RSI(Relative Strength Index)は「買われすぎ・売られすぎ」を数値で把握できる代表的なオシレーターです。特にRSIが30を下回ると「売られすぎ」として反転を期待する人が増えます。しかし、ここでいきなり買うと、下落トレンドが継続して損切りが連発しがちです。RSI30割れは“反転の合図”ではなく、“反転を探し始める合図”にすぎません。
そこで使えるのがダイバージェンスです。価格が安値更新しているのに、RSIが安値更新しない(もしくは上向く)状態は、下落の勢いが弱まっている兆候として読み取れます。ただし、ダイバージェンスも万能ではありません。強い下落ではダイバージェンスが何度も出ながら、さらに下へ突き抜けることがあります。
この記事では、RSI30割れのダイバージェンスを「反転の候補」から「実行可能なトレード」へ落とし込むために、初心者でも再現しやすい確認手順と、損失を小さく保ちながら期待値を取りにいく設計(エントリー・損切り・利確)を、具体例を交えて徹底的に説明します。
- RSIとダイバージェンスの基礎:まずは誤解を捨てる
- なぜRSI30割れの「逆張り」は負けやすいのか
- 実行前の前提:市場タイプを3つに分類する
- ダイバージェンスを「使える形」にする4つのチェック軸
- チェック軸①:価格の形(ローソク足)で「売りの弱さ」を確認
- チェック軸②:RSIの“どこ”でダイバージェンスが出ているか
- チェック軸③:出来高(または取引の厚み)で「投げが終わった」兆候を探す
- チェック軸④:時間とボラティリティで「踏み抜け」を避ける
- 具体例で理解する:株のデイトレ〜スイングの2つの型
- 例1:日足でのスイング(レンジ下限+ダイバージェンス)
- 例2:5分足のデイトレ(急落後の二段下げ+ダイバージェンス)
- 失敗しやすいパターンと、避けるためのルール
- 失敗パターン①:ダイバージェンスが“連発”しているのに買う
- 失敗パターン②:損切りが曖昧で、祈ってしまう
- 失敗パターン③:利確が遅く、反発が終わって利益が消える
- エントリーの3方式:初心者が迷わない選択肢
- 損切り設計:ATRで“その銘柄の荒さ”に合わせる
- 利確設計:反転の“戻り目標”を3層で置く
- 上位足と下位足を混ぜる:だましを減らす最短ルート
- FX・暗号資産での注意点:24時間市場の落とし穴
- 検証のやり方:初心者でも再現できる最小セット
- 最後に:RSI30割れは「買い」ではなく「準備」
- トレード前のチェックリスト:一発で判断しないための型
- トレード日誌の付け方:上達が速い人が必ずやっていること
- よくある疑問:RSI期間や30という数字は変えるべきか
RSIとダイバージェンスの基礎:まずは誤解を捨てる
RSIは一定期間の上昇幅と下落幅から、相対的な強さを0〜100で表します。一般的に70以上が買われすぎ、30以下が売られすぎとされますが、これは「統計的に反転しやすい帯がある」という程度の話で、30を下回った瞬間に反転するわけではありません。
重要なのは、RSIは価格そのものではなく“勢い(モメンタム)”を見ている指標だという点です。勢いが弱まっているのに価格がさらに下がる、という矛盾が起きた時に、ダイバージェンスが発生します。
- 強気(ブル)ダイバージェンス:価格は安値更新、RSIは安値切り上げ(下落の勢いが弱い)
- 弱気(ベア)ダイバージェンス:価格は高値更新、RSIは高値切り下げ(上昇の勢いが弱い)
本記事では前者、特にRSIが30以下に沈んでいる局面の「強気ダイバージェンス」に絞って話を進めます。
なぜRSI30割れの「逆張り」は負けやすいのか
初心者がやりがちな失敗は、「RSIが30を割った=安い=買い」という単純化です。RSIはトレンドの強さにも敏感で、強い下落トレンドではRSIが20台で張り付くことが普通に起きます。つまり、RSI30割れは“安い”のではなく、“下落が強い”可能性も高いのです。
さらに、ニュースや決算、マクロ要因で需給が一方向に偏ると、テクニカルは簡単に無視されます。RSIがいくら低くても、投げが投げを呼ぶ局面では、買いの板は薄くなり、反転の「燃料」が不足します。
したがって狙うべきは「RSI30割れ」そのものではなく、下落の勢いが衰え、売りが枯れ、反転のきっかけが入りやすい構造が整ったタイミングです。その構造を見抜くために、ダイバージェンスと確認ルールを組み合わせます。
実行前の前提:市場タイプを3つに分類する
同じRSI30割れでも、相場のタイプで勝ちやすさが変わります。まず、あなたが見ているチャートがどれに近いかを分類してください。
①レンジ内の下振れ:一定の範囲で上下しており、下限で反発しやすい。逆張りが機能しやすい。
②トレンド下落の途中:戻り売りが継続しやすく、ダイバージェンスがだましになりやすい。
③投げの終盤(下落終盤の加速):急落後に大きく戻ることがあるが、ボラが高く難易度が上がる。
初心者におすすめなのは、①レンジ内の下振れ、次点で③投げの終盤です。②は見分けが難しく、損切りの連打になりやすいので、ルールが固まるまでは避けた方が無難です。
ダイバージェンスを「使える形」にする4つのチェック軸
ここからが本題です。ダイバージェンスを見つけたら、次の4軸で合格点を取れた時だけエントリー候補にします。1つだけだとだましが多いので、最低でも2軸、できれば3軸の一致を狙います。
チェック軸①:価格の形(ローソク足)で「売りの弱さ」を確認
RSIが切り上がっても、価格が一直線で下がっているなら危険です。最低限、次のような“止まり方”が欲しいです。
・長い下ヒゲ:安値で買い戻しが入った証拠。特に出来高が伴うと強い。
・包み足(下落後の陽線で前日陰線を包む):短期の需給が反転した可能性。
・2番底っぽい形(安値更新が小さい):更新幅が縮むのは売りの限界を示唆。
初心者の実戦では「下ヒゲ+終値が前日高値付近」のように、形を具体化して覚えると迷いが減ります。
チェック軸②:RSIの“どこ”でダイバージェンスが出ているか
同じダイバージェンスでも、RSIの位置で意味が変わります。
・RSIが20台→反転の値幅は大きくなりやすいが、さらに下へ伸びるリスクも高い
・RSIが25〜35で底打ち→比較的安定しやすい(レンジ下限の反発で多い)
狙い目は「RSIが20台で一度底を作り、次の下落で価格は安値更新したのにRSIは25〜30付近で踏みとどまる」形です。これが“勢いの衰え”を最もシンプルに表します。
チェック軸③:出来高(または取引の厚み)で「投げが終わった」兆候を探す
株であれば出来高、FXならティックボリューム、暗号資産なら取引高や板の厚みが参考になります。反転の成功率を上げるコツは、安値更新時に出来高が減る、または直前の急落で出来高がピークを付けている状況を探すことです。
具体的には、次の2パターンが狙い目です。
パターンA:出来高ピーク(投げの終盤)…急落の最後で出来高が跳ね、その後は価格が下げても出来高が続かない。売りが枯れた可能性。
パターンB:安値更新なのに出来高が増えない(売り疲れ)…新安値なのに参加者が減っている。下げの勢いが鈍る。
逆に危険なのは「安値更新で出来高も増える」ケースです。これは“新しい売りが入っている”ので、ダイバージェンスが出ても簡単に崩れます。
チェック軸④:時間とボラティリティで「踏み抜け」を避ける
反転を狙う時に一番痛いのは、買った直後にもう一段の急落(踏み抜け)を食らうことです。これを減らすには、ボラティリティの指標(ATRなど)と、時間の経過を使います。
たとえば日足なら、急落日(大陰線)の翌日にすぐ買うより、1〜3日かけて下値を試し、安値更新幅が縮むのを待つ方が安全です。5分足や1分足なら、急落直後はスプレッドが広がり、約定が滑りやすいので、一度戻してから再度下を試す「二段下げ」を待つと、損切りが明確になります。
具体例で理解する:株のデイトレ〜スイングの2つの型
例1:日足でのスイング(レンジ下限+ダイバージェンス)
想定:ある日本株が、ここ3か月「1,000円〜1,200円」のレンジで推移。市場全体が弱い日に1,020円→990円へ下落し、RSIは28まで沈む。翌日、寄り付き後に980円まで下げて安値更新したが、RSIは30近辺で止まり、終値は1,005円で下ヒゲを付けた。
このケースでは、
- 価格:レンジ下限付近で下ヒゲ(止まり方がある)
- RSI:価格は新安値だがRSIは安値切り上げ(強気ダイバージェンス)
- 時間:急落翌日に下試し→反発(2日で形が出た)
が揃っています。エントリーは「終値確定後に成行で買う」のではなく、翌日の寄り付きでギャップがある可能性を考え、1,000円付近に指値など、冷静に入る方法が初心者向きです。
損切りは「下ヒゲの安値(980円)を明確に割れたら撤退」と決めるとブレません。利確はレンジ上限の1,150〜1,200円を目標にしつつ、途中の戻り(25日移動平均や直近戻り高値)で半分利確すると、利益を残しやすいです。
例2:5分足のデイトレ(急落後の二段下げ+ダイバージェンス)
想定:寄り付き直後に悪材料が出て急落。5分足で連続陰線、RSIは18まで低下。ここで飛びつくのは危険です。次の流れを待ちます。
①急落の後に一度戻す(ショートの買い戻し)→②再度下を試す(二段下げ)→③価格はわずかに安値更新したが、RSIは18→23へ切り上がる→④下ヒゲが出て、直近の戻り高値(①の戻りの高値)を超える。
エントリーは④の「戻り高値超え」で入れると、逆張りではなく“転換の初動”に乗れます。損切りは二段下げの安値直下に置けるので、損失が小さくなります。利確は、急落開始地点までの戻り全てを狙う必要はなく、VWAPや直近の出来高帯など、反発が止まりやすい地点で段階的に行うと安定します。
失敗しやすいパターンと、避けるためのルール
ここは実践で差が付きます。次のパターンは初心者が最もやられやすいので、先に潰しておきます。
失敗パターン①:ダイバージェンスが“連発”しているのに買う
強い下落では、RSIが切り上がる場面が何度もあります。これは「下げが終わりそう」ではなく、「一時的な戻しが入っているだけ」かもしれません。連発しているときは、むしろトレンドが強いサインです。
回避ルール:ダイバージェンスの“1回目”ではなく、価格が下げ止まりの形(下ヒゲ・包み足・戻り高値超え)を作った後に限定します。
失敗パターン②:損切りが曖昧で、祈ってしまう
逆張りは損切りが命です。ここが曖昧だと、1回のミスで数回分の利益が消えます。
回避ルール:損切りは「直近の意味のある安値(下ヒゲの先端・二段下げの底)」の外側に置き、金額ではなく“価格の構造”で決める。これだけで事故は激減します。
失敗パターン③:利確が遅く、反発が終わって利益が消える
反転狙いは、戻りの途中で利確の売りが強く出ます。上昇トレンド追随よりも、利確を早めに入れた方が結果が安定します。
回避ルール:まずは「R(リスクリワード)1:1で半分利確」を標準にします。たとえば損切り幅が20円なら、+20円で半分利確。残りは伸びたら伸ばす、ダメなら建値撤退。これで平均が改善しやすいです。
エントリーの3方式:初心者が迷わない選択肢
反転局面での入り方を、3つに整理します。あなたの性格と時間軸に合わせて固定すると、ブレが減ります。
方式A:戻り高値ブレイク型(推奨)…転換を確認してから入る。勝率が上がりやすいが、値幅は少し減る。
方式B:下ヒゲ確定後の指値型…リスクが明確で入りやすい。だましもあるので、損切りは必須。
方式C:分割エントリー型…小さく試し、形が整ったら増やす。資金管理ができる人向け。
初心者は方式Aが無難です。「ダイバージェンス+戻り高値超え」という条件は、視覚的に分かりやすく、損切りも置きやすいからです。
損切り設計:ATRで“その銘柄の荒さ”に合わせる
同じチャート形でも、銘柄や通貨で値動きの荒さは違います。ここを無視すると、損切りが浅すぎてノイズで刈られます。そこでATR(Average True Range)を使い、損切り幅を調整します。
例:日足ATRが40円の株で、下ヒゲ安値割れを損切りにする場合、安値ぴったりではなく、安値−0.2〜0.3ATR(8〜12円)の余裕を持たせます。デイトレの分足なら、直近30本のATRを使い、同じ考え方で調整します。
ここで大事なのは「損切り幅を広げたら、ロットを減らす」ことです。損切り幅が2倍なら、枚数を半分にする。これを徹底すると、メンタルが安定し、ルールを守れます。
利確設計:反転の“戻り目標”を3層で置く
反転はどこまで戻るかが読みにくいので、利確目標を1つに絞らず、3層で置きます。
- 第一目標:直近の戻り高値(方式Aのブレイク地点)付近で半分利確
- 第二目標:VWAP・移動平均(20日/25日)・出来高帯など、戻り売りが出る地点
- 第三目標:レンジ上限、または日足の大きな抵抗帯
実戦では、第一目標で利益を確定して呼吸ができる状態にし、残りで伸びを狙うのが現実的です。
上位足と下位足を混ぜる:だましを減らす最短ルート
初心者ほど、1つの時間足だけで判断して失敗します。おすすめは「上位足で方向を決め、下位足で入る」方法です。
例:日足でRSI30割れダイバージェンスが出ている銘柄を候補にし、実際のエントリーは1時間足や15分足の「戻り高値超え」で行う。こうすると、日足の大局(反転の候補)と、下位足のタイミング(転換の初動)が一致し、無駄な逆張りが減ります。
FX・暗号資産での注意点:24時間市場の落とし穴
FXや暗号資産は24時間動き、流動性の薄い時間帯があります。RSIダイバージェンスは、薄い時間帯に小さな板で価格が動いて“見かけ上”作られることがあります。
注意点:
- スプレッドが広い時間帯(早朝など)では、ブレイク条件が機能しにくい
- 重要指標・要人発言の前後はテクニカルが壊れやすい
- 暗号資産は週末に急変しやすく、損切りが滑ることがある
対策はシンプルで、「流動性の厚い時間に限定する」「指標前後は見送る」「損切り注文は必ず置く」です。これだけで事故が減ります。
検証のやり方:初心者でも再現できる最小セット
この手法は、感覚でやるとブレます。最低限、次の形で検証してください。
1)対象を絞る:株ならTOPIX大型、FXなら主要通貨、暗号資産ならBTC/ETHなど流動性の高いもの。
2)条件を固定:RSI期間は14、ダイバージェンスは「価格の安値更新+RSI安値切り上げ」、エントリーは「戻り高値超え」に固定。
3)損切りと利確も固定:損切りは直近安値−0.2ATR、利確は1Rで半分、残りは第二目標まで。
これで50回だけ過去検証すると、勝率・平均損益・最大連敗が見えます。連敗が許容できないなら、条件を厳しくして回数を減らし、逆に回数が少なすぎるなら、時間足を下げる、もしくは対象銘柄を増やす、といった調整ができます。
最後に:RSI30割れは「買い」ではなく「準備」
RSI30割れは、反転の入口に立っただけです。ダイバージェンスは、勢いの衰えを示す便利なヒントですが、単体ではだましが多いのも事実です。価格の形、RSIの位置、出来高、時間とボラティリティ。この4軸のうち、最低2軸、できれば3軸が揃ったときだけ実行する。損切りは構造で決め、ロットで調整する。利確は段階的に行い、期待値を積み上げる。
この一連をテンプレ化できると、あなたのトレードは「当てにいく」から「負けを小さくして、勝ちを拾う」へ変わります。まずは方式A(戻り高値ブレイク型)で、少額から検証し、手順に慣れるところから始めてください。
トレード前のチェックリスト:一発で判断しないための型
実際のチャートを前にすると、人は都合よくサインを解釈します。そこで、注文ボタンを押す前に必ずチェックリストで機械的に判定してください。チェックが少ないなら「見送り」が正解です。
- 価格は安値更新だが、更新幅は縮んでいるか(踏み抜けの勢いが弱いか)
- RSIは前回安値より切り上がっているか(強気ダイバージェンスの条件)
- 下ヒゲ・包み足・戻り高値超えなど、価格の“転換の形”があるか
- 出来高(または板の厚み)が、急落局面よりも落ち着いているか
- 損切り位置がチャート上で明確か(意味のある安値の外側か)
- 損切り幅に対して、ロットを減らしたか(許容損失に収まるか)
- 第一利確(1R)がどこか、事前に決めたか
この7項目のうち、最低5つにチェックが付くときだけエントリーする、という運用にすると、だましの多い局面で無駄打ちが減ります。
トレード日誌の付け方:上達が速い人が必ずやっていること
初心者が伸びるかどうかは、結局「振り返り」ができるかで決まります。難しいことは不要で、1回のトレードにつき次の3つだけ残してください。
①入った理由:チェックリストのうち、どれが揃っていたか。
②切った理由:損切りに当たったのか、ルール外で撤退したのか。
③次に直す点:たとえば「戻り高値を待たずに早く入った」「損切りが浅すぎた」「利確が遅れた」など。
これを20回積み上げると、あなたの負け方の癖が見えます。癖が見えたら、ルールを1つだけ修正します。あれもこれも同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。
よくある疑問:RSI期間や30という数字は変えるべきか
RSIの期間(デフォルト14)や、30という閾値は、絶対ではありません。ただ、初心者が最初から最適化に走ると、過去に合うだけの“作り物のルール”になりやすいです。まずは14と30で固定し、検証して「自分が扱う市場では浅い・深い」の感触を掴んでください。
その上で、もし「30を割る前に反発してしまう」ことが多いなら、閾値を35に上げてレンジ向けに寄せる。逆に「割った後も下落が続いて刈られる」ことが多いなら、ダイバージェンスに加えて“戻り高値超え”を必須にする。こういう順番で調整すると、ルールが破綻しにくいです。


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