マラボゾとは何か
マラボゾ(丸坊主足)は、ローソク足の実体部分が非常に大きく、ほとんどヒゲがない形状の足を指します。上ヒゲも下ヒゲもほぼ出ていない、もしくはごくわずかしか出ていないため、「始値から終値までほぼ一方的に価格が動いた」という強いトレンドの勢いを示すシグナルとして知られています。
陽線マラボゾであれば、始値から終値にかけて買いが一貫して優勢であったことを意味し、陰線マラボゾであれば、売りが一貫して優勢であったことを意味します。株式、FX、暗号資産など、ローソク足チャートを用いるあらゆる市場で確認できる普遍的なパターンです。
マラボゾが示す市場心理
一方向に偏ったオーダーフロー
マラボゾは、売りと買いのバランスが極端に崩れた状態を可視化したものです。陽線マラボゾの場合、買い注文がほぼ途切れずに続き、途中で目立った利益確定売りや戻り売りが出ていないことを示します。これは、ニュースや材料、需給の変化などによって、参加者の多くが「とにかく買いたい」と考えた結果です。
陰線マラボゾの場合はその逆で、「とにかく売りたい」という心理が支配している局面です。パニック売りや失望売り、強制ロスカットの連鎖などが重なると、長い陰線マラボゾが現れやすくなります。
トレンドの加速点を捉えるシグナル
マラボゾは、すでに始まっているトレンドがさらに加速する「起点」になっていることが多いです。もみ合いやレンジを抜けた直後に出現するマラボゾは、ブレイクアウトが本物であることを示す強い手掛かりになります。
一方で、長期トレンドの終盤で現れるマラボゾは、「最後の一押し(吹き上げ・投げ売り)」である可能性もあります。そのため、相場全体の文脈と組み合わせて判断することが重要です。
マラボゾの具体的な判定基準
実戦でマラボゾを利用するためには、「どこまでをマラボゾとみなすか」のルールを決めておく必要があります。完全にヒゲがゼロの足だけを対象にすると、サンプルが極端に減ってしまうため、少し余裕を持った条件を設定するのがおすすめです。
- 実体の長さが直近20本の平均実体の1.5〜2倍以上
- 上ヒゲの長さが全体の5〜10%以下
- 下ヒゲの長さが全体の5〜10%以下
このような条件をスクリーニング条件としてチャートソフトやプログラムに組み込んでおけば、裁量では見逃しがちなマラボゾも機械的に抽出できます。FXや暗号資産のように24時間動く市場では、時間帯によってボラティリティが変動するため、実体の長さの基準は銘柄や時間軸ごとに調整することが望ましいです。
時間軸ごとの特徴と使い分け
日足・4時間足:スイングトレード向け
日足や4時間足でのマラボゾは、中期トレンドの転換点や加速点を示しやすく、スイングトレードとの相性が良いです。特に、長期間続いたレンジを日足マラボゾで明確にブレイクした場合、その方向に数日〜数週間単位のトレンドが伸びるケースが多く見られます。
1時間足・15分足:デイトレード向け
1時間足や15分足のマラボゾは、日中のニュースや経済指標発表、オープン直後のオーダーフローに反応して出現しやすいです。短期的な値幅を狙うデイトレードでは、この時間軸のマラボゾをきっかけに押し目買い・戻り売りを仕掛ける戦略が有効です。
5分足・1分足:スキャルピング向け
5分足や1分足ではマラボゾの頻度が多くなりますが、ダマシも増えます。高ボラティリティな時間帯(ロンドンタイムやニューヨークタイム)に絞り、上位足のトレンド方向に沿ったマラボゾのみを狙うことで、ノイズをある程度フィルタリングできます。
マラボゾを使ったトレンドフォロー戦略
戦略1:ブレイクアウト+マラボゾの順張りエントリー
もっともシンプルで実践しやすいのが、レンジブレイクとマラボゾを組み合わせた順張り戦略です。具体的な手順は以下の通りです。
- 水平レンジや三角保ち合いなど、明確なレンジ相場を見つける
- レンジ上限・下限に水平線を引く
- そのレンジを抜けるタイミングで、マラボゾが形成されたかを確認する
- マラボゾの終値付近または次の足の押し目・戻りでエントリーする
たとえば、FXの1時間足で長く続いたレンジを、強い陽線マラボゾで上抜けしたとします。この場合、マラボゾ終値付近までの小さな押しを待って買いエントリーする形です。損切りはマラボゾの安値か、レンジ上限の少し下に置きます。
戦略2:トレンド中の押し目・戻りの確認シグナルとして使う
すでに上昇トレンドが発生している場面で、一時的な調整下落のあとに再度陽線マラボゾが出現した場合、「押し目完了」のシグナルとして機能することがあります。逆に下降トレンド中に短期的な戻りが入り、その後に陰線マラボゾが出現した場合は、「戻り売り完了」のサインとして活用できます。
この使い方では、エントリー方向は常に上位足トレンドと揃えることがポイントです。日足や4時間足で上昇トレンドを確認し、その中の1時間足や15分足でマラボゾを探すイメージです。
戦略3:ストップ狩り後のマラボゾに注目する
レンジ上限・下限の直上直下では、ストップ注文が多く溜まります。一度レンジを抜けたあとに素早く反転し、逆方向にマラボゾが出るケースがあります。これは「一度ストップを巻き込んでから本命方向に動き出した」パターンで、トレンドの始動点になることが多いです。
例えば、レンジ上限を上抜けして陽線をつけた後、すぐに強い陰線マラボゾでレンジ内に戻る場合、それは上方向ブレイクの失敗=売り手優勢への転換サインと解釈できます。このような「フェイクブレイク+マラボゾ」は、逆張りではなく結果的に新しいトレンドに乗る順張りとなるため、値幅を狙いやすいパターンです。
損切りと利確の設計
損切りはマラボゾの反対側に置く
マラボゾを起点にエントリーする場合、損切りラインはマラボゾの高値または安値の少し外側に置くのが基本です。陽線マラボゾで買った場合は、その足の安値の下、陰線マラボゾで売った場合は、その足の高値の上にストップを設定します。
このとき、マラボゾの実体が極端に長すぎる場合は、損切り幅が大きくなりすぎてしまいます。その場合は、リスクリワードが悪化しやすいため、見送るか、ポジションサイズを小さくするなどの調整が必要です。
利確は直近の節目やリスクリワード比で決める
利確目標は、チャート上の分かりやすい水平レジスタンス・サポート、またはリスクリワード比(1:2、1:3など)を基準に決めます。たとえば、損切り幅が20pipsであれば、最低でも40pips以上の利幅が見込めるところまで引きつけてからエグジットするイメージです。
トレーリングストップを活用し、含み益が乗ってきた段階でストップを建値付近まで引き上げる運用を採用すれば、マラボゾ起点の大きなトレンドを最後まで引っ張りつつ、リスクを抑えた運用が可能です。
マラボゾのダマシを減らすフィルター
上位足トレンドの方向と揃える
マラボゾの信頼度を高めるうえで最も重要なのは、「上位足のトレンド方向と揃えること」です。日足で明確な上昇トレンドが出ているのに、5分足の陰線マラボゾだけを見て逆張りショートをするのは危険です。
基本ルールとして、「上位足が上昇トレンドなら陽線マラボゾのみを重視」「上位足が下降トレンドなら陰線マラボゾのみを重視」といったフィルターを設定すると、無駄なエントリーを減らせます。
ボリューム(出来高)とセットで確認する
株式など出来高情報が取得できる市場では、マラボゾと出来高を組み合わせることで、シグナルの強さを評価できます。通常より明らかに大きな出来高を伴うマラボゾは、「大口も参加した本気の動き」である可能性が高く、トレンド継続の期待値も上がります。
逆に、出来高が細り気味の状況で出たマラボゾは、短期的なアルゴリズムの注文や一時的な需給の偏りによる「空振り」の可能性もあるため、過信しないことが重要です。
重要な価格帯との位置関係を見る
過去に何度も意識された高値・安値、水準が切り替わる価格帯(サポレジ転換)付近で出たマラボゾは、チャート上の意味合いが大きくなります。たとえば、長期レンジの上限を強い陽線マラボゾで突破したケースは、「長期的な需給の壁を打ち破った」動きとして注目できます。
バックテストのアイデア
マラボゾ戦略を自分の手法として取り入れる前に、過去チャートで検証しておくことは非常に重要です。チャートソフトやプログラミング環境を使って、以下のような条件で検証してみるとよいでしょう。
- 対象市場:FXの主要通貨ペア、株価指数、主要な暗号資産など
- 時間軸:5分足、15分足、1時間足、4時間足、日足など
- マラボゾの定義:ヒゲの割合、実体の長さの閾値
- エントリー条件:レンジブレイク+マラボゾ、押し目完了+マラボゾなど
- 損切り・利確:固定pips、リスクリワード固定、トレーリングストップの有無
同じマラボゾ戦略でも、時間軸や銘柄、ボラティリティ環境によって成績は大きく変わります。自分が普段トレードするマーケットと時間軸に絞って検証することで、実際の運用に耐えうるルールを作り込むことができます。
他のテクニカル手法との組み合わせ
移動平均線との組み合わせ
移動平均線(MA)と組み合わせると、マラボゾの方向性をより客観的に判断できます。たとえば、「価格が主要移動平均線の上にあるときは陽線マラボゾだけを狙う」「価格が移動平均線の下にあるときは陰線マラボゾだけを狙う」といったルールです。
オシレーターとの組み合わせ
RSIやストキャスティクスなどのオシレーターを使うと、「行き過ぎ」の度合いを測ることができます。強い陽線マラボゾが出たときにRSIがすでにかなり高い水準に達しているなら、短期的な押しが入る可能性を想定し、エントリータイミングをずらすといった調整も可能です。
サポート・レジスタンスとの組み合わせ
水平線やゾーンで描いたサポート・レジスタンスとマラボゾを組み合わせることで、「どの価格帯のマラボゾに注目すべきか」が明確になります。重要なサポート付近で陰線マラボゾが否定され、陽線マラボゾに切り替わるといった動きは、トレンド転換点として強いシグナルになり得ます。
実践するうえでの注意点
- マラボゾだけに頼らず、必ず相場全体の流れと組み合わせて判断する
- 損切り幅が大きくなりやすいので、ポジションサイズ管理を徹底する
- ボラティリティが極端に高い相場では、マラボゾの頻度が増え、ダマシも増えることを理解する
- バックテストやデモトレードで十分に検証したうえで、少額から実際の運用に移行する
マラボゾはとてもシンプルなローソク足パターンですが、「どの場所で出たマラボゾか」「どの時間軸のマラボゾか」という文脈を意識することで、強力なトレンドフォローの武器になります。自分なりの判定基準とルールを言語化・数値化し、再現性のある手法として磨き上げていくことが、長期的に生き残るための鍵です。


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