように設計します。

ステップ1:行き過ぎ到達で“観測開始”(例:日足25日乖離が−2σ以下、または過去120本で下位5%)。この時点では入らない。入るとしても試し玉は極小。
ステップ2:反転確認で“本玉”(例:翌日以降に、①前日高値を上抜く、②陰線→陽線の包み足、③出来高が前日比で減り下げの勢いが鈍る、④5日線乖離が改善方向に転じる、のいずれかを満たす)。

反転確認はチャートパターンに頼りすぎる必要はありません。「下げの勢いが止まった証拠」を、あなたが再現できる形に落とすことが重要です。例えば日本株の大型株なら、引けで前日高値超えを確認して翌朝寄りで入る、という運用が現実的です。FXや暗号資産のように24時間市場なら、上位足確定(例:15分足の確定)で判断しやすいです。

利確は『平均への回帰』を基本にする:目標は移動平均“そのもの”

逆張りは、当たると急に戻りますが、欲張ると再度逆行します。したがって利確は「移動平均への回帰」を基本にするとブレません。具体的には、第一利確=移動平均タッチ第二利確=乖離率が0〜+1%(あるいは−1%)に戻るなど、数値で定義します。

例:日足25日乖離が−9%で下げ過ぎ→反転確認で買い。戻りの第一目標は25日線付近。もし25日線にタッチせずに失速したら、乖離率が−3%まで改善した地点で分割利確し、残りは建値ストップに引き上げる。こうして“勝ちを負けにしない”設計にします。

反対に、上方向乖離(過熱)で売る場合も同様です。第一利確は移動平均(またはVWAP)までの下落。逆張りは「当てにいく」のではなく「戻り幅を取りにいく」ゲームなので、利確幅は欲張りすぎないのが期待値を上げます。

損切りの置き方:乖離率は“損切りライン”ではない

初心者がやりがちな誤りは、「乖離率が−10%を超えたら損切り」など乖離率を損切りに使うことです。相場は異常が異常を呼び、−10%が−15%に伸びるのは珍しくありません。損切りは、市場構造が崩れた地点に置きます。

実務的には次の2パターンが扱いやすいです。

(1)直近安値割れ:反転確認後に入ったなら、その反転足の安値割れで撤退。これは“反転が嘘だった”ことが明確です。
(2)想定シナリオの無効化:例えば「25日線回帰」を狙うのに、数日経っても戻らず、出来高が増えて再度売りが加速した、など。時間切れ損切り(タイムストップ)を採用します。逆張りは長引くと勝率も期待値も悪化しやすいので、ルール化の価値が大きいです。

損切り幅はロットで調整します。逆張りは当てにいくほどロットを増やしたくなりますが、そこが破滅点です。ロットを小さくし、分割エントリーで平均取得単価を最適化する方が、長期的に生き残ります。

具体例①:日本株(日足)で「修正安」を拾うシナリオ

想定:大型株Aが決算後に材料出尽くしで急落。25日線乖離が−8%まで拡大。直近120本で−8%以下は過去2回しかない(異常)。ただし週足では20週線の上で推移し、長期上昇トレンドは維持。

この場合、いきなり買わず、まず“観測開始”に入れます。次に反転確認です。翌営業日、寄り付きは弱いが、場中に売りが一巡し、引けで前日高値を上回って陽線で確定。出来高は前日の急落日に比べて減少。ここで本玉を入れます。損切りは反転足の安値割れ。利確は25日線。もし25日線に到達する前に失速したら、乖離率が−3%まで改善した時点で半分利確し、残りは建値ストップへ。

この設計の強みは、「割安だから買う」ではなく、「異常な投げが一巡したことを確認して買う」点です。逆張りは“理由”ではなく“証拠”で入るほど、再現性が上がります。

具体例②:FX(1時間足)で「修正高」を売るシナリオ

想定:ドル円が米指標で急騰し、1時間足の20EMA乖離が+1.8%(過去2週間で上位2%)。上位足(4時間足)でも上昇だが、直近は上ヒゲが増え、上値での成行買いが鈍い。

FXは24時間なので、反転確認を“足確定”で定義しやすいです。行き過ぎ到達後、①上昇が止まり、②1時間足で陰線が確定し、③次の足で前足安値を下抜け、さらに④出来高(ティック量)が減り始めた、を条件にショート。利確は20EMAタッチ、または乖離率が+0.3%まで縮小した地点。損切りは直近高値更新で撤退。ここでも乖離率は損切りに使わず、構造で切ります。

注意点は、強いトレンドの日は“逆張りが負けやすい日”であることです。その場合は、乖離率が縮小し始めてから(つまり既に下げ始めてから)入る方が期待値が上がります。逆張りの早取りを捨てる代わりに、生存率を取りにいくイメージです。

具体例③:暗号資産(15分足)で「急落の巻き戻し」を拾う

暗号資産はボラが大きく、固定閾値が特に危険です。そこで分布ベースの閾値が効きます。例として、BTCが15分足で急落し、50EMA乖離が−2.5%(直近3日で下位1%)。ただしこの市場は急落後に“二段下げ”が頻発するので、反転確認を厳しめにします。

条件例:①乖離が下位1%に到達→観測開始、②次の15分足で下げが止まり下ヒゲが長い、③さらに次の足で前足高値を上抜け、④同時にオーダーブックで買い板が厚くなり、売り板のキャンセルが増える(板の質が変わる)——ここまで揃ったらエントリー。利確はVWAPまたは50EMA。損切りは反転の起点安値割れ。暗号資産は急変があるため、指値・逆指値の滑りも考慮し、リスク量を最初から小さくします。

“負けパターン”を先に覚える:乖離率逆張りの典型的な罠

乖離率逆張りが機能しない局面には共通点があります。ここを先に潰すと、成績が一段改善します。

罠1:材料が継続して出る(イベントドリブン)
悪材料が連続する、下方修正が続く、規制・不祥事などで需給が崩れると、乖離は“戻らずに新しい平均”が形成されます。こういう局面は平均回帰ではなくレジームチェンジです。ニュースの良し悪しではなく、値動きが連続して窓を開ける/出来高が増え続けるなど、構造で判断します。

罠2:レンジ相場なのに閾値が浅い
普段から乖離が±3%程度で揺れる銘柄に対して、±2%で逆張りしても優位性が薄いです。統計的に“珍しい”地点でだけ戦うべきです。

罠3:トレンド初動で逆張り
ブレイク直後は乖離が急拡大しますが、そこはトレンドが始まったばかりで、逆張りが最も危険です。上位足の節目突破(高値更新・雲抜け等)直後は、乖離率は「押し目待ち」の参考にはなっても、逆張りの根拠にはなりません。

乖離率を“戦略”に落とす:ルール一式(テンプレ)

ここまでの内容を、初心者でも運用できる形にテンプレ化します。あなたが最初に作るべきルールは次の順番です。

①時間軸(例:日足)と移動平均(例:25日SMA)を決める。
②直近120本の乖離率分布を取り、下位5%(買い)・上位5%(売り)を“観測開始”とする。
③上位足フィルター(例:週足が20週線の上なら買いのみ、下なら売りのみ)を入れる。
④反転確認を定義(例:前日高値超えで買い、前日安値割れで売り)。
⑤損切りは反転足の安値/高値割れ、またはタイムストップ(例:3日で戻らなければ撤退)。
⑥利確は移動平均タッチを基本に、途中で分割利確と建値ストップ移動を組み込む。
⑦ロットは“損切り幅”で決める(1回の損失を資金の一定割合に固定)。

このテンプレの肝は、乖離率が「入る理由」ではなく「観測開始の合図」になっている点です。逆張りは“待つ技術”が全てです。乖離率で待ち、反転確認で打つ。これを徹底すると、無駄なトレードが激減します。

資金管理:勝率より“期待値”を守る

逆張りは勝率が高く見えやすい一方で、たまに大きく負けます。この「小さく勝って大きく負ける」を防ぐため、資金管理を最優先します。実装の基本は、1トレードの最大損失を資金の一定割合(例:0.5%〜1%)に固定し、損切り距離が広いときはロットを落とす、というものです。

例えば資金100万円で最大損失0.7%なら7,000円。反転足安値までの距離が2%なら、建玉は「7,000円 ÷ 2%=350,000円相当」に抑える。距離が1%なら700,000円相当まで増やせる。こうして、どの局面でも“負けの上限”を揃えます。逆張りは、連敗したときに精神が崩れやすいので、上限固定はメンタル面でも効きます。

検証のやり方:初心者でもできる“ズルい”テスト手順

戦略の優位性は、細かい理屈より検証で決まります。ただし、いきなり本格バックテストをしなくても、手早く当たりを付ける方法があります。

手順:対象銘柄を10〜20銘柄選び、過去半年〜1年で乖離率が下位5%に到達した場面を全てマーキングします。次に、その翌日〜5日後に「25日線にどれだけ戻ったか(乖離がどれだけ縮んだか)」を数えます。ここで“戻りが速いか、遅いか、戻らないか”の癖が見えます。戻りが出やすい銘柄だけを採用し、出にくい銘柄は捨てる。これだけで、トレード対象の質が上がります。

さらに精度を上げるなら、反転確認を入れた場合の成績も同様に数えます。「行き過ぎだけで入る」と「反転確認で入る」で、勝率と平均利益がどう変わるかを見ると、あなたの性格に合う設計が見つかります。

まとめ:乖離率は“逆張りの魔法”ではなく、待ち伏せのレーダー

乖離率は、価格が平均から離れたことを知らせる“警報”です。警報が鳴ったからといって飛び出すのではなく、上位足・値動きの質・反転確認で勝てる局面だけを選び、平均への回帰を淡々と取る。これが、乖離率を戦略に昇華させる方法です。

最初は、①分布ベースの閾値、②上位足フィルター、③反転確認、④平均回帰利確、⑤構造損切りとロット調整、の5点だけ実装してください。難しい指標を足す前に、この骨格があるかどうかで結果は大きく変わります。

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